大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

デル、個人向けPCサポートを宮崎カスタマーセンターに移行
~まずはAlienware、XPSを対象に



 デルは、一部個人向けPCのテクニカルサポートを、宮崎県宮崎市の「デル宮崎カスタマーセンター」に移管した。

 これまでコンシューマ向け製品のサポートは、中国・大連のカスタマーセンターで行なっていたが、8月から宮崎でハイエンドコンシューマ製品である「Alienware」や「XPS」のサポートを開始したのを皮切りに、秋にはコンシューマ領域のサポートを拡大。デルヘルプデスクメニューに対応したコンシューマ向けアプリケーションソフトなどもサポート対象に加える。

デル ジャパンサービス統括本部 宮崎カスタマーセンターテクニカルサポート本部の角昭雄本部長

 「これまでデルは、価格やコストを優先する傾向が強かったが、まずは品質ありきという大きな方向転換を行なった。品質の面で競合に負けるようでは生き残れない。個人向け製品のサポートを宮崎カスタマーセンターに移管することで、コストがあがっても品質にフォーカスしていく姿勢をとった」(デル ジャパンサービス統括本部 宮崎カスタマーセンターテクニカルサポート本部の角昭雄本部長)とした。

 ハイエンドコンシューマユーザーが求める問い合わせの技術的レベルが高いこと、コール数のボリュームがまだ少ないことなどから、まずは「Alienware」と「XPS」を移管した。

 Inspironなどのコンシューマユーザーへの対応は、当面の間は引き続き、大連のカスタマーセンターで対応することになるが、将来的には宮崎カスタマーセンターに移管することも検討していくことになりそうだ。

2010年8月から開始したAlienwareのサポート部門。デル宮崎カスタマーセンターの5階フロアに新設した
XPSのサポートも開始。実機が置かれているサポート部門に置かれたAlienware

 宮崎カスタマーセンターのコンシューマ向けサポートは、8月から約20人体制でスタート。2010年内には50人体制にまで拡充する。

 同社が委託している第三者機関による調査では、顧客満足度指標が90%を超えているデルのサポート拠点は世界に2カ所しかなく、デル宮崎カスタマーセンターはそのうちの1つ。一方で、中国・大連のカスタマーセンターは、約9割が日本語を話す中国人オペレーターによる電話対応となっており、顧客満足度が80%を切る状況にあった。宮崎カスタマーセンターの顧客満足度の高さを生かして、個人向けPCの販売強化を後方支援することになる。

 さらに、「企業ユーザーについても、自宅に帰れば個人ユーザー。その際に、顧客満足度が低いと、法人向けビジネスにも影響を及ぼしていまうというような声が出ている。個人ユーザーの満足度を高めることは、結果として、法人向けビジネスにもプラスになると考えている」(デル宮崎カスタマーセンター長兼スモール&ミディアムビジネスセールス本部長の小林治郎氏)という。

デル宮崎カスタマーセンター長兼スモール&ミディアムビジネスセールス本部長の小林治郎氏2008年10月以降、90%以上の顧客満足度を維持しているデル宮崎カスタマーセンターの概要
企業向けPCおよびサーバーを対象にテクニカルサポートを行なう中小企業向けのコンサルティングセールスも行なう

 一方、サーバー、ストレージのサポートについても、2010年9月から24時間365日対応を図る。

 「デルはハードベンダーからソリューションベンダーへと脱皮を図る中で、宮崎カスタマーセンターの役割は極めて重要になる。安心できるサポート体制の構築がソリューション提案を加速する上でも鍵になる」と、小林センター長は語る。

 宮崎カスタマーセンターは、2005年11月に開設されたカスタマーサポートおよび中小企業向けのテレセールス拠点。勤務する約530人のほとんどが、同社正社員であるのも特徴で、これが質の高いサポート品質の維持に大きく影響している。デル日本法人の正社員は約1,500人であり、実に3分の1以上が宮崎カスタマーセンターに勤務していることになる。

