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ロジクール最高のマウスだったけど、“ベトベト”になるのが欠点。6年ぶりの「MX Master 4」なら期待してもいいの?

ロジクール「MX Master 4」(左)

 ロジクールから次世代フラグシップマウス「MX Master 4」が本日発売された。直販価格は2万1,890円だ。前モデル「MX Master 3」が発売されたのが2019年9月27日なので、約6年ぶりのニューモデルということになる。

 一般消費者向けにマウスという入力デバイスが発売されたのは1983年のこと。1983年1月発売のApple「Lisa」に同梱され、また同年5月には「Microsoft Mouse」も発売された。2025年で42年の歴史を持つマウス……しかもそのフラグシップモデルに新たな機能を加えるためには、6年の月日を要したわけだ。

 MX Master 4には新機能として、「触覚フィードバック センスパネル」と名付けられた感圧 & 振動入力装置が追加され、それと連動する新型UI「Actions Ring」が実装された。また耐久性の高いボディ材質の採用、USB Type-Cドングルの同梱、サムホイール位置の見直し、底面ソールの大型化など、数多くの改良が加えられている。

 今回本製品の発売に先駆けて実機を借用したので、MX Master 4の進化点にスポットを当てつつ、前モデルのユーザーでもある筆者の視点から、買い替えるべきなのかどうかを含めて検証していこう。

旧モデルとどう違う?

 「MX Master 4」はロジクール製マウスのフラグシップモデル。基本的なデザインは従来シリーズを踏襲しているが、ハードウェア的には触覚フィードバック、ソフトウェア的には専用の新型UI「Actions Ring」を採用し、使い勝手を向上したと謳われている。

 ラインナップとしては、カラーがグラファイトの「MX2400GR」、ペイルグレーの「MX2400PG」の2モデルが用意されており、この2機種の保証期間は2年に設定。また保証期間が1年の「MX2400GRd」も発売予定だ。

左がグラファイトの「MX2400GR」、右がペイルグレーの「MX2400PG」

最大の進化は「触覚フィードバック センスパネル」

 MX Master 4最大の進化点が、左側面部に新設された「触覚フィードバック センスパネル」。これはボタンとバイブレーションを組み合わせた新ハードウェアで、押すと8つのショートカットがリング状に表示され、マウスカーソルでクリックすることで、登録されているコマンドを即座に実行可能だ。また特定の動作、ショートカット、通知に応じて異なる振動パターンをユーザーに伝えられる。

 ロジクールの統合ユーティリティ「Logi Options+」をインストールできるOS上でしか利用できないが、Windows、macOSなどの使い勝手を向上するための新機能だ。

「触覚フィードバック センスパネル」を押すと、8つのショートカットが表示。デフォルト設定の「Explore AI」はフォルダ化されており、AIサービスが登録済み

 比較的新しいMacBookや、Windows PCの一部に採用されている「感圧タッチトラックパッド」はクリックしてもタッチパッド自体は物理的に動かないが、MX Master 4の「触覚フィードバック センスパネル」は押すとわずかにへこむ。

 ただし電源をオンにしていなければ、物理ボタンを押したときのようなクリック感は発生しない。「触覚フィードバック センスパネル」は押したか押していないかを検知できるが、少なくとも現段階では、圧力の度合いは検知できないようだ。

「触覚フィードバック センスパネル」は押すとへこむが、電源オフではクリック感は発生しない

汚れにくく耐久性も向上したボディ

基本的なデザインは前モデル踏襲。左がMX Master 4、右がMX Master 3

 個人的に最も歓迎しているのが、汚れにくく耐久性の高いボディ素材の採用。MX Master 3は高級感の演出と、滑り止めの効果を狙ったのか「ラバーコーティング」が施されていた。しかし、これは3~5年も経つと加水分解が発生し、表面がベトベトしてしまう。こうなってしまったらラバーコーティングをはがしてしまわない限り、快適に操作できない。

 樹脂の地肌をそのまま生かしたMX Master 4は、長期間使用しても外観、触り心地に劣化はほとんど生じないはずだ。

これは6年モノのMX Master 3。かなり加水分解が進行しており、表面に付着しているホコリを取ることは難しい

サムホイールの位置変更など細かな変化も

 このほかの細かな進化点としては、「サムホイール」の位置変更。MX Master 3よりも数ミリ高い角の頂点に配置することで、回転操作しやすくなっている。また「触覚フィードバック センスパネル」の新設にともない、「サムボタン」が左端から「進むボタン」の奥に移動した。

 底面ソールが大型化したことも、安定性の点で恩恵が大きいはずだ。2.4GHzの接続方式もUnifyingからLogi Boltへと変わっている。

 さらに、2022年6月に発売された「MX Master 3S」と同様に、MX Master 3に比べて90%のノイズを減少した「静音クリック」ボタンが左右クリックボタンに採用されている。最大解像度もMX Master 3の2倍の8,000dpiとなっている。

