トピック
地震・豪雨で被災したHDDからもデータ復旧できる!HDDは"乾かさず濡れタオルで包んで保存"が正解
~復旧のプロ「デジタルデータリカバリー」に災害時のデータ復旧技術の最前線を聞いてきた
- 提供:
- デジタルデータソリューション株式会社
2023年8月21日 06:30
日頃からどれだけデータのバックアップに注意をしていても、大規模な洪水や、地震といった突発的な災害となると、万全な対応は難しい。先日も秋田で記録的な豪雨が発生するなど、災害はいつ、どんな時に襲ってくるか分からない。
ところで、こうした災害で失われたデータを取り戻すために奮闘するデータ復旧業者があることはご存知だろうか?
今回、14年連続データ復旧国内売上ナンバーワンのデータ復旧サービス「デジタルデータリカバリー」で、データ復旧エンジニア歴10年以上を誇る薄井雅信氏に直接話を聞いてきた。
相談実績36万件以上、復旧率最高値は95.2%を誇る同社の中でも、薄井氏は累計復旧件数1.5万件超のトップエンジニアで、過去に数々の災害案件からデータを救ってきた実績を持つ。
災害によるデータ復旧の実績が多数
日本国内で災害が発生した際、こういう状態の機器からデータを復旧するのは難しいだろうと諦めている人が多いと思われる。累計相談件数36万件以上のデジタルデータリカバリーは、被災機器からのデータ復旧の実績も多数あるという。
「最近だと、2023年7月の秋田豪雨でも復旧の相談をいただきました。東日本大震災のような大地震で壊れたり津波で流された機器も、多数復旧しています。私以外のエンジニアが担当したものだと、知床観光船沈没事件で海から引き上げたスマホを復旧させていただいたこともあります」(薄井氏、以下同じ)。
被災した機器は、泥だらけだったり、内部まで浸水したり、高温で変形したり、通常の使用にはならない状態のものが多い。そういう状態からでも、同社では多数の復旧実績があるとのことだ。
水没したHDDにやってはいけない禁じ手とは?
日本において特に発生しやすい災害といえば、1つは地震、もう1つは豪雨や洪水による浸水だろう。後者の場合、浸かるのは真水ではなく泥水であることがほとんどで、しかも長時間浸かったままになるケースもしばしばだ。
こうした場合、何かと自分で手を加えがちだが、誤った処置をすると余計に状況を悪化させてしまうという。水没したHDDから少しでもデータを取り出したければ、やってはいけないのは意外に思う人も多いと思うが「HDDを乾燥させること」だそうだ。どのような理由によるものだろうか。
「乾燥して泥がこびりついてしまうとプラッタから剥がすのが難しくなり、より傷がつきやすくなってしまいます。そのままの状態で、濡らして絞ったタオルで包み、食品保存用のストックバックに入れ、持ち込みまで保管していただくのが、状態の変化をなるべく避ける最もよい方法です」。
こうした水害に遭遇したHDDは、自力での復旧はまず不可能であり、専門業者の手を借りることは避けられない。となると、専門業者に持ち込むまでの間にどのような状態を保っておくのかが、その後の作業が容易になるかを分ける重要な要素となるわけだ。
「そのままの状態で、濡らして絞ったタオルで包み、食品保存用のストックバックに入れ、持ち込みまで保管していただくのが、状態の変化をなるべく避ける最もよい方法です。とにかく乾燥しないように気を遣っていただきたいです」。
このほか、通電するのもNGとされる行為の1つだ。HDDは、磁気ヘッドが回転しているプラッタの上に移動し、データの読み書きを行なう構造になっている。泥や砂など、浸入した水に含まれた不純物がプラッタなどに付着したまま通電させると、プラッタと磁気ヘッドの間に挟まり、プラッタに致命的な傷がついてしまい、二度と読み出しができなくなってしまうからだ。
こうした流れを経て同社に持ち込まれたHDDは、まず筐体から取り出して泥の除去作業を行なったあと、同社のクリーンルームで開封し、診断を実施。その後は症状に応じて、部品交換やモーター交換、プラッタの洗浄といったデータ複製の準備作業が行なわれる。この間、通電することはない。
これらの原則を守っておけば、復旧の確率は高まる。同社の過去の実績の中には、3日以上水没した機器の復旧に成功した事例もあるほどだ。
なぜ地震や豪雨でこれほどまで深刻に破損した機器を復旧できるのかを聞いてみた。
「最も大きい理由は物理障害への対応力の違いですね。当社では部品交換、プラッタ洗浄などの技術を有していることはもちろん、何よりHDDを動かすファームウェアの解析・修復技術を長年磨いてきました。他社では投げ出してしまうようなHDDでもコピーを取れることが、技術の優位性に繋がっていると思います。また24時間365日受付しているので、災害の際にも迅速に対応できる環境が整っています」。
