ニュース

NPUでウイルス検出時の負荷をオフロード。Intel、ビジネスPCをAI PCにする「Core Ultra vPro」発表

BUFFERZONE Securityの「Safeworkspace Pro」でNPUが利用できている様子

 Intelは、スペイン・バルセロナ市で2月26日(現地時間)から開催されているMWC 2024に出展し、同社の通信キャリア向けソリューションなどの展示を行なっている。

 2月27日夕方(現地時間)には、報道発表と報道関係者向けのイベントが行なわれ、ビジネス向けPC製品の2024年モデルが発表された。発表されたのは「インテル Core Ultra プロセッサー搭載 インテル vProプラットフォーム」(以下Core Ultra vPro)と「インテルCoreプロセッサー(第14世代)搭載 インテル vProプラットフォーム」(以下Core(第14世代)vPro)で、前者はノートPC向け、後者はデスクトップPC向けの製品となる。

 IntelはCore Ultra vProにおいて、「インテル・スレット・ディテクション・テクノロジー」(Intel TDT)の機能を拡張し、ウイルススキャン時に負荷をGPUにオフロードできていた機能に加えて、NPUへオフロードできるようになったことを明らかにした。

Core Ultra、Core(第14世代)にvPro対応の機能が追加。日本ではVAIOからも登場予定

vProのロゴ

 今回Intelが発表したのは、Core Ultra(:Meteor Lake)、およびCore(第14世代)(Raptor Lake Refresh)のvPro対応版となる。それぞれ投入されたSKUは以下の通りだ。

【表1】インテル Core Ultra プロセッサー搭載 インテル vProプラットフォームのSKU構成
プロセッサナンバーコア/スレッドPコアEコア低電力EコアLLC最大周波数(Pコア)最大周波数(Eコア)GPUXeコア数NPU構成メモリメモリ最大容量ベースパワー最大ターボ電力vPro
Core Ultra 9 185H16/2268224MB5.1GHz3.8GHzIntel Arc Graphics82xGen3DDR5-5600、LPDDR5/x-746796GB(DDR)/64GB(LP)45W115WEnterprise
Core Ultra 7 165H16/2268224MB5GHz3.8GHzIntel Arc Graphics82xGen3DDR5-5600、LPDDR5/x-746796GB(DDR)/64GB(LP)28W64/115WEnterprise
Core Ultra 7 155H16/2268224MB4.8GHz3.8GHzIntel Arc Graphics82xGen3DDR5-5600、LPDDR5/x-746796GB(DDR)/64GB(LP)28W64/115WEssentials
Core Ultra 5 135H14/1848218MB4.6GHz3.6GHzIntel Arc Graphics72xGen3DDR5-5600、LPDDR5/x-746796GB(DDR)/64GB(LP)28W64/115WEnterprise
Core Ultra 5 125H14/1848218MB4.5GHz3.6GHzIntel Arc Graphics72xGen3DDR5-5600、LPDDR5/x-746796GB(DDR)/64GB(LP)28W64/115WEssentials
Core Ultra 7 165U12/1428212MB4.9GHz3.8GHzIntel Graphics42xGen3DDR5-5600、LPDDR5/x-746796GB(DDR)/64GB(LP)15W57WEnterprise
Core Ultra 7 155U12/1428212MB4.8GHz3.8GHzIntel Graphics42xGen3DDR5-5600、LPDDR5/x-746796GB(DDR)/64GB(LP)15W57WEssentials
Core Ultra 5 135U12/1428212MB4.4GHz3.6GHzIntel Graphics42xGen3DDR5-5600、LPDDR5/x-746796GB(DDR)/64GB(LP)15W57WEnterprise
Core Ultra 5 125U12/1428212MB4.3GHz3.6GHzIntel Graphics42xGen3DDR5-5600、LPDDR5/x-746796GB(DDR)/64GB(LP)15W57WEssentials
Core Ultra 7 164U12/1428212MB4.8GHz3.8GHzIntel Graphics42xGen3LPDDR5/x-640064GB15W57WEnterprise
Core Ultra 5 134U12/1428212MB4.4GHz3.6GHzIntel Graphics42xGen3LPDDR5/x-640064GB15W57WEnterprise
【表2】インテルCoreプロセッサー(第14世代)搭載 インテル vProプラットフォームのSKU構成
コア/スレッドPコアEコアLLCL2Thermal Velocity Boost最大周波数Turbo Boost 3.0最大周波数Pコア最大周波数Eコア最大周波数Pコアベース周波数Eコアベース周波数クロック倍率アンロックGPUPCIeレーン(CPU側)メモリメモリチャンネル最大メモリ容量PBPMTPECC対応SIPPvProISMボックス品有無
Core i9-14900K2481636MB32MB6GHz5.8GHz5.6GHz4.4GHz3.2GHz2.4GHzIntel UHD Graphics 77020DDR5-5600、DDR4-32002192GB125W253W
Core i7-14700K2081233MB28MB5.6GHz5.5GHz4.3GHz3.4GHz2.5GHzIntel UHD Graphics 77020DDR5-5600、DDR4-32002192GB125W253W
Core i5-14600K206824MB20MB5.3GHz4GHz3.5GHz2.6GHzIntel UHD Graphics 77020DDR5-5600、DDR4-32002192GB125W181W
Core i9-149002481636MB32MB5.8GHz5.6GHz5.4GHz4.3GHz2GHz1.5GHzIntel UHD Graphics 77020DDR5-5600、DDR4-32002192GB65W219W
Core i7-147002081233MB28MB5.4GHz5.3GHz4.2GHz2.1GHz1.5GHzIntel UHD Graphics 77020DDR5-5600、DDR4-32002192GB65W219W
Core i5-14600142824MB20MB5.2GHz3.9GHz2.7GHz2GHzIntel UHD Graphics 77020DDR5-5600、DDR4-32002192GB65W154W
Core i5-15600146824MB11.5MB5GHz3.7GHz2.6GHz1.9GHzIntel UHD Graphics 77020DDR5-5600、DDR4-32002192GB65W154W
Core i9-14900T2481636MB32MB5.5GHz5.1GHz4GHz1.1GHz0.8GHzIntel UHD Graphics 77020DDR5-5600、DDR4-32002192GB35W106W
Core i7-14700T2081233MB28MB5.2GHz5GHz3.7GHz1.3GHz0.9GHzIntel UHD Graphics 77020DDR5-5600、DDR4-32002192GB35W106W
Core i5-14600T146824MB20MB5,1GHz3.6GHz1.8GHz1.3GHzIntel UHD Graphics 77020DDR5-5600、DDR4-32002192GB35W92W
Core i5-14500T6824MB11.5MB4.8GHz3.4GHz1.7GHz1.2GHzIntel UHD Graphics 77020DDR5-5600、DDR4-32002192GB35W92W

