トピック
2024年も止まらないAIの進化と、「AI PC」という新たな可能性
~インテルCore Ultraプロセッサー、そしてArrow Lake、Lunar LakeでAIはどう進化するのか
- 提供:
- インテル株式会社
2024年1月26日 17:06
生成AIが多くの産業の形を変えていっている、そうしたことを象徴していた今年のCES
CES 2024ではAIが大きな話題になっていた。IT産業にとってAIは新しい話題ではない。しかし、一昨年に登場したGPTのような大規模言語モデル(LLM)と呼ばれるOpenAIのChatGPTや、MicrosoftのCopilotといった新しいAIアシスタントは、「生成AI」と呼ばれ、IT業界に留まらず、広く社会一般に大きな影響を与えている。
今年(2024年)のCESではそうした生成AI由来のサービスが、ITだけでなく、これまでITにはあまり関係がなかったような産業にも波及していることが非常に印象的だった。
たとえば、CES初日の基調講演は、化粧品メーカーのロレアル・グループによるものだった。ロレアルはフランスの化粧品メーカーで、アナログな製品を主に取り扱っている。そんな一見デジタルとは縁遠いようなロレアルが「デジタル・ファースト」を宣言し、生成AIを利用して人間にお化粧品の提案をするAIアシスタントをデモしたのだ。
そのような新しいITを活用したコスメソリューションは「ビューティテック」と呼ばれ、今回のCESで大きな注目を集めるジャンルになっていた。
同じ事は、アグリテックと呼ばれる農業の革新でも見受けられた。今年のCESにはグローバル農機トップメーカー3社に含まれる米ジョンディアや、日本のクボタが出展しており、こちらも大きな注目を集めた。いずれの企業も、AIによる画像認識を利用して、データを活用した農業の革新や農機の自動運転などに関しての説明を行なった。
自動車もまたその端的な例の1つだった。既に自動車はCESの中で最も大きなカテゴリの1つで、最も大きな展示ホールになるウエストホールには入りきらず、別のホールにも展示が進出するような状況だ。
このように、本年のCESでは昨年(2023年)にも増し、ITとは縁遠いように見える業界までもがITを活用した技術を展示する事例が目立っていた。
CESのもう1つのトレンドはAI PC
CES 2024で、もう1つこれまでになく大きな注目を集めていた業界がある。それはPC業界だ。今回のCESでは多くのPCメーカーが「AI PC」と呼ばれるPCを発表した。
AI PCとは、AIをクラウドではなく(あるいはクラウドの割合は少なく)、ローカルのCPU/GPU/NPUなど各種プロセッサで処理されるPCのことを意味している。昨年12月にインテルが発表したインテルCore Ultraプロセッサーでは、新たにAIを高性能かつ高い電力効率で処理できるNPUが内蔵された。このインテルCore Ultraプロセッサーのような、NPU内蔵のSoCを搭載したPCのことをAI PCと呼び、今回のCESでは実に多くの製品が発表されたのだ。
そうしたPC業界のリーダー企業であるインテルのパット・ゲルシンガーCEOは、CES初日の基調講演に登壇し、AIに関する講演を行なった。
IT企業には、AIにより積極的アプローチを取る企業も、消極的アプローチを取る企業もあるが、ゲルシンガーCEOは「私はテクノロジに対して楽観主義だ。テクノロジそのものは常に中立であり、それが良いのか悪いのかは使う人間次第だ。テクノロジは40年間にわたって解決すべき問題を解決していた。AIも同様だが、活用すれば人間が抱えているさまざまな課題を解決できる」と述べた。
ただ、ゲルシンガー氏は「そうしたAIの進化は、常にオープンである必要があり、説明責任も求められている」と述べる。また、社会や政治との対話も必要で、そうした対話をしつつ、理解を得ながら発展させていく必要があると説明した。
そうしたAIは、これまでは主にクラウド、つまりインターネットの向こう側にあるデータセンターのCPUやGPUなどを利用して処理されているが、同氏は、今後の大きなトレンドとして、それがエッジ側、つまりPCやスマートフォンなどのデバイス上にあるCPU、GPU、NPUなども併用して処理されるハイブリッド化が進むとの見解を示した。
そうしたトレンドの代表例が「AI PC」だとゲルシンガーCEOは強調し、インテルCore Ultraプロセッサーは、その動きを加速していくと述べる。
