特集

Windows 10サポート終了で余るノートPCを「ChromeOS Flex」で蘇らせよう

 PC Watchの読者であれば、ちょっと古いPCが押し入れやデスクの片隅で眠っているという方も多いのではないだろうか。たとえば、筆者の場合、Lenovo ThinkPad E495などがその代表例である。このようなモデルはWindows 11にギリギリ対応している世代ではあるものの、動作が重く感じられたり、用途が見出せずに放置されたりしがちである。

 Googleが提供する「ChromeOS Flex」を導入すれば軽快かつセキュアなクラウドベースのPCとして生まれ変わることができる。ChromeOS Flexは、旧世代のハードウェアでも快適に動作するように設計された軽量なオペレーティングシステムであり、Windowsに比べて動作が軽く、Web中心の作業に最適だ。よく考えたらPCでの作業はすべてブラウザしか使っていなかった……なんて読者には特におすすめできる選択肢と言えるだろう。

 似たような名前としてChromebookがあるが、ChromeOS Flexとの違いは主にAndroidアプリが導入できるかどうかだ。ChromebookはGoogle Playを搭載しているが、ChromeOS Flexは搭載していない。そのため、プレインストールされたアプリ以外を追加することはできない。

 今回の特集では、例としてLenovo ThinkPad E495にChromeOS Flexをインストールする具体的な手順を、ステップバイステップで解説する。さらに、導入前の重要な準備として、Windowsの回復ディスクを作成する方法についても詳述する。これにより、ChromeOS Flexを試した後でも必要に応じて元のWindows環境に戻すことが可能となり、安心して導入に踏み切ることができるはずだ。

今回ChromeOS Flexを導入するLenovo ThinkPad E495。当時特定商流向けの構成を弄ることにより破格で買うことができたいわば「お祭りPC」である
筆者の家に積まれていたLenovo 14e Chromebook Gen 3のデスクトップ画面。ここからGoogle Playが省かれたものと考えれば良いだろう

ChromeOS Flexが導入できるか確認する

 ChromeOS Flexはそれなりに古いPCでも導入はできるが、もちろん限度はある。

 ChromeOS Flexの最小要件(執筆時点)以下の通りだ(ChromeOS Flex インストール ガイドより)。

【表】ChromeOS Flexの最小要件
アーキテクチャIntelまたはAMD x86の64bit互換デバイス
RAM4GB
内部ストレージ16GB
USBドライブからの起動をサポート
BIOSすべての管理者権限 - 問題が発生した場合、管理者は ChromeOS Flex USB インストーラから起動してBIOSで設定する必要があります
プロセッサとグラフィック2010 年より前に製造されたコンポーネントは、動作が不安定になる可能性があります
注意Intel GMA 500、600、3600、3650 のグラフィックハードウェアは、ChromeOS Flexのパフォーマンス基準を満たしていません

 また、ChromeOS Flexには認定モデルという制度があり、認定モデルはGoogleが定期的にテストを行なっているとのこと。認定済みモデルにはサポート終了期限が設定されており、期限までは安心して使うことができるだろう。

 執筆時点では第3世代Coreプロセッサ(Ivy Bridge)以降が認定モデルの対象になっている。もちろん、今回使用するThinkPad E495も認定済みのモデルとなる。

ThinkPad E495のサポート終了期限は2030年までだ

 また、マシンの構成として搭載する内蔵ドライブ(SSD)はChromeOS Flexをインストールする時のみ1台にしておいた方が良いだろう。理由としては今回のインストール方法は最初に認識した内蔵ドライブにOSが入る仕組みのため、間違えてデータ保管用のSSDにChromeOS Flexをインストールしてしまうこともあるからだ。

事前に準備しておくもの

Googleアカウント

 ChromeOS FlexはGoogleアカウントでログインする必要があるため、もし作成していない場合は予め作っておくと良いだろう。

USBフラッシュメモリ2個

  • 回復ディスク作成用に32GB以上
  • ChromeOS FlexのUSBインストーラ作成用に8GB以上

合計2個のUSBフラッシュメモリが必要になる。そのほか個人データのバックアップなどで必要に応じて準備してほしい。

記事用に購入したUSBフラッシュメモリ2個。秋葉原では容量単価として64GBがもっとも安かった

回復ディスクの作成

 まずは、今導入されているWindows11の環境をバックアップしておく。メーカーによっては今回のようにシステムを入れ替えてしまうと元の環境へ復帰できなくなるためUSBフラッシュメモリへバックアップをする。回復ディスクを作成するには32GB以上のUSBフラッシュメモリが必要になる(今回使用するThinkPadWeb上からUSBリカバリーキー(DDRS)を作成することができるため本来は必要ないのだが)。

