■山田祥平のRe:config.sys■
今の時代、いつでもどこでも高速にインターネットを使えるというのは、とても重要なことだ。日本においてはあまり困らないが、ちょっと海外に出たとたん、ネットワーク事情は一変し、さまざまな不便につきあたる。
●新しいiPad購入で本場のおもてなし体験日本を含む各国で新しいiPadが発売されたのは3月16日のことで、すでに3カ月以上が経過しているが、ずっと買うのをガマンしてきた。iPad 2は購入をパスしたため、できるだけ早く入手したかったのだが、どうしても、SIMロックフリーのiPadが欲しかったからだ。初代iPadはWi-Fiモデルを選んでしまい、GPSがついていないことで悲しい思いをいろいろしたから、今回は、どうしても、単体でWAN接続ができるiPadにしたいと思っていた。
ちょうど、6月25日から米サンフランシスコで開催されたGoogle I/Oのために渡米することになっていたので、そのときに購入しようとたくらんでいた。そして、サンフランシスコに到着した翌日、ホテルのそばにあるApple Storeに赴いた。
店員にVerizon版新しいiPadの64GB版のホワイトモデルが欲しいと告げると、すぐに在庫が確認され、パッケージを手にすることができた。このあたりは渋谷や銀座のアップルストアで購入するのとなんら違いはない。
クレジットカードを出して決済ができたところで、アクティベートなどはどうするか、ここでサポートもできるがというので、せっかくだから、本場西海岸のアップルのおもてなしを体験しようと思い、お願いすることにした。接続におけるいくつかのトラブルも聞いていたので、とにかくつながるところまでここでやっておくのが賢明だという判断もあった。
そのまま買ったばかりのパッケージを手に、2Fに案内され、別の店員を紹介され、テーブルについた。こちらはスツールに腰掛け、向こうは傍らに立っている状態だ。
まず、小さなカッターを取り出し、パッケージを包むラップに少しだけ切れ目を入れた。その状態でパッケージを手渡される。自分で開梱しろということらしい。言われるままに、シュリンクを破り、箱を空けて新しいiPadとご対面だ。そして電源を入れると、いつものようにいつものiPadが起動した。購入したパッケージを自分自身で開梱する喜びを味わえということらしい。
最初は言語を選択する。ここでは迷わず日本語を選択した。Apple IDを持っているのかと聞くので、もちろんだと応える。画面は日本語だが、的確にメニューをたどり、各種の設定画面を呼び出すようにガイドしてくれる。少しは日本語もわかるんだというので、どんな言葉を知っているのかたずねたら「ちょっと待ってください」と流ちょうに話す。もう少し覚える言葉を選べよと苦笑した。
店内のWi-Fiに接続し、インターネットにアクセスできるようになり、メールアドレスやパスワードなどを設定したところで、メールデータがどんどん流れてきていることがわかる。ミスすることなくよどみなく設定をしていたら、IT関係者なのかと驚かれた。そういうものなのだろうか。
バックグランドでデータ転送をさせながら、いよいよモバイルデータ通信の設定だ。
●Verizon版を選んだ理由米国内で発売されている新しいiPadは、基本的にSIMロックフリーだが、AT&T版とVerizon版の2種類がある。これは添付されるSIMの違いだ。どちらかのSIMが装着されている。AT&T版を選んだ場合のネットワークはWCDMA 3Gだが、AT&Tはインターネット共有、すなわちテザリングを許可しないそうなので、ちょっとした不便がある。
一方、Verizonは、テザリングを許可する上に、しかも米国内ではLTEネットワークで高速インターネットを使える。それにVerizonを選んでも、米国外では一般的なWCDMAネットワークを使えるという。だからVerizonを選んだのだ。Verizonは、一般の携帯電話にもプリペイドのプランがなかったので、新しいiPadの登場以前には、日本でルータなどをレンタルしていくしかなかった。
用意されているプランはすべて月額の後払いで、容量ごとに料金は異なる。1GBが20ドル、2GBが30ドル、5GBが50ドル、10GBが80ドルとなっている。プラン上限を超過した場合は1GBあたり10ドルが必要だ。いったんプランを決めると、解約を明示的に宣言しない限り、月ごとに自動的にプランが更新される。
今回は、6泊8日の出張だったが、翌月にも米国出張が予定されていて、1カ月間の合計で10泊11日を米国内で過ごすことがわかっていたので5GBのプランを選ぶことにした。本当にそんなに大容量が必要なのかと、何度も念を押されたのだが、それでいいと主張した。このあたりもずいぶん親切だと思う。
