レビュー
低価格版Polaris「Radeon RX 460/470」をベンチマーク
2016年8月8日 22:00
AMDのPolarisアーキテクチャを採用した新GPU「Radeon RX 470」と「Radeon RX 460」が登場した。今回、同GPUを搭載するビデオカードを検証する機会が得られたので、ベンチマークテストで新GPUのパフォーマンスをチェックする。
Radeon RX 480に続くPolaris世代の新GPU
今回テストする2GPUの登場により、Radeon RX 400シリーズ製品は3製品のラインナップとなった。各GPUのスペックは以下の表のとおり。
【表1】Radeon RX 400 シリーズの主なスペック | |||
---|---|---|---|
Radeon RX 460 | Radeon RX 470 | Radeon RX 480 | |
アーキテクチャ | Polaris | ||
GPUコア | Polaris 11 | Polaris 10 | |
製造プロセス | 14nm FinFET | ||
ベースクロック | 1,090MHz | 926MHz | 1,120MHz |
ブーストクロック | 1,200MHz | 1,206MHz | 1,266MHz |
Stream Processor | 896基 | 2,048基 | 2,304基 |
テクスチャユニット | 56基 | 128基 | 144基 |
メモリ容量 | 2GB GDDR5 | 4GB GDDR5 | 4GB/8GB GDDR5 |
メモリ速度 | 7.0Gbps | 6.6Gbps | 7.0Gbps以上 |
メモリインターフェイス | 128bit | 256bit | |
ROPユニット | 16基 | 32基 | |
Typical Board Power | 75W未満 | 120W | 150W |
Radeon RX 470は、第4世代のGraphics Core Next(GCN)アーキテクチャであるPolarisを採用したアッパーミドルGPU。先に登場したRadeon RX 480と同じく、14nm FinFETプロセスで製造されたPolaris 10コアを採用。同コアが備える36基の演算ユニットのうち32基が有効化されており、2,048基のストリームプロセッサ、128基のテクスチャユニットを備える。
GPUの動作クロックは、ベースクロックが926MHz、ブーストクロックは1,206MHz。GPUコアは256bitのメモリインターフェイスで6.6Gbps動作のGDDR5メモリと接続している。標準仕様でのメモリ容量は4GB。消費電力の指標であるTypical Board Powerは120W。
今回テストするRadeon RX 470搭載ビデオカードは、Sapphireの「RADEON RX 470 4G GDDR5 PCI-E HDMI/TRIPLE DP OC W/BP (UEFI)」。
Radeon RX 480のリファレンスカードに似た外排気式のGPUクーラーを備え、GPUはベースクロック932MHz(+6MHz)、ブーストクロック1,216MHz(+10MHz)へと僅かにオーバークロックして搭載した。また、メモリについても、標準仕様より高速な7.0Gbps(+0.4Gbps)動作の4GB GDDR5メモリを搭載している。
Radeon RX 460は、Polarisアーキテクチャを採用するミドルレンジGPU。GPUコアには14nm FinFETプロセスで製造されたミドルレンジ向けGPUコア「Polaris 11」を採用。14基の演算コアが有効化されており、896基のストリームプロセッサ、56基のテクスチャユニットを備える。
GPUの動作クロックは、ベースクロックが1,090MHz、ブーストクロックは1,200MHz。GPUコアは128bitのメモリインターフェイスで7.0Gbps動作のGDDR5メモリと接続している。標準仕様でのメモリ容量は2GB。Typical Board Powerは75W未満とされており、PCI Expressスロットからの電力供給のみで動作することを特徴とする。
今回テストするRadeon RX 460搭載ビデオカードは、Sapphireの「RADEON RX 460 2G GDDR5 PCI-E HDMI/DVI-I/DP OC (UEFI)」。
2基の冷却ファンを備えた2スロット仕様のGPUクーラーを備え、GPUはブーストクロックが1,210MHz(+10MHz)にオーバークロックされている。補助電源コネクタについては搭載しておらず、PCI Expressスロットからの電力供給のみで動作するという仕様については標準仕様に準じている。
その他の仕様として、RADEON RX 460 2G GDDR5 PCI-E HDMI/DVI-I/DP OC (UEFI)の接続バスの形状はPCI Express x16スロットに対応するものだが、接点はPCI Express x8スロット相当の実装となっており、マザーボードとの接続は最大で「PCI Express 3.0 x8」となる。
テスト環境
Radeon RX 460/470の比較用のGPUには、上位モデルのRaden RX 480、NVIDIAのGeForce GTX 950を用意した。
