レビュー
次期macOS“Mojave”で注目の新機能をチェック
2018年8月6日 14:35
Appleは2018年秋、「macOS Mojave(モハベ) バージョン10.14」の正式リリース版を無料のソフトウェアアップデートとして提供する。対象となるのはMacの各モデル(Mid 2012以降)、推奨されるMetal対応グラフィックカードを搭載した「Mac Pro」(2010および2012)。
開発者を対象とした「デペロッパ向けプレビュー」は6月5日、一般ユーザーも利用可能な「パブリックベータプログラム」は6月27日にすでにスタートしている。後者であれば「Apple Beta Software Program」に登録すれば誰でも新OSを試せるが、商用リリースではないのでエラーや不具合などが発生する可能性がある。Macをメインマシンとして利用しているのならインストールするべきではない。
今回Appleより、macOS Mojaveをレビューするための環境として、「MacBook Pro」(Core i9/32GBメモリ/2TBストレージ)を借用した。この記事では本OSの新機能、使い勝手などについてレビューしていこう。
なお、今回はベータ版を元にレビューしているので、正式リリース版では機能や外観が変わっている可能性がある点には留意してほしい。また、記事内のスクリーンショットはすべてAppleの許可を得た上で掲載している。
まずは新機能をざっくりと紹介
macOS Mojaveに搭載されたおもな新機能、アプリは下記のとおり。
- 暗い色調の新デザイン「ダークモード」
- デスクトップのファイルを種類別に整頓する「スタック」
- 「ギャラリー表示」を追加した「Finder」、画像回転、動画トリムも可能
- ビデオ録画など新オプションを追加した「スクリーンショット」
- iOS端末で写真撮影、書類スキャンできる「連携カメラ」
- 最大32人と会話、現在の話者は強調表示する「FaceTime」
- 新アプリ「株価」、「ボイスメモ」、「ホーム」
- 新デザインを採用した「Mac App Store」
- 強化されたセキュリティ、プライバシー機能
それではそれぞれの機能について細かく見ていこう。
暗い色調の新デザイン「ダークモード」
新デザイン「ダークモード」はmacOS Mojaveの目玉機能。従来デザイン「ライトモード」と、暗い色調の新デザイン「ダークモード」の2つのスタイルが用意されており、いつでも切り替えて利用可能だ。アップルはダークモードを、写真や画像を編集するプロフェッショナルに適したモードだと謳っている。
macOS Mojaveにプリインストールされているアプリは基本的にダークモード向けに調整されている。筆者が今回試したなかでダークモードとライトモードで変化がなかったのは「スティッキーズ」と「チェス」ぐらいだ。
ダークモードはサードパーティーのアプリでももちろん利用できる。ただしそのアプリが、macOS UI frameworkのAppKitの標準カラーを使用し、macOS Mojave SDK用に構築されている必要がある。
ちなみに記事執筆時点(8月2日)に試したさいには「Chrome」、「LINE」アプリでダークモードは反映されなかった。まだ正式リリース版提供前だから仕方がないが、多くのサードパーティーアプリがダークモードに対応することを期待したい。
標準ブラウザ「Safari」でWebページを開いたさいに、画面が白地一色で占められるのには違和感が強かったが、それぞれのWebページのデザインを尊重するのは当然の仕様だ。ただ個人的には、日常的に利用するWebサービスについてはダークモードを用意してほしいと考えている。「Gmail」、「YouTube」、「Twitter」はダークモードに相当するモードを利用可能だ。
デスクトップのファイルを種類別に整頓「スタック」
ついデスクトップにファイルがあふれがちな方に重宝するのが、Finderに追加された「スタック」機能。Finderで「表示→スタックを使用」を選ぶと、書類、イメージ、PDF書類、ミュージック、ムービー、スクリーンショットなどの種類ごとにファイルが整頓される。
