レビュー
外観から考察する「GeForce RTX 2080 Founders Edition」
2018年9月14日 22:00
3Dグラフィックスを次のステップに引き上げてくれるリアルタイムレイトレーシング対応ビデオカード「GeForce RTX」シリーズが、9月20日にも発売となる。これに先立ち、ベンチマークテスト用の「GeForce RTX 2080 Founders Edition」が編集部に到着した。
GPUとしての技術的な解説については別途記事に譲ることとして、本記事では到着したカードを「モノ」の視点から解説していく。実際の性能ベンチマークは後日お伝えしよう。
現時点で各方面から入っている情報によると、今回はGeForce GTX 1080のときとは異なり、日本国内ではGeForce RTX 2080 Founders Edition自体の販売予定がない。実際に販売されるのは、NVIDIAのFounders Editionと同じ基板を採用しながら、サードパーティー製のオリジナルクーラーを搭載したものとなる。この状況はGeForce GTX 1060と同じだと考えていいだろう。
もっとも、GeForce GTX 1080のときもパッケージは各メーカーが用意していたので、今回届いたFounders Editionのパッケージも参考までにといった感じで写真を掲載するが、ビデオカードが横ではなく縦に鎮座するパッケージは、サードパーティにはない特徴ではある。付属品はクイックスタートガイドとサポートガイド、それにDisplayPort→DVI変換アダプタのみだ。
DisplayPort→DVI変換アダプタが添付することから想像できるとおり、GeForce RTX 2080 Founders EditionではついにGeForce GTX 1080 Founders EditionにあったDVI-D端子が省かれた。このためブラケット部がツライチとなっている。代わりにUSB Type-Cポートが装備され、次世代VRヘッドセットに必要な電源供給/ディスプレイ表示を1ポートで行なえる「VirtualLink」を搭載した。
ブラケットの排気口は従来の三角形=ポリゴンをモチーフとしたものから、四角のものに変更され、意匠は若干退化した印象だが、その代りマットなブラック塗装となり精悍なイメージとなった。
同社は、リファレンスのGPUクーラーとして、長らくブロワーファンによる外排気タイプを採用してきたが、デュアルファンによる直下吹き付け型内排気のものへと変更された。ケース内のエアフローは芳しくない場合、ブロワータイプのほうが強制的に排気できるため有利だが、ファンの数を増やしたほうが低回転で風量が稼げ、静音性に有利である。近年のPCケースのほとんどは、エアフローがよく考えられており、GPU付近に熱が籠もってしまうことがないため、この変更はユーザーにメリットになるだろう。
2つのファンともにブレードの数は13枚。羽はやや折り重なるようになっており、若干デザインの工夫が見られる。高さ的には2スロットに収まるように設計されており、設置で問題になることはまずないだろう。クーラーのカバーは金属製のようで、表面を大きく覆っている。
カバーと同じシルバー色のバックプレートを採用したのも特徴。背面カバーの中央に「RTX 2080」と大きくロゴが入っているが、これはちゃんとケース内に収めた状態でも見えるように配慮したためだろう。クーラーカバーと合わせ、優れた一体感を演出している。
また、RTX 2080では、GeForce 6800 GTの時代から14年間使われてきたSLIコネクタがついに廃止され、NVLinkとなった。SLIはプロプライエタリの仕様であるため、資料があまりないが、基本的にGPUが描画したピクセルデータを転送するだけのコネクタだと筆者は予測している(極論DVIなどと同じ)。
これに対しNVLinkはGPUが相手のビデオメモリに直接アクセスできるバスであり、接続速度もSLIの50倍(初期のSLIは1GB/s、NVLinkは1リンクで50GB/s)とされている。筆者の予想だが、レイトレーシング処理では光線の軌跡を辿るため、従来のSLIのように単純に画面を上下に分割して描画できず、広帯域でかつ相互のメモリ空間にアクセスできる仕組みが必要になってくるため装備したものと思われる。
ベンチマーク前ということもあり、GPUクーラーの取り外しを行なっていないのだが、基板の写真についてはNVIDIAが公式で公開しているため、これをベースに解説していこう。
GPUクーラーはベイバーチャンバーを使った大掛かりのもので、カード表面ほぼすべてをお覆っていることがわかる。GeForce GTX 1080などと比較しても明らかに表面積が増えており、高い放熱効果が期待できそうである。
一方、基板写真を見ると、これまでのリファレンスとは一線を画すほどの電源回路が目につく。GeForce RTX 2080はリファレンス基板であるにもかかわらず、主要VRMは贅沢にもDriverMOSFETを使った10フェーズだ(すべてGPUかどうかは不明)。また、アルミ固体コンデンサは1個たりとも使われておらず、すべてタンタルチップコンデンサになっていることがわかる。
残念ながら公式写真ではVRMコントローラの型番は読めないが、DriverMOSFETはON Semiconductorの「FDMF3160」のようである。これについてON Semiの公式サイトで情報はないが、部品提供しているMouser Electronicsによると、1チップあたり55Aの供給が可能だとされている。仮にGPUが1Vという比較的低い電圧で駆動していたとしても、じつに550Wもの供給をまかなえる計算である。GeForce RTX 2080のTDPは215Wであるため、変換効率を踏まえても、かなりの余裕を見越した実装だと言っていいだろう。
PCI Express補助電源コネクタは8ピン+6ピンで、従来のGeForce GTX 1080が8ピン×1からかなり電力への要求が向上していることがうかがえる。これに加え、PCI Expressスロットからの電源供給を受け、変換していると思われる電源回路もGPUの左下に見える。
なお、基板右下に見える2つの4ピンコネクタは未実装だが、おそらくこれはファン制御用だ。ただこれはFounders Editionでも実装されていないようで、ファンは基板右端のエッジ部のコネクタから、別基板を介して接続していると見られる。筆者の予想だが、これはサードパーティーが独自のLEDイルミネーションやファン制御を別基板で実装しやすいように設計したものと見られる。
公式写真ではGDDR6ビデオメモリのチップやGPU自身の刻印が消されているが、既報のとおり、GDDR6ビデオメモリについてはMicron製となることがわかっている。GDDR6はGDDR5Xから転送速度が40%向上しているので、従来のGeForce GTX 1080と比較して高解像度に対応しやすくなったのは間違いないだろう。
以上のように、ハードウェア的に見てもさまざまな進歩が見てとれるGeForce RTX 2080。リアルタイムレイトレーシングにより、次世代3Dグラフィックスがいよいよ本格的な幕開けを迎える。従来の3D性能のみならず、新たな視覚体験がもたらせることに期待したいところだ。