Hothotレビュー
日本エイサー、MILスペック準拠でタフネス筐体採用の「Chromebook Spin 11」
~ワコムペン対応でコンバーチブル対応の2in1
2017年9月19日 06:00
日本エイサーは、Google Chrome OS採用のコンバーチブルスタイルChromebook新モデル「Chromebook Spin 11 R751TN-N14N」を発売した。
法人や文教市場をターゲットとした製品で、MILスペック準拠のタフネス筐体や、ワコム製スタイラス対応、前面だけでなく背面にもカメラを備える点などが特徴となっている。8月下旬より発売が開始されており、実売価格は6万円前後。
ラフな扱いでもビクともしないタフネス筐体
「Chromebook Spin 11 R751TN-N14N」(以下、 R751TN-N14N)の筐体デザインは比較的おとなしめで無骨な印象。筐体は金属ではなく樹脂素材だ。ただ、 R751TN-N14N自体は法人や文教市場をターゲットとした製品ということで、デザイン面はそれほど大きな問題とはならず、性能や仕様面が重視されるだろう。
そういった観点から筐体をチェックしてみると、なかなか魅力的な部分が見えてくる。そのもっとも大きな部分が、優れた堅牢性を実現しているという点だ。
R751TN-N14Nでは、米国国防総省が定める調達基準「MIL-STD-810G」に準拠する、複数の耐久試験をクリアする優れた堅牢性が確保されている。クリアしている堅牢性試験項目は、高温・低温耐久、防滴、防湿、耐振動、耐衝撃、防塵となっており、ちょっとしたトラブルにも余裕で対応できる。
この堅牢性は、筐体内部にハニカム構造を採用して強度を高めたり、ラバーバンパーを採用することなどによって実現しているそうだが、実際に筐体を強い力でひねってみてもビクともせず、十分な強度を実感できる。
加えて、キーボードは内部に浸水しない構造となっており、万が一キーボードに水などをこぼしたとしても、溝を通って底面の排水溝から排水され、内部に水が浸透しにくいようになっている。
もちろんこれは、耐久性試験をクリアしているだけであり、実際の使用上で水をこぼしたトラブルに対して保証されるわけではないが、最大330mlの水に対応できるそうで、これはもしものトラブル発生でも故障の可能性を大幅に低減できるという意味で、大きな魅力となるはずだ。
本体サイズは、296×206×20.9mm(幅×奥行き×高さ)。11.6型ディスプレイ搭載機種としては特別小さいわけではないが、まずまず標準的なサイズと言える。また重量は、公称で1.4kg、実測では1,256gだった。こちらも、特別軽いということはないが、用途を考えると大きな不満は出ないだろう。
ディスプレイはHD表示対応でWacom製スタイラスにも対応
液晶ディスプレイは、1,366×768ドット表示に対応する11.6型液晶を採用している。パネルの種類はIPSで、視野角は申し分ない。パネル表面は光沢仕様となっており、発色はまずまず鮮やかで、表示品質はこのクラスの製品として標準的という印象。外光の映り込みはやや激しいが、全体的には表示品質は申し分ないと言っていいだろう。
表面ガラスには米Corning製強化ガラス「Gorilla Glass」を採用しており、タッチ操作などでも傷がつきにくくなっている。もちろんこれも、筐体の堅牢性を高めることに役立っている。
ディスプレイには静電容量方式のタッチパネルに加えて、ワコムの「Wacom feel IT technologies」に対応する電磁誘導方式スタイラスペンの利用にも対応している。そして標準でWacom feel IT technologies対応のスタイラスペンも付属している。
スタイラスペンは、筆圧検知の仕様などは未公開となっているが、実際に試してみたところ、ペンへの追従性も十分に優れており、非常になめらかな入力が可能だった。「Bamboo Paper」などのワコム提供のペン入力アプリも問題なく利用できるため、ペンも幅広い用途で利用できそうだ。ペン自体は比較的細身なので、使いにくく感じる人もいるかもしれないが、これなら子供でも快適に使えそうだ。
液晶ヒンジには2軸のヒンジを採用しており、360度開閉することでクラムシェルスタイルやスタンドスタイル、テントスタイル、タブレットスタイルなどでの利用が可能。ヒンジは2軸それぞれが同調して動作することによって、なめらかなディスプレイの開閉を実現しており、形状の変更も簡単だ。タブレットモードでの快適なペン入力はもちろん、プレゼンなどで幅広い用途に対応できるだろう。
アイソレーションタイプのキーボードを搭載
キーボードは、アイソレーションタイプのものを搭載している。主要キーのキーピッチは実測で約18mmとなっており、フルピッチよりはわずかにせまくなっているが、窮屈さはそれほど感じずに十分快適なタイピングが可能だった。
ストロークは1.5mmほどの深さがあるとともに、クリック感もしっかり感じられるため、打鍵感も上々。Chromebookということもあって、キー配列はWindows PC向けキーボードとやや異なる部分もあるが、無理な配列は見られず、この点も安心だ。
キーボード手前には、大型のタッチパッドを搭載。ディスプレイにタッチパネルが搭載されているとはいえ、クラムシェルスタイルでの利用時にはタッチパッドを利用したほうが快適な場面もある。Chromebookでは、Windows PCほどマウスの利用が必須とはならないが、それでもクラムシェルPC相当として利用する場合には、タッチパッドによって快適な利用が可能だ。