 JR宮崎駅や宮崎県庁からも徒歩圏内にあるショッピングセンター「カリーノ宮崎」の4~6階までの3フロア、約6,000平方mを使用。「法人顧客のサポートをしっかりと行なうことを目的に、川崎に次いで2番目のサポート拠点として設置。現在、日本のユーザーに対しては、川崎、宮崎、中国・大連の3カ所から対応しているが、全世界に約60近いテクニカルサポート拠点において、最も高い顧客満足度を得ているのが宮崎カスタマーセンター。また、日経マーケット・アクセスでは、価格、性能とともに、サポート/サービスでも首位となったが、サポート/サービスの評価は、まさに宮崎カスタマーセンターの実績が評価されたものだと自負している」(小林センター長)とした。

ショッピングセンター「カリーノ宮崎」の4~6階にあるデル宮崎カスタマーセンターデル宮崎カスタマーセンターの受付
ショッピングセンターの中にあるため、階段はまさにショッビングセンターの規模一歩入るとショッピングセンターとは思えない雰囲気
休憩スペース。くつろげるスペースはカスタマーセンターでは重要な役割を果たすまだ空きスペースもあり、業務の拡大にあわせて増員ができる

 宮崎カスタマーセンターは、当初は100人体制でスタート。現在、530人の社員のうち大半が地元の宮崎県での採用。主な業務は、テクニカルサポート本部による企業向けサポート、スモール&ミディアムビジネスセールス本部による中小企業向けコンサルティング営業となる。

 4階、5階フロアで約300人が勤務する企業向けテクニカルサポートでは、日本における法人からの電話の問い合わせのほとんどを対応。同社の企業向けPCであるOptiplex、Latitude、Vostroといった製品、サーバーのPowerEdge、ワークステーションのPrecisionなどがサポート対象となっている。

 電子メールやチャットでも対応しているが、90%以上は電話によるサポートとなっている。

テクニカルサポート部門の検証室。ちょうどサーバーの検証を行なっていた
4階のテクニカルサポート部門。こちらはクライアントPCのテクニカルサポートこちらは電子メールやチャットでサポートする部門

 角本部長は、「顧客満足度の評価では、2008年10月以降、90%以上の高い率を維持し続けている。情報システム部門を有している大手企業に対しては技術的な回答で対応するが、中小企業は専門的な知識を持たない場合が多いため、じっくりとした説明できる体制を取っている」とする。

 一方、6階フロアの中小企業向け営業では、200人が勤務。電話によるコンサルティング営業を行なっている。

 「宮崎カスタマーセンターは、デルの日本における中小企業向けセールスの主要拠点。この領域は、成長ギアが入っている状況にあり、毎年10~20人規模で増員を続けていきたい。ここにきて、技術営業およびアカウント営業部門を拡大している」とする。

デルのテクニカルサポート拠点として世界1位の顧客満足度を達成したことなどを表示センター内には現在の対応状況などを表示する電光掲示板も設置オペレータ個人がそれぞれに自らの目標を張り出す

 中でも同センターで強化しているのが、営業とテクニカルサポートとの連携。「テクニカルサポート部門は、お客様が困っていることを最初に知る立場にある。営業とテクニカルサポートの連携によって、課題に対して迅速な対応を行なうことが可能になるほか、より顧客満足度を高めることができる」(角本部長)としている。

 宮崎カスタマーセンターの稼働時には、最大で1,000人規模の人員を収容できるとしており、現状のままでも、700人以上の収容が可能と見られる。

5階の中小企業向けのテクニカルサポート部門。Vostroシリーズなどを担当6階の中小企業向けコンサルティングセールス部門
公共部門向けコンサルティングセールス部門コンサルティングセールス部門の標準的なデスクの様子

 小林センター長は、「リーマンショックの影響もあり、デル全体としては一時的に人員削減を行なったが、宮崎カスタマーセンターの人員は常に増え続けている。今後は、営業体制の拡充や、テクニカルサポートの強化、コンシューマ向けPCのサポート対象の拡大や、大手企業からアウトソーシングを受けて展開するヘルプデスク機能の強化などにあわせて、陣容を着実に拡大していきたい。5年後には、少なくても700人以上の陣容には拡大したい」などとした。

 なお、宮崎カスタマーセンターは、2010年11月には設立5周年を迎えるが、社内イベントを含めて何かしらの取り組みを考えたいとしている。