スタートメニューからWindowsツールを選択
回復ドライブを選択
ユーザーアカウント制御画面が表示されるので「はい」を選択
「次へ」を選択
使用可能なドライブに表示されているUSBフラッシュメモリの一覧から回復ドライブとして使用するドライブレターを選択して「次へ」を選択。非常に分かりづらい部分のため心配であればUSBフラッシュメモリは1本だけ接続するようにしたい
最後の確認となる。問題なければ「作成」を選択
回復ドライブを作成中の画面になる。しばらく待つ。
回復ドライブの作成が完了した。「完了」を選択して終了する。

 回復ドライブはあくまでもシステムのデータだけしかバックアップされないため、マイドキュメントといった個別のデータは別の場所へ退避しておこう。

ChromeOS Flexのインストール

USBインストーラを作成する

 ChromeOS FlexをインストールするためにはまずUSBインストーラを作成する必要がある。作成する前に8GB以上のUSBフラッシュメモリを手元に用意しておこう。

 まずはChromeやEdgeでchromeウェブストアへアクセスして、「Chromebook リカバリ ユーティリティ」をインストールする。これはどのPCで作業しても問題ない。

 Chromebookと名前はついているが、ChromeOS Flexでも使用できるため安心してほしい。

Chromebook リカバリ ユーティリティ

「Chromeに追加」を選択
「拡張機能を追加」を選択
「始める」を選択
「リストからモデルを選択」を選択
「メーカーを選択」→「Google ChromeOS Flex」を選択
「製品を選択」→「ChromeOS Flex」を選択
メーカー「Google ChromeOS Flex」、製品「ChromeOS Flex」と選択されていることを確認して「続行」を選択
ChromeOS FlexのUSB インストーラをコピーするドライブを選択する。筆者の画面のように複数のドライブが表示されている場合は要注意だ。心配であれば回復ディスクの時と同様にPCへ取り付けるUSBフラッシュメモリは1つにしておこう
正しいUSBフラッシュメモリが表示されていることを確認して「続行」を選択
「今すぐ作成」を選択
USBフラッシュメモリへデータのコピーが開始される。終了するまでしばらく待つ
ChromeOS FlexのUSBインストーラの作成が完了した。「完了」を選択してPCからUSBフラッシュメモリを取り外す

USBインストーラから起動できるようにする

 続いて、作成したUSBインストーラをPCに接続して電源をONにする。
ChromeOS Flexのインストール画面が表示された場合は本設定をスキップして次に進んで問題ない。

 もしWindows 11のログイン画面が表示された場合はWindowsよりも先にUSBインストーラが起動できるようUEFI BIOSの設定を変更する必要がある。

 これはPCメーカーによって異なるが、起動直後のロゴが表示されているときに「F1」、「F2」、「Delete」といった特定のキーを押す(筆者は連打している)とUEFI BIOSの画面が表示される。難しい場合はWindows11の設定から「システム」→「回復」→「PCの起動をカスタマイズする」経由からもアクセスが可能だ。

 画面が表示されたら起動順を変更してWindows Boot Managerよりも上にUSBインストーラが来るよう設定をする。

 UEFI BIOSはPCメーカーやモデルによって異なるため、表示内容や操作方法に違いはあるが、基本的にどのモデルでも設定項目は存在している。

ThinkPad E495のUEFI BIOS画面。「F1」キーを連打して表示させた。世代によってはマウスが使えるグラフィカルなUIで操作できるモデルもある
左右キーで「Startup」のタブを選択し、「Boot」でEnterキーを押す
USBインストーラの起動順が6位となっているため、先にWindows11が起動してしまう状態だ
画面右側のヘルプに記載があるように「+」キーを使い「USB HDD USB3.0 FLASH DRIVE」の順位を1位に変更する。なお、ThinkPad E495のUEFI BIOS上では英語キーボードとして認識しているため、日本語キーボードのキーに刻印されている「+」をShiftキーと一緒に押しても反応しない。「~」の刻印があるキーをShiftと一緒に押す必要がある
変更したら設定を保存する必要がある。今回は「F10」キーを押すとSave and Exitとなり、確認画面が表示される。問題なければ「Yes」が選択されていることを確認して「Enter」キーを押す