左側面と右側面。サムホイールやサムボタンの位置が変わっている
前面と背面
MX Master 4のソールは大型化されている
サイズは、MX Master 4(左)が88.2×128.2×50.8mm、MX Master 3(右)が84.3×124.9×51mm。微妙にサイズは異なるが、握り心地からは両者に差は感じない
MX Master 4の実測重量は150.21g
MX Master 3の実測重量は142.95g
Logi Bolt USB-Cレシーバー
Logi Bolt USB-Cレシーバーの実測重量は0.96g
MX Master 4の製品パッケージ
MX Master 4の同梱品一覧
説明書は同梱されていないが、底面にクイックスタートガイドを兼ねた保護フィルムが貼られている
【表】MX Master 4とMX Master 3の主な仕様
製品名MX Master 4MX Master 3
センサー方式Darkfield
解像度200~8,000dpi(50dpi刻み)200dpi~4,000dpi(50dpi刻み)
総ボタン数87
スクロールホイール〇(MagSpeed電磁気スクロール)
接続方式Logi Bolt、Bluetooth Low EnergyUnifying、Bluetooth Low Energy
操作可能距離約10m
サイズ88.2×128.2×50.8mm84.3×124.9×51mm
重量150g141g
バッテリリチウムポリマー
バッテリ駆動時間フル充電で最長70日間
対応OSWindows 11以降、macOS 13以降、Linux、ChromeOS、iPadOS 15以降、Android 12以降Windows 7、8、10以降、macOS 10.13以降、Linux
進化点Actions Ring、触覚フィードバック センスパネル、汚れにくく耐久性の高い素材を採用、サムホイールの位置を変更、静音クリック-
発売日2025年10月30日2019年9月27日
直販価格2万1,890円1万3,500円
保証期間2年(型番MX2400GRdのみ1年)2年

触覚フィードバックは便利だが、すばやくオン/オフできる機能がほしい

 今回MX Master 4を数日間使用してみたが、最大の売りである「触覚フィードバック センスパネル」はユーザーによって好き嫌いが大きく分かれると感じた。

 触覚フィードバックを疎ましく感じる可能性が高いのは、マウスを持ち上げて使う癖がある方だ。マウスを動かすスペースが足らないとき、マウスを持ち上げて置き直した経験はみなさんにもあると思う。そのようなとき「触覚フィードバック センスパネル」を押してしまい、意図せず「Actions Ring」が開いてしまうことがあるのだ。これが正直かなり煩わしい。

 ボディを持ち上げても「Actions Ring」が開かないように、しきい値を調整できれば解決できるが、MX Master 4にはそのような設定項目は用意されていない。

「触覚フィードバック センスパネル」に常に親指が触れているので、よほど慎重に持ち上げない限りは「Actions Ring」が開いてしまう

 触覚フィードバックをオフにすることは可能だ。しかし、そのためにはLogi Options+を開いてから、4回クリック操作が必要だ。これはさすがに面倒である。

 上面の「スクロールホイールのモードシフトボタン」などに触覚フィードバックのオン/オフを割り当てられれば、狭い場所ではオフ、広い場所ではオンと使い分けられる。この問題を解決するためにも、今後のソフトウェアアップデートで実装されることを強く望みたい。

触覚フィードバックはオン/オフを切り替え可能
現時点のLogi Options+では触覚フィードバックのオンオフをボタンに割り当てられない

 ここまでは「触覚フィードバック センスパネル」の不満点を挙げてきたが、広いスペースを確保できたときのMX Master 4の使い勝手は非常によいと思う。ロジクールらしくAdobe系アプリのプロファイルが用意されているし、カスタマイズも非常に細かく変更可能だ。

 特定のアプリケーションごとにオリジナルのプロファイルも用意できる。自分好みにカスタムするほど、作業効率が大幅に向上することは間違いないと言える。

共通のプロファイル
Photoshop用のプロファイル
Premiere Pro用のプロファイル
Lightroom Classic用のプロファイル

可能性を感じる新機能。いろんな操作をマウス1つでこなしたいならアリ

 約6年ぶりに大幅刷新されたMX Master 4は、新搭載の「触覚フィードバック センスパネル」と「Actions Ring」によって、マウス単体でショートカットやAIツールを自在に呼び出せる点は革新的とも言える。ただし、狭い環境での誤作動やオン/オフ操作の煩雑さなど、改良の余地が感じられたのも正直なところだ。

 とはいえ、ボディ素材や静音クリック、センサー精度、USB Type-Cドングル同梱などハードウェア面の完成度は申し分ない。先に挙げた不満点がソフトウェアアップデートで改善される可能性もあるだろうし、今後の伸びしろにも期待せずにはいられない。そういった意味で、マウスの使い勝手をさらに進化させたMX Master 4は現時点でも魅力的な存在だ。

 さて、既存のMX Master 3ユーザーが最も気になるのは、「MX Master 4に買い替えるべきかどうか」という点だろう。結論から言えば、マウスというハードウェアとしてはMX Master 3の時点でほぼ完成しているため、「触覚フィードバック センスパネル」や「Actions Ring」に強く惹かれている方以外は、無理に買い替える必要はないと考えている。

 むしろ、現代のマウスは多機能化が進み、操作が片手に集中しがちだ。となると、ショートカットやマクロを割り当てられる「左手デバイス」を併用したほうが、操作の自由度や作業効率が高まると感じる方も多いはずだ。

 「できるだけ多くの操作を右手のマウスに集約したい」ならMX Master 4を、「両手でバランスよく操作したい」ならMX Master 3を引き続き愛用しつつ、左手用の補助入力デバイスを導入する……というのが筆者のアドバイスだ。

 また、筆者のように「加水分解でベットベト!」ということであれば、すぐにMX Master 4に買い替えるべきだ。MX Master 3がどんなに安価に販売されていても、構造上数年後には同じ道を辿る可能性が高い。それなら「触覚フィードバック センスパネル」や「Actions Ring」を使わないとしても、MX Master 4を選ぶべきだと言えるだろう。