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今だからこそのRocket Lake自作!安定・お手頃のH570マザーで作る"ちょうどいい"ゲーミングPC

ゲームマシン自作は予算配分が勝負。ビデオカードに予算を割くためのプランとは?

 「Windows 11も出てきたしそろそろ新しいゲーミングPCを自作したい……」と考えている自作PCユーザーは多いだろう。とくについ先日最新CPUのAlder LakeことIntel第12世代Coreプロセッサーがリリースされ、新マシン作成の機運が高まっているタイミングでもある。しかし、Alder LakeプラットフォームはCPU、メモリ、マザーすべてがまだ高価格で、これにいまだ高騰中のビデオカードを組み合わせるとかなりの出費になってしまう。そもそも、ゲーミング性能を重視するなら、まず重視すべきは何と言ってもビデオカード。まだ割高感のある最新CPUよりもビデオカードに予算をかけたいところだ。

 今回はその観点から、あえて価格もすっかり落ち着き枯れた安定感もあるRocket Lakeに、コストパフォーマンスの高いH570マザーボードを組み合わせて”ちょうどいい”ゲーミングPCを自作したい。

ゲーミングPCは“ビデオカード”に予算を投入すべし

 2021年も秋から冬にかけては、人気シリーズの最新作「バトルフィールド 2042」や「Call of Duty: Vanguard」、「Forza Horizon 5」や新たなサバイバルゲーム「ICARUS」などAAA級PCゲームの発売ラッシュだ。年末年始の休みを利用して、ガッツリ遊ぼうと考えている人も多いだろう。コストパフォーマンスと最新ゲームも快適に遊べる性能のバランスを考えた場合、予算を最大限割り振るのは当然ゲーミングPCの心臓部と言える「ビデオカード」だ。

 今回はビデオカードの予算を10万円以下とした。これで筆頭に上がるのは「GeForce RTX 3060 Ti」だろう。前世代のハイエンドクラス「GeForce RTX 2080 SUPER」を超える性能を持ちながら、カード電力は200WとRTX 2080 SUPERの250Wよりも低く、ワットパフォーマンスも改善している点が大きな魅力。レイトレーシングやDLSSも利用でき、フルHD解像度で高フレームレートを狙う、AAA級ゲームを高画質/WQHD解像度で遊ぶといった目的にピッタリだ。

ASUSTeKのDUAL-RTX3060TI-O8G-MINI-V2。LHR版のGeForce RTX 3060 Tiを搭載し、実売価格は87,000円前後。2スロット厚でカード長は20cmと比較的コンパクトでPCケースを選ばず組み込みやすい。補助電源は8ピン×1仕様で、映像出力はDisplayPort 1.4a×3、HDMI 2.1×1だ。

 RTX 3060 Tiは一部の高OCモデルを除き、8万円台が主流だ。今回はASUSTeKの「DUAL-RTX3060TI-O8G-MINI-V2」をチョイスした。マイニングを制限したLHR版のGeForce RTX 3060 Tiを搭載、ブーストクロックはOCモードで最大1,710MHzと定格の1,665MHzからオーバークロックを行なっている、いわゆる「ファクトリーOC」モデルだ。

 続いて決めるべきはCPUとマザーボードだ。最新環境を狙うなら、第12世代Coreプロセッサーと原稿執筆時点で唯一の対応チップセットZ690搭載マザーの組み合わせになるが、まだ発売されて間もないこともありCPUの価格は高め、Z690マザーも大電力を求めるCore i9-12900Kに対応するため強力な電源部を備えていることもあり、高価なものが多い。

 さらに、Alder Lakeで初対応となるDDR5メモリは極端な品薄が続いているという問題もある。Alder LakeはDDR4にも対応しているので、DDR4対応Z690マザーと組み合わせるという手もあるが、それだと最新鋭という感じが薄れてしまうのがちょっと残念だ。

 初物で品薄傾向、価格もまだ高い、コストを抑えてDDR4にすると最新鋭になり切れない、という点も考慮すると、それならいっそ1世代前というチョイスもありなんじゃない? というのが今回のプランのキモだ。CPUの価格がこなれており、コストパフォーマンスの高いマザーボードの選択肢も幅広い。メモリもDDR4対応なので品薄に悩む必要もない。

 CPUは8コア16スレッドのCore i7-11700Kを選択。価格重視なら「K」が付かないCore i7-11700もアリだが、Core i7-11700KのほうがTurbo Boost時の動作クロックが最大5GHzと高く、よりゲーム向きだ。