スタックにマウスカーソルを合わせてワンクリックすればなかのファイルが展開表示されて、同じくマウスカーソルを合わせた状態で2本指上下スワイプすればサムネイルをスクロールできる。目的のサムネイルが表示された状態でダブルクリックすれば、そのファイルを即座に開くことが可能だ。
「ギャラリー表示」を追加した「Finder」、画像回転、動画トリムも可能
Finderに追加されたもう1つの新機能が「ギャラリー表示」。これは従来の「Cover Flow」に代わって搭載されたFinderの新モードで、大きく表示されたプレビューの下に、ファイルのサムネイルが並ぶ。プレビューが大きく表示されるので、より視覚的にファイルの中身を識別可能だ。
ユニークなのが書類プレビュー時の挙動で、上下2本指スワイプでページを前後に移動できる。アプリで書類を開かなくても、目的のファイルか確認可能なわけだ。
プレビュー機能の充実に合わせて、メタ情報の表示機能も追加された。「表示→プレビューオプションを表示」を有効にすれば、画像ならタグ、日付、イメージの詳細、EXIF、位置情報などが表示される。
さらに右下には「クイックアクション」が用意されており、画像であれば「反時計回りに回転」、「マークアップ」、「PDFを作成」、動画であれば「反時計回りに回転」、「トリム」などをワンアクションで実行できる。マークアップでは画像への書き込み、画像の回転、トリミングなどが可能。ちょっとした画像編集、動画トリミングならFinderで作業して、すぐにメールに添付したり、SNSに投稿できるわけだ。
ビデオ録画など新オプションを追加した「スクリーンショット」
macOSには「shift+command+3」で画面全体、「shift+command+4」で画面の選択部分のスクリーンショットを撮影可能だったが、新たなスクリーンショットインターフェイスを呼び出す「shift+command+5」というショートカットが追加された。
このショートカットを実行すると画面に半透明のスクリーンショットインターフェイスが表示され、画像として保存する「画面全体を取り込む」、「選択したウィンドウを取り込む」、「選択部分を取り込む」のほかに、動画として保存する「画面全体を収録」、「選択部分を収録」を利用できる。
また「オプション」からは、スクリーンショットの保存先指定、タイマー撮影の秒数指定、スクリーンショットにマウスポインターを含めるか否かなどを設定可能だ。
これまでも「QuickTime Player」で画面を録画することは可能だったが、OS標準のスクリーンショット機能に統合されたことで、より直感的に利用できるようになった。
iOS端末で写真撮影、書類スキャンできる「連携カメラ」
文書に画像や書類を挿入するさいに便利なのが「連携カメラ」。これはMacからiPhone、iPadなどのカメラを利用するための機能。右クリックから表示される「(ユーザー名)のiPhone」から「写真を撮る」または「書類をスキャン」を選択すれば、すぐにiOS端末のカメラが自動的に起動する。撮影後、iOS端末側で写真は「Use Photo」、書類は「Keep Scan→Save」をタップすれば、そのまま文書に貼りつけられる。
連携カメラはFinderからも利用可能。任意のフォルダで実行すれば写真は「イメージ.jpeg」、書類は「スキャンした書類.pdf」というファイル名で保存される。
メディアを取り込むデバイスとしてiOS端末は手軽だし、iPhoneなら品質も申しぶんない。動画編集のさいにも活用できるように、動画や音声の取り込みにも対応することに期待したい。
最大32人と会話、現在の話者は強調表示する「FaceTime」
macOS Mojaveは複数の相手と同時にチャットできる「Group FaceTime」に対応。最大32人と通話可能だ。通話相手が増えると混乱しそうだが、現在話しているユーザーを強調表示し、より活発な参加者が目立つように配置されるとのこと。
MacだけでなくiPhone、iPad、音声のみとなるがApple Watchでも参加できるのがGroup FaceTimeの優位点。すべての会話はアップルのサーバーを経由し、1つのビデオストリーミングとして端末で再生されるので、回線速度に品質が左右されにくいというメリットもある。
新アプリ「株価」、「ボイスメモ」、「ホーム」
