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Intel NPUってタダの飾り?使われてるの?AI機能/ソフトをいろいろ試してみた
2025年10月20日 06:00
2024年に登場したCopilot+ PCは、40TOPS以上の実行性能を持つAI専用チップであるNPU(Neural Processing Unit)を搭載するというシステム要件がある。それ以前からNPUを搭載したプロセッサは存在したが、NPUの存在が多くの方に意識されたのはこのタイミングだろう。
それから1年あまりが経過し、Copilot+ PCのラインナップはかなり広がってきている。それと同時に、40TOPSには満たないがNPUを搭載したPCもまた、市場に多く出回っている。「自分のPCにNPUは搭載されているようだが、意識して使ったことはない」という方も、かなり多いのではないかと思う。
本稿では、Copilot+ PCの要件を満たしたIntel製プロセッサを搭載したノートPCと、Copilot+ PCではないがNPUを搭載したノートPCの2台を用意し、いまNPUでどんなことができるのかを見ていこうと思う。
Copilot+ PCのNPUで何ができるのか?
今回用意したPCはいずれもHP製14型ノートPCで、第2世代Core Ultra 7プロセッサを搭載したもの。1台はCore Ultra 7 258Vを搭載した「Omnibook Ultra Flip 14-fh0001TU」。もう1台はCore Ultra 7 255Uを搭載した「Omnibook 7 AI 14-fr0001TU」。
前者はCopilot+ PCで、後者は違うわけだが、製品名を見ると後者の方にAIという文字が入っている。Copilot+ PCではないからといってAIが使えないわけではなく、むしろNPU搭載であることをアピールしたいようだ。
2つの製品はどちらも第2世代Core Ultraプロセッサを搭載しているが、中身は大きく異なる。特にNPUに関しては、前者のCore Ultra 7 258Vは47TOPS、後者のCore Ultra 7 255Uは12TOPSと、約4倍の差がある。単にこのNPUが使われているかどうかだけでなく、この違いが実際の使用でどう影響するのかを見ていくのも、今回の趣旨の1つとなる。
ではまずCopilot+ PCである「Omnibook Ultra Flip 14-fh0001TU」を用いて、NPUで何ができるのかを見ていこう。Copilot+ PCには、Microsoftが提供するさまざまなAI機能が搭載されている。
フォトのImage Creator
AIと言えば多くの方が想像するのは、画像生成AIだろう。Copilot+ PCでも画像生成AIを用いた機能がいくつか用意されている。最も分かりやすいのが「フォト」アプリから利用できる「Image Creator」だ。
テキストの指示に沿って画像を生成するもので、512×512ドットの画像を1秒あまりで次々と生成する。テキストの指示は自由に書けるほか、いくつかのテンプレートも用意されているので試しやすい。生成中はNPUをフル活用しているのが確認できる。
ペイント
画像生成ではもう1つ、「ペイント」アプリで使用できる「Stickerジェネレーター」も面白い。256×256ドットのステッカー画像を、テキストの指示に従って生成するという機能。画像の背景は透過処理されており、資料などに挿入しやすい。
「Image Creator」と合わせて、ちょっとした画像が欲しい時に重宝する。どちらもNPUを用いたローカル処理なので、何度でも気軽に試せるのも嬉しい。
Windows スタジオ エフェクト
普段から便利に使える機能としては、「Windows スタジオ エフェクト」がある。Web会議などで使用するカメラ映像を、AIによって加工処理するというもの。Web会議アプリに映像を渡す前に映像処理するので、Web会議のアプリを問わず使用できるのが便利だ。
具体的には、背景をぼかす処理や、カメラ映像から被写体が外れそうになるとそちらに自動的にズームする「自動フレーミング」、被写体がカメラの方に目線を向けていない時に、目線を向けているように加工する「アイ コンタクト」などを利用できる。
