平澤寿康の周辺機器レビュー

USB 3.0拡張カードや周辺機器の違いで速度の差があるのか試す




 今年に入り、USB 3.0対応周辺機器の充実度が高まるとともに、マザーボードへのUSB 3.0コントローラの搭載が進みつつあることから、徐々に注目度が高まっている。USB 3.0拡張カードや対応周辺機器の価格下落も手伝い、そろそろ導入してみようと思っている人も少なくないはずだ。そこでそこで今回は、市販されているUSB 3.0拡張カードやUSB 3.0対応周辺機器をいくつか集め、速度面を中心にチェックしてみることにした。

●今回用意した拡張カードと周辺機器

 USB 3.0は、ケーブル1本でPCに簡単に接続できるという優れた利便性、USB 2.0など従来の規格との互換性を保ったまま、最大5Gbpsと非常に高速なデータ転送速度を実現している点が大きな特徴だ。当然ユーザー側も、USB 3.0に対しては、HDDやSSDを手軽に接続し、高速にデータ転送が行なえるという点に期待している人が多いはずだ。そのため、現在発売されているUSB 3.0対応機器は、その高速性を活かすため、外付けHDDやSSDといったストレージデバイスがほとんどとなっている。また、自作ユーザー向けとしても、HDDやSSDを接続するためのストレージケースやSATA-USB 3.0変換アダプタなどが中心だ。

 ただ、そういったストレージケースやSATA-USB 3.0変換アダプタなどは、登場当初はUSB 2.0対応製品に比べてかなり高価だったことと、PC側のUSB 3.0への対応がまだほとんど進んでいないこともあって、購入を躊躇している人も少なくなかった。しかし、最近では製品数が増えるにつれ、販売価格もかなり下落してきている。

 USB 3.0拡張カードは実売価格が4,000円前後の製品が中心だが、中には3,000円前後で購入できるものある。またUSB 3.0対応周辺機器も、2,000円台で購入できる安価な製品が登場してきている。今回は取り上げていないが、USB 3.0拡張カードとUSB 3.0対応HDDケースのセットで4,000円台で販売されている製品もあり、導入へのハードルはかなり下がってきたと言っていいだろう。

 今回用意した周辺機器は、USB 3.0拡張カードが3枚、USB 3.0対応周辺機器が5種類だ。このうち、USB 3.0対応周辺機器については、基本的には自分でHDDなどを取り付けて利用する、HDDケースやSATA-USB 3.0変換アダプタを中心に揃えた。

 まず、USB 3.0拡張カードは、ASUSの「U3S6」、玄人志向の「USB3.0N3-PCIe」、システムトークスの「SUGOI USB3.0 USB3-PE5G2P」の3製品だ。U3S6は、USB 3.0に加えSATA 3.0コントローラを同時搭載するとともに、接続インターフェイスがPCI Express x4という点が大きな特徴となっている。それに対し、USB3.0N3-PCIeとSUGOI USB3.0は、接続インターフェイスがPCI Express x1(Gen2対応)の、オーソドックスなUSB 3.0拡張カードとなっている。採用されているUSB 3.0コントローラは、3製品ともルネサスエレクトロニクス(旧NECエレクトロニクス)の「μPD720200」だ。

ASUS 「U3S6」。USB 3.0およびSATA 3.0双方を拡張するカードだ。接続インターフェイスはPCI Express x4だUSB 3.0ホストコントローラは、ルネサスエレクトロニクスの「μPD720200」を採用する
玄人志向 「USB3.0N3-PCIe」。シンプルなUSB 3.0拡張カードだ。接続インターフェイスはPCI Express x1で、Gen2対応だUSB 3.0ホストコントローラは、U3S6同様、ルネサスエレクトロニクスの「μPD720200」を採用する
システムトークス 「USB3-PE5G2P」。USB3.0N3-PCIeと同様、Low Profileにも対応。接続インターフェイスはPCI Express x1で、Gen2対応だこちらも、USB 3.0ホストコントローラにルネサスエレクトロニクスの「μPD720200」が採用されている

