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14型・1kg未満・Windows 11搭載で8万円台。パソコン工房の高コスパモバイルノートを試す
2021年11月22日 07:00
8万7,980円の1kg切りモバイルノート
パソコン工房を展開するユニットコムより、14型ノートPC「STYLE-14FH057-i3-UCEX [Windows 11 Home]」が発売された。型番にもある通り、Windows 11を標準採用したモデルとなる。本機の特徴は、重量が1kgを切る約0.98kgの軽量さでありながら、価格は8万7,980円と安価な点。ディスプレイも14型フルHDとなっており、モバイルノートとしては十分な大きさと広さがある。
昨年(2020年)からのコロナ禍で外出や出張が減ったものの、そろそろ何かと動き始めたという方も多いはず。久々にモバイルノートを引っ張り出したら、調子が悪かったり、性能不足を感じたり、Windows 11に非対応と言われたり……と色々な理由で買い替え気分になりがち。比較的手が出やすいお手頃価格の本機で、どこまで満足できるのか。性能から使い勝手まで一通り見てみよう。
Core i3とNVMe SSD、Thunderbolt 4も搭載
「STYLE-14FH057-i3-UCEX [Windows 11 Home]」のスペックは下記の通り。
【表1】STYLE-14FH057-i3-UCEX [Windows 11 Home] | |
---|---|
CPU | Core i3-1115G4(2コア/4スレッド、4.1GHz) |
GPU | CPU内蔵 UHD Graphics |
メモリ | 8GB DDR4-3200 |
SSD | 250GB(M.2 NVMe) |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | 14型非光沢液晶(1,920×1,080ドット) |
OS | Windows 11 Home |
汎用ポート | Thunderbolt 4、USB 3.1、USB 3.0 |
カードスロット | microSD |
映像出力 | HDMI、Thunderbolt 4 |
無線機能 | Wi-Fi 6、Blunetooth 5 |
有線LAN | なし |
その他 | 前面100万画素カメラ、マイク、音声入出力など |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 約322×218×19mm |
重量 | 約0.98kg |
価格 | 8万7,980円 |
CPUは2コア4スレッドのCore i3-1115G4。メインメモリは8GB、ストレージは250GBのNVMe SSDとなる。第11世代Coreで最大4.1GHzまで上がるなら、モバイルノートとして見れば十分な処理能力かと思うが、用途は人次第。後述のベンチマークテストをご確認いただきたい。
モバイルノートとしては大きめの14型フルHD液晶を搭載。フットプリントはA4サイズから幅が2.5cmほど大きくなった程度で、バッグに入れるのに手間のかからない大きさだ。
筐体は厚さ19mmで、これは本体裏にあるゴム足の部分も加えたもの。かなり薄型の本体ながら、Thunderbolt 4と2基のUSBポート、microSDカードスロットを備える。Wi-Fi 6にも対応するが、有線LANポートは非搭載。
カスタマイズに関しては、CPUとメインメモリは変更不可。ストレージは+4,400円で倍の500GBに変更できる。薄型軽量のモバイルノートだけに、カスタマイズ幅が狭いのはやむを得ない。8万円台の低価格である点も考慮して割り切るべきだろう。
シングルスレッド処理は優秀。普段使いには十分な性能
続いて実機でパフォーマンスをチェックする。ベンチマークテストに利用したのは、「PCMark 10 v2.1.2531」、「3DMark v2.21.7309」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「Cinebench R23」、「CrystalDiskMark 8.0.4」。
本機は専用ソフト「Control Center 3.0」で動作モードを設定できる。標準では「エンターテイメント」の設定で、ほかに「パフォーマンス」、「省電力」、「静音」の計4種類が選べる。内蔵ファンの回転数をカスタマイズできるツール「Fan Speed Setting」も用意されている。
今回のテストでは、「PCMark 10 v2.1.2531」に限り4つの動作モードで測定。ほかのテスト、およびバッテリテストについては標準設定となる「エンターテイメント」を利用した。
【表2】ベンチマークスコア | ||||
---|---|---|---|---|
エンターテイメント | パフォーマンス | 省電力 | 静音 | |
「PCMark 10 v2.1.2531」 | ||||
PCMark 10 | 3,843 | 3,856 | 3,659 | 2,561 |