CPUは8コア16スレッドのIntel「Core i7-11700K」。実売価格は46,000円前後

 今回はOCを視野に入れていないので、マザーボードはZ590チップセットではなくH570チップセットを採用。ASUSTeKの高耐久仕様ながらコスパも良好で人気のTUFシリーズから「TUF GAMING H570-PRO」をチョイスした。電源部は8+1フェーズのDrMOSと十分な規模で、バックパネルにはUSB 3.2 Gen 2x2対応のType-Cも用意。M.2スロットはPCI Express 4.0 x4対応が1基、3.0 x4対応が2基と全部で3基もあり、ストレージを追加しやすく、さらにすべてにヒートシンクを搭載。ハイエンドのNVMe SSDでも安心して使える。

マザーボードはH570チップセット搭載のASUSTeK「TUF GAMING H570-PRO」。実売価格は20,000円前後
電源回路は8+1フェーズのDrMOSを採用。CPUの補助電源は8ピン×1だが可能だ
M.2スロットは3基あり、すべてにヒートシンクを搭載

メモリは最近のゲームは16GB以上を推奨することもあるため、DDR4-3600で8GB×2枚のMicron Crucial Ballistix BL2K8G36C16U4BLを選択した。DDR5の登場でいずれは世代交代していくだろうが、DDR4メモリは少なくとも今はOCタイプも定格タイプも問題なく手に入るし、価格も安定しているという安心感も大きい。

メモリはMicronの「Crucial Ballistix BL2K8G36C16U4BL」。DDR4-3600対応で8GB×2枚組だ。RGB LEDも内蔵する。実売価格は13,000円前後

 ここまでのCPU+マザーボード+メモリの合計金額は79,000円前後。これを最新世代に置き換えるとCPUがCore i7-12700K(実売価格:53,000円前後)、DDR5対応Z690マザーボードがASUSTeK PRIME Z690-A(実売価格:36,000円前後)、メモリがDDR5-4800で8GB×2枚のMicron Crucial CT2K8G48C40U5(実売価格:18,000円前後)で合計107,000円前後と28,000円もアップしてしまう。CPUをワンランク下げて、Core i7-12600K(実売価格:39,000円前後)に変更しても14,000円のアップ。ゲーミングPCならば、その分の予算をビデオカードに回したほうがゲームライフは充実したものになるだろう。

 それでは、Rocket Lake+H570+RTX 3060 Tiを中心としたゲーミングPCを実際に組み立ててみよう。今回用意したパーツは下記のとおり。

テストに使用した機材構成
カテゴリー製品名
CPUIntel Core i7-11700K(8コア16スレッド)
マザーボードASUSTeK TUF GAMING H570-PRO(Intel H570)
メモリMicron Crucial Ballistix BL2K8G36C16U4BL
(PC4-28800 DDR4 SDRAM 8GB×2)
ビデオカードASUSTeK DUAL-RTX3060TI-O8G-MINI-V2
(NVIDIA GeForce RTX 3060 Ti)
SSDSolid State Storage Plextor M10PGN PX-512M10PGN
[M.2(PCI Express 4.0 x4)、512GB]
ケースIn Win IW-103-White(ATX)
電源ASUSTeK ROG-STRIX-750G(750W、80PLUS Gold)
CPUクーラーCoolerMaster Hyper 212 EVO V2(サイドフロー、12cm角)
ケースファンASUSTeK ROG Strix XF 120(12cm角)×3
CPUクーラーはCoolerMasterの「Hyper 212 EVO V2」。12cm角のファンを持つサイドフロー型で実売価格は5,000円前後
ストレージはSolid State Storage Technologyの「Plextor M10PGN PX-512M10PGN」。PCI Express 4.0 x4対応のハイエンドNVMe SSDだ。実売価格は12,000円前後
電源はASUSTeKの「ROG-STRIX-750G」。出力は750Wで80PLUS Goldを取得している。実売価格は18,000円前後
In Winのミドルタワーケース「IW-103-White」。実売価格は11,000円前後
本作例に限らず、ゲーミングPCでは強力なビデオカード、CPUを搭載することが多いため、性能維持・安定性のためにもPCケース内の空気の流れ(エアフロー)にも気を使ったほうがよい。ケースファンの数が少ないPCケースを使用する場合は、別途ケースファンを増設することも検討しよう。写真はASUSTeKの12cm角ケースファン「ASUSTeK ROG Strix XF 120」。実売価格は3,500円前後

