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高機能だけどちょっと難しかったElgatoのミキサーソフトWave Link、大型更新で誰にも使いやすく!
~配信者にミキサーソフトが必須である理由と使い方も解説
- 提供:
- Elgato
2025年2月5日 06:30
配信中にゲームの攻略動画を裏画面で見ようとしたら、間違ってその動画の音声が配信に載ってしまった、といったミスは配信者なら1度や2度経験したことがあるだろう。あるいは、ボイスチャット(VC)をつなぎながら配信した時に、コメントでVCの音が小さすぎると指摘されたが、ゲーム中だったのですぐに調整できなかったり、配信中にPC用のLINEアプリにメッセージが着信し、その着信音が頻繁に配信に載ってしまったりといった経験もあるかもしれない。
こういった失敗は、配信用のミキサーアプリ/ハードを活用することで防ぐことができる。その代表の1つとしてElgatoの「Wave Link」がある。ただ、Wave Linkが高機能で便利なのは間違いないのだが、これまでは初期設定がやや難しく、そこでつまずいてうまく活用できていなかったユーザーもいることだろう。
そんなユーザーに朗報だ。1月21日にWave Linkのバージョン2が公開され、UIや機能面が改善され、高機能性はそのままに、圧倒的に使いやすく、設定しやすくなったのだ。各強化/改善点を解説していく。
なお、Wave Linkとは何かはすでに知っていて、設定方法だけを知りたい人は下記リンクの「Wave LinkとOBSのオススメ設定」をクリックしてほしい。Wave Linkの基本的な初期設定を解説している。
ミキサーアプリの何が便利なのか
Wave Linkを含め、配信向けミキサーアプリは何が便利なのか?1つ目は、 配信に音を載せないアプリを指定できる点 だ。ミキサーアプリを導入すると、システム、ゲーム、ボイスチャット、ブラウザ、ミュージックなど、いくつかの仮想オーディオデバイスがOSに追加される。
仮想オーディオデバイスというと難しく聞こえるかもしれないが、簡単に言うと用途別のオーディオチャンネルだ。ミキサーアプリを導入することで、それまで1つしかなかった再生(録音)チャンネルが複数に増えるので、このアプリはこのチャンネルから音を出すという指定ができるようになる。ミキサーアプリがないと、再生チャンネルは1つだけなので、不要な物まで含めすべての音が配信に載ってしまう。
仮想オーディオデバイスの内、システムというのが既定の再生デバイスとなるので、何も設定を変更しないと、OS自体を含むすべてのアプリは、システム(という仮想オーディオデバイス)経由で音を鳴らす。そこで、 システムが鳴らす音は配信ソフトに載らないようにする のだ。具体的な設定方法は後述するが、こうすることで配信ソフトからは一切の音が出なくなる。
その上で、たとえばストリートファイター6の音をゲーム(という仮想オーディオデバイス)に、といった感じで、配信に音を載せたいアプリを、個別にシステム以外の仮想オーディオデバイスに割り当てる。このようにホワイトリスト方式で運用することで、意図しない音が配信に載ることがなくなるわけだ。
もう1つ便利なのは、 配信に載せない音も配信者は聞くことができる という点。比較的新しめのミキサーアプリは、自分が聞く音を「モニターミックス」、配信に載せる音を「ストリームミックス」などという名称で別々に調整できるようになっている。
これにより、たとえばLINEの着信音はストリームミックスには流さないが、モニターミックスには流すようにしておくことで、配信には着信音が載らないが、自分はちゃんと気付くことができる。あるいは、YouTube動画を配信中に見ても、その音は自分にしか聞こえないようにといったことができるわけだ。
また、音を流す、流さないの区別だけでなく、ストリームミックスではゲームの音はちょっと絞り気味にしておきつつも、モニターミックスでは最大音量にしておくことで、 視聴者には配信者の声が大きめに聞こえるようにしながら、自分はFPSゲームで相手の足音をしっかり漏らさずに聞くといったこともできる ようになる。
3つ目の利点として、 そのミキサーアプリに対応したハードウェアが存在する場合、音のミュートや音量調整を即座にできるようになる 。もちろんその操作はWave Link上でもできるのだが、ゲーム配信中にWave Linkの画面を出して、マウスで操作するのはちょっと煩わしい。Wave Linkに関しては、Stream Deck +を持っている場合、Stream Deck +でマイクをワンタッチミュートしたり、ボイスチャットの音量をダイヤル操作で瞬時に調整できるようになる。
