GIGABYTE製ゲーミングマザー「G1.Sniper2」レビュー
~G1-Killerシリーズ初のZ68搭載モデル


「G1.Sniper2」

 日本ギガバイト(GIGABYTE)から、Intel Z68 Expressチップセット(以下Z68)搭載マザーボード「G1.Sniper2」が発売された。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は33,000円前後。借用する機会を得たので、写真中心の製品レポートをお届けする。

 G1-Killerシリーズは、PCゲーマーをターゲットに、ネットワークコントローラやサウンドチップにこだわって設計されており、これまでに発売された製品はすべてIntel X58 Express チップセット搭載製品だった。今回取り上げるG1.Sniper2は、同シリーズでは初のZ68搭載製品となる。

 G1-Killer シリーズは、同じくゲーマー向けを謳うASUSTeKの「Republic of Gamers(R.O.G.)」シリーズや、ASRockの「Fatal1ty」シリーズと競合する製品だ。Z68を搭載する具体的競合製品としては、ASUS「MAXIMUS IV EXTREME-Z」(実売価格40,800円前後)と、ASRock「ASRock Fatal1ty Z68 Professional Gen3」(26,000円前後)などが既に発売されている。G1.Sniper2は、価格的にちょうどこの2製品の間に位置する製品ということになる。

●ハードウェア

 パッケージは、G1-Killerシリーズらしくミリタリー風なデザインが採用されている。付属品には、マニュアル、ドライバDVD、SATAケーブル×4本、I/Oシールド、SLIブリッジケーブルなどの基本的なものに加え、USB 3.0×2ポートとeSATA、クイックブーストボタンを備えた5インチベイ用コントロールパネルや、G1-Killerシリーズのポスターとステッカーが付属している。

 マザーボード本体は、黒色に緑のアクセントを加えたカラーリングが施され、銃のパーツを模したデザインのヒートシンクが搭載されているのが目を引く。CPUはLGA1155のCore iシリーズおよびPentium Gシリーズなどに対応し、DDR3-2133/1866/1333/1066に対応したメモリスロットを4本備える。搭載可能なメモリの最大容量は32GBだ。

 また、Z68で新たにサポートされた、SSDをHDDのキャッシュに用いる「Intel Smart Response Technology」と、内蔵GPUと単体ビデオカードを動的に切り替えるLucidLogix「Virtu GPU Virtualization Software」(Virtu)に対応している。Virtuについては、G1.Sniper2がHDMI出力を備えているため、必要に応じてビデオカードを利用する「i-mode」と、ハードウェアエンコーダ「Intel Quick Sync Video」を備えた内蔵ビデオを利用する「d-mode」の両方が利用可能となっている。

 G1.Sniper2は、GIGABYTE独自の品質規格「Ultra Durable 3」に準拠しており、ボード上のコンデンサは日本製固体電解コンデンサに統一されている。また、基板にはGND層の銅箔の厚みを従来の倍にした2oz Copper PCBを採用している。銅箔層の厚みが倍になったことで電気抵抗が減少し、電気抵抗によって発生する発熱と電力のロスが減少するのが特徴だ。

 なお、G1.Sniper2のボードサイズは、標準的なATX規格(305mm×244mm)より若干大きい305mm×264mmとなっている。大抵のATXケースに取り付け可能と思われるが、スペースに余裕のないケースの場合は注意が必要だ。

G1.Sniper2のパッケージマザーボード本体内容物
5インチベイ用のコントロールパネル弾倉など、銃の形を模したヒートシンクを搭載弾倉型のサウスブリッジ用ヒートシンクには、ユニークな注意文が書かれている

 CPU周りには12フェーズの電源回路が搭載されている。うち10フェーズには「Driver-MOSFET」が採用されているが、GIGABYTEの製品情報によると電源フェーズ数は8フェーズとされている。詳細は不明だが、おそらく12フェーズ中8フェーズがCPU用で、残り4フェーズはメモリやiGPU用に割り当てているものと思われる。

 拡張スロットは、PCI Express Gen2 x16形状のスロットが2本、同x1が2本、PCIスロットが2本となっている。PCI Express x16スロットは、上側のスロットがx16として動作し、下側のスロットはx8として動作する。両方のスロットにビデオカードを接続した場合、どちらもx8動作となる。また、22nmプロセスの次世代CPUと組み合わせることにより、PCI Express Gen3スロットとして動作する。