他社で復旧不可だった機器の相談件数は2016年以降で5,700件にも及んでおり、その中には4社で断られたデータの復旧に成功した事例もあるというから驚きだ。
被災したHDDからデータを救出する技術力
多数の復旧実績から蓄積したノウハウが活用され、同社が実際にHDDの復旧に成功した事例を見ていこう。1つは2022年8月に、線状降水帯による集中豪雨で、県内200カ所以上の事業所を持つ社会福祉法人の拠点で、NAS 1台とPC 3台が水没したケースだ。
このケースでは、同事業所が介護施設内で使用するシフト表や名簿、会計などすべてのデータが保存されていたほか、助成のためのデータも含まれていた。このまま復旧できないとなると業務に影響が出るだけではなく、助成の申請すら行なえなくなる可能性があった。
同社が初期診断を行なったところ、NASはファームウェア異常と論理障害を併発していることが判明。「初期診断の段階で重大な物理破損は見られなかったのですが、作業中にファームウェアの異常が発覚したため、その修復を行なったのちHDDの複製作業を行ないました。さらに論理障害も発生していたのでバイナリ解析を行ない、2本のHDDのうち1本は100%、もう1本は99.9%の復旧に成功しました」。
さらに残る3台のデスクトップPCは、水害による筐体の破損に加え、物理的な障害が発生していることが判明。過去のノウハウに基づいて部品の交換を行なった後、ファームウェアの修復を実施。最終的には前述のNASと併せ、99.9%のデータを抽出することに成功したという。
ファームウェアはHDDを動作させるプログラムであり、部品交換後ファームウェアの修復作業を行なわないとHDDが正常に動作できず、コピーを取ることも不可能だ。ファームウェア解析では、どこが問題なのか、何が原因なのかをゼロから探し、技術の開発や導入などさまざまな取組みを行なって初めて修復できるようになる。「ファームウェアの解析・修復技術力はその復旧会社の物理復旧の技術力とも言えます」。
特筆すべきなのは、これらの修復作業は同社に機材が持ち込まれた翌日には作業を終えていることだ。災害対応も前提に24時間365日年中無休で受け付けし、復旧体制を整えている同社のスピード感が発揮された格好だ。
「午前中に九州まで診断に来てほしいと電話をいただき、当日中にエンジニアが東京から伺ったこともあります。データ復旧のご相談は緊急度が高く、データがないと業務停止になってしまうことも多いので、そのくらいのスピード感で対応させていただいています」。
これらスピード感のある作業を支えているのが、同社が保有している7,300台以上のHDDの部品在庫だ。こうしたドナー部品のストックがない同業他社では、部品の取り寄せに多大な時間がかかり、また最終的にはそれが適合せずに再取り寄せとなることもある。しかし同社は型番や製造年が異なるドナー用のHDDを7,300台以上も確保しているため、部品を的確に選定し、迅速な交換が行なえる。
「2020年の熊本豪雨では、30数台にもおよぶHDDの復旧作業において、交換用の部品を一切新規購入せずに、短期間で作業を完了させた実績もあります。7,300台ものドナーHDDを確保していることによるものですね」。
新しい復旧技術の開発でデータ復旧率がさらに向上
同社は、新しい復旧技術の開発や導入にも余念がない。2021年に東京都の経営革新優秀賞を受賞したスクラッチ障害の復旧技術がその代表例だ。ディスクの表面であるプラッタに磁気ヘッドが接触することによって発生するスクラッチ障害は、復旧難易度が高いことから、他社ではさじを投げてしまうケースもほとんど。
一方、同社はスクラッチ復旧技術を自社内での研究/開発により確立。これに同社独自のファームウェア解析/修復技術を組み合わせることで、他社が修復不可と診断したデータの修復にも繰り返し成功している。
その成果の1つに、経年劣化と見られる故障で5年近く放置されていたHDDからのデータ救出に成功した事例がある。この事例では、HDDのメーカーに復旧を依頼したところ不可能と診断されたものの、家族との大切な思い出の写真や動画が大量に入っていたため諦められず、HDDごと数年にわたって保管していたのだという。
同社に持ち込まれた時点では、HDDのすべてのプラッタに損傷が見られ、また他社が行なった修復作業によるものか、本来ならば4本あるはずの磁気ヘッドの1本が失われているなど、部品も揃っていない状態だった。
