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クリエイターはもうこれ1台でいい。Core i7-11800H+RTX 3080+4K有機ELを2kgに収めた「GIGABYTE AERO 15 OLED」の高性能

~メモリ64GB化にも挑戦

 GIGABYTEのAERO 15 OLED(第11世代Intel Core i7 プロセッサー)はプロクリエイター向けをうたう薄型軽量の高性能ノートPCだ。先進のTiger Lakeベースの8コアCPUとNVIDIA GeForce RTXを搭載する高性能、正確な色再現ができる有機EL(OLED)ディスプレイ、高速なデータ転送ができる接続性など、クリエイターの装備を約2kgのスリムで堅牢な筐体に収めている。実際のクリエイティブでの性能、使い勝手はどうか。じっくりと検証してみた。

GIGABYTEのAERO 15 OLED(第11世代Intel Core i7 プロセッサー)は、重量約2kgのスリムで堅牢なボディに、色再現性の高い有機ELディスプレイと先進の高性能を備えたクリエイターノートPCだ

 AERO 15 OLEDの最新世代モデルは5種類のモデルをラインナップ。評価機「YD-73JP624SP」は上位から2番目にあたるハイグレードモデルだ。

評価機のスペック
AERO 15 OLED YD-73JP624SP
CPUIntel Core i7-11800H(8コア16スレッド)
CPU周波数2.3GHz(最大4.6GHz)
メモリ16GB(PC4-25600 8GB×2)
ストレージ1TB SSD(PCI Express 4.0x4、NVMe)
グラフィックス機能NVIDIA GeForce RTX 3080(8GB)
ディスプレイ15.6型有機ELディスプレイ、DCI-P3比120%、DisplayHDR 400
表示解像度3,840×2,160ドット
カメラHD Webカメラ
インターフェイスThunderbolt 4、USB 3.2 Gen 1(Type-A)×3、HDMI、MiniDisplayPort、ヘッドフォン/マイク兼用、SDメモリーカードスロット(SDXC対応)
通信機能2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6対応無線LAN(2.4Gbps)、Bluetooth 5.2
バッテリー駆動時間約8時間
サイズ356×250×19.9mm
重量約2kg
OSWindows 10 Pro (64ビット)
市場想定価格35万1,780円

ビルドクオリティの高い薄型軽量筐体

 手に持つと、カッチリとタイトに組まれた剛性感の高さ伝わってくる。アルミニウム合金をCNC切削加工で成形し、AEROの特徴的なロゴを中心にしたシンプルなデザインながら、ディテールまでこだわりを感じる意匠で、さりげない上質感を演出している。

 ベゼル幅約3mmという超スリムベゼルデザインも特徴。15.6型ながら、従来の14型クラスのフットプリントを実現しており、スペックから連想するクリエイターPC/ゲーミングPCのイメージからするとかなりコンパクトに感じる。

ボディはアルミニウム合金製で非常に剛性感が高い。CNC切削加工で成形され、質感高く仕上げられている
電源ON時は個性的な字体のAEROのロゴが白色LEDで光る
ボディの具体的なサイズは、356×250×20mmで、重量は約2kgだ。スペックから連想するイメージよりもかなりコンパクトで扱いやすい

電源ボタンを押した直後に分かる超品質画面

 AERO 15 OLEDの大きなセールスポイントの1つが画面。15.6型のOLED=有機ELディスプレイを搭載していることだが、そのクオリティの高さはすぐに実感できる。

 電源ボタンを押した直後に表示されるGIGABYTEロゴの表示からして黒のクッキリ感が違う。Windows 10のデスクトップ画面に並ぶアイコン、テキストの見栄えも精細で上品。スタートメニューに並ぶアイコンも発色鮮やかで、メールの返信、書類の確認などのいつもの作業もとても気持ちいい。こうした普段使い環境の上質感もクリエイティブ作業のモチベーションアップにつながるはずだ。