Essentials | 8,110 | 7,978 | 7,875 | 6,290 |
Apps Start-up score | 10,523 | 9,916 | 10,064 | 8,291 |
Video Conferencing Score | 6,952 | 6,948 | 6,870 | 5,679 |
Web Browsing Score | 7,293 | 7,371 | 7,064 | 5,286 |
Productivity | 5,900 | 5,634 | 5,715 | 3,917 |
Spreadsheets Score | 5,381 | 5,357 | 5,182 | 3,589 |
Writing Score | 6,470 | 5,926 | 6,304 | 4,275 |
Digital Content Creation | 3,329 | 3,463 | 2,956 | 1,851 |
Photo Editing Score | 5,173 | 5,302 | 4,882 | 3,189 |
Rendering and Visualization Score | 1,860 | 2,081 | 1,685 | 937 |
Video Editing Score | 3,468 | 3,767 | 3,140 | 2,125 |
Idle Battery Life | 5時間7分 | |||
Modern Office Battery Life | 5時間21分 | |||
Gaming Battery Life | 1時間48分 | |||
「3DMark v2.21.7309 - Time Spy」 | ||||
Score | 767 | |||
Graphics score | 687 | |||
CPU score | 2,265 | |||
「3DMark v2.21.7309 - Fire Strike」 | ||||
Score | 1,652 | |||
Graphics score | 1,920 | |||
Physics score | 6,811 | |||
Combined score | 519 | |||
「3DMark v2.21.7309 - Wild Life」 | ||||
Score | 4,691 | |||
「3DMark v2.21.7309 - Night Raid」 | ||||
Score | 7,226 | |||
Graphics score | 8,589 | |||
CPU score | 3,805 | |||
「3DMark v2.21.7309 - CPU Profile」 | ||||
Max threads | 1,673 | |||
16 threads | 1,553 | |||
8 threads | 1,403 | |||
4 threads | 1,397 | |||
2 threads | 1,173 | |||
1-thread | 738 | |||
「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(最高品質) | ||||
1,920×1,080ドット | 1,385 | |||
「Cinebench R23」 | ||||
CPU(Multi Core) | 2,339pts | |||
CPU(Single Core) | 1,243pts |
CPUはシングルスレッド処理の性能がかなり高く、第11世代Coreの底力が見える。ただ2コア4スレッドのCore i3だけあって、マルチスレッド処理ではかなり厳しい。動画編集など高い処理能力が必要な作業は苦手だ。
ゲーム系に関しても厳しいのは想定通り。「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」では、フルHDの最高画質で「設定変更が必要」の評価だった。画質を標準品質(ノートPC)に落としたところ、2,397点で「設定変更を推奨」に上がったが、まだまだパワー不足。本格的な3Dゲームを遊ぼうとは思わない方がいい。
動作モードを変えると、パフォーマンス、エンターテイメント、省電力の順に少しずつパフォーマンスが落ちていく。静音にするとさらに大きくパフォーマンスが落ちるので、基本的には上の3つから好みの設定を選んでおくのがよさそうだ。
ベンチマークテストの結果だけを見るとパフォーマンスが低く見えてしまうものの、ブラウジングやオフィスユースなどで不満を感じる場面はほとんどない。ストレージはKingston製SSD「OM8PDP3256B-A01」が使われており、シーケンシャルリードで約2.4GB/sと高速だ。モバイル用途のPCとしては処理能力、ストレージとも十分な性能と言える。
バッテリテストでは、画面の輝度を50%にして測定。テストではアイドル時とオフィスユース時で持続時間が逆転してしまったが、低負荷な状態では概ね5時間少々の持続時間と見ていいだろう。高負荷になるゲームユースでも2時間弱とそこそこ持つが、先述の通りゲームを遊ぶのに十分なパフォーマンスではない。