ドナーHDDから部品を交換して修復作業を行なったものの、データの読み出しは行なえなかったが、ちょうどその1カ月前に海外から導入していた新しい修復技術を用いてファームウェアの解析を行なったところ、データ領域のアクセスに成功。一部のみとはいえデータを復元できた。
「技術導入で獲得した技術のおかげでデータ領域にアクセスできるようになり、一部とはいえお客様にデータをお戻しすることができました。仮に技術導入するよりも前にご依頼いただいていた場合、復旧できずにお返しすることになっていたかもしれません」。
こうした新しい技術の導入によって、データの抽出率がアップした事例はこれだけにとどまらない。たとえば、高さ1mのデスクから落下させたためにノートPCから認識できなくなった外付けHDDの事例では、開封して診断を行なったところ、プラッタの一部が激しく損傷しており、本来のプログラムで読み込もうとするとすぐに停止してしまうことが判明。
そのため磁気ヘッドなど基本的な部品の交換作業を行なったあと、損傷した部分を避け読み取りを行なうという同社独自のファームウェア解析技術を用い、損傷の少ない部分のコピーを行なうことで、約49%のデータを復旧できた。
デジタルデータリカバリーは15年以上ファームウェア解析の検証・技術開発を行なってきた。現状1万通り以上パターンの解析を終えて、最も安全で確実な復旧方法を選択できるという。「ファームウェア異常だとHDDを開封せず復旧することが可能ですが、他社で誤った診断により開封してしまった事例もよく見ます」。
もっとも、これだけで満足する同社ではない。「普通ならばこれで終わりなのですが、弊社のスクラッチ加工技術を使用して極力元の状態に戻すことにより、約49%だったコピー率が約13.8%アップしまして、最終的に約62.8%のデータを抽出することに成功しました。『1秒でも早く、1つでも多くのデータを最も安全に復旧すること』がエンジニアの使命だと考えています」。
20年間復旧技術の研究開発を行なってきたデジタルデータリカバリーは、こういった災害やスクラッチ障害など、重度障害が発生しているHDDから1つでも多くのデータを取り出すため尽力してきた。
万一の場合にユーザー側でできる対策は
最後に、万一HDDが動作しないとなった場合に、ユーザー側でできる対策についても聞いてみた。
まず行なうべきなのは、ケーブルやアダプタが正しく接続されているかの確認。次いで電源ランプやスイッチの確認。基本中の基本だが、これらを見落とすケースは少なくないとのこと。またドライバが最新版にアップデートされているかも要確認だ。
それでも動作しないとなった場合も、電源のオン/オフや再起動の繰り返しは厳禁だ。地震後に数回再起動したことで、スクラッチが悪化し、復旧の難易度が上がってしまった例もあるという。
また、初期化やフォーマットはもちろんのこと、Windowsのチェックディスク(chkdsk)もNGだ。本来は状態を改善できる機能ではあるが、物理障害が発生している状態で実行すると、状態をより悪化してしまうこともある。同社によると、ユーザーが自力で復旧ソフトを利用した結果、データ領域に完全に上書きしてしまうケースも過去に報告されているとのこと。
「昔よりも増えているご相談として、クローンディスクを自分で作成したというものがあります。オリジナルのHDDに対して作業を行なうことはNGだと理解しているお客様が増えてきているものの、その代わり自身でHDDを複製してからデータの抽出を試みるわけです。
しかし、HDDを複製すると、普段使わない領域や劣化している領域、不良セクタが発生している領域に対しても負荷をかけてしまうため、状況を悪化させてしまい、復旧の難易度を上げてしまうことになります」。データを安全に復旧させたいのであれば、自身の知識を過信せず、場数を踏んだ専門家に任せるのが第一だろう。
このほか日頃からできる対策として、同社ではバックアップは「3つ」、さらに保存先の記憶媒体は「2種類以上」とすることを推奨しているほか、クラウド上へのバックアップも積極的に推進している。また落雷時には電源を切ってコンセントから抜くことや、濡れない場所へ移動させることも重要であるとしている。
とはいえ、最終的な復旧作業について、素人が行なえるものではないことは共通している。本気でデータを取り戻したければ、とにかく早い段階で国内屈指の復旧技術力を持ち、プロである同社に任せるのが最善の策であることに違いはない。災害時はもちろん平常時も、HDDのトラブルに遭遇した場合、同社の扉を叩いてみてはいかがだろうか。