申し込みには、クレジットカードが必要だ。名前はともかく、住所と電話番号をどうしようかと迷っていたら、日本からの旅行者なのだから、この店の住所と電話番号でOKだという。入力してあげようというので、お願いして入力してもらった。クレジットカードは日本発行のものだったが、それで問題なく申し込みができたようで、Wi-Fiを切断しても、インターネット接続ができることをブラウザを開いて確認してくれた。
店での手続きはここまで。いつもの白いApple袋にパッケージを入れてくれ、それでストアを後にした。
●バッテリの保ちに驚くホテルの部屋で、さっそくインターネット共有を試したのはいうまでもない。SSIDはiPadの名前がそのまま使われ、パスワードを設定するだけで、他の機器から接続してインターネットに出て行けるようになった。
サンフランシスコのような地域では、ClearのWiMAXが使えるので、WiMAX内蔵ノートPCを日本でUQと契約して使っているのなら、あちらでは無料でWiMAXを使うことができる。毎日、一度切断されて、更新が必要になるが手続きはウェブサイトのボタンを2度クリックするだけなので数十秒ですむ。WiMAXの高速ネットワークを使えれば、あまりテザリングの必要性は感じない。
ただ、さすがのWiMAXも、カンファレンス会場の奥まった部屋でセッションを聞いていたりするときにはつながらない場合もある。会場にはWi-Fiも用意されているが、遅くて使いものにならないのはいつものことだ。ちなみに今回、Googleは、会場でのWi-Fiを5GHz帯のみにすると宣言していた。
こうした場所でこそ、新しいiPadのテザリングが重宝する。そんな奥まった場所でも十分な強度で電波を拾えるVerizonはさすがだ。それにやっぱり高速だ。
しかも、新しいiPadは、異様にバッテリが保つ。本体をあまり操作することなく、手持ちのスマートフォンやらタブレットやらPCやらをつないでずっと使っていても、ほとんどバッテリが減らない。試しにと、24時間以上、そのまま放置してみたのだが、バッテリは半分どころか7割方残っていた。
Google I/Oの会期が終わり、日本に向かうためにサンフランシスコの空港に到着、使った容量を確認してみたところ、5GBのうち約2GBを消費していた。それとは別にスマートフォンではAT&Tのプリペイドプランで、1GB分を25ドルで購入してあったのだが、そちらは約450MBを消費していた。翌週の渡米は3泊なので、これだけ余っていれば、まず大丈夫だろう。
●なんちゃってXiではテザリングできずさて、帰国後、iPadに電源を入れてみると、さすがに圏外となるが、Wi-Fi経由でインターネットに接続すると、設定のモバイルネットワークで消費容量などを確認できることがわかった。次回の予定があるのでやってはいないが、ここでキャンセルすることもできるようだ。それができないと、もし、米国内で手続きを忘れて日本に戻ってきてしまったら、次回米国に行くまで解約ができず、使わないプラン料金を毎月支払うはめになってしまう。まあ、そのときは、電話をかけて口頭で解約を伝えようと高をくくっている。こうして渡米するたびに任意のプランを契約、帰国前、あるいは帰国後に解約というのを繰り返せばいいことがわかる。1週間、相当ヘビーに使っても2GBあれば十分ということもわかった。
東京の自宅で、ものは試しにと、VerizonのSIMを抜き、手元にあったXi契約のドコモのSIMを装着してみた。SPモードは機種を判断するので使えないが、ドコモのISPとしてmopera Uを契約してあるので、接続先APNにopen.mopera.netを指定すると、普通にインターネットが使えるようになった。もちろん、LTEではなく、単なる3G接続で、いわゆるなんちゃってXiである。
ところが、VerizonのSIM装着時には表示されていたインターネット共有の項目が設定メニューに見当たらない。APN指定のページでは、インターネット共有のAPNも指定しなければならないのだが、ここに正しいAPNを入力しても、次に、その設定ページを開くと消えてしまっている。
新しいiPadでは、事業者ごとにテザリングができるできないを決めることができるようで、ドコモはテザリングを禁止しているのかもしれない。AT&T版の新しいiPadと同じ状態だ。ただ、インターネットで調べてみると、ちゃんとできるという声も聞こえてくるので話はややこしい。
新しいiPadはバッテリが長持ちするかさばるルータとして使っても便利なのだが、日本国内にいる限りはWiMAXもあるし、本物Xiのスマートフォンでテザリング機能も使える。だから、特にドコモのSIMを新しいiPadに装着したときにテザリングができなくても、そう不便を感じることはないのだが、ちょっと理不尽な気持ちは残る。
この先、米国出張は来週と、9月のIDF、来年1月のCESを予定している。それぞれの渡米で新しいiPadは大いに役に立ってくれそうだ。いずれの都市もWiMAXがあるので不安はないのが、AT&Tの3Gネットワークよりも圧倒的に高速なVerizonのLTE網が使えるというのは実に心強い。