GeForce GTX 950については、ASUSオリジナルデザインのビデオカード「GTX950-2G」を用意した。同製品に搭載されたGeForce GTX 950は、ベースクロック1,026MHz(+2MHz)、ブーストクロック1,190MHz(+2MHz)とリファレンスモデルより僅かに高いクロックに設定されているが、「補助電源コネクタなし」での動作を可能としている。補助電源コネクタなしでの動作を特徴とするRadeon RX 460との比較に注目だ。
なお、今回テストするビデオカードのうち、リファレンスモデルのRadeon RX 480以外は若干オーバークロックの施された製品だが、今回は特にクロックの調整は行なっていない。
【表2】テスト環境 | |||
---|---|---|---|
GPU | Radeon RX 460/470 | Radeon RX 480 | GeForce GTX 950 |
CPU | Core i7-6700K | ||
マザーボード | ASUS Z170-A | ||
メモリ | DDR4-2133 8GB×2(15-15-15-35、1.20V) | ||
ストレージ | 256GB SSD(CFD CSSD-S6T256NHG6Q) | ||
電源 | 玄人志向 KRPW-TI700W/94+(700W 80PLUS TITANIUM) | ||
グラフィックスドライバ | Radeon Software Crimson Edition 16.8.1 | Radeon Software Crimson Edition 16.7.3 | GeForce Game Ready Driver 368.81 |
OS | Windows 10 Pro 64bit |
ベンチマーク結果
それでは、ベンチマークテストの結果を確認する。実行したテストは、3DMark(グラフ1~6)、Ashes of the Singularity(グラフ7)、アサシンクリード シンジケート(グラフ8)、Witcher 3(グラフ9)、ダークソウルIII(グラフ10)、ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク(グラフ11)、MHFベンチマーク【大討伐】(グラフ12)、SteamVR Performance Test(グラフ13)。
3DMarkのDirectX 12テストであるTime Spyでは、Radeon RX 460がGeForce GTX 950が同等のスコアを記録。Radeon RX 470のスコアはRadeon RX 480の9割弱となっている。また、Radeon RX 470はRadeon RX 460の1.9倍のスコアを記録しており、Polaris 10コアのRadeon RX 470と、Polaris 11コアのRadeon RX 460の間には、大きな性能差があることが分かる。
DirectX 11テストのFire Strikeでは、Radeon RX 460はGeForce GTX 950のスコア比で84~93%という結果となっており、描画負荷が高くなるほどGeForce GTX 950に対して不利になっている。一方、Radeon RX 470のスコアはRadeon RX 480の86~89%となっており、こちらはTime Spyでの傾向と同程度だ。
DirectX 11とDirectX 12を選択できるAshes of the Singularityでは、描画設定を「Standard」にした場合、DirectX 11ではGeForce GTX 950、DirectX 12ではRadeon RX 460が有利という結果となった。ただし、DirectX 12を使用したRadeon RX 460のフレームレートが、DirectX 11を使用したGeForce GTX 950のフレームレートを超えていない点には留意すべきだ。
Radeon RX 470のフレームレートは、Radeon RX 480のフレームレート比でDirectX 11時に約90~96%、DirectX 12時には約87%となっている。どちらのGPUもDirectX 12を利用することでDirectX 11よりも高いフレームレートを記録しているが、フレームレートの向上率はRadeon RX 480の方が高いという結果となった。
描画負荷の高いゲームタイトルであるアサシンクリード シンジケートでは、Radeon RX 460はGeForce GTX 950の7割程度のスコアとなっており、大きな差を付けられている。いずれもビデオメモリが不足気味だが、フルHD解像度(1,920×1,080ドット)でも30fpsの維持が狙えるGeForce GTX 950と、それも厳しいRadeon RX 460の差は小さくない。
一方、Radeon RX 470のフレームレートはRadeon RX 480の83~87%となっている。高負荷になるほど差が拡大してはいるものの、描画設定「標準」までならRadeon RX 470でも60fps以上での動作が期待できる。
The Witcher 3: Wild Huntでは、Radeon RX 460がGeForce GTX 950に7~9%の差をつけて上回った。ここまでのテスト結果からすると予想外の結果だが、ゲームタイトル次第ではこのような逆転もあり得るようだ。