 画面の精細さは、解像度が4K UHD(3,840×2,160ドット)であることが大きい。一般的なフルHDの4倍の画素を同じ15.6型の画面に詰め込んでいるため、近くで見てもドットを見分けられない。OS/ソフトウェア的にも、拡大表示(標準で250%表示)時にはアイコンもテキストも高解像度のデータが使われるので、フォントの曲線のなめらかさが違う。高解像度の写真や映像を表示すればそのなめらかさ、精細さはさらに際立つ。

 黒のクッキリ感、発色の鮮やかさは、OLEDの原理的なアドバンテージの賜物だ。OLEDでは画素を構成している有機EL素子自体が発光するため、画素1つ1つを直接操作できるため、高速かつ緻密に制御できる。

 液晶ディスプレイでは電圧をかけると向きが変わる液晶分子をバックライトのシャッターとして使うため応答速度は限界があり、黒を表示しているときでもバックライトは原則点灯している。結果として、わずかな黒浮きは避けられない。液晶ディスプレイでもエリアごとにバックライトの光量を変えるなどさまざまな工夫をしている製品もあるが、OLEDの原理的な優位は絶大だ。

 本製品が採用するSamsung製のAMOLED(Active Matrix OLED)は、最大輝度が400cd/平方mと高いだけでなく、最低輝度0.0005cd/平方mまで表現可能。コントラスト比は100,000:1と、通常のIPS液晶ディスプレイの約100倍にも上る。黒をより黒く、そして階調もなめらかに表現できる。VESAのDisplayHDR 400 True Black(HDR適性のある有機ELディスプレイであることを示すために色域や輝度/黒点輝度などの要件を既定した仕様)の基準も満たしており、HDR映像の極端な明部と暗部が混在するような場面ではとくに威力を発揮する。

15.6型、3,840×2,160ドット(4K UHD)表示に対応する有機EL(OLED)ディスプレイを採用している。近くでもドットが見えない精細さに加えて、有機ELならではのクッキリとした黒の表現、鮮やかな発色を実感できる
ディスプレイのベゼルが細いので、画面サイズが実際よりも大きく感じられる

DCI-P3を120%カバーする超広色域、正確な色を再現できるPANTONE認証

 クリエイティブ作業では色域、色再現性が重要になるが、こちらにもこだわっている。映像業界の標準であるDCI-P3を120%カバーする超広色域に対応。この広色域が実現できるのもOLEDの特性の恩恵だろう。

 さらに、X-Rite PantoneのPANTONE認証システムで全品を工場で色校正を行なってから出荷することで、色差(色の微妙な違い)を示す指標である「デルタE」も「1以下」に抑えており、きわめて正確な色再現性を誇る。

 写真のRAW現像や動画のカラーグレーディングなどは自分好みの色に調整する作業であるから、基準となる色をしっかり表示できなければ見当違いの調整をしてしまうことになりかねない。

 こうした作業をするには最低でもsRGB約100%カバーとカラーキャリブレーションは必須と言えるが、sRGBをはるかに超えるDCI-P3の色域を120%カバーし、出荷時点で色校正を行なって出荷されている本製品はプロユースの基準を満たしており、安心してクリエイティブに没頭できるだろう。

エックスライトのi1 Display Pro/i1 Profilerを用いて作成したICCプロファイルをPhonon氏制作の色度図作成ソフト「Color AC」で表示した。実線が本製品の色域で、点線で示したDCI-P3の色域を大きく上回っている(面積比119%)
i1 Display Pro/i1 Profilerで行なった画面内での輝度の均一性のテスト結果。画面下部の輝度がやや高いが、それでも最大5%と優秀な結果
i1 Display Pro/i1 Profilerで行なったグレーの均一性テストの結果。⊿Eabで最大1ときわめて優秀な結果と言えるだろう