筐体部15mmでも十分な堅牢性と十分な品質
続いて実機を見ていこう。筐体は全体がマットブラックで統一されており、iiyamaのロゴがシルバーで、ヒンジ部分にゴールドのワンポイントが配色されている。天面はフラットで、デザイン的にはかなり落ち着いている。
本体の厚さは、足部分を除いて計測すると約15mm。さらに前部・後部とも傾斜があるので、端部は10mmを切る。薄さと軽さのおかげで片手でもヒョイと持ち上げられて、持ち歩いている時にも不安感はない。
軽すぎて軟弱そうにも感じるが、畳んだ状態ではねじる動きにもほとんどたわみが出ない。天面を押すとわずかにへこむものの、薄さのわりに思ったほどはへこまない。ディスプレイ部を開いてねじるとさすがに少し歪むものの、これも薄さを思えば堅牢な方だと思う。全体的に軽さや薄さのわりにはしっかりしているという印象だ。
電源ボタンは本体右側にある。ボタンが小さく、ややくぼんだ位置にあるため、しっかり押し込まないと押せない。フットプリントを少しでも小さくするため、キーボード付近を外した配置なのかもしれないが、少々使いづらい。ちなみにディスプレイを畳んだ状態で電源ボタンを押しても反応しない。誤って電源を入れてしまう心配はなさそうだ。
端子部は本体左右の奥の方にまとめられている。接続機器やケーブルが邪魔にならないよう配慮された結果だろう。元々が薄型モバイルノートなので配置に制約がある中、フルサイズのHDMI端子やThunderbolt 4、microSDスロットなど、多機能な端子がそろっている。
14型のディスプレイについては、パネルの種類は明示されていないが、上下左右どの角度から見ても色相の変化はなく、TNパネルではなさそうだ。表面の非光沢処理は弱めで、やや反射が気になる。発色は落ち着いていて派手さはないが、残像感はなく、動画視聴も問題はない。なおディスプレイ部は180度開き、キーボード部とほぼ水平にできる。
キーボードはアイソレーションタイプ。配置はオーソドックスで、文字キー部分はほぼ全て正方形を維持している。方向キーとPageUp/Downキーが半分の高さに詰められているので、このあたりのキーを多用している場合は要注意だ。
キーストロークはかなり浅いが、しっかりしたクリック感がある。打鍵の音はゴムを叩くような静かな音で、キー入力作業も快適。タッチパッドは2ボタンを内蔵した標準的なものだ。
スピーカーは本体下部の左右にある。薄型筐体の内蔵スピーカーだけに低音はほぼ出ないものの、高音だけでなく中音域もしっかり出ており、ステレオ感もある。モバイルノートとしては上出来で、ちょっとした動画の視聴くらいであれば違和感なく利用できる。
騒音は、アイドル時にはほぼ無音。高負荷時にはファンが回り、ホワイトノイズのような音が少し出てくる。極端な高負荷を続けるとファンの回転速度がさらに上がり、高めの風切り音も聞こえてくるが、CPUとCPUに意図的に高負荷をかけない限りはそこまで高回転にはならない。
ちなみに「Control Center 3.0」の動作モードを「静音」にすると、ベンチマークテスト中でもファンの回転はわずかで、耳を近付けると聞こえる程度になる。このあたりの挙動は負荷だけでなく外気温にも影響されるので、気になった時に動作モードを変え、性能と騒音の調整をするといい。
ACアダプタは65W出力。厚さが約16mmと本体とほぼ同じ程度で持ち運びやすい。USB Type-Cでの充電に対応していてほしかったが、専用のACアダプタが付属する形だ。
安価でも質実剛健。14型で使いやすいモバイルノート
ノートPCは小さく軽くなるほど高価になるのが当たり前だ。本機もパソコン工房のノートPCのラインナップで見れば、15型で1ランク上のCore i5 CPUを搭載した製品の方がまだ少し安価ではあるのだが、価格の差はかなり小さい。14型でCore i3搭載で1kg未満という構成でもって8万円台というのは、かなりコストパフォーマンスが高い。
その分、製品のどこかに弱点が潜んでいるのではと思ってしまうが、ストレージはNVMe SSDだし、液晶パネルも十分な品質だし、最新規格のWi-Fi 6やThunderbolt 4も搭載しているし、キーボードの手触りや外装の堅牢性なども不満を覚えるところはない。特に他より優れた何かがあるわけではないが、「ザ・ビジネス用」と表したいくらい実に無難に、よくできている。
久々にモバイルノートの出番ができたが、何かしら物足りないと感じた時に、手が出やすい価格で、買って不満なく使える1台だと言える。特にモバイルノートはそう頻繁に買い換えたいものでもないので、そこそこの品質のものが安く手に入るのはありがたい。最新OSのWindows 11も標準搭載なので、この先も長く使えそうな安心感もある(Windows 10がすぐに使えなくなるわけではないが)。
コロナ禍はまだまだ先が見通せない状況ではあるが、この先何年もこのままということもないだろう。そろそろ外での仕事を見越して、まずはお手持ちのモバイルノートの点検を始めてみてはいかがだろうか。何か気になる点がある方、あるいは今からモバイルノートが必要になりそうな方は、ぜひ本機をチェックしてみていただきたい。