 ボード上のチップで特に目を引くのが、ネットワークとサウンドコントローラだ。ネットワークコントローラにはBigfoot Networks「Killer E2100」が採用されており、コントローラチップの周囲には専用メモリとして、Samsung製のDDR2を1GB(512MB×2)実装している。Killer E2100がネットワーク処理をCPUに代わって行なうことで、その分のCPUリソースをゲームの処理に利用でき、フレームレートの向上が期待できるとされている。

 サウンドコントローラにはCreativeの「X-Fi Xtreme Fidelity(CA20K2-2AG HF)」を搭載。周辺には64MBのX-RAMとニチコン製のオーディオコンデンサ、EMIを防ぐ銅製のバスプレートが実装されている。X-Fi Xtreme Fidelityの搭載により、「EAX Advanced HD 5.0」が利用可能なほか、こちらもサウンド処理をCPUに代わりX-Fi Xtreme Fidelityが行なうことで、CPU負荷を下げる効果があるとされている。オーディオ周りの仕様をセールスポイントの1つとして謳うマザーボードは少なくないが、オンボードで銅製のバスプレートまで実装した製品は珍しい。

 このほか、ストレージ用のインターフェイスには、Z68標準のSATA 6Gbps×2ポート、SATA 3Gbps×3ポートに加え、Marvel 88SE9172接続のSATA 6Gbps×2ポートが用意されている。Z68接続のSATAポートはRAID 0/1/5/10に、Marvel 88SE9172接続のSATAポートはRAID 0/1に対応している。また、USB 3.0コントローラとしてEtron Technology製「EJ168A」が2チップ実装されており、バックパネルと内部ヘッダー合わせて4ポートを提供している。

 バックパネルには、USB 2.0×7ポート、USB 3.0×2ポート、PS/2、eSATA/USBコンボポート、Gigabit Ethernet、オーディオ入出力、HDMI出力のほか、押すとCPUをオーバークロックする「O.C.ボタン」が用意されている。Intel Core i7-2600K(3.4GHz)を搭載した状態でO.C.ボタンを押したところ、CPU倍率が42倍に設定され、4.2GHzにオーバークロックされた。このオーバークロックは再度O.C.ボタンを押すか、PCを再起動すると解除される。5インチベイ用のコントロールパネルに用意されているクイックブーストボタンを押しても同様の設定が反映される。

 ネットワークコントローラとサウンドコントローラ周りの実装は、まるでLANカードとサウンドカードをそのままオンボード実装したかのような豪華な仕様となっている一方、ハイエンドマザーボードに多く実装されている電源ボタンやPOSTコード表示LED、CMOSクリアスイッチなどは実装されていない。ゲーマー向けと割り切った仕様と取れなくもないが、ASUS MAXIMUS IV EXTREME-Zだけでなく、価格の安いASRock Fatal1ty Z68 Professional Gen3にも搭載されていることを考えると、G1.Sniper2にこれらの機能が無いのは残念だ。

電源回路周辺拡張スロット周りネットワークコントローラBigfoot Networks「Killer E2100」
サウンドコントローラCreative「CA20K2-2AG HF」ニチコン製のハイエンドオーディオコンデンサと銅製のバスプレートを搭載白がSATA 6Gbps(Z68)、黒がSATA 3Gbps(Z68)、グレーはSATA 6Gbps(Marvel)
Etron Technology製USB 3.0コントローラ「EJ168A」バックパネルインターフェイス

●BIOS

 続いて、BIOSの設定項目をチェックしていく。なお、G1.Sniper2では、従来のBIOSを採用しながら3.0TB以上のHDDからの起動をサポートする「ハイブリッドEFIテクノロジー」と、BIOS ROMを2チップ搭載することで、BIOSアップデート時のトラブルなどによる破損から保護する「Dual BIOS」を採用している。

 ベースクロックや各部の電圧など、オーバークロックに関連する主な設定項目は「MB Intelligent Tweaker(M.I.T.)」に集約されている。M.I.T.では、動作クロックやCPU周りの設定を行なう「Advanced Frequency Settings」、メモリの設定を行なう「Advanced Memory Settings」、電圧の設定を行なう「Advanced Voltage Settings」といった具合に項目が分けられており、設定したい項目が探しやすい。

 設定項目としては、「Internal CPU PLL Overvoltage」や、負荷時の電圧変動を調整する「Multi-Steps Load-Line」など、Sandy Bridge CPUのオーバークロックに必要な設定項目は一通り用意されている。

