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日本HP「EliteBook 830 G11」は、AI時代の必要がすべて凝縮されたビジネスモバイルノートだ

~インテルCore Ultraプロセッサー搭載でIntel vProプラットフォームにも準拠

日本HP「EliteBook 830 G11」

 日本HPのビジネスノートPC「EliteBook」シリーズは、最新テクノロジーによる高性能と、先進のセキュリティ機能や管理機能を、優れたユーザビリティで提供する、HPビジネスノートPCのハイエンドモデルとして位置付けられている。その最新モデル「EliteBook 830 G11」は、最新のインテルCore Ultraプロセッサーを採用することで、AIを駆使した新しいビジネススタイルに対応できるビジネスモバイルPCに仕上がっている。加えて、Intel vProプラットフォームにも準拠する。

 インテルCore Ultraプロセッサーは、インテルが「この40年間で最大のアーキテクチャー転換」と謳う最新プロセッサーで、CPUアーキテクチャ、グラフィックス、電力効率、バッテリ持続時間、そしてAI機能と、さまざまな面で飛躍的な進化を遂げている。コンシューマ向けに先行投入されていたこのプロセッサーが、Intel vProプラットフォームに準拠するビジネス向けノートでも今春から採用が始まった。

 Intel vProプラットフォームは、企業向けのセキュリティ機能や管理機能を提供するための基盤。すでに20年以上の歴史のあるプラットフォームで、企業の情シスなどIT担当者であれば一度はその名を耳にしたことがあるだろう。インテルCore UltraプロセッサーでのIntel vProプラットフォームには、従来の機能に加え、下記の機能が追加/強化された。

  1. インテル・スレット・ディテクション・テクノロジー(TDT)の機能拡張
  2. インテル・シリコン・セキュリティ・エンジンを新搭載
  3. インテル・デバイス・ディスカバリーを新搭載
  4. インテル・デバイス・ヘルスを新搭載
  5. クラウド・ネイティブ・マネジメントの提供を開始
Intel vProプラットフォームとインテルEVOエディションの両方に準拠する

 この中で特に注目したいのはインテルTDTの機能拡張だ。インテルCore Ultraプロセッサーでは、いわゆるAI処理を専門に受け持つNPU(Nural Processing Unit)が追加された。もちろんこのNPUは生成AIでも活躍するが、インテルTDTと組み合わせることで、マルウェアの検出をCPUからNPUへとオフロードできるようになった。

 従来のインテルTDTでも、CPUではなくGPUにマルウェア検出を処理させることで、CPU負荷を軽減できたが、NPUはGPUよりも消費電力が低い。そのため、マルウェア検出のようにバックグラウンドで常時動作する機能については、GPUよりNPUに処理させた方がノートPCのバッテリ駆動時間が延びるのだ。もちろん、CPU負荷も軽減されるので、PCが重くなることも防げる。

 今後企業でノートPCを導入する際は、インテルCore Ultra プロセッサー搭載Intel vProプラットフォームに準拠しているかを1つの判断基準にするといいだろう。

シンプルな中にも気品あふれる上質なメタル筐体

シンプルながら気品溢れる上質なデザインで、オフィスにもマッチする

 本体は、EliteBookシリーズとして伝統的なシンプルデザインを採用。全体的には直線的でフラットながら、天板や底面の周囲、本体前方になだらかなカーブを取り入れることで、比較的柔らかい印象が伝わってくる。カラーはマット調のシルバーで、シンプルながら気品あふれる上質な雰囲気。天板にある光沢感の強いHPロゴも、いいアクセントになっている。

 筐体素材は軽さと強さを兼ね備えるマグネシウム合金を採用。また天板にはリサイクル率90%のマグネシウム合金を採用するとともに、キーボードのキートップに廃棄DVD素材を50%採用するなど環境への配慮も怠りがない。

 堅牢性の追求も大きな特徴の1つ。EliteBook 830 G11では、12万時間を超える独自の堅牢性テストを行なうとともに、落下、衝撃、振動を始めとした米国国防総省調達基準「MIL-STD 810H」準拠の堅牢性テストも全19項目で実施、クリアしている。これなら、過酷なモバイル用途でも安心して利用できるはずだ。

 本体サイズは300.1×215.05×19.2mm、重量は1.228kgから。13.3型ビジネスモバイルPCとしてサイズ、重量とも標準的で、優れた堅牢性と合わせ、軽快に持ち運べるだろう。

