特集

ふるさと納税でもらえるPC本体や周辺機器を調べてみた

~9月末でポイント廃止、駆け込みなら今!

あのAmazonですら、ふるさと納税ポータルサイトを2024年12月になってからオープンさせた。市場の熱狂ぶりを感じるエピソードだと言える

 「ふるさと納税」がスタートしたのは17年前、2008年のことだった。寄付額に対する過度な返礼を巡る議論、産地偽装、贈収賄といったネガティブな話題を時には振りまきつつも、いまや国民生活にしっかりと根ざしつつある。

 ふるさと納税をする理由の1つが、返礼品であることには誰もが同意するだろう。肉、魚、米、果物といった農産品/水産品が代表的なところだが、PCをはじめとする電機/IT製品についても、当該自治体内に生産拠点を構えていることなどを理由に返礼品ラインナップに加わっているケースが相当数ある。

 折しもこの9月末は、ふるさと納税取り扱いサイトにおけるポイント還元制度の廃止が予告されているタイミングだ。そこで今回は、どんな製品が入手できるか、金額を挙げながら具体例を見ていこう。

 現行のふるさと納税制度では、寄付額に対する返礼率は3割以内とされている。本末転倒な計算だが、3万円相当の返礼品を入手したいとすると、寄付額は一般的に10万円となる。よって新品ノートPCを貰おうとすると、その寄付額は相当なレベルなので、今から心の準備を。

 なお、ふるさと納税は、該当自治体が独自の受付サイトを用意しているケースは少数派で、民間のポータルサイトに乗り入れているのが普通だ。そして、このポータルサイトは複数ある。ポータルサイトによって商品ラインナップは異なり、寄付金額が異なる可能性も否定できない。本稿で例示した寄付金額は、相場観を捉えるでの目安としての活用に留めてほしい。

数あるふるさと納税ポータルサイトの中でも、トップクラスの規模を誇るとされるのが「楽天ふるさと納税」だ。このように「ノートPC」と検索すれば、自治体に関係なくデータベースを一括検索できる。なお、一部のサイトでは寄付額の一部をポイント還元していたが、国の方針として9月末で明確に禁止される

PC本体

島根県出雲市・神奈川県川崎市・富士通クライアントコンピューティング

富士通クライアントコンピューティングのふるさと納税告知サイト

 富士通製ノートPCの一部モデルは、島根県出雲市で生産されている。たとえば、超軽量モデル「LIFEBOOK UH/Note U」は、同市のふるさと納税返礼品の1つに選ばれている。ただし返礼率3割ということもあり、「LIFEBOOK WU3/J3(Core i5-1335Uモデル)」のような高性能モデルを返礼品として受け取る際の寄付額は90万円にもなる。

 また、この8月からは川崎市でも富士通製PCや純正周辺機器が返礼品に選定されている。一例として「FMV Comfort Keyboard」に対する寄付額は3万8,000円。

山形県米沢市 NECパーソナルコンピュータ

 過去の記事を振り返ってみると、米沢市生産のNECブランドPCが初めてふるさと納税の対象となったのは2015年のことだった。以来、その取り組みは継続しているようで、米沢市のふるさと納税特設サイトには約30商品が登録されている。寄付額100万円を超えるものも少なくないが、「NEC LAVIE Direct N-15(Ryzen 5 7535U)」であれば60万円ほど。

長野県安曇野市 VAIO

 ソニー製品としての趣は薄くなり、今は家電小売大手・ノジマの傘下となったVAIOブランド。本社を長野県安曇野市に置くとともに(東京にも別途本社あり)、生産の最終工程も同市の拠点で実施している。

 VAIOのWebサイトではふるなびが取り扱いサイトとして例示されているが、実際にはふるさとチョイス、JRE MALLふるさと納税、楽天ふるさと納税でも入手は可能。一例として、ノートPC「VAIO F14(2025年モデル)」は63万円、モバイルモニター「VAIO Vision+ 14」は18万5,000円。

VAIOのWebサイトでは、ふるさと納税に関する取り組みなどが紹介されている

兵庫県神戸市 パナソニック コネクト

 パナソニックのノートPCブランドと言えば、「レッツノート」だ。生産を担う神戸工場は1990年に設立。電子部品の実装から組み立て、検査までを手がけているという。30万円級の製品が珍しくないだけに、ふるさと納税の寄付額もその分お高め。最低でも100万円は握りしめてからご覧あれ|。