 CPU電圧は0.750V~1.700V、メモリ電圧も0.890~2.135Vの範囲で設定可能なので、オーバークロックのみならず、電圧を下げて低発熱/省電力化を狙うことも可能だろう。メモリタイミングや電圧関連の設定項目は豊富だが、他の同社製のZ68搭載マザーボードと比べ、OC関連の設定項目が特に充実しているわけではない。

 設定した項目の数値は、F12キーでオーバークロックプロファイルに保存できる。最大で8つのプロファイルを作成可能で、プロファイルには英数字で名前を付けて管理できる。保存したプロファイルはF11キーを押すことで読み出すことが可能だ。

BIOSメイン画面。この画面でCtrlキーとF1キーを同時押しすることで隠し項目が追加されるM.I.T.の設定メニュー。項目が整理されているので、目的の項目が探しやすい
CPU関連の設定項目
メモリ関連の設定画面
電圧の設定画面CPU電圧は0.750V~1.700Vの範囲で設定可能
メモリ電圧は0.890V~2.135Vの範囲で設定可能オーバークロックプロファイルは8個保存可能。USBメモリなどに保存することもできる

●ユーティリティ

 G1.Sniper2には、BIOS設定項目をOS上で変更可能な「Touch BIOS」をはじめ、OS上でリアルタイムにクロックや電圧を変更できる「EasyTune6」、Intel Smart Response Technologyの設定を自動で行なう「GIGABYTE EZ Smart Response」など、豊富なユーティリティソフトが用意されている。

 Touch BIOSはBIOSに近い設定項目をOS上で設定できるユーティリティで、クロックや電圧、ブートメニューなどの設定が可能なほか、設定画面を保存することもできる。ただし、Touch BIOSで設定した項目が反映されるのは再起動後となっており、リアルタイムに動作クロックや電圧を変更することはできない。リアルタイムに動作設定の変更を行ないたい場合はEasyTune6を使い、Touch BIOSはインターネット上の情報を参考にしながらBIOSの設定を行ないたい場合に使うなど、状況に応じて使い分けると良いだろう。

Touch BIOS画面。設定項目は日本語で表示される。付属DVDのバージョンでは文字化けが発生したため、GIGABYTEの製品ページからダウンロードしたバージョン(B11.0720.1)を使用した。
EasyTune6。クロックや電圧の設定とモニタリングが可能

 サウンド機能とネットワーク機能については、それぞれCreativeとBigfoot Networksのユーティリティソフトが利用できる。

用途に応じたUIを選択できるCREATIVE Sound Blaster X-Fiネットワーク接続の設定や利用率の監視が可能なBigfoot Networks Killer Network Manager

 マザーボード上に銅製のバスプレートまで実装したサウンド周りが気になり、バックパネルのスピーカー出力にヘッドフォンを接続して試聴してみたところ、オンボードサウンドとは思えないほどノイズが少ないことに驚かされた。音質についてはちょうど良い比較対象がなく、語れるほどの耳をもっていないので詳しいコメントは控えるが、伊達に銅製バスプレートやニチコン製のハイエンドオーディオコンデンサを搭載しているというわけではないようだ。

 ためしに、O.C.ボタンを押して4.2GHzにオーバークロックしてみたり、バックグラウンドでCPU負荷を掛けつつ、HDDの読み書きを行なってみたが、ノイズの増加を聴き取ることはできなかった。試聴時のパーツ構成が最低限だったことが良かったのかもしれないが、オンボードサウンドにありがちな、ノイジーな出力とは一線を画すクリアなサウンドであると感じた。

●長く使える可能性を持ったゲーミングマザーボード

 G1.Sniper2をチェックしてみたが、G1-Killerシリーズらしく、ネットワークコントローラとサウンド周りへのこだわりが感じられる仕様になっている。サウンドカードやLANカードを増設することなく、それに匹敵する機能をオンボード搭載しているため、拡張スロットを圧迫しない点は、大型ビデオカードにスペースを取られがちなゲーミングPCにとってプラスに働く仕様だろう。

 また、次世代CPUとの組み合わせでPCI Express Gen3をサポートするという仕様から、長く使えるマザーボードになると期待できる点も魅力的だ。よりパフォーマンスを求めるユーザーとしては、フルレーンでSLIやCrossFireを構築したいところだが、3万円前半という価格と、ネットワークやサウンド周りの仕様を考えると納得はいくだろう。この点や、オンボード上の電源スイッチなどについては、今後のG-1Killerシリーズの展開にも期待したい。

(2011年 8月 12日)

[Reported by 三門 修太]