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エプソンダイレクト製3DCG制作向けノートの信頼性は本物か? 過酷な7日間耐久試験を実施してみた

 エプソンの直販サイト「エプソンダイレクト」にハイエンドのノートPC「Endeavor NJ7000E」が登場した。この製品は一般/法人向けモデルで、ユーザーのニーズに合わせられる豊富なカスタマイズが特徴だ。

 これをベースとして、数ある部品の中から3GCG制作用途向けに適した部品を厳選したのが「Endeavor NJ7000E 3DCG制作Select」。今回はこちらのモデルがどのような製品なのか見ていく。

 本製品の特徴の1つとして、優れた排熱設計がある。PCの大きな熱源としてはCPUとGPUがあるが、同社製品はその排熱設計を独自に作りこみ、負荷がかかっても性能を維持できるよう設計されている。また、開発時にはCPU、GPU、メモリ等、複数の組み合わせで複数回、100%の負荷をかけるテストを48時間かけて行なっており、信頼性に自信があるのだという。

 そこで、本稿は広告記事ではあるが、一切の手抜きのない7日間の耐久試験を実施してみることにした。3DCG制作では、長時間をかけて負荷の高いレンダリングを行なうことが多い。この7日間耐久試験を突破できれば、その信頼性は本物だと言えるだろう。

製品の概要

 本製品のおもな仕様は、下表のとおり。

【表】Endeavor NJ7000E 3DCG制作Selectベースモデルのおもな仕様
CPUインテル® Core™ i7-9750H プロセッサー(6コア/12スレッド、2.6GHz/4.5GHz、12MB)
メモリDDR4-2666 16GB:8GB×2(デュアルチャネル)
ストレージSSD M.2 PCI Express x4 256GB
GPUGeForce RTX 2060(1920基、GDDR6 6GB)

 いわゆるグラフィックス・ワークステーションでは、GPUだけでなくCPU、メモリもハイエンド構成を採るものだ。3DCG制作ではCPU性能=レンダリング速度であるため、CPUはCore i7グレードが好まれる。

 ストレージはレンダリングというよりは生産性向上だ。データ出力先はともかく、システム側のストレージには、操作やコマンドのレスポンスを速やかに行なえるSSDを選ぶのが定番だ。

最終レンダリングにはCPUが用いられることが多く、高性能なCPUを搭載していることは3DCG制作PC選びのポイントに挙げられる

 ほかにはメモリ容量を増やしたり、必要なストレージ容量を追加したりと、カスタマイズ項目が整えられている。そのため、3DCG制作用途で購入を考えている人がハードウェアに詳しくなくても、スペックの検討がしやすくなっている。

 なお、GPUのGeForce RTX 2060は、現行Turing世代のRTX 20シリーズGPUとしては2080、2070につぐ3番目に高性能なGPUで、モデリングやモーション作成などで用いられることが多い。RTX世代のGPUでは、リアルタイムレイトレーシングを実現する「RTX Technology」、レイトレーシングのためのレンダラー「OptiX」などが利用でき、CPUとのバランスでより性能を発揮する。

搭載GPUはGeForce RTX 2060(モバイル)。モバイル向けに制限された熱量のなかでリアルタイムレンダリングを行なうなど、RTX 20世代の機能と性能を実現する

安定性と性能のための冷却設計のほか、3DCG制作向けノートの仕様をチェック

 ここからは、Endeavor NJ7000Eがどのように3DCG制作向きなのか見ていこう。

 まず15.6型の液晶ディスプレイ。大きさはワークステーションノートとして見れば標準的で、一般用途で考えれば大画面といったところだろう。解像度も1,920×1,080ドットのフルHDで、3DCG制作ソフトを十分に利用できる。

15.6型というディスプレイサイズにフルHD解像度。3DCG制作ソフトも窮屈なく扱える
液晶ベゼルは左右が8mm、上部が1cmほどの狭額縁仕様

 パネル駆動方式はIPS。視野角の広さは178度あり、色再現性がよいのもIPSパネルの特徴。この点でEndeavor NJ7000Eが採用するパネルは国際的な標準色空間であるsRGB100%を謳っている。

sRGB100%のIPSパネルを採用し、斜めから見ても色味の変化が小さい

 また、3DCG制作でレンダリング出力時となるとCPUやGPUに最大の負荷が長時間かかることになる。Endeavor NJ7000Eのようにハイエンドパーツを搭載していれば発熱量も大きく、ノートPCのかぎられた筐体サイズでは、デスクトップと比べて冷却設計がより重要になる。

 一般論で言えば、ノートPCはファンが小径にならざるを得ないため、十分なエアフローを確保するためには高回転に、そしてそのノイズは大きくなりがちだ。Endeavor NJ7000Eはどのような冷却を行なっているのだろうか。