 次に、USB 3.0対応周辺機器だ。こちらは、はじめからHDDを内蔵する、USB 3.0対応外付けHDDなどの製品ではなく、自分でHDDやSSDを取り付けて利用するものを用意した。玄人志向の3.5インチHDDケース「GW3.5AI-SU3/SW」、DECAの2.5インチHDDケース「DHC-25U3BK」、センチュリーの3.5/2.5インチHDD対応クレードル「CROSU3」、タイムリーのSATA-USB 3.0変換アダプタ「UD-3000SA」の4製品だ。3.5インチHDDケース、2.5インチHDDケースなど、仕様は異なっているが、基本的にはSATAをUSB 3.0に変換するためのものと考えていい。

玄人志向のUSB 3.0対応3.5インチHDDケース「GW3.5AI-SU3/SW」。3,000円前後と安価に購入できる点が嬉しいインターフェイス部分を取り出し、SATA仕様の3.5インチHDDを取り付けて利用するSATA-USB 3.0変換ブリッジチップは、ASMedia Technologyの「ASM1051」が採用されている
DECAが発売する、USB 3.0対応2.5インチHDDケース「DHC-25U3BK」。バスパワー駆動に対応。ACアダプタのかわりに、補助USB電源ケーブルが付属している2.5インチHDDやSSDを取り付けて利用するSATA-USB 3.0変換ブリッジチップは、玄人志向のGW3.5AI-SU3/SWと同じ、ASMedia Technologyの「ASM1051」が採用されている
センチュリーのHDDクレードル「裸族のお立ち台USB3.0 CROSU3」。従来の裸族のお立ち台シリーズ同様、ベアドライブを直接突き刺して利用する3.5インチHDDおよび2.5インチHDD/SSDが利用可能だSATA-USB 3.0変換ブリッジチップは、LucidPort Technologyの「USB300REV2」が採用されている
タイムリーのSATA-USB 3.0変換アダプタ「UD-3000SA」。バスパワー駆動には非対応だストレージデバイスのSATAコネクタに直接取り付けて利用する。3.5/2.5インチドライブ双方に対応するSATA-USB 3.0変換ブリッジチップは、富士通の「MB86C30 1B」が採用されている
バッファローコクヨサプライの4ポートUSB 3.0 Hub「BSH4A03U3」。セルフパワー、バスパワーどちらでも利用可能だ

 また、Hub経由での動作もチェックするため、バッファローコクヨサプライのUSB 3.0 Hub「BSH4A03U3」も用意した。


●拡張カードの違いによる速度差をチェック

 まず初めに、拡張カードの違いによる速度差があるのかチェックしていこう。今回用意したUSB 3.0拡張カードは、全て同じコントローラを搭載しており、デバイスドライバも全製品同じものであったため、基本的に速度差は出ないものと考えられる。ただ、U3S6がPCI Express x4接続であるのに対し、USB3.0N3-PCIeとUSB3-PE5G2PはPCI Express x1接続と、接続インターフェイスの違いもあるため、念のためチェックしてみることにした。

 また、PCI Express x1接続の2製品については、PCI Express Gen1対応スロットとPCI Express Gen2対応スロットに取り付け、速度をチェックしてみた。速度チェックには、3.5インチHDDとSSD2種類を用意し、CROSU3経由で接続し、CrystalDiskMark 3.0を利用して速度を計測した。利用した機材と、テストに利用したPCの環境は下に示したとおりだ。

・テスト環境
CPU:Core i5 750
マザーボード:Intel DP55KG
メモリ:PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2
グラフィックカード:Radeon HD 4670
HDD:Western Digital WD3200AAKS(OS導入用)
OS:Windows 7 Ultimate
テスト用HDD:Seagate Barracuda 7200.11 ST3100340AS(1TB)
テスト用SSD:Intel SSDSA2SH032G1GC(32GB SLC)
       Intel SSDSA2M160G2GC(160GB MLC)