先進の8コアCPU、Tiger Lake-Hを搭載

 CPUには第11世代CoreシリーズのCore i7-11800Hを搭載する。4コア8スレッドのモバイルPC向けが先行して製品化されていた「Tiger Lake(開発コードネーム)」の8コア16スレッド高性能版、いわゆる“Tiger Lake-H”だ。

 前世代からマイクロアーキテクチャがWillow Coveに代わって周波数あたりの性能が向上しており、さらにプロセスルールも14nmから10nm SuperFinへと進化している。4コア版のTiger Lakeは前世代(Comet Lake)の6コアモデルにマルチスレッド性能で迫り、シングルスレッド性能では凌駕するという革新的な存在だけに、その8コア版には大きな期待がかかる。

CPUはCore i7-11800Hを搭載する。開発コードネーム「Tiger Lake」の8コア版だ

ノートPC最高峰のGeForce RTX 3080 Laptopを搭載

 外部GPUとしては、NVIDIAのコンシューマノートPC向けGPUとして最高峰に位置するGeForce RTX 3080 Laptop(8GB)を搭載している。

 GeForce RTXシリーズは、レイトレーシング専用のRTコア、機械学習に最適化したTensorコアを統合しているため、GeForce GTXシリーズに対するアドバンテージが大きい。

 とくに最新世代のGeForce RTX 30シリーズでは、8nmプロセスルールの導入もあり、先代のRTX 20シリーズに比べて電力効率、絶対性能ともに大きく向上し、魅力が高まっている。

 ゲームにおいては、DXR(DirectX Raytracing)/リアルタイムレイトレーシングに対応した先進タイトルやAIを活用した高画質化機能「DLSS(Deep Learning Super-Sampling)/DLSS 2.0」に対応したタイトルを高画質で快適にプレイできる。

 クリエイティブでも、RTコアによるレイトレーシング高速化を含むGPUレンダリング、Tensorコアの機械学習性能を活用した超解像技術やリフレーム機能、特殊加工など、GTXではなくRTXシリーズを搭載していること、そしてRTXの中でも高性能なGeForce RTX 3080 Laptopを搭載していることの恩恵を得られる場面は少なくない。

 また、NVIDIA自身も、RTXシリーズの機能を活かしてノイズ除去やバーチャル背景、自動フレーミングなどができる「NVIDIA Broadcast」という配信ツールを配布している。この機能は、ビデオ会議ソフトのZoomやOBS Studioなどでも利用でき、RTXの恩恵を受けられる。

GPUはGeForce RTX 3080 Laptop(8GB)を搭載。現行のノートPC向けとして最高峰と言えるGPUだ
最大グラフィックスパワーは105W。フルパワー設定ではないものの、ボディサイズを考えると妥当だろう
CPUとGPUのパフォーマンスを最適化するモードが用意されており、標準では使用アプリをAIが自動で判断して切り換える。手動設定も可能だ
Photoshop Lightroom Classicの環境設定画面。年々GPUを有効活用できる処理が追加されている
Lightroom Classicに最近加わった「スーパー解像度」は、機械学習で解像度を2倍に引き上げる超解像度技術。ベイヤーセンサーのRAWデータを高画質化する「RAWディテール」同様、RTXシリーズのGPUを搭載していると顕著に高速化できる

PCI Express 4.0x4対応の爆速SSDを搭載

 メモリはPC4-25600(DDR4-3200)を採用しており、標準容量は16GB(8GB×2)だ。ストレージはPCI Express 4.0x4(NVMe)に対応した高速SSDを1TB搭載している。

 クリエイティブアプリは、ストレージを仮想記憶装置(キャッシュ)として利用するだけに高性能なSSDの搭載は歓迎だ。

 ただ、キャッシュの性能が気になるほどに本格的にクリエイティブに取り組むならば、メモリもストレージも標準仕様の容量では十分とは言い難いのが正直なところ。本製品に限ったことではないが、クリエイターPCを謳いながら標準のメモリ/ストレージ容量が少ない製品が多いことに歯がゆさを感じているクリエイターは少なくないと思われる。