底面の吸気スリットの大きさを見れば、このサイズで内部の高性能パーツを冷却するための要求の高さが伝わる

 Endeavor NJ7000Eのエアフローは、底面から吸気し、背面や左右両側面から排気する流れだ。ファンは左右に各1基。Endeavor NJ7000Eでは、とくにヒートパイプをより太いものを採用することで熱伝導効率を高めているという。

左右両側面と背面に排気口を設けており、開口部もかなり大きくとられている
中央寄りのCPUとGPUから左右にヒートパイプで熱輸送し、その部分のヒートシンクとファンで冷却する。よく見れば双方2本のヒートパイプを用いるが、向かう先を左右に分散するレイアウトで熱の均一化を図っている
より太いヒートパイプを採用したとのこと。CPUとGPUそれぞれ太いパイプは幅が1cm強あった

 また、ファンコントロールでは、冷却と静音性の両立を図ったと言う。室温35℃という高温環境下でCPUやメモリ等、各部の温度を計測し、規定の温度上限を超えないよう冷却する。ファンの高回転時でも、ゆるやかなファンカーブになるようなチューニングを施しているとのことだ。

 レンダリングなどの高負荷時に動作音が静かであればありがたい。チューニングが雑なものでは、内部パーツの温度変化があったさい、すぐに気づくほど急激にファンの回転数を切り替えるものもあり、耳障りで作業の邪魔に感じることもある。Endeavor NJ7000Eは、高回転ファンが最大回転するさいに発生するキーンという高音域のファンノイズがほとんど聞かれなかったことと、ベンチマーク終了後に徐々にファンノイズ音量が下がり、気がつけばファンが停止し無音になっていた点がよかった。

ファンコントロール機能。十分に冷えているときにはファンが回転を停止する。通常作業のような負荷であれば、ファンが回転をはじめても耳につくようなことはない

 また、冷却設計のよさを感じるのが、一般的な負荷をかけた状態でのパームレスト部の温度だ。確かに高発熱パーツの少ない部分だが、サーモカメラで計測すると、もっとも高温なキーボード最上段中央付近で40℃弱である一方、パームレスト部はほとんどが27℃台で、熱いという感覚はなかった。

キーボードのパームレスト部中心のサーモグラフ。CPUやGPUがあるキーボード上段中央付近こそ40℃近いが、パームレスト部分は30度以下。優れた冷却チューニングでキーを打つ手が熱くなることがない

キーボードやインターフェイスの使いやすさを確認

 キーボードのカスタマイズで日本語配列と英語配列を選べるところもプロフェッショナル向けと言えるかもしれない。テンキーつきで日本語配列では107キー、英語配列では102キーとなっている。配列自体のクセはなく、ごく標準的だ。今回は、日本語配列キーボードの細部を見ていこう。

配列は標準的なテンキーつき日本語配列

 キーピッチは18.2mm。テンキーのないモデルなどでは19mmピッチを採用するものが多いが、それらと比べると多少詰まっている。しかし0.8mmの差なのでそこまで極端に違いを感じるものではない。実際に触れてみればわかるが、入力のしやすさはキーピッチよりも配列によるところが大きい。また、キーストロークは1.8mmで、ノートPCとしては比較的大きめに取られている。

キーピッチは18.2mm。一般的な19mmのものと感覚的にはさほど変わらない
キーストロークは1.8mm。反発力も適度にある

 キーボードバックライトは、ハイエンドのゲーミングノートPCほど柔軟な設定ができるわけではないが、発光色は業務向けで一般的なホワイト以外のものも選ぶことができる。

バックライトも搭載。白に設定しておけば事務所でもハデに見えることはなく、あるいは気分に応じて赤や青、好みの色に変更できる
キーボードユーティリティの画面。キーボード全体で1色が選べ、選択可能な色もフルカラーというわけではない。つまりゲーミングノートPCのようなハデさとは少し違う。輝度調節は4段階+オフだ

 キーボードの手前にあるタッチパッドは、左右独立型のクリックボタンを備え、左上には指紋認証センサーを置くなど、実用やセキュリティを重視した業務向け設計だ。

タッチパッドは実用性重視のデザイン。左右独立ボタンで左上には指紋認証センサー

 インターフェイスは左右側面および背面にある。背面はUSB 3.1 Type-C、HDMI、Gigabit Ethernet、ACアダプタ用コネクタ。USB 3.1 Type-Cは別として、ほかは抜き挿しというよりも挿しっぱなしで運用することの多い端子を集めている格好だ。