特に需要があるのは背景のぼかし処理だと思うが、背景と人物の境目をとても精密に認識してぼかし処理する。しかも遅延もほとんど感じられない。NPUの負荷は使用する効果が増えるほど重くなっていくが、先に挙げた3つをすべて使っても20%程度。背景ぼかしだけなら6%程度とかなり軽量だ。モバイル環境ではバッテリ消費の低減にも役立つだろう。
Click To Do
ほかにCopilot+ PCならではの機能として、「Click To Do」は知っておきたい。デスクトップ画面全体のスナップショットを撮り、その中にある情報を自在に操れるというもの。Windowsキーを押しながら画面をクリックすると動作する。
たとえば、スナップショットの中にあるテキスト情報を読み込み、Webで検索できる。テキストを検索すると言うと当たり前に感じるかもしれないが、動画に写ったテキストでも、写真の背景にある店舗の看板でも、テキストと認識できるものなら何でも検索対象にできる。
画像は「ペイント」や「フォト」などのアプリと連携して加工したり、「Bing」や「Copilot」に送って情報検索に使えたりする。これも元々画像である必要はなく、Web広告だろうがプレイ中のゲームだろうが、何でも素材にできる。
「Click To Do」は今後も機能を拡張していくようなので、Copilot+ PCをお持ちの方はぜひ注目していただきたい。便利に使える場面は意外と多いはずだ。
サードパーティ製ソフトにもNPU対応が進んでいる
続いてはCopilot+ PCの機能ではない、NPUを活用するアプリを見ていきたい。
GIMP
こちらもまずは画像生成AIから。「OpenVINO AI Plugins for GIMP」を用いることで、「Stable Diffusion」による画像生成が可能だ。
「Stable Diffusion 1.5」では、1枚約8秒程度で画像生成ができた。NPUだけでなくGPUも使用しているのが分かる。画像生成モデルはほかに「Stable Diffusion 3」系も使用できるが、こちらはNPUを使用せずGPUだけで処理していた。
Luminar Neo
次は「Luminar Neo」。さまざまな写真編集機能を持つアプリで、その一部でAIを活用している。Microsoft Storeからダウンロードが可能だ。
今回はAI機能の中から「ポートレートボケ」を試してみた。写真の人物を自動認識した上で、背景にぼかしを入れてくれる。NPUを40%程度使用し、待ち時間を意識することもないほど高速に処理された。
CapCut
続いて動画編集ソフトの「CapCut」。「背景を削除」という機能を使うと、人物だけを残して背景を消去してくれる。
適当な30秒程度の動画を用意して「背景を削除」を実行すると、どれが人物かを指定するような作業もなく、すぐさま処理が始まる。15秒程度で作業は完了し、動画の全編でほぼ正確に人物だけを抜き出して、背景が消去された。この処理はNPUとともにGPUも併用する形だ。
Audacity
映像以外のソフトも見てみよう。「Audacity」という音声加工ソフトは、「OpenVINOプラグイン」を導入することで、いくつかのAI機能が使えるようになる。「Audacity」をMicrosoft Storeからインストールした後、GitHubにあるプラグインのインストーラをダウンロードし、実行するだけでいい。
プラグインで導入される機能は、音楽を楽器やボーカルなどの要素に分離、ノイズの除去、音質のアップスケール、さらにはMusicGen LLMを用いて音楽の生成。そしてこれらの音楽的要素以外に、OpenAIが開発した「Whisper」という音声認識モデルによる文字起こしが可能になる。
今回は文字起こしのテストをしてみた。実行時にCPU、GPU、NPUのどれで処理をするかを尋ねられるので、NPUを選んだ。試しに10秒ほどの話し声を録音して文字起こしさせてみたところ、ほんの一瞬NPUを使用しただけで文字起こしが終わった。認識精度はかなり高く、日本語をほぼ正確に文字起こしできた。
このほかにも、映像や音響の分野を中心に、さまざまなソフトでNPUの活用が進んでいる。今回見ていただいたように、既にNPUのパワーを活用することで処理を高速化、あるいは省電力化できる場面はかなり多くなっている。
Copilot+ PCではないNPU搭載PCではどうなる?