天板とキーボード面にカメラを2系統搭載
モバイルノートPCでは、液晶ディスプレイ上部などにWebカメラを搭載するのがほぼ標準となっている。R751TN-N14Nでもその点は同様で、液晶上部に720p対応のHD Webカメラを搭載している。このWebカメラは広視野角レンズを採用し、Web会議などの利用に最適とされている。
そして、R751TN-N14Nではそれだけでなく、キーボード上部にもカメラを搭載している。こちらは1080p対応の500万画素カメラで、オートフォーカスに対応するなど液晶上部のWebカメラよりも高品質となっている。
このカメラは、液晶を360度開いてタブレットモードとして利用する場合にメインカメラとして動作するようになっており、一般的なタブレット同様に、ディスプレイで映像を確認しながら写真の撮影が可能となるため、液晶上部のWebカメラよりも圧倒的に活用しやすい。
画質はそれほど優れるわけではないが、メモ用となどとして利用するなら十分な画質となっているので、文教用途で生徒が植物の成長の様子を記録するなど、授業などで活用する場合に便利だろう。
用途を考えると必要十分なスペック
では、スペックを確認していこう。R751TN-N14NはOSにGoogle Chrome OSを採用していることもあって、Windows PCに比べるとスペックはひかえめとなっている。
CPUにはApollo LakeことCeleron N3350を採用しており、メモリはLPDDR4-3200を標準で4GB搭載。内蔵ストレージは32GBのeMMC。このあたりは、低価格のノートPCやタブレットPCなどとほぼ同等だ。
無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠の無線LANとBluetooth 4.0を標準搭載。このほか、TCG V1.2準拠のTPMチップも搭載している。
側面のポート類は、左側面にUSB 3.0 Type-CポートとUSB 3.0ポート、microSDカードスロット、オーディオジャックを、右側面にUSB 3.0 Type-CポートとUSB 3.0ポートをそれぞれ備える。
なお、内蔵バッテリの充電はUSB Type-Cポート経由となるが、充電に対応するのは左側面のUSB Type-Cポートのみとなる。このほか、左側面には電源ボタン、右側面にはボリュームボタンも配置している。
付属のACアダプタは比較的小型のものとなっている。接続端子はUSB Type-Cで、最大45W(15V/3Aまたは20V/2.25A)の出力に対応。重量は付属の電源ケーブル込みで265gだった。
動作は軽快で、ストレスなく利用可能
スペックに関しては、いわゆる格安ノートPCとほぼ同等で、ノートPCとして考えると性能が優れるわけではない。しかし、OSにGoogle Chrome OSを採用していることもあって、実際にさわってみると動作は非常に軽快だ。
アプリの起動は十分に素早く、動作の重さを感じる場面も非常に少なく、使っていて不満を感じる場面はまったくといっていいほどなかった。ゲームなどでは、動作に重さを感じる場面があるかもしれないが、全体的には性能面で不満を感じる場面は少ないだろう。
もちろん、Windows PCとは操作の作法が異なっていたり、キーボードもPC向けとは一部配列が異なっているため、戸惑う部分があったのも事実で、そのあたりは慣れが必要とは思う。
利用できるアプリは、プリインストールアプリや、Chromeウェブストアに用意されているChromebookに最適化されたアプリだけでなく、Google Playストアアプリが用意されており、Google Playストア経由でAndroid向けアプリをインストールして利用できる。
R751TN-N14Nがターゲットとしている法人用途ではシンクライアント端末として、また文教用途では専用アプリでの利用が中心になると思われるが、Androidアプリが利用できるという点は、汎用性を高めてくれるという意味で、大きな魅力となりそうだ。
続いてバッテリ駆動時間だ。公称のバッテリ駆動時間は約10時間とされている。今回は、デジタルカメラで撮影したMP4形式のフルHD動画を利用し、バックライト輝度を50%に設定して連続再生させた場合の駆動時間を計測してみた。その結果は、約7時間58分だった。バックライト輝度が50%と比較的高く設定した状態を考えると、十分に満足できる駆動時間と言っていいだろう。
最後に、Android向けベンチマークアプリ、Futuremarkの「PCMark for Android 2.0.3715」と「3DMark Android Edition 1.6.3439」、AnTuTuの「Antutu Benchmark v6.2.7」の3種類を利用してベンチマークテストも行なってみたので、その結果を掲載しておく。なお、これらベンチマークアプリはChrome OSに最適化されているわけではないため、あくまでも参考値として見てもらいたい。
【表】Chromebook Spin 11 R751TN-N14Nのベンチマーク結果 | |
---|---|
PCMark for Android 2.0.3715 | |