長野県飯山市 マウスコンピューター

飯山市のふるさと納税サイトには、マウスコンピューターの紹介コーナーが。市のYouTubeチャンネルでも短尺の工場見学動画が配信されている

 BTO PCで知られるマウスコンピューターだが、その生産拠点は長野県飯山市にある。同市のふるさと納税特設サイトを覗いてみると、米と並んでマウスコンピューター製PCが人気の返礼品として大きくピックアップされていた。ゲーミングPCなどは50万円超えが珍しくないが、Chromebookについては寄付額25万円のものがあるようだ。

島根県出雲市 ユニットコム(パソコン工房)

 マウスコンピューターと同じくMCJを親会社とするユニットコム(パソコン工房)。同社製品は島根県出雲市のふるさと納税の対象返礼品となっている。市、ユニットコムのWebサイトどちらにもあまり関連情報がないため、本項からはふるさとチョイスの関連製品ページにリンクしている。300万円近いハイエンドゲーミングPCにどうしても目が向くが、中古再生ノートPCなら15万円程度のものも。

山口県柳井市 FRONTIER

 かつて「フロンティア神代」の名で知られ、ヤマダ電機グループ入りを経て今なお製品製造を続けているのがFRONTIERだ。生産拠点は山口県柳井市。こうした背景の理解にはAKIBA PC Hotline! の過去記事が役立つので是非ご一読を。さとふる内では約10点ほど、FRONTIERのPCが登録されている。寄付額は約50万円から。

液晶モニター、プリンタなど周辺機器

石川県白山市 EIZO

EIZOの公式サイト。同社の生産体制などが解説されている

 高品質モニターで名高いEIZOは、石川県白山市に本社がある。プレスリリースによれば、2021年6月から同市のふるさと納税に製品が採択。以後、断続的に新製品の追加が行なわれている。直近では7月に3機種がラインナップに加わった。このうち、24.1型WUXGA表示の「FlexScan EV2410R」は寄付額が22万円。カラーマネジメント対応モデルには70万円超えの製品も。

千葉県いすみ市 JAPANNEXT

本社のあるいすみ市で、再生品の生産を行なっているJAPANNEXT

 比較的新興といえるPCモニターメーカーであるJAPANNEXT。千葉県いすみ市に本社を構えているが、ここで一部製品の再生を行ない、リファビッシュ品としてふるさと納税の返礼品に提供している。初期不良等で返品されたものを修理後、動作確認もしているので、1年の製品保証が付帯するとのこと。一例として、27型の4Kモニターは9万8,000円の寄附で入手できる。

長野県塩尻市 エプソン

 アピールが相当控えめだが、エプソン製プリンタは長野県塩尻市のふるさと納税返礼品としてラインナップされている。本項からリンクしているさとふるの当該ページには「製品の付加価値に必要不可欠なPrecisionCoreプリントチップを市内事業所で製造」と説明されている。比較的手頃な寄附で入手できるモデルには、5万1,000円の「EW-456A」がある。

愛知県名古屋市 ブラザー

 プリンタに限らず、ミシンなどでも有名なブラザー工業。本社所在地として、多くの人がすんなりと名古屋市を思い浮かべることだろう。実際、2022年から同市の返礼品としてインクジェットプリンタが採用されるようになった。

 楽天ふるさと納税には、寄付額10万円未満で入手できるプリンタがいくつかある。さらに見逃せない点として、補充用インクも返礼対象になっている。1~2万円程度の寄附を考えている場合、有力な候補になるのでは?

愛知県名古屋市・日進市 バッファロー

 PC向け周辺機器でおなじみのバッファローだが、その一部製品は愛知県の名古屋市と日進市のふるさと納税返礼品に登録されている。

 よくよく調べると、名古屋市に本社を置く藤田製作所、そして日進市のミヤ電子という2つの異なる会社がバッファロー製品の生産に携わっており、そのため取り扱いが分かれている。商品画像に「BAFFALO」ロゴが表示されているのに、しかし取り扱い事業者名にバッファローと記載がないのは、こうした事情からのようだ。

石川県金沢市・加賀市 アイ・オー・データ機器

 アイ・オー・データ機器のWebサイトには、ふるさと納税に関する告知がほぼない。しかし、実際に各ポータルサイトを覗いてみると、本社がある石川県金沢市と、同県の加賀市で返礼品登録されていることが確認できる。モニター、ルーター、外付けHDD、USBメモリなど製品ジャンルは多岐に渡る。

長野県伊那市 ロジテック

ロジテックの告知サイトは内容充実

 現在は、エレコム傘下のブランドとなっているロジテック。グループ会社の1つであるロジテックINAソリューションズは長野県伊那市に本社と生産拠点を構えており、生産品は同市のふるさと納税返礼品に複数登録されている。手頃なところでは、外付けスティック型SSDの250GBモデルが1万9,000円の寄附で入手可能だ。

大阪府和泉市・大阪府泉佐野市・岡山県井原市 AKRacing(テックウインド)