実際に利用する仮想オーディオデバイスのみがOSに追加
前述したミキサーアプリの利便性は、Wave Link以外にも当てはまるのだが、Wave Linkはバージョン2になったことで、こういった利便性、機能性をより簡単に活用できるようになった。 筆者はこれまで何種類かのミキサーアプリを利用してきたが、Wave Linkバージョン2はトップクラスに扱いやすい 。
1つめの改善点が、 Wave Linkの初回インストール時に仮想オーディオデバイスを追加しなくなった 点。Wave Linkでは、System、Game、Music、Browser、Voice Chat、AUX1、AUX2という7チャンネルの仮想オーディオデバイスを追加できる(Wave Linkアプリ上にはこれ以外にSFXというのもあるが、これはマイクにかけるエフェクト用で性格が異なる)。
これまではWave Linkインストール時にこのすべての仮想オーディオデバイスがOSに追加されていた。多くのチャンネルがあると、運用の幅が広がるのだが、初めて使う人は面食らうことだろう。
これが、バージョン2では、 初回インストール時に再生用仮想オーディオデバイスが自動追加されなくなり、Wave Linkに追加した時点で初めてOSに仮想オーディオデバイスが追加されるようになった 。分かりやすさという点での改善となる。
Wave Link上でアプリのチャンネル割り当てが可能に
今回のアップデートでは数多くの改善があるのだが、その中でも最も便利になったと感じるのは、Wave Link上でアプリの割り当てが可能になった点だろう。
前述の通り、たとえばChromeをBrowser(という仮想オーディオデバイス)に割り当てると、YouTubeやTwitchなど、Chrome上で再生される動画の音声はBrowserチャンネルにのみ流れるので、Browserをストリームミックスに対してミュートすれば、不意に動画の音声が配信に載るというミスを防げるようになる。
ただ以前までのバージョンでは、そうするために、Windowsの「設定」→「システム」→「サウンド」→「音量ミキサー」を開いて、「Chrome」の「出力デバイス」を「Browser」に変更する必要があった。
これに対してバージョン2では、 Wave Linkの各仮想オーディオデバイスの名前の下にある「+」をクリックすると、今音を鳴らしているアプリの一覧が表示されるので、ここからChromeなどを直接指定できるようになった 。つまり、Windowsの設定アプリを開かないで、割り当てができるようになったのだ。
追加するとアイコン表示されるので、ぱっと見ただけでどのアプリがどの仮想オーディオデバイスに割り当てられているのかも一目瞭然だ。
ちなみに、かなり細かい点ではあるが、Wave Link上で各仮想オーディオデバイスの名称を変更可能になり、変更するとOSから認識される仮想オーディオデバイスの名称も変わるようになった(ただし日本語名は非対応)。
Stream Deckからもワンボタンで割り当て可能に
仮想オーディオデバイスの割り当てに関して、もう1つ便利な新機能がStream Deck向けに追加された。配信で使うアプリの中で音が鳴るものは、ブラウザ、Discord、ゲーム、OBSなど、多くても5種類ほどだろう。つまり、Wave Link上でアプリのデバイス割り当てができるようになったのは確かに便利なのだが、5回くらい割り当てをしてしまえば、後はその機能の出番がなくなる。
ただ、ゲームは例外だ。新規にインストールしたゲームは、割り当てがデフォルトのSystemになっているので、変更する必要がある。筆者の場合、インディーゲームを月に何本もプレイすることもあるので、その度に割り当て作業が発生する。
Wave Link上でも簡単に割り当て可能になったが、ゲームを起動後、Wave Linkを開く→そのゲームをGame(という仮想オーディオデバイス)に割り当てるという作業が必要だ。これに対して、 Stream Deck向けの新機能を使うと、ゲームを起動後、Stream Deckのボタンを押すだけで作業が終わる のだ。
Wave Linkのみでやる場合と、Stream Deckでやる場合にかかる時間の差は10秒程度でしかないだろう。しかし、こういった細かいところへの配慮が実にElgatoらしいし、こういった便利な機能を一度使うと、もうそれなしには作業できなくなる。