Work 2.0 Performance | 4705 |
Web Browsing 2.0 score | 4518 |
Video Editing score | 4878 |
Writing 2.0 score | 3500 |
Photo Editing 2.0 score | 9207 |
Data Manilulation score | 3274 |
Computer Vision | 2748 |
TensorFlow score | 658.6 |
ZXing score | 35.64 |
Tesseract score | 2052.75 |
Storage | 5941 |
Internal sewuential read(MB/s) | 1255.7 |
Internal random read(MB/s) | 1216.84 |
Internal sewuential write(MB/s) | 60.46 |
Internal random write(MB/s) | 2.08 |
External sewuential read(MB/s) | 179.34 |
External random read(MB/s) | 34.54 |
External sewuential write(MB/s) | 41.98 |
External random write(MB/s) | 1.75 |
SQLite read(IOPS) | 1969 |
SQLite update(IOPS) | 153 |
SQLite insert(IOPS) | 80 |
SQLite delete(IOPS) | 142 |
3DMark Android Edition 1.6.3439 | |
Ice Storm Unlimited | 16883 |
Graphics score | 26588 |
Physics score | 7413 |
Graphics test 1(FPS) | 152.9 |
Graphics test 2(FPS) | 92.9 |
Physics test(FPS) | 23.5 |
Sling Shot | 1344 |
Graphics score | 1936 |
Physics score | 649 |
Graphics test 1(FPS) | 13.1 |
Graphics test 2(FPS) | 6.2 |
Physics section1(FPS) | 15.1 |
Physics section2(FPS) | 6.9 |
Physics section3(FPS) | 3.2 |
Antutu Benchmark v6.2.7 | |
Score | 69285 |
3D | 17308 |
3D [Marooned] | 15317 |
3D [Garden] | 1991 |
UX | 23417 |
UX Data Secure | 6532 |
UX Data process | 3641 |
UX Strategy games | 7909 |
UX Image process | 1454 |
UX I/O performance | 3881 |
CPU | 23019 |
CPU Mathematics | 8561 |
CPU Common Use | 9502 |
CPU Multi-Core | 4956 |
RAM | 5541 |
汎用性に優れるChromebookとしておすすめ
R751TN-N14Nは、液晶が360度開閉するコンバーチブルスタイルのChromebookということで、ノートPC相当としてもタブレットとしても、幅広い用途に活用できる点が大きな魅力となる。
また、Chromebook向けのアプリだけでなく、Google PlayストアからAndroidアプリをインストールして利用できる点も、汎用性を高めるという意味でうれしい部分。
このほか、タッチ操作に加えてスタイラスペンにも対応し、軽快なペン入力が可能となっている点や、インカメラとアウトカメラの2つのカメラを搭載し、クラムシェルモードでもタブレットモードでもカメラが利用できる点も、利便性を高めてくれる特徴と言える。
性能面でも、スペックはともかく、実際の利用で不満を感じる場面は非常に少なく、十分快適に利用できる点も魅力となるだろう。気になるのは内蔵ストレージ容量が32GBと少ない点だが、これもOSがGoogle Chrome OSであるということや、microSDカードを利用して強化できることから、それほど大きな問題はないはずだ。
本体デザインにはそれほど高級感がなく、コンパクトなわりには重量もやや重いといったあたりは、一般的なモバイルノートPCと比べると見劣りする部分。個人で利用する場合には、やや気になる点ではあるが、それもR751TN-N14Nが法人や文教用途をメインターゲットにしており、そういった用途での活用であればとくに不満はないだろう。
R751TN-N14Nは、基本的には法人や文教用途向けではあるが、一般家電量販店でも販売されており、個人でも購入が可能。Webを見たりメールの送受信、SNSの利用、カジュアルゲームのプレイといった利用が中心ということであれば、大きな不満はないはず。軽快な動作とあわせて、個人でも十分満足できる要素を備える製品と言っていいだろう。