 最近では、PCを使っての仕事やゲームに際して、ゲーミングチェアを選択する方もおられるだろう。ゲーミングチェアの著名ブランドであるAKRacingでは、大阪府和泉市など3自治体においてふるさと納税用の返礼品を提供中だ。それぞれの市で生産される生地が採用しているためという。アームレストやランバーサポートが省略されたモデルであれば、寄付額13万円から入手できる。

神奈川県相模原市 HHKB(PFU)

HHKBの公式サイト

 PC用のキーボードは、ユーザーの趣味・好みがモロに出る領域だ。そうしたこだわり派の中にはHHKB(Happy Hacking Keyboard)をご愛用の方もいるだろう。一連の製品は神奈川県相模原市のふるさと納税返礼品に採用。お値段はさすがの一言で、寄付金ベースで10万円を超える例がほとんど。なお3万円程度の寄附の返礼品はキートップだけなので、くれぐれも注意を!

神奈川県相模原市 東プレ

 相模原市のふるさと納税を巡っては、高級キーボードの提供企業がもう1社ある。「REALFORCE」で知られる東プレだ。同市によれば、納税返礼品の寄付額トップはキーボードだそう。両社のブランド力を考えれば、納得のエピソードだ。キーボードは寄付額で13万円前後。テンキーとマウスは5万5,000円から。

モバイルバッテリ/充電器類

神奈川県海老名市 オウルテック

 PC自作派の方なら、オウルテック製の各種サプライ品に少なからずお世話になっていることだろう。ケーブルを筆頭に、モバイルバッテリからスマホ向けの各種雑貨まで、広く開発を手がけている企業であり、海老名市に本社を構える。同市のふるさと納税においても100種類以上の返礼品が登録されており、単品のUSBケーブルなら寄付額6,000円~7,000円程度で入手できる。

神奈川県海老名市 MOTTERU

 MOTTERUは2020年設立という、比較的新しい企業。自社ブランドでモバイルバッテリ、USBケーブル、充電器などの販売を手がける。設立地である海老名市において、ふるさと納税の対象返礼品が多数ある。リンク先の記事は、2022年段階での同社製返礼品の人気ランキングをまとめたもの。1位は容量1万mAhのモバイルバッテリで、寄付額にして1万5,000円。

神奈川県川崎市 多摩電子工業

 多摩電子工業はスマホ用充電器、モバイルバッテリ、大容量モバイルバッテリなどの開発・販売を手がけるメーカー。この8月から、川崎市のふるさと納税返礼品ラインナップに一部製品が加わることとなった。現在はまだ6製品程度だが、寄付額1万円程度で入手できるものが中心。

神奈川県川崎市・茨城県稲敷郡美浦村 Anker

 Ankerと言えば中国発祥のブランドだが、日本市場への浸透度はご存じの通り。今では都内にリアル店舗も多数ある。ふるさと納税の返礼品関連では、サッカーチームのスポンサードを手がける関係で縁ある川崎市、一部部品の製造拠点がある美浦村(茨城県)で採用されている。前者はモバイルバッテリ(現在はないようだ)、後者はモバイルプロジェクタを提供中。

Ankerでは2つの自治体でふるさと納税に参画

大阪府守口市 CIO

 スマホアクセサリ分野において名を聞く機会が増えているCIOは、本社が大阪府守口市にある。2024年12月からは同市のふるさと納税返礼品にも採用されている。ラインナップは充電器とモバイルバッテリが中心。変わり種として、充電式の“ホットアイマスク”も。

納期、欠品、控除額には十分ご注意を!

ふるさと納税を所管する総務省の特設サイトも、一度は読んでおきたい

 ふるさと納税は、いわゆる“インターネット通販”と全く同じではない。まず注意したいのは納期だ。注文から数日で届くのはむしろレアで、寄附着手から商品到着まで1カ月~数カ月かかるのはザラ。また、所定量を売り切ったら補充されないまま欠品状態が続いてもおかしくない。

 そして、実際の税金控除を受けるには確定申告(毎年2~3月)も必要になってくることをお忘れなく。最近では「ワンストップ特例制度」という便利な制度が設けられたが、適用には条件がある。

 なにより、税金の控除を受ける以上は、自分が1年で幾ら収入があったか、ありそうか、常日頃から把握しておきたい。無計画に寄附してしまい、確定申告をするタイミングになって「控除の上限以上に寄附してしまった」と気付くのでは意味がない。

 この前提に立つと、最新ノートPCを50~100万円の寄附で入手するのは、よほどの高所得者でない限り、非現実的だ。給与明細に毎月しっかり目を通し、収入と出費のバランスをとりながら、ふるさと納税を楽しもう。