ちなみに、この機能はこれまでもサードパーティのStream Deckプラグインによってできていたのだが、Elgatoが採用したことでより多くのユーザーが利用可能になる。
具体的なやり方は、Stream DeckのWave Linkプラグインから「入力」を任意のボタンに割り当て、タイプは「Add」を、入力は「Game」を指定しておくだけ。後は、新規にインストールしたゲームがフォラグラウンドにある状態でこのボタンを押すと、そのゲームがGame(という仮想オーディオデバイス)に割り当てられる。
ただ、特に古いゲームの場合、実行中に仮想オーディオデバイスを変更できないものもある。そういう場合は、一度ゲームを再起動すれば大丈夫だ。なお、ごくまれにSystem以外で音を鳴らせないゲームも存在するが、それはゲーム側の仕様だ。
Wave LinkからStream Deckにプロファイルを書き出し可能に
Stream Deckとの新連携機能はまだある。それがStream Deckへのプロファイル書き出しだ。Wave Linkで仮想オーディオデバイスの追加が終了したら、右上にある「プロファイルをStream Deckに書き出す」ボタンを押そう。これで、各仮想オーディオデバイス用のボタンがStream Deckにプロファイルとして登録される。どのように使えるのか、Stream Deck +の場合で説明する。
プロファイルをStream Deckに書き出すボタンを押すと、プロファイルを作成するStream Deckデバイスの選択画面が出るので、Stream Deck +を選んで「プロファイルを作成」を押す。するとStream Deckアプリ側でも「このプロファイルを使用したいデバイスはどれですか?」というウィンドウが表示されるので、Stream Deck +を選ぶ。
これで、 Stream Deck +に「Wave Link」という名のプロファイルが追加され、各ダイヤルにWave Linkに登録した仮想オーディオデバイス(マイクも含む)が割り当てられる 。なお、4つあるダイヤルの内1つには「マスターボリューム」が割り当てられるので、仮想オーディオデバイスが使うのは残り3つのダイヤルとなる。Wave Linkに4つ以上の仮想オーディオデバイスを登録している場合、4つ目以降のデバイスは2ページ目以降に割り当てられる。
割り当てられたダイヤルの液晶パネルをタップすると、そのデバイスのミュート/アンミュートを切り替えられる。ダイヤルを回すと、そのデバイスのボリュームを調節でき、押し込むと、そのデバイスの出力先(モニターミックスかストリームミックスか)が切り替わる。
これはStream Deck +のダイヤルスタック機能を使って実現しているので、過去のバージョンでも自力で同じ機能を追加できたが、新バージョンでは簡単な操作でできるようになった。
ただ、この機能を使うとStream Deck +は、すべてのボタンが空でダイヤルにだけ機能が割り当てられた状態になるので、それまで使っていたボタンが消えたように見えて焦るかもしれない。しかし、安心していい。ここでは、新規のプロファイルが追加されただけなので、それまでのボタン(ダイヤルもだが)設定は元のプロファイルに切り替えれば表示される。
ボタンの設定はそのままに、ダイヤルだけWave Link用に変更したい場合は、上記のやり方で新規プロファイルを作成し、各ダイヤルの機能を元のプロファイル上のダイヤルにコピペすればいい。
GPUを使わない高性能ノイキャンやなどマイク周りも強化
ここまで、音声の出力面について紹介してきたが、入力面、つまりマイク周りについても大きな機能強化が図られた。その1つが「Voice Focus, powered by ai|coustics」(以下、Voice Focus)というマイクのノイズキャンセリング機能だ。
これまでもElgatoは、「NVIDIA Broadcast Noise Removal by Elgato」というノイズキャンセリング機能をWave Linkのプラグインを提供していた。ただ、このプラグインは、その名称からも分かる通りNVIDIAのGeForce RTXシリーズを持っていないと使えない機能だった。それに対してVoice FocusはCPUで処理するのでGPUが不要となる。
NVIDIA Broadcastは非常に強力なので、GPUが不要になったのはいいとしても、ノイズキャンセリング性能が低下するのではと不安に思うかもしれないが、今回試した限りでは、Voice FocusはNVIDIA Broadcastに勝るとも劣らない性能を発揮していた。