macOS Mojaveには新アプリとして「株価」、「ボイスメモ」、「ホーム」の3つが搭載される。これらはiOSで提供されていたアプリのMac版という位置づけだ。なおニュースアプリ「News」についてはプレスリリースでは説明されているが、macOS Mojaveの日本向け公式サイトではふれられておらず、当面日本では提供されない。
「株価」アプリはMacの大画面を活かして、株価のチャートとその企業の関連ニュースの見出しをチェックできる。株価のチャートは1日~全期間から切り替えが可能。ニュースの見出しをクリックすると、ブラウザが起動して「Yahoo!ファイナンス」に掲載されている全文が表示される。
「ボイスメモ」アプリの使い勝手はiOS版とほぼ同等。録音したデータは「iCloud」経由で同期され、新規録音、編集内容がおたがいに反映される。macOS Mojaveのボイスメモで録音する場合は、Macの内蔵マイクが使用されるが、キーボードを使っていると打鍵音が大きく入ってしまう。MacからiOS端末のボイスメモアプリを遠隔操作する機能が搭載されれば、より便利に活用できるはずだ。
「ホーム」アプリでは、ライト、カメラ、サーモスタット、ドアロック、ファン、ガレージドアなどHomeKit対応アクセサリをMacからコントロールできる。iPhoneよりMacのほうが画面が大きいぶん一覧性が高いので、HomeKit対応アクセサリを多く設置している家では設定、管理しやすいはずだ。
新デザインを採用した「Mac App Store」
「Mac App Store」は新デザインを採用して構成を大幅に刷新。タブは従来の「おすすめ」、「ランキング」、「カテゴリ」、「購入済み」、「アップデート」から、macOS Mojaveでは「見つける」、「創作する」、「仕事する」、「楽しむ」、「開発する」、「カテゴリ」、「アップデート」と、より目的が明確な構成となった。
もっとも大きな進化点はビデオプレビュー機能が搭載されたこと。とくにゲームを探すさいには、システムや世界観をチェックするためにビデオプレビューは重宝するはずだ。
強化されたセキュリティ、プライバシー機能
まず利便性の向上という点でも注目なのがパスワードの自動作成機能。ブラウザで新たなパスワードの入力を求められると、強力なパスワードが自動生成されて「iCloudキーチェーン」に保存される。iCloudキーチェーンに保存したパスワードはMac、iPhone、iPadなどすべてのデバイスで自動入力される。わずらわしいパスワード管理の手間から解放されるわけだ。
カメラ、マイクのアクセス管理機能もわかりやすい。アプリがカメラやマイクにアクセスする前に、macOS Mojaveがユーザーの承認を要求するので、不用意にユーザーデータを利用される恐れが少ない。またプライバシー情報がどのアプリに対して許可されているのかも、「セキュリティとプライバシー」の「プライバシー」タブから個別に確認できる。
ブラウザに対する「追跡防止機能」も進化。「macOS High Sierra」で導入された「Intelligent Tracking Prevention」が強化され、Webサイトに埋め込まれているSNSの「シェア」、「いいね!」、「コメント」ボタンとウィジェットがWebサイト間でユーザーを追跡できないようにする。SNSで配信されるターゲット広告の減少、関連性の低下が期待できるとのことだ。
例年どおりであればmacOS Mojaveは9月下旬にリリース
macOS Mojaveは、OSの新たなデザインであるダークモードを追加し、また利用する機会の多いFinderのユーザーインターフェイスも改良されている。スクリーンショット、連携カメラ、Group FaceTime、新アプリ、新Mac App Store、セキュリティとプライバシー機能の強化なども使い勝手を着実に進化させている。
個人的にはFinderの新機能、スクリーンショットの新オプション、パスワードの自動作成モードが非常に気に入ったのでメインのMacにもインストールしたくなったぐらいだ。
とは言え例年どおりであればmacOS Mojaveの正式リリース版は9月下旬にはリリースされるはず。これまでパブリックベータプログラムに飛びつかなかったのであれば、あともう少しだけ正式リリース版を待つことを強くオススメする。