 CPUについては後ほど詳しく紹介するが、最新のインテルCore Ultraプロセッサーを採用。EliteBook 830 G11が採用するCPUは、全モデルがIntel vProプラットフォームに準拠しており、企業が求める高いセキュリティ性と管理機能も提供。同時に、優れた応答性、性能を確保した証であるインテルEvoエディションにも準拠しているなど、ビジネスノートとして最高レベルのスペックとなっている。

リサイクル率90%のマグネシウム合金筐体。MIL-STD 810Hをはじめ、さまざまな堅牢性テストをクリアする優れた堅牢性と軽さを両立

AI新時代のビジネススタイルに対応できるCore Ultraプロセッサー搭載

 試用機ではインテルCore Ultra 5プロセッサー135Uを搭載していたが、このほかにインテルCore Ultra 5プロセッサー125UやインテルCore Ultra 7プロセッサー155Uを搭載するモデルもある。

 インテルCore Ultraプロセッサーの最大の特徴となるのが、AI処理に特化したプロセッサーである「NPU」を搭載している点だ。

 NPUがなければAI処理が行なえないわけではないが、インテルCore Ultraプロセッサー搭載のNPUは、CPUやGPUに比べて圧倒的に優れた電力効率でAI処理が行なえる。特にCPUと比較すると、より優れたAI処理能力を発揮しつつ、消費電力も非常に低く抑えてある。

 そのため、AI処理をバックグラウンドで継続的に行なう作業を行なう場合でも、CPU単体で処理する場合と比べて、より高速かつ低消費電力で処理が行なえるため、快適度を高められると同時にバッテリ駆動時間も延ばせられるのだ。

 実際に、NPUとCPUでAI処理能力にどの程度の違いがあるのか、UL LCCのベンチマークソフト「UL Procyon 2.7.1108」に含まれるAI Computer Vision Benchmarkで検証してみた。その結果は下の通りで、NPU利用時の方が5倍以上のスコアとなった。NPUのAI処理能力の高さがよく分かるだろう。

AI Computer Vision Benchmark CPU処理の結果。スコアは51だった
AI Computer Vision Benchmark NPU処理した場合には、261とCPU処理の5倍以上のスコアを記録した

 また、ビジネスシーンでのメリットとしては、AI処理をPC内で処理できるという点もある。近年、ビジネスシーンでも生成AIを活用する例が増えているが、それらの多くはクラウドで処理を行なうため、情報漏洩を危惧して本格導入をためらう企業も少なくない。しかしインテルCore UltraプロセッサーのNPUがあれば、PC単体でも快適なAI処理が行なえるため、情報漏洩を危惧せずAI機能を活用できるようになる。

 現時点でNPUを活用できるビジネス向けの機能の1つが「Windows Studio Effects」だ。Web会議を行なう場合など、カメラで撮影した映像の背景をぼかしたり、人物の顔が常に中央に来るようにトリミング、顔の明るさ調整などをNPUで処理できる。通常、Web会議アプリではこれら処理をCPUが行なっていたが、Windows Studio EffectsによってNPUが処理することで、より軽量かつ低消費電力で実行できるようになる。特に、外出時にバッテリ駆動でWeb会議を行なう必要がある場合などに、大いに役立つだろう。

Windows Studio Effectsの背景ぼかしや顔トリミングなどはNPUで処理するため、システム全体のパフォーマンスを高めつつ消費電力は低減可能
Copilotキーも装備

 このほかにも、ビジネスシーンでよく活用するアプリの多くがNPUへの対応を表明しており、NPUを活用できるシーンは今後どんどん増えていく。インテルCore Ultraプロセッサー搭載のEliteBook 830 G11は、新時代のビジネススタイルに柔軟に対応できる製品だと言える。

EliteBookの特徴でもある優れたセキュリティ機能も満載

 EliteBookシリーズは、企業が求める高いセキュリティ性を備えている点が特徴で、それはEliteBook 830 G11にもしっかり受け継がれている。その1つが、HPが「サイバーレジリエンス」と呼ぶサーバーセキュリティ対策。レジリエンスとは復元力の意味で、サイバーレジリエンスは自己回復型のサーバーセキュリティ対策となる。