個人配信で気になるのは、空調やPCのファンノイズ、そしてキーボードの打鍵音などだろう。今回、 多少のファンノイズがある環境で、キーボードを打鍵しながら録音してみたところ、Voice Focusをオンにすると、声以外の音がきれいさっぱりなくなった。そして、声には不自然なところはまったくなかった 。
CPU処理ということでCPU負荷を確認してみたが、Core i7-13700Kの場合で、Voice FocusをオンにしてもCPU負荷は1~2%増える程度で非常に軽い。これより下位のCPUでも、体感できるレベルのCPU負荷になることはないだろう。
使い方も簡単で、最新版Wave Linkには標準でVoice Focusが搭載されており、マイクの音量スライダー下部にあるエフェクトアイコンを押すと表示されるウィンドウでVoice Focusのスイッチオン/オフと、ノイズキャンセリング強度を設定できる。
そして、Voice Focusの搭載に合わせて、 マイクにエフェクトを適用した時の効果のかかり具合を確かめるための録音機能も追加された 。マイクのエフェクトアイコンを押して表示されるウィンドウの下の方に「Rec(録音)」ボタンがある。これを押すとマイク音を10秒間録音できる。
録音が終わると再生ボタンに変わるので、それを押すと今の録音を聞くことができるのだが、いつでもVoice Focusやその他エフェクトのオン/オフを切り替えられる。これにより、Voice Focusを適用した後にマイク音がどのように変わるのかを把握できるというわけだ。ゴミ箱ボタンを押して録音を削除すれば、また録音できる。
そして、 Wave Linkのマイクチャンネルに表示されているマイクアイコンを押すことで、マイク入力をハードウェアミュートできる機能も追加された。もちろん、Stream Deckの連携も可能 。Wave Linkプラグインの「デバイス」をボタンに割り当て、「タイプ」で「ハードウェア設定」を、「アクション」で「消音を切り替え」を選ぶ。これで、Stream Deckのボタンを押すたびにマイクのハードウェアミュートがオン/オフできる。
注意点として、マイクにエフェクトを適用する場合、OBSなどで指定するマイクは「Elgato XLR Dock」などの「Mic In」ではなく、「WaveLink MicrophoneFX」に変更する必要がある。
なお、NVIDIA Broadcast Noise Removal by Elgatoも引き続き利用できる。
Wave LinkとOBSのオススメ設定
さて、ここまで新Wave Linkの新機能を説明してきたが、実際に配信する際の設定方法についても説明しておく。バージョンアップでかなり使いやすくなったWave Linkだが、マイク周りの正しい設定が少しだけ分かりにくいので、参考にしてもらいたい。なお、ここではハードウェアは、Stream Deck +、XLR Dock、Wave DXを使っている。
まず、Wave LinkとStream DeckのアプリをElgatoの公式サイトからダウンロードし、インストールする。すでに使っている場合は最新版にアップデートする。なお、本記事はWave Link 2.0.3のベータ版を使って検証しているのだが、ベータ版ではStream Deck用Wave Linkプラグインを別途ダウンロードしてインストールする必要があった。おそらく製品版では、Stream Deckアプリの自動更新機能でプラグインも最新版になるものと思われる。
OS側については、Windowsの場合、「設定」→「システム」→「サウンド」を開いて、デフォルトの再生デバイスとしてElgato XLR Dockの「System」にチェックがついていることを確認する。
Wave Linkについては、上記を参照して、必要な仮想オーディオデバイスを追加し、それらに対してアプリ(ゲームなど)を割り当てておく。多くの場合、ゲーム配信だと、System以外に必要なのは、Game、Browser、Voice Chatくらいだろう。各仮想オーディオデバイスごとに2つの上下スライダーがある。左側がモニターミックス用、右側がストリームミックス用の音量だ。それぞれを適切に調節しよう。
そして、「System」については、ストリームミックスをミュートにしておく。こうすることで、必要な音だけが配信に載るようになる。
ちなみに、スライダーの下にあるモニターミックスアイコンとストリームミックスアイコンの間にある「⊂⊃」アイコンをクリックすると、モニターミックスとストリームミックスのスライダーが連動して動くようになる。