 この点は少々残念ではあるが、本製品ではそのフォロー策が取られている。ハードウェア的な拡張性が高く確保されており、メモリスロットは2基あり、最大容量は64GBまで対応していることが明記されている。また、M.2スロットも合計2基装備しており、1基は空いている。インターフェイスはNVMe、Serial ATA両対応であることがこちらも公式に明記されている。背面カバーの構造も比較的簡素で、自分で増設を考えている方にとっては増設しやすくなっているのはよい材料だろう。

 通常、自分でメモリなどを増設するとメーカー保証は失効してしまうが、GIGABYTEのノートPCは、「秋葉原のPC専門店」パソコンショップアーク(以下 アーク)が公認カスタマイズショップとなっており、保証が有効なままメモリやストレージをカスタマイズしてのオーダーが可能だ。保証を有効にしたままカスタマイズしたい方は、アークでの購入を検討するといだろう。

PCI Express 4.0x4(NVMe)に対応した高性能SSDを搭載している。
CrystalDiskMark 8.0.2(ひよひよ氏・作)のスコア。PCI Express 4.0ならではのハイスコアだ。
背面には多数の吸気口を開けている。12本のネジを外せば背面カバーは簡単に外せる。ネジが一般的なプラスやマイナスではなく、ヘックスグローブタイプである点に注意したい
背面カバーを開けると、すぐに2基のメモリスロットと2基のストレージ用M.2スロットにアクセスできる
SSDスロット、メモリスロット共にアクセス方法は一般的なもの。経験者なら交換、増設は難しくない
71ブレードのファン2基と5本のヒートパイプで構成するWINDFORCE Infinity冷却システムを搭載。高性能なCPUとGPUを効率的に冷却できる

Thunderbolt 4をはじめ、先進の高速通信/高速インターフェイスに対応

 通信機能は2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6対応無線LAN、Bluetooth 5.2に対応する。

 最大40Gbpsのデータ転送、4Kディスプレイ出力などマルチに使えるThunderbolt 4を搭載。クリエイティブのプロユースで普及しているThunderbolt 3対応ストレージもフル性能で利用できる。最近では省かれがちなSDカードスロットも用意されている。フルサイズで、さらに高速規格のUHS-IIに対応しているのがうれしい。

 本格的なクリエイティブユースではデータの大型化は避けられないため、最大2基の内蔵ストレージだけですべてをまかなうのは事実上不可能。外付けSSDやNASなどを活用することが多いだけに、有線LAN無線LANとも高速で、プロユースの高速ストレージで普及しているThunderbolt 3の上位互換であるThunderbolt 4を搭載している点は心強い。

前面。とくに端子類はない、トップカバーの端に指がかかりやすく開きやすいデザインだ
背面。中央の飾りプレートを配置。排気口のデザインにもこだわりが感じられる
左側面。手前から2.5Gigabit Ethernet対応有線LAN、ヘッドフォン/マイク兼用端子、USB 3.0(Type-A)、Mini DisplayPort 1.4、HDMI 2.1
右側面。手前からUSB 3.0(Type-A)×2、Thunderbolt 4、SDメモリーカードスロット(SDXC/UHS-II対応)、DC入力(ACアダプタ)
SDメモリーカードスロットは、SDXCの高速規格「UHS-II」に対応している。デジタルカメラからの高速なデータ取り込みがアダプタなどなしにできるのは便利だ
手持ちの64GBのUHS-II対応SDXCカード(SanDisk Extreme Pro)でシーケンシャル性能のテストしてみた。UHS-Iの理論値(104MB/s)をはるかに超える速度が出ている。
テンキー付きのキーボードを搭載。キートップにはくぼみがあって指が置きやすく、スイッチの感触もとても良好だ
1キーごとにRGB LEDの発光色を制御できる「Fusion RGB Per-Key」仕様。ユーザーの感性に合わせてルックスを変更できる
カラーや発光パターンはユーティリティで変更できる。
Webカメラは画面の下に搭載している。スライド式のカバーが付いており、物理的に映像を流さないようにできる
Windows Helloに対応した指紋センサーをタッチパッドに装備する。指紋を登録しておけば、そっと触れるだけでスピーディなログインが可能だ

