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求めていたのはデスクトップみたいなゲーミングノート。GeForce RTX 5080搭載でSSDも簡単増設。こういうのが欲しかった!

~ASUS「ROG Strix SCAR 16 G635LW」を徹底検証

ASUS「ROG Strix SCAR 16 G635LW」。4月9日発売予定

 ASUSが4月9日に発売するゲーミングノート「ROG Strix SCAR 16 G635LW」は、CPUにCore Ultra 9 275HX、GPUにGeForce RTX 5080 Laptop GPUを採用と、ノート向けの最新世代かつ上位クラスのモンスター級スペックを盛り込んだ1台だ。

 さらに特筆すべきこととして、SSDの交換を容易にするギミックが用意されているほか、冷却性と静音性の面でも目を見張る点があり、 “デスクトップ級”と言っても過言ではない出来 なのである。モンスターハンターワイルズといった最新作を含めた7種類のゲームタイトルを使っての検証も行なっているので、実際にどれくらいすごいのか詳しく解説していこう。

Core Ultra 9 275HXとGeForce RTX 5080の超ハイスペック仕様

 「ROG Strix SCAR」シリーズのゲーミングノートは、性能を徹底的に追求しているのが大きな特徴だ。最新の「ROG Strix SCAR 16 G635LW」においては、スペックはもちろん、冷却や演出面もこだわっており、さらなる磨きがかかっている。

見た目はスマートでも超ハイスペック
ここで紹介しているGeForce RTX 5080を搭載したモデル(型番: G635LW-U9R5080)の直販価格は59万9,800円。最上位には同5090を載せたものもある。さらに16型よりも大きな18型ディスプレイを採用した製品も用意されている

 まず、CPUには IntelのノートPC向け最新世代となる「Core Ultra 9 275HX」を搭載。 末尾の“HX”はパフォーマンス特化型を示し、この時点で高い性能が約束されている。実際に性能重視のPコアを8基、効率重視のEコアを16基で、合計24コア24スレッドのメニーコア仕様。最大5.4GHzと動作クロックも非常に高い。

 ちなみに、Core Ultra 9 275HXの上位モデルとしてCore Ultra 9 285HXも存在しているが、動作クロックが若干高いだけでコア数、スレッド数は同じ。そのため、Core Ultra 9 275HXはIntelのノートPC向けCPUとしては最上位クラスと言ってよいスペックだ。

CPUは超高性能
CPU-Zでの表示。CPUには24コア24スレッドの「Core Ultra 9 275HX」を搭載。Pコアを8基、Eコアを16基備えている

 ゲーミングノートの心臓部と言えるGPUは、 NVIDIAの最新世代にしてノート向けとしては上位クラスの「GeForce RTX 5080 Laptop GPU」を搭載。 RTX 50シリーズはAI性能を強化しているのが特徴で、前世代の同グレード「GeForce RTX 4080 Laptop GPU」のAI処理は542TOPSだったが、1,334TOPSと約2.46倍も強化されている。

 それを象徴するのが、 1フレームから最大3フレームもAIによって作り出すマルチフレーム生成を可能にした「DLSS 4」への対応 だ。対応タイトルであれば、爆発的にフレームレートを向上させられる。マルチフレーム生成にはすでに100タイトル以上が対応しており、その威力を体験できる環境が整っているのも大きなポイントだ。

GPUも最上位クラスの“5080”
GeForce RTX 5080 Laptop GPUのGPU-Zでの表示。原稿執筆時点では正式対応しておらず、一部非表示だったがブーストクロックが1,550MHzなのは確認できる

ツールレスでSSDを増設できるうれしいギミック

 ストレージはPCI Express 4.0 x4接続のNVMe SSDで大容量の1TBだ。しかもROG Strix SCAR 16 G635LWは ツールレスでM.2 SSDを増設可能 となっており、大量のゲームをインストールしたいという人も安心できる。

工具なしでカバーが外れる!
底面のロックを解除し、手前に引くだけでカバーを簡単に外せる

 底面カバーはワンタッチで取り外し可能で、M.2スロットにはフックを回転させるだけでM.2 SSDを固定できるQ-Latchシステムが搭載されている。 メモリを換装して容量アップ させることも可能。 ファンの清掃も容易 であり、ノートPCとは思えないメンテナンス性の高さは大きな魅力だ。

空きスロットにM.2 SSDを増設可能
標準でM.2スロット1基に空きがある。ファンの清掃を簡単にできるのも便利なところ
M.2 SSDをスロットに挿してフックを回すだけで固定が可能。工具は不要だ

ディスプレイはMini LED液晶で240Hz表示

 そのほか、今回試用したROG Strix SCAR 16 G635LW(型番: G635LW-U9R5080)のスペックは以下の通りだ。

【表】ASUS ROG Strix SCAR 16 G635LWの仕様
CPUCore Ultra 9 275HX(24コア24スレッド)
メモリDDR5-5600 32GB
ストレージ1TB NVMe SSD
GPUGeForce RTX 5080 Laptop GPU
ディスプレイ2,560×1,600ドット表示対応16型液晶(240Hz)
OSWindows 11 Home
インターフェイスThunderbolt 5 2基、USB 3.2 Gen 2 3基、HDMI、2.5Gbps有線LAN、Webカメラ、クアッドスピーカー、音声入出力端子
無線Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4
本体サイズ354×268×22.8~30.8mm
重量約2.85kg