モニターミックスデバイスは「Headphones (Elgato XLR Dock)」を選ぶ。ストリームミックスデバイスは「他の出力デバイスを追加」でいい。これは、特定のハードウェアからストリームミックスを再生しないという意味になる。ストリームミックスは、ハードから再生するのではなく、OBS Studioなどの配信ソフトに信号をリレーすればいいので、これでいい。
仮想オーディオデバイスとともに、マイクもWave Linkに追加するが、ここではオーディオインターフェイスであるElgato XLR Dockがマイクとして認識される。そして、マイクのモニターミックスは、アイコンをクリックして”ミュート”にする(マイク全体ではなく、マイクのモニターミックスをミュートすることに注意)。
Elgato XLR Dockと表示されている部分をクリックすると、別ウィンドウが現われ、マイクの基本設定を行なえる。Wave DXはダイナミックマイクなので、「48Vファンタム電源」のチェックは外す。入力ゲインは、マイクと口との距離や、その人の声量によって変わってくるが、普通の声量でしゃべった時に、緑色の入力レベルメーターが、「ダイナミック」と書かれた帯の黄色部分に収まるくらいでちょうどいい。
「ヘッドフォンジャック」の「出力音量」は自分で聞いてちょうどいいレベルに設定する。「マイク/PCミックス」は「50%:50%」にする。「ローカットフィルター」はデフォルトの「80Hz」、「Clipguard」もデフォルトのオンのままでいいだろう。
Wave Linkの設定は完了したので、OBSの「ファイル」→「設定」→「音声」の「グローバル音声デバイス」のマイクとして「Mic in (Elgato XLR Dock)」を(マイクエフェクトを使っている場合は「MicrophoneFX」を選ぶ)、マイク2として「Wave Link Stream (Elgato XLR Dock)」を設定する。Wave Link Streamは、Wave Linkのストリームミックスのことだ。出力であるストリームミックスをマイクとして指定するのは違和感があるかもしれないが、モニター、ストリームともミックスは入力扱いになる。
OBSで複数のシーンを設定していて、特定のシーンではマイク音は入れたくないという場合はグローバル音声デバイスをすべて無効にして、各「シーン」の「ソース」で「+」を押して、一つ目の「音声入力キャプチャ」として「Wave Link Stream (Elgato XLR Dock)」を選び、2つ目の「音声入力キャプチャ」として「Mic in (Elgato XLR Dock)」を追加すればいい。
これで、自分用に調整された音量でXLR Dockに接続したイヤフォン/ヘッドフォンから各種の音声が聞こえ、ストリームミックスに載せられた音が視聴者用に調整された音量で配信に流れる。
参考までに「マイク/PCミックス」を「50%:50%」にして、マイクデバイスのモニターミックスをミュートにする理由を説明しておこう。Wave Linkのマイク設定に表示されるマイク/PCミックスで、マイクを1%以上にすると、XLR Dockにつないだイヤフォンからマイクのモニタリングを聞くことができる。このモニタリングはマイク入力から直結されたものなので、遅延は発生しない。
ゲーミングヘッドセットや、安価なUSBマイクを使っている場合、基本的には自分の声をモニタリングできない。これに慣れていて、自分の声が聞こえない方がいいという人もいるが、個人的には自分の声が聞こえている方がしゃべりやすい。と言うことで、マイク/PCミックスでマイクの割合をある程度大きくしたい。多少好みで変更しても構わないが、基本的には50%ずつがバランスいいだろう。
一方、Wave Linkのメイン画面に表示されるマイクのモニターミックスをオンにすることでも、自分の声をモニタリングできる。しかし、こちらで聞こえるのは、OSに入力された後の返しとなる。そのため、ある程度の遅延が発生する。初期状態だとわずかな遅延なので気にならないかもしれないが、前述のVoice Focusなどのエフェクトを適用すると大きく遅延するようになるので、これを聞きながらしゃべるのは無理となる。ということで、マイクデバイスのモニターミックスはミュートにするのだ。
マイクデバイスのモニターミックスをミュートにすることにはもう1つメリットがある。それは外付けスピーカーを併用する場合だ。XLR Dockには基本的にイヤフォンかヘッドフォンをつなぐが、PC本体に音声出力端子があるなら、そこに通常のスピーカーをつなげてもいい。
