トピック
東大生AIハッカソン、Surface搭載のNPU駆使した「RealFace NPU」が優勝
- 提供:
- 日本マイクロソフト株式会社
2026年9月1日 06:30
AI処理に適したハードウェアとして知られるNPUだが、それを駆使したサードパーティアプリがなかなか増えず、いまだ恩恵を感じにくいのがユーザーとしてはもどかしいところ。しかし、その状況も早急に変わるかもしれない。
2026年7月から8月にかけて「UTokyo AIプログラミングハッカソン」が開催され、Snapdragon X2シリーズのNPUを最大限に活用した東大生による数々のアイデアが披露された。NPUの可能性と、それを搭載するCopilot+ PCのポテンシャルの大きさ・深さを感じさせるイベントとなった。
リアルタイム顔合成、テキスト編集、ジェスチャー操作など、NPUを使ったアプリが続々
「UTokyo AIプログラミングハッカソン」は、東京大学工学系研究科の池田誠教授が、授業の一環としてAIおよびNPUにフォーカスする形で開催したイベントだ。2025年10月にクアルコムジャパンと東京大学がQualcomm Academy連携協定を結んだことをきっかけに始まった両者共同の取り組みの1つで、東京大学の学部3年生から大学院生までを対象に参加者を募り、実施したものとなる。
7月4日のDay 1を皮切りに、演習や途中経過の発表を行なうDay 2、Day 3を経て、8月1日のDay 4で最終の成果発表という駆け足の日程だった。期間中、参加者には日本マイクロソフトから、QualcommのSoCである「Snapdragon」を搭載した2in1デバイスのSurface Pro (第 11 世代) – Snapdragonが貸与された。
ハッカソンでは、28名の参加者が8チームに分かれ、Surface Proが持つNPU、CPU、GPUなどハードウェアのパフォーマンスを最大限に引き出し、そのAI性能を生かせるサービスやプログラムを企画、開発した。
Day 4は成果発表のみのため、作業できるのはそれ以前の限られた日数のみ。企画・開発の進め方や技術面での相談ごとについては、クアルコムジャパンや日本マイクロソフトのメンタリングを受けることもできたが、学生らにとってはちょうどテスト期間に重なったこともあり、ハードスケジュールとなったようだ。
そうして迎えた最終日、池田教授、クアルコム、マイクロソフトの審査員から最も高い評価を受け優勝したのが、動画配信やWeb会議で自分の顔を別の顔写真を元にした映像に差し替える「RealFace NPU」だ。
生成AIによる架空の人物の映像と声による動画が巷にあふれている昨今。発表者は動画配信のハードルをAIが下げてくれるというメリットは認めつつも、「本物の人間がしゃべっていることからくる安心感は不変ではないか」と考えた。
そこで、AIを使っても「安心感を与えられるような動画を発信できれば」という思いを起点に企画したという。
具体的にはWebカメラで捉えた本人の姿から頭部を検出し、姿勢変化もリアルタイムにキャプチャ。それを事前に用意した別の顔写真にリアルタイムに差し替え、ライブ映像として出力する仕組みだ。
頭部と姿勢の検出はNPUを、顔生成周りはCPUやGPUを使うことで、クラウドには一切アクセスせずに完全ローカルAI処理を実現した。発表当日はその場でデモンストレーションも行ない、1枚の顔写真から元の表情や顔の向きに合わせて顔生成していたところに審査員の関心が集まった。
Webカメラ映像へのリアルタイム追従性については課題が残っていたものの、むしろその不完全さがライブ感を生み出す格好になった。現状のNPU性能の限界を示す一方で、将来への期待感をつのらせるものにもなっていた。
メンバーの2人は、「ここまで高く評価されるとは思っていなかった。技術的にはほかのチームに負けていたところもあると思う」と謙遜しつつ、企画時は「使ってみたい、おもしろいとみんなに感じてもらえるものを作ろうと思った」と、見た目のインパクトも重視したとのこと。