定番ベンチマークテストでスキのない高性能を実証

 ベンチマークテストの結果を見よう。評価機のスペックは、CPUがCore i7-11800H、メモリが16GB、グラフィックス機能がGeForce RTX 3080(8GB)、データストレージ1TB SSD(PCI Express 4.0x4/NVMe)、OSがWindows 10 Pro 64bitという内容だ。

 比較対象として、筆者が2019年に購入した旧世代ゲーミングノートPCのスコアも掲載する。まだまだ現役で通用するスペックだ。

AERO 15 OLED YD-73JP624SP旧世代PC
CPUCore i7-11800H(8コア16スレッド)Core i7-9750H(6コア12スレッド)
メモリPC4-25600 8GB×2/PC4-25600 32GB×2PC4-21300 16GB×2
ストレージ1TB SSD(PCI Express 4.0x4)2TB SSD(PCI Express 3.0x4)
グラフィックス機能GeForce RTX 3080(8GB)GeForce GTX 1650(4GB)
OSWindows 10 Pro 64bit(20H2)Windows 10 Home 64bit(20H2)

 マルチスレッド性能の目安になるCINEBENCH R23のスコアは12,085。8コア16スレッドならではのスコアがきっちりでている。クリエイティブではとくにマルチスレッド性能が重要なだけに、これは大きい。旧世代のCore i7-9750H搭載機に比べてCPUスコアで約1.9倍、シングルスレッドのCPU(シングルコア)でも1.37倍と大幅なアップだ。

 ちなみに、編集部が過去に測定したAMDのハイパフォーマンスノート向けCPU Ryzen 9 5800H(8コア/16スレッド)のスコアは、マルチコア11,207、シングルコア1,405だった。ノートPCごとに異なる電源や冷却回りの設定により大きく変動するため参考までにとどめておいていただきたいが、性能面で高い評価を得ている競合を上回るスコアを叩き出した点は注目に値する。

 PCMark 10の総合スコアは比較用PCの1.44倍、クリエイティブアプリを使ったテストであるDigital Content Creationでは約2.12倍ととくに大差を付けている。

 3DMarkのスコアもご覧の通り。GeForce RTX 3080 Laptopを搭載しているだけに、GeForce GTX 1650を搭載した旧世代PCと比べても圧倒的だ。

CINEBENCH R23の結果
PCMark 10の結果
3DMarkの結果
FINAL FANTASY XIV:漆黒のヴィランズベンチマークの結果
PCMark 10 MODERN OFFICE BATTERY LIFEGIGABYTE AERO 15 OLED(Core i7-11800H GeForce RTX 3080 メモリ16GB)
SCORE2時間25分
Battery Life Performance6,192

Lightroom、Premiere、DaVinch Resolveでのテストでも圧倒的な強さ

 クリエイター向けPCということで、実際のクリエイティブアプリを利用したテストも試してみた。ここではメモリを64GBへ増やした場合のテストも追加で実施している。

 Lightroom Classic CCでは、ソニーのα7RIIIのRAWデータ(4,240万画素)を100枚を使用。そのデータに現像パラメータのプリセットを適用して長辺3,000ドットのJPEGファイル書き出す時間を計測した。標準でも旧世代PCよりも47秒速かったが、メモリを64GBに増やした環境ではさらに57秒速くなった。

 また、30枚のRAWデータを「スーパー解像度」機能で強化DNGファイルへ変換する作業も試してみた。この作業はAIを活用しているため、GPU性能の影響が大きく、とくにRTXシリーズを利用すると高速化するとされているが、やはり優位は大きく、メモリ64GBでは旧世代PCの4分の1以下の所要時間で完了した。