そして、Stream DeckのWave Linkプラグインから「デバイス」を任意のボタンに割り当て、「タイプ」は「出力デバイスを切り替え」を選び、「プライマリ」に「Headphones (Elgato XLR Dock)」を割り当て、「セカンダリ」にPC本体の音声出力端子を指定する。これで、ボタンを押すたびにモニターミックスの出力先がイヤフォン/ヘッドフォンとスピーカーとに切り替わる。
この時、マイクデバイスのモニターミックスをミュートにしているため、マイクに入った音がスピーカーからも出力され、ハウリングを起こしてしまうのを防げる。これが2つ目のメリットだ。
マイクの設定は同じなのに、イヤフォンからはモニタリング音が聞こえて、スピーカーからは聞こえないことを不思議に思う人もいるかもしれない。これは、マイク/PCミックス経由で聞こえているのは、マイクから直結された出力であって、マイク音声はモニターミックスに渡されていないためだ。
一応、Wave Linkでもマイクの詳細設定でダイレクトモニタリングを有効にしつつ、Wave Linkメイン画面でマイクのモニターミックスを有効にしようとするとダブルモニタリングが発生するという旨の警告が出るのだが、詳しくない人にはこの意味が分かりにくい。とりあえず、マイクのモニターミックスはミュートと覚えておけばいい。
配信の音声周りはElgato製品で固めるのが吉
このように、Wave Linkはこれまでの高機能さをさらに拡大しつつ、より簡単に使えるようになった。Wave Link自体は無料だが、使うにあたってはElgatoのハードウェが必要となる。対応するのは、Stream Deck +、Wave:1、Wave:3、Wave Neo、Wave XLR、XLR Dockとなる。Stream Deck+を利用する場合、マイクについては他社製であってもVoice Focusが使えないことを除き、Wave Link自体は利用できる。
ただ、 筆者はぜひともStream Deck +と組み合わせて使うことをオススメしたい 。音周りは、一度設定を決めてしまえば頻繁に変更するものではないのだが、新規にプレイするゲーム、ボイスチャットの音量、ブラウザで再生する動画の音量などは一定ではないので、調整したい場面が少なくない。
そういった時に、Stream Deck +はダイヤルを回すだけで即座に音量調節が可能。ミュートの切り替えも液晶パネルのタップでできるし、モニターミックスだけ、あるいはストリームミックスだけ調整したいと言う時も、手軽に操作できるのが強みだ。
そして、マイクも新調するのであれば、ダイナミックマイクである「Wave DX」と、Stream Deck+にXLR接続機能を付与する「XLR Dock」を追加することをオススメする。
Wave DXは、ダイナミックマイクなので、個人配信の音周りで一番気になるエアコンやPCなどの環境ノイズを拾いにくいという特性がある。コンデンサーマイクの方が感度が高いので高音質と認識している人もいる。ノイズをシャットアウトしたレコーディングブースで使うのならそれは事実だが、ノイズ源が多い個人の部屋ではコンデンサーマイクの感度の高さはあだとなることの方が多いため、取り扱いが難しい。つまり、個人配信ではダイナミックマイクの方が使いやすいのだ。
Wave DXはXLR接続なので、オーディオインターフェイスが必要となるが、2024年に発売されたXLR Dockを使えば、Stream Deck +にXLRマイク向けのオーディオインターフェイス機能を追加できる。XLR Dockには、スタジオ級のプリアンプが搭載されているのに加え、大きな声を出しても音が割れない「Clipguard」機能、マイクを遅延なくモニタリングできるヘッドフォン端子も装備している。
そして、こういった据え置きマイクを使う際にはマイクアームがあると取り回しが楽になる。マイクアームのオススメはMic Arm Proだ。アームの手前部分がロープロファイルなので、カメラにかぶりにくい。そして、従来モデル同様360度横に回転できるのに加え、この製品はサスペンション機構により、スムーズに上下の高さ調節もできるようになった。ラッチ付きクランプにより、取り付けしやすいのもオススメの理由だ。
Elgato製品はハードウェアの品質もよいが、その機能性をソフトウェアの力で最大限に引き出している。そして、単体でも便利な各製品は、ソフトウェアで連携させることで、さらに便利になるのがElgato製品の特徴であり魅力だ 。今回のWave Linkのアップデートは、まさにその好例であると言える。
そして、オーディオのミキシングやVoice Focusによるノイズキャンセリングは配信だけでなく、業務でのビデオ会議にも好適だ。この点もぜひプッシュしておきたい。