 企業へのサイバー攻撃は高度化しており、ユーザーの努力だけではなかなか防ぎづらくなっている。HPのサイバーレジリエンスは、米国政府機関が定めるセキュリティガイドライン「NIST SP 800-171」に準拠したセキュリティ対策を実現。AIを活用し、未知のマルウェアをリアルタイムで保護する「HP Sure Sense」、BIOS攻撃を自動検出し自動修復する「HP Sure Start」、セキュリティ対策機能を常時監視して常に動作するようチェックする「HP Sure Run」、マルウェア感染で起動しなくなった場合でも自動的に正常な状態へリカバリする「HP Sure Recover」、不正Webサイトアクセスやメール添付ファイルなどからのマルウェア感染を防ぐ「HP Sure Click」などにより、PCを常に安全に利用できるよう配慮されている。

サイバーレジリエンスの1つ「HP Sure Click Secure Brouser」では、ブラウザをハードウェアレベルで完全に隔離された仮想マシン内で実行することで、マルウェア感染を防ぐ

 HP独自のマルウェア対策アプリ「HP Wolf Security」も搭載。未知のマルウェアも含めたマルウェア保護機能の提供だけでなく、管理者による容易な管理機能、遠隔データ消去などの機能が提供されるため、こちらも企業にとって大いに役立つはずだ。

 生体認証機能は、顔認証対応のIRカメラと指紋認証センサーを同時搭載。通常は顔認証、マスク装着時には指紋認証など、状況に応じて双方を使い分けることで、セキュリティ性と利便性を高いレベルで両立可能だ。

HP独自のマルウェア対策アプリ「HP Wolf Security」によってもセキュリティ性が高められている

 そして、Intel vProプラットフォームへの対応も忘れてならない部分。BIOSレベルでのマルウェア感染リスクの低減や復旧といったセキュリティ機能に加え、遠隔地からのPCの電源投入やBIOS設定の変更、ソフトウェアやOSのアップデートを行なうといった遠隔管理も容易に行なえる。

 Intel vProプラットフォーム対応は、PCの安全性を高めるのはもちろん、システム管理者の負担軽減にもつながるため、企業が導入するPCにとって不可欠であり、その点でもEliteBook 830 G11は安心だ。

WUXGA表示対応の13.3型液晶を搭載

 ディスプレイは、1,920×1,200ドット(WUXGA)表示対応の13.3型液晶を搭載。パネルの種類は非公開ながら、IPSクラスの広視野角となっている。表面は非光沢処理となっているため天井の光など外光の映り込みは最小限で、オフィスワークの中心である文字入力も快適だ。一般的なフルHD液晶よりも縦の解像度が高い分、より多くの情報を1度に表示可能。発色も十分に鮮やかで、これなら写真や映像を編集する場合でも、全く不満は感じないはずだ。

 ディスプレイはほぼ水平まで開いて利用できる。そのため、対面でのプレゼンを行なう場合など、相手に画面を見せる場面で重宝するだろう。

1,920×1,200ドット表示対応の13.3型液晶を搭載。フルHDより縦の情報量が多く、作業効率を高められる
ディスプレイはほぼ水平まで開けるので、対面プレゼンなどにも便利

ほぼフルピッチのキーボードで入力作業も軽快

 キーボードは、アイソレーションタイプの日本語キーボードを搭載。主要キーのキーピッチは18.7mmと、ほぼフルピッチを確保。タッチタイプも全く支障がなかった。標準でキーボードバックライトを搭載し、暗い場所でも快適にタイピングできる点もうれしい。

 キーストロークは1.5~1.7mmと、薄型のモバイルノートPCとして標準的。強めのクリック感だが固さは標準的で、打鍵感も良好だ。また、タイピングしていて良く感じたのが、打鍵音の静かさだ。カチャカチャといった音は皆無で、かなり静かにタイピングできる。これなら静かな場所でも周りを気にせず扱えそうだ。またバックライトも装備しているので、暗い場所でも使いやすい。

アイソレーションタイプの日本語キーボードはほぼフルピッチを確保し、快適な打鍵感で軽快な入力が行なえる
バックライトオフ
バックライトオン

 ポインティングデバイスは、クリックボタン一体型のタッチパッド「クリックパッド」を搭載。パームレストの幅に合わせて比較的サイズが大きく、ジェスチャー操作も含めて操作性は良好。キーボードと合わせて、快適な操作性と言える。

