レビュー
アッパーミドルに降臨したPascalアーキテクチャ「GeForce GTX 1060」レビュー
2016年7月19日 22:00
NVIDIAは7月7日、GeForce GTX 10シリーズのアッパーミドルGPU「GeForce GTX 1060」を発表した。先日発売されたAMD Radeon RX 480の対抗馬としても注目を集める期待のアッパーミドルGPUのパフォーマンスを、ベンチマークテストでチェックする。
GP106コアを採用するPascal世代のアッパーミドルGPU
GeForce GTX 1060は、Pascalアーキテクチャを採用したNVIDIAのアッパーミドルGPU。16nmプロセスで製造されたミドルレンジ向けの新GPUコア「GP106」を採用し、1,280基のCUDAコアと80基のテクスチャユニットを備える。
GPUの動作クロックは、ベースクロックが1,506MHz、ブーストクロックは1,708MHz。192bitのメモリインターフェイスを備え、8Gbpsで動作する6GBのGDDR5メモリと接続している。TDPは120Wで、マルチGPU技術のSLIには非対応。
GeForce GTX 1060 | GeForce GTX 1070 | GeForce GTX 1080 | |
---|---|---|---|
アーキテクチャ | Pascal(GP106) | Pascal(GP104) | Pascal(GP104) |
製造プロセス | 16nm | 16nm | 16nm |
GPU ベースクロック | 1,506MHz | 1,506MHz | 1,607MHz |
GPU ブーストクロック | 1,708MHz | 1,683MHz | 1,733MHz |
CUDAコア数 | 1,280基 | 1,920基 | 2,560基 |
テクスチャユニット | 80基 | 120基 | 160基 |
メモリ容量 | 6GB GDDR5 | 8GB GDDR5 | 8GB GDDR5X |
メモリ速度 | 8Gbps | 8Gbps | 10Gbps |
メモリインターフェース | 192bit | 256bit | 256bit |
ROPユニット | 48基 | 64基 | 64基 |
NVIDIA SLI | 非対応 | 対応 | 対応 |
TDP | 120W | 150W | 180W |
通常版価格 | 249ドル | 379ドル | 699ドル |
Founders Edition価格 | 299ドル | 449ドル | 699ドル |
今回テストを行なったのは、Founders Edition仕様のリファレンスボード。
金属フレームを採用した2スロット占有の外排気型GPUクーラーを搭載しており、ボードの全長はブラケット部を除いて約248mm。画面出力端子には、DisplayPortを3系統のほか、DVI-DとHDMIを各1系統ずつ備える。動作に必要な補助電源は6ピン1系統。
テスト環境
GeForce GTX 1060の比較対象には、1世代前(Maxwell世代)のハイエンドGPUであるGeForce GTX 980とGeForce GTX 970、AMD最新鋭アッパーミドルGPUのRadeon RX 480(8GB)を用意した。
比較GPUのうち、GeForce GTX 970のスコアについては、以前Radeon RX 480のレビュー時に測定したデータを流用している。このデータは、ASUSオリジナル仕様の「STRIX-GTX970-DC2OC-4GD5」をリファレンスモデル相当にダウンクロックして取得したものだ。
そのほか、テストに使用した機材は以下の表に記載した。
GPU | GeForce GTX 1060 | GeForce GTX 980 | GeForce GTX 970 | Radeon RX 480 |
---|---|---|---|---|
CPU | Core i7-6700K | |||
マザーボード | ASUS Z170-A | |||
メモリ | DDR4-2133 8GB×2(15-15-15-35、1.20V) | |||
ストレージ | 256GB SSD(CFD CSSD-S6T256NHG6Q) | |||
電源 | 玄人志向 KRPW-TI700W/94+(700W 80PLUS TITANIUM) | |||
グラフィックスドライバ | GeForce Game Ready Driver 368.64 | GeForce Game Ready Driver 368.69 | Radeon SoftwareCrimson Edition 16.7.1 | |
OS | Windows 10 Pro 64bit |
ベンチマーク結果
それでは、ベンチマークテストの結果を確認する。実行したテストは、3DMark(グラフ1、2、3、4、5)、Ashes of the Singularity(グラフ6)、アサシンクリード シンジケート(グラフ7)、Witcher 3(グラフ8)、ダークソウルIII(グラフ9)、ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク(グラフ10)、MHFベンチマーク【大討伐】(グラフ11)。
3DMark Fire StrikeでのGeForce GTX 1060は、トップスコアを記録したGeForce GTX 980から3~6%程度低い2番手のスコアを記録。GeForce GTX 970に20~24%、Radeon RX 480には5~10%の差を付けて上回った。
Sky DiverとCloud Gateでは、描画負荷の軽さから比較製品とのスコア差が縮んでいるものの、2番手というポジションは維持しており、GeForce GTX 970とRadeon RX 480には一定の差を付けてリードしている。
APIにDirectX 11とDirectX 12を選択できるAshes of the Singularityのベンチマークテストにおいて、GeForce GTX 1060のDirectX 12でのフレームレートは、DirectX 11よりも僅かに低下するという結果になった。このベンチマークでDirectX 12を利用することで明確にスコアを伸ばしているのはRadeon RX 480のみとなっている。
ただし、GeForce GTX 1060が記録した平均フレームレートは、DirectX 12を利用した場合でもRadeon RX 480を上回っており、DirectX 12での性能向上率で劣っても、性能では競合のアッパーミドルGPUを凌いでいる。