 まずHDDの結果を見ると、マザーボードのSATAポートに接続した場合とほぼ同等の速度が引き出されていることがわかる。また、拡張カードごとの速度差も全くといっていいほど見られない。今回利用した3.5インチHDDは、現時点で最も高速なデータ転送速度を誇るものではないが、それでも3.5インチHDDであれば、USB 3.0経由でもデータ転送速度をほぼ最大限に引き出せると考えて良さそうだ。

・HDDによる接続

SATA接続の結果SUGOI USB3.0 USB3-PE5G2PをGen1で接続した場合の結果SUGOI USB3.0 USB3-PE5G2PをGen2で接続した場合の結果
U3S6の結果USB3.0N3-PCIeをGen1で接続した場合の結果USB3.0N3-PCIeをGen2で接続した場合の結果

 ただし、それはUSB 3.0拡張カードをPCI Express Gen2スロットに取り付けた場合に限ってのこと。結果を見るとわかるように、PCI Express Gen1スロットに取り付けた場合には、書き込み速度が大きく落ち込んでいる。これでもUSB 2.0接続よりは圧倒的に高速であることは間違いないが、取り付けるPCI Expressスロットが異なるだけでこれだけの速度差が出ることを考えると、当然無視はできない。USB 3.0拡張カードは、できる限りPCI Express Gen2スロットに取り付けて利用するべきと考えた方がいいだろう。

 次にSSDだが、拡張カードの違いによる速度差は、ほぼ誤差の範囲内に収まっているが、SATA接続時の速度が引き出されていないことがわかる。今回は、速度の異なる2種類のSSDを利用して検証したが、どちらも読み出し・書き込みともにSATA接続時よりも速度が遅くなっている。理論値とはいえ、USB 3.0のデータ転送速度は最大5Gbpsであることを考えると、今回利用したSSDの速度がフルに引き出せてもおかしくないはずだ。また、読み出し速度は、どちらのSSDでも190MB/sec弱で並んでいる。この結果から考えると、拡張カード側に搭載されるUSB 3.0ホストコントローラ、または周辺機器側に搭載されるSATA-USB 3.0変換ブリッジチップのどちらかが、読み出しが190MB/secほど、書き込みが120MB/secほどが速度の上限となっているのだろう。

・Intel製MLC SSDによる接続

SATA接続の結果SUGOI USB3.0 USB3-PE5G2PをGen1で接続した場合の結果SUGOI USB3.0 USB3-PE5G2PをGen2で接続した場合の結果
U3S6の結果USB3.0N3-PCIeをGen1で接続した場合の結果USB3.0N3-PCIeをGen2で接続した場合の結果

・Intel製SLC SSDによる接続

SATA接続の結果SUGOI USB3.0 USB3-PE5G2PをGen1で接続した場合の結果SUGOI USB3.0 USB3-PE5G2PをGen2で接続した場合の結果
U3S6の結果USB3.0N3-PCIeをGen1で接続した場合の結果USB3.0N3-PCIeをGen2で接続した場合の結果

 ちなみに、以前バッファローのUSB 3.0製品の開発担当者から、USB 3.0経由でHDDやSSDを接続する場合、速度を引き出すためには、ファームウェアやドライバを接続デバイスに合わせて調整する必要があるということを聞いた。このことから、今回利用したHDDケースやSATA-USB 3.0変換アダプタのように、汎用性を求められる製品では、接続デバイスに合わせた細かな調整を行なうことが難しく、速度が引き出せていない可能性もある。そういった意味では、今後ファームウェアやドライバの更新などにより、速度が改善される可能性も十分に考えられる。