 ディスプレイも注目だ。 16型液晶で解像度2,560×1,600ドットのMini LEDパネル「ROG Nebula HDR Display」を搭載 。リフレッシュレートは240Hzと非常に高く、可変リフレッシュレート(VRR)としてG-SYNCに対応する。

Mini LED採用の16型ディスプレイ
ディスプレイは16型液晶で、解像度は2,560×1,600ドット

 Mini LEDの強みは、バックライトを複数のエリアに分割して制御するローカルディミングだが、ROG Strix SCAR 16 G635LWは2,000ゾーンを超えており、きめ細かな明るさ調整を実現。輝度も1,200cd平方/mと高く、ハイレベルな黒の表現が求められるDisplayHDR 1000認証も取得しており、明暗の表現はとても美しい。

ローカルディミングを切り替え可能
ローカルディミングのオン/オフはArmoury Crateアプリで切り換えられる(ゲームや映像以外は輝度が均一のほうが使いやすいため)

 色域の広いデジタルシネマ向けの「DCI-P3」規格のカバー率100%と色の再現力も高く、ゲームや映像を快適に楽しめるのはもちろん、クリエイティブワークにも対応しやすい。

 ディスプレイ上部にはWebカメラ(207万画素)、マイクを搭載。インターフェイスは左側面に2.5Gの有線LAN、HDMI出力、USB 3.2 Gen 2、Thunderbolt 5 2基、ヘッドセット端子、右側面にUSB 3.2 Gen 2 2基を用意。ワイヤレス機能は、Wi-Fi 7とBluetooth 5.4を搭載している。

インターフェイスは十分
左側面に2.5Gの有線LAN、HDMI出力、USB 3.2 Gen 2、Thunderbolt 5 2基、ヘッドセット端子
右側面にUSB 3.2 Gen 2 2基
上部にはWebカメラとマイクも搭載
ディスプレイはここまで開く

 キーボードは日本語配列。キースイッチは2,000万回の耐久打鍵テストをクリアしたタフなもの。キーストロークは2mmだ。RGB LEDバックライトも備わっている。本体のサイズは、354×268×22.8~30.8mmで重量は約2.85kg。ACアダプタは380Wと大出力だけにサイズは大きい。

日本語配列で使いやすいキーボード
キーボードは日本語配列だ。右下にはCopilotキーも用意されている
タッチパッドは大きめ。右上の「NUMLK」をタッチするとテンキーが表示される
性能を遺憾なく発揮する大出力ACアダプタ
ACアダプタは380W出力ということもあってかなり大型だ

ゲームで性能検証!余裕たっぷりな結果に

 ここからは気になるベンチマークテストに移ろう。ROG Strix SCAR 16 G635LWは「Armoury Crate」アプリに複数の動作モードが用意されている。ここでは、最上位のターボに設定してテストを行なった。

動作モードはArmoury Crateアプリでターボに設定してベンチマークを実行した

 まずは、CGレンダリングでCPUパワーを測定する「Cinebench 2024」を試したところ、 Multi Core、Single Coreのスコアともデスクトップ向けCPUを含めてもトップクラスと言える 結果だ。24コア24スレッドのCore Ultra 9 275HXは非常に強力で、CPUパワーを求められる処理も余裕でこなせる。

ゲームタイトル7本での結果

 実ゲームに移ろう。今回はディスプレイが画面比率16:10の2,560×1,600ドットなので、それに合わせて2,560×1,600ドット、1,920×1,200ドットの2パターンでCapFrameXを使って測定。最高画質設定でレイトレーシングに対応していれば有効化している。テストしたゲームと条件は以下の通り。注目はマーベル・ライバルズ、サイバーパンク2077、アサシン クリード シャドウズだ。この3本はDLSS 4のマルチフレーム生成に対応しており、高いフレームレートが期待できる。

 サイバーパンク2077はすべての光源の経路(パス)を再現するパストレーシング、アサシン クリード シャドウズはグローバルイルミネーションと反射、それぞれ高負荷のレイトレーシング処理が入っているが、それでも2,560×1,600ドットで平均100fps以上の高いフレームレートを出している。マルチフレーム生成の威力がよく分かるポイントだ。最小(1%)のフレームレートも高く、240Hzのリフレッシュレートも相まってなめらかな描画体験を得られる。

 爆発的ヒットとなった モンスターハンターワイルズは、通常のフレーム生成にのみ対応となるが、2,560×1,600ドットで平均125.7fpsと快適にプレイが可能だ。 超重量級ゲームも高解像度かつ最高画質でプレイできる環境が整っている。

デスクトップ版GPUとの比較

 ちなみに、デスクトップ版のGeForce RTX 4070/4080と性能を比較するとどうなるのか軽く触れておこう。比較対象はCPUにCore i9-14900K、メモリがDDR5-5600 32GBの自作PCだ。