アサシンクリード シンジケートでは、全ての条件でGeForce GTX 980を上回るフレームレートを記録して、比較製品中最高の性能を発揮した。
VRAM使用量が多いアサシンクリード シンジケートでは、VRAMが4GBのGeForce GTX 980/970は、テスト設定の半数でメモリ不足に陥っている。一方、6GBのVRAMを備えるGeForce GTX 1060のメモリ容量が不足したのは、4K(3,840×2,160ドット)の最高描画設定のみとなっている。SLIをサポートしないGeForce GTX 1060の場合、シングルGPUで性能が不足する描画設定でのメモリ不足は問題にならないため、6GBというメモリ容量は十全なものと言ってよいだろう。
The Witcher 3: Wild Huntでは、GeForce GTX 1060はGeForce GTX 980と同じかやや低いフレームレートを記録し、Radeon RX 480を全条件で1fpsだけ上回った。このテストでは上位3つのGPUがかなり近いフレームレートを記録しており、実際にプレイする場合、ほぼ同程度の性能が期待できる。
最高フレームレートが60fpsとなるダークソウル IIIでは、1,920×1,080ドットの最高描画設定では比較した4つのGPU全てがフレームレートの上限に到達した。
各GPUの性能に差がついたのは画面解像度をWQHD(2,560×1,440ドット)以上に設定した時で、GeForce GTX 1060とGeForce GTX 980がほぼ同等のフレームレートを記録、GeForce GTX 970と同程度の性能を記録したRadeon RX 480には、9~17%程度の差を付けている。
DirectX 9とDirectX 11が選択できるファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマークでは、DirectX 9でGeForce GTX 980を僅かに下回っているのに対し、DirectX 11では逆にGeForce GTX 980を若干上回るスコアを記録しており、APIの違いにより性能の優劣が逆転する結果となった。
DirectX 9世代のベンチマークテストであるMHFベンチマーク【大討伐】では、GeForce GTX 980に10~12%の差を付けられ、GeForce GTX 1060は全体の2番手のスコアとなっている。
消費電力とGPU温度
各GPUを搭載したシステムの消費電力について、アイドル時の消費電力とベンチマークテスト実行中の最大消費電力をまとめたものが以下のグラフだ。
アイドル時の消費電力は、GeForce GTX 1060が29Wという比較製品の中でも特に低い数値を記録。この数値はRadeon RX 480より10Wも低いものだ。
ベンチマーク実行時の最大消費電力では、GeForce GTX 980/970がメモリ不足によりGPUがフルに稼働できていないアサシンクリード シンジケートを除いて、GeForce GTX 1060が最も低い消費電力を記録している。GeForce GTX 1060の電力対性能比は、旧世代のGeForce GTX 980/970はもちろんのこと、AMD最新のRadeon RX 480をも上回っていることが伺える。
以下のグラフは、ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク(DirectX 11/3,840×2,160ドット)を実行中のGPUの温度、クロック、ファン回転数をモニタリングした結果をまとめたもの。室温27℃の環境にて測定したもので、各数値はGPU-Z 0.8.9で取得した。
GPUクロックは、テスト開始から終了までブーストクロックの1,708MHzよりも100MHzほど高い1,800MHz前後で動作している。終盤で一瞬GPUクロックが下がっているのは、ベンチマークテストの終了処理中で一時的にGPU負荷が低下しているためで、それ以外に大きくGPUクロックが落ち込むような挙動はみられない。
GPU温度は最大で75℃、ファンの回転数は2,016rpmに達した。GeForce GTX 1060の最大GPU温度は94℃で、GPU Boost動作の基準となるTemperature Targetは83℃に設定されているが、今回のモニタリングで確認された75℃はどちらの温度にも十分な余裕がある。冷却ファンの最大回転数は約3,200rpmであり、こちらも十分余裕を持っていることから、GeForce GTX 1060 Founders Editionに搭載されたGPUクーラーは、同GPUを余裕をもって冷却できるものであると言える。
電力対性能比と費用対効果の高さが際立つPascal世代のアッパーミドル
GeForce GTX 1060の性能は前世代のハイエンドGPUであるGeForce GTX 980に近いもので、これだけの性能を249~299ドルという価格で実現した費用対効果の高さは、GeForce GTX 1060の大きな魅力となるだろう。
優れた性能をリーズナブルな価格帯で実現するGeForce GTX 1060には、16nmで製造されたPascalアーキテクチャ採用GPUならではの高い電力効率という強力な武器も備わっている。競合のRadeon RX 480と比較しても優秀な電力効率は、ビデオカードの動作に高価な大容量電源を必要とせず、PC全体のコストを引き下げる効果も期待できる。
最新のゲームを存分に楽しみたいと望む多くのPCゲーマーにとって、GeForce GTX 1060はきわめて魅力的な選択肢となりそうだ。
編集部より生配信のお知らせ
なお、7月21日(木)17:30より、改造バカこと高橋敏也氏による生配信「本ナマ改造バカ」にてでGeForce GTX 1060を紹介する。ゲストに加藤勝明氏を迎え、同GPUを搭載したビデオカードの生ベンチマークテストや話題のスクリーンショット機能Anselの解説などを行う予定だ。
この番組はニコニコ生放送、YouTubeライブ、AbemaTV FRESH!での同時配信。いずれも生放送終了後に録画映像が公開される(ニコ生は終了後1週間のみ)ので、読者諸兄のご都合のよい時間にご覧いただきたい。
「『Pascal第3の刺客“GeForce GTX 1060”を生見せ!Ansel教室(パン●ラ写真塾?)も開催』本ナマ!改造バカ 第20回」