■平澤寿康の周辺機器レビュー■
以前、突起部のないExpressCard仕様のUSB 3.0拡張カードとして、エアリアの「ツライチUSB3.0 Express」を紹介したが、PhotoFastからも、同じく突起部のないExpressCard仕様のUSB 3.0拡張カード「GM3000EX」が登場した。しかも、GM3000EXは、突起部がないことに加え、通常のUSB 3.0 Aコネクタを備えている点が大きな特徴となっている。
●突起部がないうえに、通常のUSB 3.0 Aコネクタを備える
冒頭でも紹介したように、PhotoFastが発売するExpressCard/34仕様のUSB 3.0拡張カード「GM3000EX」の特徴は、突起部が存在しないという点と、標準のUSB 3.0 Aコネクタが用意されているという点だ。
標準のUSB 3.0 Aコネクタを備えているというメリットは、非常に大きい。ほかにも突起部のないExpressCard仕様のUSB 3.0拡張カードは、以前紹介したエアリアのツライチUSB3.0 Expressなどが先に登場しているが、ツライチUSB3.0 Expressは、コネクタにUSB 3.0 Micro Bコネクタを採用しているため、USB 3.0対応周辺機器を利用する場合には、付属の変換ケーブルが不可欠となる。それに対し、GM3000EXは、変換ケーブルなどを利用することなく利用できる。この差は小さいように感じるかもしれないが、実際に使ってみると、変換ケーブルを接続するという1作業がないだけで、使い勝手の差がかなり大きく感じられる。
コネクタ以外の仕様は、他のExpressCard/34仕様のUSB 3.0拡張カードから大きく変わらない。USB 3.0ホストコントローラは、他の製品と同じ、ルネサスエレクトロニクス(元NECエレクトロニクス)の「μPD720200」を採用。ポートからのバスパワー出力は300mAとなっているが、付属の補助電源用USBコネクタ付きUSB 3.0ケーブルを利用し、補助電源コネクタをUSB 2.0ポートに接続した場合には800mAとなる。ただし、この補助電源コネクタ付きUSB 3.0ケーブルは、機器接続側のコネクタがUSB 3.0 Micro Bコネクタとなっている。最近では、USB 3.0 Micro Bコネクタを採用する周辺機器が増えているものの、まだ少数派。そう考えると、機器接続側のコネクタは、できればUSB 3.0 Aのメス型コネクタを採用してもらいたかった。
前述の通り、本体はExpressCardスロットから一切飛び出さない。手持ちのVAIO Zは、スロットの奥行きが短いため、若干スロットから飛び出しているように見えるが、一般的なExpressCardスロットであれば全て収まる。今回は、比較用として、バッファローの「IFC-EC2U3/UC」を用意したが、カードをExpressCardスロットに取り付けた状態での違いは一目瞭然だ。IFC-EC2U3/UCには、USB 3.0ポートが2ポート用意されているなどの利点があるものの、スロットから飛び出さないGM3000EXは、カードを取り付けたままでも気軽にノートPCをカバンなどに入れられる点を考えても、利便性が高いと言える。
ただし、カードの厚さが規定よりもわずかに厚いようで、スロット挿入時にかなり力を入れて押し込まなければならないのと、逆にカードを取り出そうと思っても、堅くてなかなか引き抜けない点は気になった。一般的なExpressCardスロットであれば、クリック式で、カードを押し込めば、バネの力でカードが飛び出してくるようになっているが、GM3000EXではその機構も全くと言っていいほど役に立たない。VAIO Zでは、スロットからわずかにカードが出ているため、その部分を利用して引き抜くことが可能だったが、一般的なノートPCのExpressCardスロットの場合は、カードを引き抜くのにかなり苦労することも十分に考えられる。できれば、この点は今後の改善を期待したい。
●他の製品と同じで、速度はやや遅い
センチュリーの「裸族のお立ち台USB3.0」を利用してテストを行なった |
では、速度をチェックしていこう。テスト方法は、エアリアのツライチUSB3.0 Expressの時と同じで、センチュリーのUSB 3.0対応HDDクレードル「裸族のお立ち台USB3.0 (CROSU3)」を用意し、これに3.5インチHDD、2.5インチSSDを取り付け、転送速度を計測した。用意したドライブは、3.5インチHDDがSeagateの「Barracuda 7200.11」(容量1TB)、SSDがIntelの「X25-M Mainstream SATA SSD」(MLC SSD、容量160GB)と「X25-E Extreme SATA SSD」(SLC SSD、容量32GB)の計3種類で、速度の検証にはCrystalDiskMark 3.0を利用した。また、比較用として、ツライチUSB3.0 Expressと、バッファローのExpressCard「IFC-EC2U3/UC」を利用した場合の結果、デスクトップPCのSATAコネクタに接続して測定した結果も加えてある。詳しいテスト環境は下に示したとおりだ。
テストPC | SONY VAIO Z | 自作デスクトップ |
CPU | Core i7-620M | Core i5-750 |
メモリ | 4GB | |
チップセット | Intel HM55 Express | Intel P55 Express |
GPU | CPU内蔵 | Radeon HD 4670 |
OS | Windows 7 Professional 64bit | Windows 7 Ultimate |
USB 3.0クレードル | センチュリー 裸族のお立ち台USB3.0 | |
3.5インチHDD | Barracuda 7200.11 ST31000340AS | |
2.5インチSSD | Intel X25-E Extreme、Intel X25-M Mainstream |
結果を見ると、同じホストコントローラを採用していることもあり、速度の差はほとんど見られない。シーケンシャルリードは、HDDではSATA接続時とほぼ同等の速度が発揮されているが、SSD接続時には120MB/secほどで頭打ちとなっている。また、シーケンシャルライトはHDD、SSDともに75MB/secほどで頭打ちとなっている。やはり、他の製品と同じように、HDDやSSDの速度をフルに発揮させることは不可能のようだ。
この原因は、やはり今回テストに利用したVAIO Zに用意されているExpressCard/34スロットが、PCI Express Gen1ベースであるため、と考えていいだろう。こちらで紹介しているように、PCI Express x1仕様のUSB 3.0拡張カードを、PCI Express Gen1スロットに取り付けて利用した場合、データ転送速度が大きく落ちてしまう状況と全く同じだ。今回取り上げた製品は、基本的にPCI Express Gen2ベースのExpressCardに対応しているため、そういったスロットに取り付ければ、より高速なデータ転送速度が発揮されると思われる。
ただ、現時点では、ExpressCardタイプのUSB 3.0拡張カードでは、HDDやSSDの速度をフルに引き出せない可能性が高いという点は、あらかじめ頭に入れておく必要があるだろう。ちなみに、ExpressCard Gen2スロットを持つノートPCが手元にないため、確認できないが、将来、ExpressCard Gen2スロットを持つノートPCを試用する機会があれば、その時に改めてどの程度の速度が発揮されるのかチェックしてみたいと思う。
もちろん、フルに速度が発揮されないとはいえ、リード120MB/secほど、ライト75MB/secほどの速度が発揮されており、USB 2.0経由と比較すると圧倒的に高速であることは間違いない。ややカードに厚みがあり、スロットへの抜き差しがやりにくく感じる場合がある点は気になるが、スロットから出っ張りが一切なく、標準のUSB 3.0 Aコネクタが用意されているため、変換コネクタを利用せずUSB機器を接続して利用できる利便性を考えると、現時点で最も魅力のあるExpressCardタイプのUSB 3.0拡張カードと言っていい。
(2010年 5月 18日)