「Wi-Fiの黎明期に我々はそれを統合したPCプラットフォームとしてCentrinoを立ち上げた。その結果、Wi-Fiは全てのカフェ、ホテルの客室、オフィスに用意されるようになった。それから20年後の今、我々がAI PCで行なっているのも同じ事だ。AIワークフローを処理するNPUをPCに追加し、ユーザー体験を大きく変えようとしている」(同氏)。
また、インテルCore Ultraプロセッサー搭載の新製品も紹介された。
PC産業の歴史がAI PCでも繰り返される
ただ、ここで重要な事は、AI PCのハードが出そろうだけでなく、実際にユーザーが「便利だ」と感じるアプリケーションも必要ということだ。
PCの歴史では、新しい機能を持つ、あるいはより高性能なハードが登場すると、それを活用するソフトが登場し、そして、新しいソフトが登場すると、今度はさらに快適に動作させるハードが登場するという繰り返しを行ないここまで発展してきた。今まさに、AI PCという新しいハードが登場したタイミングだからこそ、AI PCをより便利にするアプリケーションの登場が重要になる。
そういった一例として、インテル自信がCESにおいて開催した記者会見の中で、インテルCore Ultraプロセッサーを利用して手話をテキストに変換できるAI PC向けのアプリケーション「OmniBridge」のデモを行なった。
またインテルはこの会見で、既に100以上のISV(独立系ソフトベンダ)がAI PCの開発プログラムに参加しており、300を超えるAI機能が既に準備されているという。今後こうした動きがさらに加速され、多くのISVがAI PC向けのアプリケーションソフトウェアを作ることになるだろう。
インテルはAI PC向けのソフトを開発可能なツールとして「OpenVINO ツールキット」(以下OpenVINO)を用意している。AI処理はNPUだけでなく、CPU、GPUコアでも行なわれるため、AI PC向けソフトの開発にあたっては最適化が必要だ。OpenVINOを利用すると、それが容易になり、既存のアプリをNPUに対応させることも最低限で済むメリットがある。OpenVINOは無償で配布されており、誰でもAI PC向けのアプリケーションの開発が可能だ。
また、OpenVINOを利用してAI PCのアプリケーションを開発しようという開発者向けのコミュニティとして日本のインテルは「インテルAI PC Garden」(以下AI PC Garden)をDiscord上で運営している。
AI PC Gardenでは、たとえばラウンジチャンネルで参加者同士によるブレインストーミングを可能にしており、あるいは、技術的に困ったことがあれば技術相談チャンネルで相談できる。これからこうした市場に参入しようというISVの開発者は、ぜひともAI PC Gardenに参加して自社のAI PCソフトの開発に役立ててほしい。
2025年までに1億台のAI PCがユーザーの手元に
AI PCはこれから立ち上がっていくものだが、インテルは2025年末までに1億台のPCがAIアクセラレータ(この場合にはNPU)を搭載するようになると宣言しており、それを実現するためのロードマップも公開されている。2024年後半に計画されているArrow Lake、Lunar Lake、そして2025年に計画されているPanther Lakeの3製品だ。
Arrow LakeはゲーミングPCやデスクトップPC向けのNPU対応プロセッサとなる。そしてLunar LakeではNPUの性能が3倍以上に引き上げられる。かつ電力効率も大きく改善されるため、より薄型軽量や長時間バッテリ駆動のAIノートPCを作ることが可能になる。
AIへの注目度やこういったインテルロードマップを見ると、2025年末までに1億台のAI PCという公約は決して夢物語ではないと感じられる。また、そのことはAI PC向けアプリケーションを開発するISVにとって、大きなポテンシャルを秘めた市場が待ち受けていると言うことも意味する。
【お知らせ】インテル最新動向をライブ配信で解説!【1月29日(月)20時配信開始】
“AI”をキーワードに大きく変わり始めたPC。2024年のPCの進化を知るカギはインテルにあり!CES 2024におけるPC Watchの取材を元に、今、そしてこれからのインテルの動向をライブ配信で詳しく、分かりやすく解説します。
各社が推進するPCでのAI活用、それを大きくブーストする“AI PC”、各社から一斉に発売されたインテルCore Ultraプロセッサー搭載PC、そして早くも見えてきた次世代CPUなど盛りだくさんの内容を、CES 2024を現地取材したテクニカルライター笠原一輝氏と学術系VTuber アキバ機土が解説。司会はPC Watchの編集長若杉紀彦です。
ライブ終了後は即アーカイブを視聴できます。