USB 3.0×2(青)は左右に、USB 2.0(黒)は左に。メモリカードリーダやMini DisplayPortは右にある
つなぎっぱなしが多いHDMIやLAN、ACアダプタ用コネクタは背面。USB 3.1 Type-Cもここにある

 左側面には、USB 3.0、USB 2.0、マイク入力、ヘッドフォン出力と、セキュリティロックスロットがある。右側面には、USB 3.1、Mini DisplayPort、メモリカードスロットがある。

 背面のUSB 3.1 Type-C端子は転送速度が10Gbpsある。USB 3.1 Type-C機器は入手性がよくSSD搭載ストレージなども十分に高速で、データの受け渡しに活用できる。

バッテリは今どきではめずらしい着脱可能タイプ。業務用ではこうした故障しても交換できるところも重視される

PC Watch式、過酷な7日間耐久試験の結果はいかに!?

 さて、ここからは製品ページで触れられていないところを検証していく。本製品の冷却設計についてはすでに説明したとおりだが、前述のとおり、エプソンダイレクトはこうした製品の設計・開発段階で、耐久試験を実施している。温度上昇試験や48時間のエージングなど、さまざまなテストを最大負荷条件で行ない、結果を確認している。あらゆるカスタマイズの組み合わせで35℃の環境下に置き、試験が行なわれ、それらをすべてクリアできない限り、製品リリースされないのだ。

 しかし、実際に使用する側では48時間で済むだろうか。筆者も少し3DCGをかじった経験上、少し凝ったもの、少し解像度の高いものをレンダリングしようとすれば48時間程度では済まない。使用環境によっては、1週間程度レンダリングし続ける場合もあるかもしれない。

 今回、Endeavor NJ7000Eで試してみたいと思ったのはこれだ。1週間、CPUとGPUにレンダリングで負荷をかけ続け、その間のログを取得して温度変化を見てみたい。メーカー自身の検証を超えるものだが、実際の現場ではあり得ることだ。これをクリアできれば、冷却設計の正しさがわかる。十分に信頼に値することの証明になるだろう。そして1週間という長期で計測すれば、それ以上の期間に耐えられるかどうかも想像できるだろう。

テスト風景。今回の耐久試験のイメージ(実際にはACアダプタをつなぎ、画面に出力イメージは出ずコマンドラインのみで進行する)

 レンダリング負荷をかけるにあたり選んだ3DCGソフトはBlenderだ。Blenderのデモファイルにある「Class Room」を、CPU/GPU双方を利用してレンダリングできるエンジン「Cycles」で出力するバッチファイルを組み、これをループさせて1週間連続負荷テストを敢行した。

 一応CPU、GPU双方を利用すると言っても、どちらか先に出力を終えたほうが次の命令を待つ状態になり、負荷が抜けることがあるとわかったが、そこまで長時間負荷が抜けることはなかった。そしてこれも実際のレンダリング時に生じることなので問題ないだろう。計測後に集計した1週間通しでの使用率は、CPUが92.96%、GPUが73.73%。十分な負荷だ。

レンダラーにはCyclesを選び、CPUのCore i7-9750H、GPUのGeForce RTX 2060両方を利用するように設定した
そのほかの設定としてスレッドモードは自動、タイルは64とした
CPU使用率の最大と最小(初日)。もちろん最大使用率はつねに100%だが、瞬間的に負荷が抜けることもある。それでも1週間平均では92.96%だった
GPU使用率の最大と最小(初日)。こちらも最大使用率は100%。負荷が抜けるタイミングはCPUと比べて間隔が空いているが、再びタスクが来るまでの待ち時間はCPUよりも長い。それもあって1週間平均では73.73%だった(なお、ログの取得にはHWiNFOを使用している)

 レンダリングのバッチファイルを実行してからは、1日1回以上、定期的にストップしていないか確認したが、初日、2日目、3日目とパスしていく毎に大丈夫だという実感が増していった。そして1週間後に終了。なに1つトラブルは発生せず、出力結果を得られた。それではその間のCPU温度、GPU温度をグラフで振り返りたい。

 HWiNFOによるログは1秒間隔で取得してある。ただ、1週間は604,800秒。ご想像のとおり、温度変動もなにも線が重なりすぎてよくわからないグラフになってしまう。妥協として10分(600秒)単位で最大・最小温度を計算し、それを1日毎に分割しグラフを作成した。

 CPU温度に関しては、およそ最大側が90℃台半ば~後半で推移し、最小側は60℃台半ばから70℃台前半で推移している。1週間通しでの最大温度は98℃。Core i7-9750Hの仕様上の最大温度は100℃なので、そこに達することは一度もなかった。負荷率100%時の動作クロックを抽出すると平均で3.55GHz、最小で3.19GHz。不自然にクロックを引き下げている素振りはなかった。