USBインストーラからChromeOS Flexをインストールする

 ChromeOS Flexのインストーラが起動したら、ThinkPad E495のSSDへインストールしていく。

日本語でセットアップするために、「English (United States)」を選択
Languageから、「Japanese – 日本語」を選択
表示内容が英語から日本語に変化する。続いて入力方法から、「日本語」を選択
画面のように、言語と入力方法がどちらも「日本語」になっていれば「OK」を選択
最初の画面に戻り、「始める」を選択
PC本体の内蔵ドライブへインストールするか、USBインストーラから直接ChromeOS Flexを起動(いわゆるLive USB)するか選ぶことができる。今回は実際にインストールするため「ChromeOS Flexをインストール」を選択
インストール前の画面となる。このUSBインストーラではChromeOS Flexのインストールをどの内蔵ドライブに実施するか指定することができない。動作としてはインストーラが最初に見つけたドライブ(Linux的に言えば/dev/sda)へインストールされることになる。今回のThinkPad E495の場合、NVMe SSDよりもSATA SSDの方が最初に認識されるためそちらへインストールされることになる。自力で制御したい場合はChromeOS Flexをインストールしたい内蔵ドライブ「のみ」の構成にしておいた方がいいだろう。
最終確認画面が表示される。「インストール」を選択
インストール中。しばらく待つ
インストール完了。USBインストーラはPCから取り外して再起動する。(取り外さないと再びインストーラが起動してしまう)

初回セットアップ

 ChromeOS Flexのインストールが完了したら初回セットアップを行なう。あと少しだ。

USBインストーラを起動したときと同じ画面が表示される。同様に英語から日本語に設定するために「English (United States)」を選択
USBインストーラの時と同じく言語、入力方法を「日本語」にして、最後に「OK」を選択
最初の画面に戻り、「始める」を選択
有線LANがそのままネットワークへ接続していればスキップできるが、無線LAN環境の場合はここで表示されるSSIDを選択する。今回は筆者の使用しているWi-Fiアクセスポイントの「Buffalo-5G-3120-WPA3」へ接続する
Wi-Fiアクセスポイントのパスワードを入力して「接続」を選択
続いて、Googleアカウントを設定していく。今回は個人向けのGmailアカウントを使用するため「個人でのご利用」を選択して「次へ」を選択
Chromebookへのログインとなるが、ここで入力するのはGmailのアカウントだ。今回は作成済みのGmailアドレスを入力して「次へ」を選択。なお、その他の設定から新規にアカウントを作成することも可能だ
続いてGmailパスワードを入力して「次へ」を選択
利用規約を確認し、必要に応じてトグルスイッチをOFFにし、問題なければ「同意して続行」を選択
Chromebookの同期について、問題なければ「同意して続行」を選択
ChromeOS Flexのハードウェア データの収集について必要に応じてチェックを外し、問題なければ「同意して続行」を選択
ログイン時のパスワードについて、独自に設定する場合は「このChromebookのパスワードを作成する」、Googleアカウントのパスワードをそのまま使用する場合は「Googleアカウントのパスワードを使用」を選択する。今回は後者の「Googleアカウントのパスワードを使用」を選択した
ChromebookはGoogle Playが入っているが、ChromeOS Flexにはないため「スキップ」を選択
「次へ」を選択
タッチパッドのスクロール方向やテキストサイズ、ダークモード等よく使う設定項目をここで行なうことができる。もちろん後から設定で行なうこともできる。今回は「スキップ」を選択
これでChromeOS Flexの初回セットアップは完了だ。Googleからの最新情報のメールが不要な場合はトグルスイッチをオフにして、「始める」を選択
初回ログイン時はクイックツアーが表示される。ChromeOSを初めて触るのであれば確認しておこう
ChromeOS Flexのシャットダウン(終了)方法は、右下の時刻→電源アイコン→終了の順に選択する

実際に使ってみる

 簡単にではあるが、ChromeOS Flexを使っていく。

 基本的にChromeブラウザを普段使っている人はいつもの機能がそのまま使えるという認識で良いだろう。もちろん拡張機能も対応している。

ChromeブラウザでPC Watchを表示させたところ
GoogleのAIアシスタント「Gemini」も使うことができる
YouTubeももちろん再生可能だ

自分用に家族用に、そしてWindows10のサポート終了に向けて

 今回はちょっと古いマシンとなるLenovo ThinkPad E495にChromeOS Flexを導入してみた。うまく活用すれば、個人用のサブマシンとして有効活用でき、リソースを無駄にせずコストも抑えられるだろう。

 また、家族向けとしてもシンプルで安全な操作環境を提供し、子どもから高齢者まで幅広く使いやすいデバイスに生まれ変わることができるはずだ。最近あまりPCを使っていない家族にChromeOS Flexを入れたPCをプレゼントして親孝行してみるのも良いかもしれない。

 さらに、Windows 10のサポート終了(EOL)の2025年10月14日が近づくと、PCに詳しい読者であればいろいろな方面から相談を受けるはずだ。その際にChromeOS Flexを提案してみるのも1つの手だろう。この記事が導入の参考になれば幸いだ。