 Premiere Pro CCでは、シンプルなプロジェクトと少し凝った処理を含むプロジェクトの2種類のメディア出力(MP4、H.264)にかかる時間を計測した。

 前者は、7枚の4Kビデオクリップをトランジションエフェクトでつなぎ、BGMを追加した約3分ほどの内容だ。

 後者は、8本のビデオクリップと8本のオーディオクリップ(BGM用)をそれぞれ適切な長さにカットしてタイムラインに挿入した約5分ほどの内容。各ビデオクリップにはカラーグレーディング(プリセット3D LUTの適用)を行ない、各ビデオクリップの先頭に動きのあるテロップを挿入し、ビデオクリップとオーディオクリップはそれぞれトランジションエフェクトを使ってつなげている。

 旧世代PCからの差は凝ったプロジェクトのほうが差は大きく、メモリサイズの差も大きかった。メモリ64GBの場合は旧世代PCの半分以下の時間で書き出しを終えた。

 実際に編集の作業も一通りしてみたが、メモリ16GBではエフェクトのプレビュー時に画面や音声が乱れることがあったが、64GBでは終始快適に作業できた。

 DaVinch Resolve 17では、ソニーのα7RIIIで撮影した4K解像度のS-Log3データ5本(合計4分15秒)に対し、プリセットの3D LUTを適用するカラーグレーディングを行ない、MP4ファイル(H.264)で保存する処理にかかった時間を計測した。このソフトはGPUを積極活用しており、GeForce GTX 1650を搭載する旧世代PCの62%の所用時間、時間にして238秒も速く処理を終えた。

Lightroom Classic
Premiere Pro
DaVinch Resolve
Premiere Proで約5分のプロジェクトの書き出しを2回連続で行ない、2回目の終了直前にFLIR ONEで撮影したサーモグラフィ(室温25℃)。ヒンジ部の最大温度は47.8℃になったが、キーボードのJキーは39.1℃、パームレストは体温程度と放熱性能も優秀だ。動作音はそれなりに大きくなるものの、ゲーミングノートPC/クリエイターPCとしてはごく普通。高負荷時はやや低い部類かもしれない。
メモリは標準の16GB環境に加えて、64GBに増設した環境も用意。元から装着されていた8GB2本を32GB2本のCrucialCT2K32G4SFD832Aに換装した
Premiere Proで64GBのメモリを認識し、そのうちの58GBを利用できることが分かる

カスタマイズすればクリエイティブPCとして理想的な構成に

 ベンチマークテストで実証したように、AERO 15 OLEDのクリエイティブにおけるパフォーマンスはきわめて優秀だ。これからますますクリエイティブでの活用が進みそうなGeForce RTXの搭載、高精細で色再現性にも優れた有機ELディスプレイ、高速インターフェイスも含め、クリエイティブ適性は抜群。仕事場のメインマシンとする場合は、大型4Kディスプレイやプリンタ、NASなどをつないでより快適にすることもできる上に、本機だけを収録現場や打ち合わせ先、コワーキングスペースなどに持ちだして作業することもできる。

大型ディスプレイやプリンタなどを接続してデスクトップPCのように使ってもまったく問題ないレベルの性能を持っている。さらに、必要なときには本機のみを持ちだして作業できるのも強みだ

 今回レビューした評価機(YD-73JP624SP)の市場想定価格は35万1,780円。カスタマイズオーダーが可能なアークでも標準構成では同じ価格で販売されている(現在入荷待ち)。標準の保証期間が2年間と言うのも、高価な製品だけにとても心強く、大きなアドバンテージの1つだろう。

 アークでメモリを64GBに変更すると価格は40万4,390円、さらに1TB SSD(Samsung 970 Evo)を追加すると42万4,000円になる。保証が有効なままクリエイティブ向けとして理想的とも言える内容となるだけに、決して割高ではないだろう。