平澤寿康の周辺機器レビュー

エアリア「ツライチUSB3.0 Express」
~突起部のないExpressCard/34仕様USB 3.0カード



エアリア「ツライチUSB3.0 Express」

発売中
価格:オープンプライス



 周辺機器メーカーのエアリアから、ノートPC向けExpressCard/34仕様のUSB 3.0拡張カード「ツライチUSB3.0 Express」が登場した。ExpressCard仕様のUSB 3.0拡張カードは、既にさまざまなメーカーから登場済みだが、今回登場したツライチUSB3.0 Expressは、名前通り、ノートPCのExpressCardスロットから突起部が出っ張らない“ツライチ”設計となっている点が大きな特徴だ。今回、実際に製品を入手したので、仕様面やパフォーマンスなどをチェックしたいと思う。

●USB 3.0 Micro Bコネクタ採用で出っ張り解消

 現在市販されている、一般的なExpressCard仕様USB 3.0拡張カードは、通常の大きさのUSB 3.0 Aコネクタを搭載し、カード端に大きな突起部のある製品がほとんどとなっている。スロット側面から大きく突き出るのは、見た目にあまり美しくないし、なによりノートPCの機動性が大きく損なわれてしまう。

【お詫びと訂正】初出時に、厚さ5mmのExpressCardに、USB 3.0 Aコネクタを取り付けるのは不可能としておりましたが、一部にそういった製品が存在します。お詫びして訂正させていただきます。

 そういった中登場した、エアリアの「ツライチUSB3.0 Express」は、非常に小型のコネクタであるUSB 3.0 Micro Bコネクタを採用することによって、カード側面の突起を解消しているのが大きな特徴だ。これによって、ExpressCardスロットに取り付けたままでも、その存在を気にすることなくノートPCの利用や持ち運びが可能となるわけだ。

カード形状は、ExpressCard/34USB 3.0 Micro Bコネクタの採用により、突起部の解消を実現USB 3.0対応周辺機器の接続には、付属のUSB 3.0 Micro B-USB 3.0 A変換ケーブルを利用する
こちらのコネクタをカード側に接続周辺機器からのケーブルはこちらに接続するExpressCard/34・54どちらのスロットでも利用可能だ

 実際に手持ちのノートPC(ソニーVAIO Z)に取り付けてみたところ、ExpressCardスロットからわずかながらカード端が飛び出した。しかし、これはVAIO ZのExpressCardスロットの奥行きがやや短いためだ。ツライチUSB3.0 Expressのカード長は75mmと、ExpressCardの仕様と同じ。つまり、一般的なノートPCに用意されているExpressCardスロットであれば、カード端が飛び出すことは一切ないと考えていい。

 ただし、USB 3.0 Micro Bコネクタは本来、クライアント側に用意されるコネクタだ。そのため、利用するにあたっては、USB 3.0 Aコネクタに変換する必要がある。そのため、ツライチUSB3.0 Expressには、変換ケーブルが付属している。USB 3.0対応周辺機器を利用する場合には、このケーブルが不可欠となるため、使い勝手は多少犠牲になっている。とはいえ、大きな突起部が全く存在しないという点は、この欠点を補ってあまりある利点であり、十分我慢できる範囲内だろう。

 搭載されているUSB 3.0ホストコントローラは、その他のUSB 3.0拡張カードでも広く採用されている、NECエレクトロニクスの「μPD720200」だ。製品形状こそ特殊だが、ハードウェアの仕様は一般的なUSB 3.0拡張カードと大きな違いは無いと考えられる。ただし、ポートからのバスパワー出力は約300mAと、USB 3.0で規定されている900mAよりかなり低くなっている。そのため、比較的大電流を必要とする周辺機器は、バスパワーで正常に動作しない可能性が高い。実際に、筆者が利用しているバスパワー動作対応の2.5インチ外付けHDDは動作しなかった。ただし、この点は他のExpressCard仕様USB 3.0拡張カードもほぼ同様だ。

VAIO ZのExpressCardスロットは若干奥行きが短いためカード端がやや飛び出すが、通常ExpressCardスロットではカード端が飛び出すことはない利用時には、このように変換ケーブルを介してUSB 3.0周辺機器を接続することになる