裏面配線しやすくケーブルはスッキリ

 今回の構成はストレージが配線いらずのM.2タイプが1基だけ、CPUクーラーも簡易水冷ではなく空冷タイプと組み立てに難しいところはほとんどない。PCケースのIn Win「IW-103-White」は、最近ではめずらしい電源を天板に配置するタイプ(現在のスタンダードは底面設置)。天板側にファンやラジエータを設定できないデメリットはあるが、CPU補助電源やメイン電源ケーブルを配線しやすく、組み立てしやすかった。

各パーツを組み込んだ状態。ケーブルはスッキリできた
今回の電源はフルプラグインタイプなので必要な電源ケーブルだけに絞れるので、裏面の配線も最小限にできる
ケースファンは側面にも設置。排熱を重視してファンの向きは排気側にした
底面にもファンまたはラジエータを設置可能。さらなる冷却力の補強もできる
ケース前面にはアドレサブルRGB対応のLEDを搭載。マザーボード各社のRGBコントロールアプリで制御できるほか、付属のコントローラを使って発光させることも可能だ
シャドーベイもあるので、HDDやSSDの増設も手軽に行なえる

重量級ゲームもWQHDまでなら最高画質でOK!

 ここからはWindows 11をインストールし、実際の性能をチェックしていこう。まず触れておきたいのがパワーリミットだ。Core i7-11700Kの定格はPL1が125W、PL2が250Wだ。今回使用したマザーボードの「TUF GAMING H570-PRO」は、デフォルト設定だとPL1が200W、PL2が250Wに設定されている。PL2での動作時間は56秒に設定されており、それを超えるとPL1でのパワーリミット動作となるが、デフォルトだと200Wなので、高クロック動作が引き続き維持されるといわけだ。

 これを定格動作に切り換えたい場合は、UEFIメニューで「ASUS Performance Enhancement 2.0」を「Disabled」にするだけと簡単だ。発熱や消費電力は大きくなるが、パワーリミットの上限を上げて高クロック動作を維持したい場合は「Enabled」に、消費電力や発熱の軽減を狙って定格にしたいなら「Disabled」と、目的に合わせてサッと切り換えられるのはありがたい。

UEFIメニューの「Ai Tweaker」にある「ASUS Performance Enhancement 2.0」をEnabledにするとPL1=200W、PL1=250W動作、Disabledにすると定格のPL1=125W、PL1=250W動作

 パワーリミットの上限をアップさせたPL1=200W、PL1=250W動作と定格のPL1=125W、PL1=250W動作でCPUの動作クロックや温度、性能がどう変化する確認してみよう。CPUクロックの推移と各部の温度の推移は、「OCCT 9.1.4」のCPUテスト(テストモード:エクストリーム、負荷タイプ:一定)を10分間動作させたときのものだ。システム全体の消費電力はラトックシステムの「REX-BTWATTCH1」で測定している。

CPUクロックの推移
各部の温度の推移
システム全体の消費電力

 PL1=200W、PL1=250W動作では多少のブレがあるものの56秒を過ぎても約4.3GHzの高クロック動作を維持しているのが分かる。一方のPL1=125W、PL1=250Wは56秒を過ぎると約3.8GHzまで落ちる。この差は温度の推移にも表われており、PL1=200W、PL1=250W動作ではCPU温度は最大88度、最大68度までアップ。

 これでも心配はいらない温度だが、PL1=125W、PL1=250WならCPUは最大79度、VRM温度は最大61度まで下がる。消費電力を見てもOCCT時はPL1=200W、PL1=250W動作が安定時でも256Wあるのに対してPL1=125W、PL1=250Wでは189Wまで下がる。3DMark時がほぼ同じなのは、CPUの負荷よりもビデオカードの負荷の方が大きいためだ。

 性能で見てみるとCPUの最大級の負荷をかけるCINEBENCH R23では、高クロックを維持できるPL1=200W、PL1=250W動作のほうがMulti Coreのスコアは上回る。しかし、一般的な処理で性能を測るPCMark 10では、負荷の大きいクリエイティブ系のDigital Content Creationでは多少差があるものの、それ以外だと処理の負荷が小さいため誤差レベル。

 3DMarkもビデオカードでの処理がメインになるので、スコアは誤差レベルになる。これをどう見るかは人によるが、ゲーミングPCとしてゲームプレイをメインとして運用するならば定格のPL1=125W、PL1=250W設定でよいのではないだろうか。