ここまではCopilot+ PCである「Omnibook Ultra Flip 14-fh0001TU」を使って話をしてきたが、ここからはCopilot+ PCではないけれどNPUを搭載している「Omnibook 7 AI 14-fr0001TU」を使って、同じ機能やソフトをテストしてみよう。
まずはCopilot+ PC向けとされるAI機能から見ていこう。Copilot+ PCではないのだから使えないはずでは、と思ってしまうが、実は利用できるものもある。
「フォト」アプリの「Image Creator」や、「ペイント」アプリの「Stickerジェネレーター」は、各アプリにその項目が表示されない。つまり対応していないので使えない。
また「Click to Do」も、Windowsキーを押しながら画面をクリックしても、スタートメニューが開くだけ(Windowsキーを押した時の挙動)。こちらも機能が実装されていないのが分かる。
「Windows スタジオ エフェクト」に関しては、設定項目が存在し、同じように動作する。NPUの使用状況を見てみると、3つの効果をすべて使用すると35%程度使用、背景ぼかしだけでも約17%使用している。先のPCと比べると2~3倍の使用率になっており、NPUの性能差が見て取れる。ただ、機能としては正しく実装されている。
なおWindows スタジオ エフェクトを利用するには、NPUを搭載したPCのBIOSで、NPUサポートが有効化されている必要がある。この状態だとWindows スタジオ エフェクト ドライバーをインストールでき、Windows スタジオ エフェクトを利用できる。単にNPUが搭載されたミニPCなどにWebカメラをつなげても使えないので注意が必要だ。
ほかのソフトも試してみよう。「OpenVINO AI Plugins for GIMP」では、「Stable Diffusion 1.5」を使って同条件で画像生成したところ、約13秒で1枚の画像を生成できた。NPUの使用率は50~90%とかなり高いが、生成速度は1.5倍くらいかかっている。これはNPUだけでなくGPUの性能差も影響しているのだろう。
「Luminar Neo」の「ポートレートボケ」では、処理はできているものの、NPUは使われなくなった。ソフト側で、この環境ならNPUを使わない方が有利と判断されたのだろうか。
「CapCut」の「背景を削除」は、20秒程度と少し作業時間が伸びたが、同じような結果で実行できた。NPU使用率は4割強でわずかに上がっている程度。これもGPUでの処理とうまくバランスを取った結果のように見える。
「Audacity」の「OpenVINOプラグイン」による文字起こしも、同じように一瞬で処理が終わった。こちらもNPUで正しく処理できており、NPUが一瞬動作したのが確認できた。
PC選びの基準の1つにNPU
以上のように、サードパーティ製ソフトはどちらのPCでも同じように処理できている。ただし処理速度やNPUの使用状況には差があり、NPUをどう使うかはソフトによって違う。
ただし、NPUを搭載していれば、NPU対応とされるソフトがすべて動くわけではない。AMDやQualcommのNPU向けに開発されたソフトは、Intel製NPUでは動作しない。現状ではメーカーごとに個別の対応が必要になる状態だ。
IntelプラットフォームでNPUを活用するソフトを見つけたい場合は、Intelが提供するAI推論用のツールキット「OpenVINO」を用いて開発されたものを探すといい。「OpenVINO」はCPU、GPU、NPUをサポートし、最適化してAI推論を効率的に実行するもので、NPUを適切に活用してくれる。
そして、メーカーの壁を超えてNPUを活用できる仕組みを整えてくれるものの1つが、Copilot+ PCである。現在も新機能の実装時期に若干のズレはあるものの、Intel、AMD、Qualcommのどのプラットフォームでも、Copilot+ PCであれば同様の機能が実装されている。
なお本稿執筆時点では、Intel製プロセッサでCopilot+ PCに対応するのは、Core Ultra 200Vシリーズのみとなる。CPUの型番の最後に「V」が付いているものにだけ、高性能なNPUが搭載されている。詳しくは下記の記事でご確認いただきたい。
AIを活用したいならCopilot+ PCを選んでおけば間違いないが、より非力なNPUでも活用方法は存在する。これからPCを購入する際の参考になれば幸いだ。そして手元のPCでは、タスクマネージャーにNPUの項目が存在するかを確認してみて、あるなら「Windows スタジオ エフェクト」あたりから活用してみてはいかがだろうか。










































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