Radeon RX 470のフレームレートは、Radeon RX 480の約88%。Radeon RX 460比では約1.8倍となっている。Radeon RX 460はGeForce GTX 950を上回っているが、このクラスのゲームをフルHD解像度以上で楽しむのなら、Radeon RX 470以上を選択するべきだろう。
ダークソウル3では、Radeon RX 460はGeForce GTX 950の75~83%程度のフレームレートとなっている。どちらのGPUもフルHD解像度で60fpsを維持するのが厳しいことには変わりないが、描画の滑らかさではGeForce GTX 950が有利なのは明らかだ。
フルHD解像度では、描画設定を「最高」にした場合でも、Radeon RX 470とRadeon RX 480はどちらも最大フレームレートの60fpsに到達しており、この画面解像度では両GPUの間に差はない。解像度をフルHDからWQHD(2,560×1,440ドット)まで上げた場合、描画設定「中」で60fpsが期待できるRadeon RX 480と、わずかに届かないRadeon RX 470という差が生じている。
ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマークの結果をみると、Radeon RX 460のスコアはGeForce GTX 950比で、DirectX 9時に90%前後、DirectX 11の83%前後となっている。4K解像度(3,840×2,160ドット)ではDirectX 11の利用で大きくスコアを落としているが、この解像度でゲームをできるようなGPUではないため、この結果は特に気にする必要はないだろう。
Radeon RX 470のスコアはRadeon RX 480の87~90%であり、画面解像度が向上して描画負荷が高まると僅かにスコア差が広がっている。
MHFベンチマークに関しては、Radeon RX 460はGeForce GTX 950の81~88%、Radeon RX 470はRadeon RX 480の約88%のスコアをそれぞれ記録しており、他のベンチマークテストの傾向と同じ結果となっている。
VR環境での性能を3段階で評価するSteamVR Performance Testの実行結果では、Radeon RX 480が最高評価の「VR レディ」を獲得、Radeon RX 470とGeForce GTX 950が「VR 可能」、Radeon RX 460は「VR 使用不可」となった。
Radeon RX 460は描画したフレームの2割強で90fpsを割り込んでおり、これが「VR 使用不可」という評価に繋がっている。Radeon RX 470はGeForce GTX 950と同じ「VR 可能」止まりの評価となったが、平均忠実度では大きな差を付けており、両GPUの実力には大きな差があることが分かる。
最後に、各GPUを搭載したシステムの消費電力を測定した結果を紹介する。
アイドル時の消費電力については、Radeon RX 460が比較製品中もっとも低い28Wを記録。上位モデルのRadeon RX 470/480に10W以上の差を付けている。
ベンチマーク実行中の最大消費電力では、SteamVR Performance Test以外ではRadeon RX 460が最小の数値を記録。テストによってバラつきはあるが、各テストの電力差を平均すると、GeForce GTX 950に約17W、Radeon RX 470に約83W、Radeon RX 480に約119Wという差をつけた。Radeon RX 460とGeForce GTX 950の消費電力の差はベンチマークスコアの差と近似しており、両GPUの電力効率が近いものであるということが分かる。
性能と消費電力の差が大きいPolaris 10とPolaris 11
Radeon RX 470の性能はRadeon RX 480から10~15%ほど落ちるものの、比較的描画負荷の高いゲームタイトルをフルHD解像度でプレイできる程度の実力は備えており、家庭用ゲーム機を超える画質やフレームレートを期待するゲーマーにとって、コストパフォーマンスの良い選択肢となり得るGPUだ。
一方、Radeon RX 460の性能は、現在販売されているGeForce GTX 950の補助電源コネクタ省略モデルに及ばない程度であり、補助電源コネクタなしで動作するビデオカードでは最速というレベルには達していない。しかしながら、電力効率の面ではGeForce GTX 950と比較しても遜色なく、HDMI 2.0やDisplayPort 1.4といった最新のインターフェイスを備えている点は評価できる。AMDはRadeon RX 460について、e-Sports向けの描画負荷の低いゲームタイトル用途を推奨しており、そのようなゲームシーンで要求される実力は十分備えている。
今回テストしたRadeon RX 470とRadeon RX 460は、型番が10番違いのラインナップ上で隣り合ったモデルだが、その間には性能と消費電力の両面で大きな差が存在している。製品選択の際は、両GPUがまったく性格の異なる製品であるということを意識しておきたい。