CINEBENCH R23
PCMark10 v2.1.2531
3DMark v2.21.7312

 続いて実ゲームの性能もテストしておこう。ここからはパワーリミットを定格のPL1=125W、PL1=250W設定にしている。根強い人気のFPS「レインボーシックス シージ」、定番バトルロイヤルFPS「Apex Legends」、この秋発売のFPS「Call of Duty: Vanguard」とレースゲーム「Forza Horizon 5」、発売から1年近く経つがアップデートを経て評価を上げつつある「サイバーパンク2077」、そしてオープンワールドFPS「ファークライ6」を用意した。

 レインボーシックス シージとForza Horizon 5、ファークライ6はゲーム内蔵のベンチマーク機能を使用、Apex Legendsはトレーニングモードで一定の動作をした際のフレームレートを「CapFrameX」で計測、Call of Duty: Vanguardはキャンペーンモードをプレイした際のフレームレートを「CapFrameX」で計測、サイバーパンク2077は一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定している。

レインボーシックス シージ(Vulkan、画質“最高”、レンダリングスケール100%)

 レインボーシックス シージは軽めのゲームということもあり、フルHDなら平均376fpsを実現。360Hzなど超高リフレッシュレート液晶の性能も活かせるフレームレートだ。また、4Kでも平均121fpsと十分快適にプレイできるのが分かる。

Apex Legends(最高画質)
Call of Duty: Vanguard(画質“ウルトラ”、DLSS“バランス重視”)

 ゲーム負荷としては中量級として分類されえることが多いApex LegendsもフルHDで平均248fpsと十分高いフレームレートを出し、4Kでも101.2fpsと快適にプレイできる。Call of Duty: Vanguardは新しいゲームでグラフィックスも美麗だが、DLSSが使えることもあって4Kでも平均71.7fpsと快適に遊べるフレームレートが出ている。

Forza Horizon 5(画質“エクストリーム”、平均)
サイバーパンク2077(画質“レイトレーシング:ウルトラ”、DLSS“バランス”)
ファークライ6(画質“最高”、レイトレーシング有効)

 重量級ゲームになるとちょっと事情が変わってくる。Forza Horizon 5は4Kで平均55fpsとプレイできるフレームレートを出しているが、サイバーパンク2077ではDLSSを有効にしても平均28.8fpsとかなりカクついてしまう。WQHDでも平均52.4fpsと発売から1年経過してなお最重量級のゲームと言える。今回のPCで快適にプレイするにはフルHDにするかちょっと画質設定を下げてWQHDでプレイするのがよいだろう。ファークライ6は、4Kにすると極端に重くなる。WQHDなら画質を最高設定でも平均74fpsと快適にプレイが可能だ。

 ちなみに、サイバーパンク2077プレイ中のCPU、GPUの動作クロックと温度の推移もチェックしてみた。

サイバーパンク2077プレイ時のCPU/GPUクロックの推移
サイバーパンク2077プレイ時のCPU/GPU温度の推移

 ゲームの状況によってCPUの負荷は大きく変わっているが、GPUはおおむね1,800MHzから1,840MHzで推移。ゲームプレイ中はブーストクロックの最大1,710MHzを超えて動いているのが分かる。温度はCPUが最大80℃、GPUは最大70℃とまったく問題のないレベル。GPUはコンパクトな基板でツインファン仕様だが、十分な冷却力が確保されていると言ってよいだろう。

 最後に動作音を見ておこう。PCの正面10cmの位置に騒音計を設置して測定した。暗騒音は33dBだ。ファンの回転数制御には、マザーボードのFan Xpert 4を使用し、「標準」設定でテストを行なっている。

ファンの制御はマザーボードのFan Xpert 4を使用。「標準」に設定している
動作音

 アイドル時はほとんどファンの音が気にならないレベルだ。OCCTを動作してCPUに負荷がかかるとそれなりに動作音は大きくなるが、回転音が低めなのもあって筆者としては不快感はなかった。

ゲーミング性能重視ならRocket Lakeもアリ

 ゲーミングPCを自作する際に、限られた予算の中でビデオカードに最大限予算を割り振りたいならRocket Lake環境を選ぶのは十分アリだろう。発売されたばかりでCPU以外もまだ高価なAlder Lake環境とは異なり、すでに枯れた環境であるRocket Lakeは安定性・コスト面で手を出しやすい。H570マザーボードなどは機能のわりに価格がこなれており、ゲーミングPCのベースに据えるにはなかなか優秀だろう。

 実際、今回の構成なら重量級ゲームもWQHDまでなら高画質で十分プレイできるパワーを持っている。フルHDなら高フレームレートを出せるので、eスポーツ目的にも十分対応可能だ。AAAゲームが目白押しなこの2021年末、Windows 11対応のゲーミングPCを1台自作してみるのもいいのではないだろうか。