 基本的には既に発表されている一般消費者向けのCore Ultra、Core(第14世代)と構成は同じで、大きな違いはvProなどのビジネス向けの機能に対応しているかどうかになる。

既に90近いデザインウインを獲得

 Intelによれば、Core Ultra vPro、Core(第14世代)vProは既にOEMメーカーに対して出荷済みで、第1四半期の間に製品が市場に投入される見通し。Acer、ASUS、Dell、HP、Lenovo、MicrosoftのようなグローバルなPCメーカーから登場する予定で、既に別記事で紹介したように、LenovoはvProに対応したThinkPadを既に発表済みだ。

 また、富士通、NEC、パナソニック、ダイナブック、VAIOといった日本PCメーカーも対応製品も含まれている。

新vProではウイルススキャン時に負荷をNPUにもオフロードできるようになる

vPro新機能の概要

 そうしたvPro対応の新製品だが、いくつかの新機能が実装されている。具体的には

①インテル・スレット・ディテクション・テクノロジー(TDT)の機能拡張
②インテル・シリコン・セキュリティー・エンジンを新搭載
③インテル・デバイス・ディスカバリーを新搭載
④インテル・デバイス・ヘルスを新搭載
⑤クラウド-ネーティブ・マネジメントの提供を開始

TDTの機能が拡張されNPUの活用に対応、セキュアブートのファームウェア保護をより協力にするセキュリティー・エンジンにも対応

 TDTは、マルウェアなどの脅威を検出するためのもので、もっとも重要な機能としてウイルススキャン時のCPU負荷をGPUにオフロードできる機能がある。Windows Defender、CrowdStrike、Acronisなどのウイルススキャンソフトウェアが既に対応しており、GPUを利用してCPUの負荷を避けつつ、ウイルス検出などができるようになっている。

 Core Ultra vProでは、このTDTの機能が拡張されてNPUへもオフロードすることが可能になった。これにより、消費電力が少なくて済むNPUを利用してウイルス検出ができるため、たとえばバッテリ駆動中にウイルススキャンを行なっても、駆動時間への影響を最小限にできる。

CrowdStrikeによればCPU負荷が、CPUだけの場合に20%の負荷が、CPU+NPUで1%になる

 ただし、新しいハードウェアのサポートということで、ソフトウェア側の対応が必要になる。今回IntelはBUFFERZONE Securityの「Safeworkspace Pro」のNPU対応版を公開したほか、CrowdStrikeが開発意向表明を行なったことを明らかにした。

 CrowdStrikeによれば、従来はCPU負荷が20%だった処理が、NPUを利用することで1%に下げることが可能になるという。NPUはCPUよりも圧倒的に高い電力効率(つまり同じ処理をさせても消費電力が少ない)で実行できるため、ノートPCユーザーなどには朗報と言え、Windows Defenderなどの対応にも期待したいところだ。

デバイス・ディスカバリーとデバイス・ヘルス

 また、セキュアブート時にファームウェアの改ざんがないかどうかをシリコンベースで確認するシリコン・セキュリティー・エンジン、管理者がPCの状況を確認する時の助けとなるデバイス・ディスカバリーとデバイス・ヘルスなども追加されている。

クラウド-ネーティブ・マネジメントの提供を開始

 AMT(アクティブ・マネジメント・テクノロジー)の機能を利用して遠隔地からPCをリモート管理するサーバーソフトウェアとなるEMA(エンドポイント・マネジメント・アシスタント)のクラウド・ネーティブ版となる「クラウド-ネーティブ・マネジメント」が発表された。

 従来のEMAはクラウドでも使えるが、基本的にはオンプレミス版という扱いになっていた。そこで、クラウド-ネーティブ・マネジメントでは最初からクラウド上でSaaS(Software-as-a-Service)として提供され、サードパーティーのソリューションに統合することも可能になるとことで、AMTを活用したPCのリモート管理が、よりモダンな形でできるようになり、PC管理者にとっては朗報と言える。