クリックボタン一体型のクリックパッドは面積が広く、優れた操作性を実現

基本スペックも充実

 本製品の主な仕様は以下の通り

EliteBook 830 G11(試用機)の主な仕様
CPUインテルCore Ultra 5プロセッサー135U
メモリLPDDR5 16GB
内蔵ストレージ256GB PCIe SSD
ディスプレイ13.3型液晶、1,920×1,200ドット、非光沢
無線Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3
キーボード日本語、キーピッチ18.7×18.7mm、ストローク1.5~1.7mm、キーボードバックライト、防滴機能
カメラ500万画素、画角88度、開閉式スライドカバー
生体認証顔認証IRカメラ、指紋認証センサー
インターフェイスThunderbolt 4×2、USB 3.0 Type-A×2、HDMI、3.5mmオーディオジャック 64bit
サイズ/重量300.1×215.05×19.2mm/1.228kg~

 メモリはLPDDR5を16GB標準搭載。内蔵ストレージは試用機では256GB SSDを搭載しており、512GB SSD搭載モデルも用意される。OSはWindows 11 Pro。

 無線機能は、IEEE 802.11ax(Wi-Fi 6E)準拠の無線LANとBluetooth 5.3を標準搭載。ワイヤレスWAN搭載モデルは用意されない。

 生体認証機能は、Windows Hello対応の顔認証IRカメラと指紋認証センサーを同時搭載。利用状況に応じて双方を使い分けることで、セキュリティ性と利便性を両立可能。

 ディスプレイ上部のカメラは、500万画素と高精細。Web会議で利用する場合に、くっきりとした映像を届けられる。周囲の明るさに応じて映像の露出やコントラストを自動的に補正する機能も備えている点と合わせ、Web会議で大いに役立つだろう。

 拡張ポートは、左側面にHDMI、USB 3.0 Type-A×1、Thunderbolt 4×2を、右側面にUSB 3.0 Type-A×1と3.5mmオーディオジャックをそれぞれ用意。モバイルノートPCとしては必要十分なポートが用意され、周辺機器の利用も全く問題がない。

ディスプレイ上部には顔認証IRカメラと500万画素高精細カメラを搭載
物理プライバシーシャッターを装備
顔認証IRカメラだけでなく指紋認証センサーも同時搭載しており、状況に応じて使い分けられる
マイクで拾った音声のノイズキャンセリングなどのWeb会議で便利な機能もしっかり搭載
右側面
USB 3.0と3.5mmオーディオジャック
左側面
HDMI、USB 3.0、Thunderbolt 4×2
付属ACアダプタは比較的コンパクト
L字アダプタも付属

インテルCore Ultraプロセッサーらしい優れた性能を確認

 では、簡単にベンチマークテストの結果を紹介する。利用したベンチマークソフトは、UL LLCの「PCMark 10 v2.1.2662」、「3DMark Professional Edition v2.28.8228」、Maxonの「CINEBENCH R23.200」の3種類だ。

PCMark 10の結果
CINEBENCHの結果
3DMark Professional Editionの結果

 結果を見ると、いずれも申し分ないスコアとなっている。一般的なオフィス用途で処理能力で不満を感じる場面はほぼないはずだが、インテルCore Ultra 7プロセッサー搭載モデルなら、より快適になる。

 続いてバッテリ駆動時間だ。EliteBook 830 G11は容量50Whrのバッテリを内蔵しており、公称の駆動時間はMobileMark 25の計測結果で最大16時間、JEITA測定法Ver3.0で約22時間28分とされている。

 それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を50%、キーボードバックライトをオフに設定し、PCMark 10のBatteryテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」で計測したところ13時間16分を記録した。公称には届いていないが、これなら1日の外出利用でバッテリ残量を気にする必要はなさそうだ。この長時間駆動もモバイルPCとして大きな魅力となるだろう。

AI新時代に対応したパフォーマンスと優れたセキュリティ性を兼ね備える魅力的なビジネスモバイルPC

 今回、EliteBook 830 G11を試用して感じたのは、ビジネスモバイルPCとして完成度が非常に優れるという点だ。インテルCore Ultraプロセッサー搭載によるパフォーマンスやAI処理能力の高さもあるが、ディスプレイ、キーボードの利便性、Web会議に対応できる高性能カメラ、生体認証機能など、全方位で隙がなく、ビジネスワークを快適にする要素が満載だ。

 そのうえで、非常に高いセキュリティ性や、Intel vProプラットフォームによる優れた管理機能なども網羅しており、企業も安心して導入できる製品に仕上がっている。

 そして、インテルEVOエディションにも準拠し、快適な性能、操作性が確保されている。従業員のビジネスワークを快適にし、業務効率を高められ、安全性や管理のしやすさという点にも妥協がないPCを探している企業にお勧めしたい。