●速度はやや遅いが、USB 2.0比では圧倒的に高速
テストには、3.5インチHDDと2種類のSSDを用意し、センチュリーのUSB 3.0クレードル「裸族のお立ち台USB3.0」を利用して検証を行なった

 では、速度をチェックしていこう。今回は、接続するUSB 3.0機器として、センチュリーのUSB 3.0対応HDDクレードル「裸族のお立ち台USB3.0(CROSU3)」を用意し、これに3.5インチHDD、2.5インチSSDを取り付け、転送速度を計測した。用意したドライブは、3.5インチHDDがSeagateの「Barracuda 7200.11」(容量1TB)、SSDがIntelの「X25-M Mainstream SATA SSD」(MLC SSD、容量160GB)と「X25-E Extreme SATA SSD」(SLC SSD、容量32GB)の3種類で、速度の検証にはCrystalDiskMark 3.0を利用した。また、比較として、各ドライブをデスクトップPCのSATAコネクタに接続して測定した結果も加えてある。詳しいテスト環境は下に示したとおりである。

【表】テスト環境

VAIO ZデスクトップPC
CPUCore i7-620MCore i5-750
メモリ4GBPC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2
チップセットIntel HM55 ExpressIntel P55 Express
OSWindows 7 Professional 64bitWindows 7 Ultimate

 まず、3.5インチHDDの結果を見ると、シーケンシャルリードは111MB/secと、SATA接続時とほぼ同等の速度が発揮されている。しかし、シーケンシャルライトは73MB/secと、かなり速度が落ちている。もちろん、USB 2.0接続時に比べると圧倒的に高速であり、これだけの速度が発揮されていれば、利用時に遅いと感じることはまず無いと思われるが、HDDが持つ本来の速度がフルに引き出せていないことが分かる。

 SSDでは、HDD以上に速度が引き出せていない。今回利用したSSDは、SATA接続時には双方ともシーケンシャルリードが260MB/secオーバーと非常に高速なのだが、ツライチUSB3.0 Express接続時には双方とも122MB/secほどしか速度が出ていない。シーケンシャルライトも、X25-Eが75MB/sec、X25-Mが59MB/secと、SATA接続時の速度に遠く及ばない。どうやら、ツライチUSB3.0 Express経由では、シーケンシャルライトが122MB/sec前後、シーケンシャルライトが75MB/sec前後が実効的な限界のようだ。

 参考までに、裸族のお立ち台USB3.0を、デスクトップPCでASUSTeK製USB 3.0拡張カード「U3S6」に接続し、同様のテストを行なってみたところ、HDDではリード/ライトともSATA接続時とほぼ同等、SSDではSATA接続時より劣ってはいるものの、ツライチUSB3.0 Express接続時よりも高速な結果が得られた。この結果から、VAIO ZのExpressCardスロットがPCI Express Gen1仕様であることがボトルネックとなり、速度が出なかったようだ。ただ、ExpressCard Gen1でも、データ転送速度の理論値は2.5Gbpsであり、もっと速度が出てもおかしくないため、これ以外にも何らかのボトルネックが存在する可能性も十分考えられる。

HDD+ツライチUSB3.0 ExpressHDD+USB 2.0HDD+デスクトップSATAHDD+U3S6
X25-M+ツライチUSB3.0 ExpressX25-M+USB 2.0X25-M+デスクトップSATAX25-M+U3S6
X25-E+ツライチUSB3.0 ExpressX25-E+USB 2.0X25-E+デスクトップSATAX25-E+U3S6

 USB 3.0は、ホストコントローラやクライアント側のUSB 3.0-SATAブリッジチップなど、まだどれも第1世代のものばかりで、成熟度が低い。そのため現状では、利用する機器の組み合わせによっては、本来の速度が発揮されない場合があるというのも不思議ではない。

 ただし、逆に言うと、ファームウェアやドライバの更新によって、ツライチUSB3.0 Express経由でも速度が改善される可能性は十分考えられる。

 そして、現時点でもUSB 2.0経由より圧倒的に高速なのは間違いなく、そのメリットは十分に享受できる。スロットからカードが出っ張らず、取り付けたままでも持ち歩きに支障が出ないという点もあわせ、ノートPCに手軽にUSB 3.0を拡張する手段として、ツライチUSB3.0 Expressは十分に魅力のある存在と言っていいだろう。

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(2010年 4月 22日)

[Text by 平澤 寿康]