 GPU温度は最大側も70℃台であり、CPUと比べてより安定していた。1週間通しでの最大温度は80℃。この80℃という最大温度はデスクトップGPU(の定格運用)でも同じで、ハードウェア設計によるものだ。ログを追ってみると80℃に達したのは1週間のうち1.2%ほど。

 そして、80℃時のGPUクロックはおおむね1,800MHz台で推移しており、1,700MHz台に落ちたのは1週間の604,800秒のうちわずか8秒だった。これを見るかぎり、GPUも不自然にクロックを引き下げている素振りはない。

 このように、Endeavor NJ7000Eは1週間のレンダリング検証をエラーなし、そして温度変化も不自然なところがなく、性能も低下なしでクリアすることができた。

3DCGテクニカルコンサルタントの宋明信氏による評価

 そして本稿ではこの耐久試験に加え、3DCGテクニカルコンサルタントの宋明信氏にも3DCGソフト「3ds Max」を使って動作に問題がないかを評価してもらった。

3DCGテクニカルコンサルタントの宋明信氏

 3ds Maxを使って一通り動作確認を行なった後に、オブジェクト数27、頂点数86万、ポリゴン数163万のシーン、およびレイトレーシングプラグインであるV-Rayを用いて、CPUとGPUそれぞれでレイトレーシングレンダリングを行なってもらった。CPUによるレンダリング時間は4分22秒で、GPUでは3分15秒となり、GPUでは約25%の高速化が確認できた。このGPUレイトレーシングは、GeForce RTXシリーズのRTコアを活用したものだ。

CPUによるレイトレーシングレンダリングでは、6コアすべてを使い切っている
GPUによるレンダリングではCPU負荷はひじょうに低いので、ほかの作業も行なえるメリットがある。なお、GPU負荷も低く見えるのは、シェーダではなくRTコアを使っているから

 宋氏によると、3DCG制作においてもっとも重要なのは、瞬間的な性能よりも、安定して持続する性能なのだという。たとえばゲームにおいても、システムがクラッシュしないなどの安定性は重要だが、極端な話をすれば、ゲーム中高い性能が出せれば問題ない。一方で、3DCGでは前述のように数時間から、ときには数日間、連続した負荷がかかることがある。ゲーミングPCでは、そこまでの安定性を確保していないものもあるが、本製品は今回の検証から、業務で要求される安定した性能が確保されており、安心して利用できるとのこと。

 また、ソフトウェアとの互換性についても、今回検証したBlender、3ds Max以外にも、エプソンダイレクトで、Autodesk Maya 2019、V-Ray for Maya、Adobe Creative Cloud(Photoshop、Illustrator)、CLIP STUDIO PAINT PRO/EX、Unityといったソフトの動作検証がなされており、幅広いユーザーにお勧めできるだろう。

購入前の貸し出しサービスやエージングテストなどで安心をもうひと押し

 たとえば、このような3DCG制作に十分なスペックだとしても、導入を検討するさい、実際に業務で使用しているアプリケーションが正しく動作するのか気になるかもしれない。そこでエプソンダイレクトでは、そうした確認が難しい部分を事前に検証できる法人向け貸し出しサービスを用意している。

 このサービスはクリエイターPC全機種が対象で、1カ月間の長期にわたって貸し出し可能なので、アプリケーションの互換性から動作の安定性まで、十分な検証を行なった上で購入を検討できる。

 また、ゲーミングPCがゲームの動作認定を受けアピールしているように、Endeavor NJ7000Eはゲーム開発エンジンの「Unity推奨PC」としてプレミアムクラス認定を受けている。この点、Unityでゲーム開発しているスタジオや、Unityを学ぶ学生にとって安心して選べる製品と言えるだろう。

3DCG制作の必要条件を十分に満たす製品

 3DCG制作と言ってもおのおの、環境によって要求スペックは異なるだろう。ただし、「Endeavor NJ7000E 3DCG制作Select」は、ここまで紹介してきたスペックと検証で裏づけられたように、性能面でも3DCG制作の必要条件を十分に満たしていると結論づけたい。

 そしてメーカーが行なう48時間テストの3.5倍の時間をかけた1週間のレンダリングテスト。これも難なくクリアしたが、実際にはリハーサルとしてメーカーと同じ48時間レンダリングを行なっており、合計すれば9日間の高負荷状態に何ら不安を見せずに耐えてくれた。3DCG制作スタジオやこれからの時代に活躍したいと望む学生の方々、その作品制作のためのPCとして高信頼の「Endeavor NJ7000E 3DCG制作Select」をぜひとも検討してみていただきたい。