コーディングにはCopilot、Gemini、Codex、Claude Codeなどを用途に合わせて使い分け、企画から実装までトータル5日間ほどの実作業で仕上げた。「ローカルLLMが流行っているので自分でも何かやってみたいと思っていた。今回、ハイスペックなSurface Proをお借りでき、実機で動く成果物まで作れたのは大きい。今後も時間の許す限り進化させていきたいと思った」とコメント。
また、「我々理系の学生はノートPCのほかに、メモを手書きしやすいタブレットも持ち歩くことが多い。画面タッチができるSurface Proならそれが1台で済む、ということに気付けたのも収穫」とも語った。
優勝チーム以外の発表内容も、社会人向けのハッカソンとは毛色の異なるユニークなものが多くあった。
たとえば2位は、Windows上のアプリで汎用的に使える文章アシスタント「LITA」を開発したチーム。文章作成アシスタントを完全にローカルAIで実現することで、機密情報を含む文書の編集を省力化できるだけでなく、オフラインでも使えることをアピールした。
入力箇所の近くにポップアップウィンドウを表示するなどして校正や翻訳をすばやく実行したり、入力内容から先を予測して文章提案したりといった機能を備え、それらを実用できる段階まで実装していた。
3位は「AI時代のInterface」をテーマにしたチーム。マウスやキーボードからの脱却を目指し、Webカメラの前で手を動かすジェスチャーによって、あらかじめ定義した操作を行なえるようにする機能を提案した。
マウスやキーボードに代わる入力デバイスの発明は、PCの歴史の中で何度も試みられてきた。手を使ったジェスチャー操作もその1つだ。
ただ、今回発表した内容は事前のジェスチャー定義から、手の骨格および姿勢変化を認識してアクションを実行するところまで、合理的なアルゴリズムで組み立てられ、かつローカル処理ならではのレスポンスの良いスムーズなUXにまとめられていた。
NPU、CPU、GPUそれぞれが得意とする処理分野を生かした形で実装していたのも特徴的だ。手が使えない状況にある人、料理中や手が汚れやすい作業現場、医療施設、あるいは直感的な操作性を求めるCADなど、チームが意図していた特定分野の用途では、まさにマウスやキーボードの代替になりうると思えるクオリティになっていた。
Snapdragon搭載PCを使えば、高性能NPUを活用したローカルAIアプリが簡単にできる
イベントの終わりに、東京大学の池田教授と、審査員を務めたクアルコムジャパンおよび日本マイクロソフトの担当者に話をうかがうことができた。
技術選定する際の判断の仕方に、AI時代に求められるリテラシーを再確認
マイクロソフトの新郷氏が話していたように、社会課題や身近な困りごとを解決するための仕組みを率直に提案していたのは、どうしてもビジネスのことを考えがちな社会人のハッカソンとは異なる学生らしいところだと感じられた。
そして、それ以上に個人的に印象深かったのが、採用する技術の判断の仕方だ。PCとしては高性能でも、NPU単体で見れば万能なハードウェアというわけではなく、技術的制約も少なくない。必然的にCPUやGPUも組み合わせ、場合によっては一部クラウドAIを使用する場面も出てくる。
そこでどのAIモデルやアルゴリズム、ライブラリを用いるのが妥当なのか、適切に見定めるのは容易ではない。
だが、どのチームもパフォーマンスを満足させるための検証を繰り返して最適化を図っていたのはもちろんのこと、選定にあたり「商用にも対応するかどうか」といったライセンス的な側面からも慎重に判断していた様子もうかがえた。
AIコーディングでプログラミングのコストが下がり、ユーザーの望むような機能を実現するハードルは下がった。しかし、AIが既存のライブラリ・ロジックを安易に組み込んでしまい、そのまま公開したときには権利的(場合によっては法的)なトラブルに発展しないとも限らない。
AIコーディングだからこそ「動けばいい」という単純な考え方ではなく、「安心安全に使えること」も見据えた設計が重要になってくるのだろうと改めて感じたイベントだった。






























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