 現時点でマルチフレーム生成に対応していないモンスターハンターワイルズではデスクトップ版GeForce RTX 4070よりもちょっと性能は上、同RTX 4080には及ばないというところ。

 その一方で、 マルチフレーム生成に対応するアサシン クリード シャドウズではデスクトップ版GeForce RTX 4080を上回るフレームレートを出した。 CUDAコア数が2,000基以上も上回るGeForce RTX 4080に勝てるのは素直にすごい。マルチフレーム生成の対応ゲームが増えてくれば、ROG Strix SCAR 16 G635LWの優位性はますます高まるだろう。

システム全体の消費電力

 続いて、システム全体の消費電力を測定してみよう。OS起動10分後をアイドル時、Cinebench 2024実行時の最大値とサイバーパンク2077実行時の最大値を測定した。電力計にはラトックシステムの「REX-BTWATTCH1」を使用している。

 Cinebench 2024はCPUだけに負荷がかかる処理、サイバーパンク2077はCPUとGPUの両方に負荷がかかる処理だが、どちらも消費電力はあまり変わらなかった。ACアダプタが380Wなので、その範囲内で最大限性能を引き出せるようにうまく電力供給を調整しているのだろう。

性能を考えると十分静かな動作音と高い冷却力

 ここまで高い性能だと冷却力や動作音も気になるところ。そこで、サイバーパンク2077を10分間動作させたときの動作音を正面、右側面、背面のそれぞれ10cmの位置に騒音計を置いて測定、サーモグラフィーでキーボード全体の温度をチェックしてみた。動作モードはターボだ。

ゲーム動作中でもキーボード中心は少し温かい程度、温度が高めの上部でもほんのり温かいレベルだ
背面側に集中して排気する構造であるため、正面からは動作音が聞こえにくい

 ゲーミングノートPCは高性能ゆえに冷却ファンは爆音というイメージもあるが、ROG Strix SCAR 16 G635LWはスペックから考えると十分に動作音は小さいと言ってよい。もちろん静かというほどではないが、背面から集中して排気させる構造であるため、前面からは動作音が聞こえにくいのがうまい作りだ。

  冷却に関して熱伝導率の高い液体金属グリスを使用、7本のヒートパイプ、高密度フィン、ベイパーチャンバー、3基のファンなど複合的な要素で高めている。 背面からうまく排気できているため、キーボード部分はあまり熱くならないのは非常にいいところだ。ゲームプレイのしやすさにつながる。ただ、背面から出る熱風はすごいので壁のギリギリには設置しないほうがいいだろう。

 最後にゲームプレイ中の温度をチェックしておこう。サイバーパンク2077を10分間プレイしたときのCPUとGPUの温度推移を「HWiNFO Pro」で測定している。CPUが「CPU Package」、GPUが「GPU Temperature」の値だ。

 CPU、GPUともほとんどのシーンで80℃以下で動作しており、パフォーマンスを重視したターボモードでもしっかり冷却できている。なお、ゲームプレイ中のGPUクロックは2,380MHz前後で推移。ブーストクロックの設定は1,550MHzだが、実際にはかなり高いクロックで動作する。カード電力の設定に余裕があるためだろう。

個性的な演出を楽しめるイルミネーション機能

 ゲーミング向けらしいイルミネーション機能についても紹介しておこう。

背面はアニメーション表示に対応

 今回、ROG Strix SCARシリーズの製品として初めて、天板に810個の極小LEDと8,353個のCNCホールでアニメーションを表示する「AniMe Vision」を搭載したのも特徴の1つ。Armoury Crateアプリで好みのアニメーションや文字、バッテリ残量、日付などさまざまな情報を表示できる。アニメーションパターンのダウンロードも可能と個性的な演出を楽しむことが可能だ。

本体の四方が光る超映え演出
本体を囲むAura RGBライトバーで本体が浮いたような演出が行なえる。ちなみに天板のROGロゴにもLEDを搭載

 また、底面には本体全体を囲むAura RGBライトバーを搭載。床全体をLEDで照らすことができ、本体が浮いているような演出を行なえる。こちらもArmoury Crateアプリで発光色や発光パターンの制御が可能だ。

専用アプリでお好みにコントロール
AniMe VisionやLEDの発光色/発光パターンはArmoury Crateアプリで設定できる

性能だけでなくあらゆる面で満足度の高い1台

 IntelおよびNVIDIAの最新世代CPUとGPUを組み合わせ、超重量級ゲームも最高画質&高解像度で快適にプレイできる性能、2,000以上のゾーンに分かれたMini LEDのディスプレイ、M.2 SSDを簡単に増設できるメンテナンス性、ゲーミング向けらしい映える演出を備え、あらゆる面で高い満足度を得られる1台だ。

 約60万円と価格は高いが、デスクトップPCのような性能や拡張性をコンパクトなノートPCに求めるなら、ROG Strix SCAR 16 G635LWを除いてその期待に応えられるゲーミングノートはそうそうあるまい。

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