 ちなみに、HDDの場合と同様に、PCI Express Gen1スロットに取り付けた場合には、速度が大きく損なわれている。この結果からも、やはりPCI Express Gen2スロットに取り付けて利用するべきだろう。

●周辺機器の違いによる速度差をチェック

 次に、周辺機器の違いによる速度差があるのかチェックしてみた。こちらは、USB 3.0拡張カードにU3S6のみを利用し、用意したUSB 3.0対応周辺機器にHDDおよびSSDを接続し、CrystalDiskMark 3.0を利用して速度を計測した。テスト環境や利用したHDDおよびSSDは先ほどと同じだ。ただし、2.5インチHDDケースのDHC-25U3BKでは、物理的に3.5インチHDDを取り付けられないため、SSD2種類のみの速度を計測した。

・DHC-25U3BK

Intel製MLC SSDによる接続Intel製SLC SSDによる接続

・UD-3000SAS

HDDによる接続Intel製MLC SSDによる接続Intel製SLC SSDによる接続

・GW3.5AI-SU3/SW

HDDによる接続Intel製MLC SSDによる接続Intel製SLC SSDによる接続

・裸族のお立ち台

HDDによる接続Intel製MLC SSDによる接続Intel製SLC SSDによる接続

 結果を見ると、周辺機器の違いによる速度差はほとんど見られないことがわかる。今回利用した周辺機器に採用されているSATA-USB 3.0変換ブリッジチップは、GW3.5AI-SU3/SWとDHC-25U3BKがASMedia Technology製の「ASM1051」、CROSU3がLucidPort Technology製の「USB300REV2」、UD-3000SAが富士通製の「MB86C30 1B」と、製品によって異なっているが、速度差は誤差と言っていいほどの範囲中に収まっている。この結果を見る限りでは、現在発売されているUSB 3.0周辺機器に関しては、製品ごとの速度差はほぼないと考えて良さそうだ。

 最後に、USB 3.0 Hubを経由して接続した場合の速度もチェックしてみた(単体接続時はCROSU3を利用、同時接続時はCROUS3、DHC-25U3BK、UD3000SAを利用して接続)。結果を見ると、HDDやSSDを単体で接続している状態であれば、Hub経由でもしっかり速度が出ていることがわかる。ただし、HDDと2台のSSDを同時に接続して、同時にCrystalDiskMark 3.0を実行させた場合には、さすがに速度が落ちている。とはいえ、その場合でもリードで120MB/sec前後、ライトで80~90MB/sec前後と、なかなかの速度が出ており、Hubを利用して複数のUSB 3.0周辺機器を接続し、それぞれに同時にアクセスしたとしても、十分快適な速度が発揮されると考えていいだろう。

HDDをHub経由で接続した場合Intel MLC SSDをHub経由で接続した場合
Intel SLC SSDをHub経由で接続した場合3台同時接続

●大容量データを扱う機会が多いなら、すぐにでも導入したい

 今回、USB 3.0拡張カードやUSB 3.0対応周辺機器を集めて速度をチェックしてみたが、SSD接続時には、SSDが持つデータ転送速度をフルに引き出せない場合があるものの、HDDではほぼ最大限の速度が引き出せることがわかった。

 もちろん、速度だけに注目するのであれば、現時点ではまだeSATAの方が有利だろう。しかし、従来のUSB機器と全く同じ、ケーブル1本で接続するだけですぐに利用できる点や、USB 2.0などの従来のUSBポートに接続しても(速度は遅くなるが)問題なく利用できる点など、使い勝手も考慮するなら、USB 3.0の方が圧倒的に魅力がある。しかも、将来チップセットにUSB 3.0が統合されることも間違いなく、将来性も問題がない。価格がこなれてきたことも合わせ、現時点で導入する価値は十分にあるだろう。特に、複数のPC間で大容量データのやりとりを行なうことが多いなら、今すぐにでも導入することをおすすめしたい。

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(2010年 5月 10日)

[Text by 平澤 寿康]