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WindowsとMac、どっちの生成AIが優秀?CopilotとApple Intelligenceを使い比べた結果は……
2025年6月12日 06:12
AIの進化は日進月歩。新たなAIサービスが次々と登場し、既存のサービスもすさまじい勢いで進化を続けている。
高機能なAIサービスは料金が高いが、比較的手頃なのが「Copilot+ PC」と「Apple Intelligence」。前者はMicrosoftの要件を満たしたAI PCの名称であり、後者はAppleのAI技術の総称なので厳密には同じものではない。
しかし、Copilot+ PCのWindows機と、Apple Intelligenceを利用できるMacで、AI機能にどのような違いがあるのか気になるところ。そこで今回は、両者で比較可能なAI機能でどのような結果を得られるのか試してみた。
なお、記事の読みやすさを優先し、以後はそれぞれ「Copilot+ PC」と「Apple Intelligence」と表記する。
削除と同時に該当箇所を補完する「オブジェクト削除」
まずは「消しゴムマジック」というGoogleの機能名でおなじみの「オブジェクト削除」から試してみよう。Copilot+ PCでは「Designer」アプリの「画像の編集→オブジェクトの変換→消去」で、Apple Intelligenceでは「写真」アプリの「編集→クリーンアップ」で、写真に写り込んでいる不要な人物などを削除可能だ。
どちらも単にオブジェクトを削除するだけでなく、削除した部分を生成AIによって補完している。両者を比較してみると、自然なのはCopilot+ PC。Apple Intelligenceは「Welcome」の案内板左側や、奥にある屋根の柱部分が乱れており、右端には赤い模様も発生している。「オブジェクト削除」についてはCopilot+ PCのほうが品質は高いと言えよう。
任意の画像を手軽に生成できる「画像を生成」
AIで個人的に最も注目しているのは「生成AI画像」。PC Watchの第一人者と言えば西川和久氏であり、不定期コラムで非常に美しい生成AI画像を制作されているが、今回は標準機能なのでスキルがなくても利用可能だ。Copilot+ PCでは「コクリエイター」、Apple Intelligenceでは「Image Playground」で生成AI画像を作成できる。
前提として、両者のアプリはコンセプトが異なっている。「コクリエイター」は手書きのラフを元に作成するのに対して、「Image Playground」はキーワードを入力、追加することによって生成AI画像を作成する。
「コクリエイター」は構図をラフで指定し、またキーワードを追加することでイメージに近い画像を生成できるが、やや手間がかかる。「Image Playground」は細かな指定はできないが、それこそ数十秒でクオリティの高い画像を得られる。どちらのプラットフォームでも、両機能を用途によって使い分けたいところだ。
自分だけのSNS用プロフィール画像を作る「プロフィール画像を生成」
「生成AI画像」の活用方法として、SNS用プロフィール画像を作りたいというニーズは多いことだろう。Apple Intelligenceの「Image Playground」では、元画像として写真を指定して、アニメ、イラスト、スケッチのスタイルで画像を生成可能だ。
しかし、残念なことにCopilot+ PCでは写真を元に画像を生成する機能は提供されていない。「コクリエイター」のキャンパスに写真を貼り付けても、それを元に生成AI画像を出力できないのだ。
「Copilot」アプリを使って「写真を参考に画像を生成する」ことはできるが、これがなかなか難しい。「この写真を参考に画像を生成してください」という指示ののち、「おまかせいたします」と再度指示することで画像の生成が始まったが、「公園」というシチュエーションは踏襲してくれたものの、人物の特徴はいっさい反映されない。
さらに、「アニメ調」という指示だけで女子学生に変わってしまったり、「50代」という指示でいったんは年齢が上がったものの、そのあと指示を追加すると若者に戻ってしまった。そして最後には、アニメ調と実写風の人物が並ぶというチグハグな画像となってしまった。Copilot+ PCでプロフィール画像を作成したいのであれば、素直に専用サービスを利用したほうがよさそうだ。
面倒なテープ起こしから解放してくれる「文字起こし」
筆者が一番苦手な仕事が「文字起こし」。最近筆者はGoogleの「NotebookLM」に頼りっきりである。というわけで個人的にも非常に気になる「文字起こし」機能を比較してみよう。
Copilot+ PCでは「ライブ キャプション」、Apple Intelligenceでは「ボイスメモ」を使用した。Copilot+ PCにも「サウンドレコーダー」というアプリが用意されているが、残念ながら「文字起こし」機能は実装されていない。
なお今回、Copilot+ PCは「Zenbook SORA」、Apple IntelligenceはApple M3搭載「15インチMacBook Air」を使用している。両者のマイク性能は異なる。また、ほかのノートブックを使用した際には違う結果になる可能性が高い。結果はあくまでも参考に留めてほしい。
さて、今回は「ミニPCなのに!PCIeスロット、SFP+搭載の強烈変態マシン「MINISFORUM MS-A2」が16コアRyzen搭載で性能爆上げ!一体どう使えばいいんだ……?」の動画を再生しながら両機種で文字起こししてみたが、どちらも固有名詞については誤って認識している箇所がある。これはプロの話者ではないので仕方がない。
ちなみに結果は掲載できないが、NHKのアナウンサーの音声を文字起こしした際には、かなり正確に認識していた。
とはいえ両者には下記のような違いが見られた。どちらにも誤認識はあるが、今回の条件ではCopilot+ PCに軍配が上がると言える。
Copilot+ PC | Apple Intelligence |
---|---|
ミニpc | ミピシ |
高性能志向 | 高性濃志向 |
pcixpress | PCIXプレス |
短時間で長文の要点を把握できる「Webページの要約」
ライターである筆者としてはじっくりと記事を読んでいただきたいが、短い時間でサクッと要点を掴みたいという方が多数派だろう。そんなときに便利なのが「Webページの要約」機能。Copilot+ PCの「Edge」、Apple Intelligenceの「Safari」には本機能が実装されている。
「Edge」では右上のCopilotアイコンを押してから「このページの要約を作成してください」、「Safari」では「リーダーを表示」を押してから「要約する」を選択することで、要約文が作成される。
ただし要約の仕方が異なり、Copilot+ PCは箇条書きで詳しく記載される一方、Apple Intelligenceでは非常に短い文章でまとめている。とはいえCopilot+ PCでも「このページを150文字で要約する」と指示すれば、Apple Intelligenceと同じように短文で要約可能だ。要約の柔軟さという点ではCopilot+ PCのほうが使いやすいと考える。
書き慣れない文章作成時に重宝する「ライティング支援」
ライターとして「文字起こし」と同じぐらい気になるのが「ライティング支援」。今回はメールの文面を両者で作成してみた。
AIので謝罪メール作成
Copilot+ PCは「Outlook」で「Copilot→下書き」、Apple Intelligenceは「メール」で「作文ツールを表示」を選択してから、文面の大まかな内容を指示することで生成してくれる。それではまず「原稿が遅れたことについての謝罪メールを作成」の結果から見てみよう。
これは両者とも申しぶんなし。特に、「内容の確認や修正作業を進めている段階」とか「最終確認を終え」と、ほぼ完成している感じを醸し出しているところは、編集者への印象がいいだろう。あえて誤字などを入れると、慌てている感が出てパーフェクトだと思う。
AIでラブレター作成
次は締め切り遅延より重要なメールとして、「10年ぶりに再会した幼馴染みの女性に対して、結婚を前提としたラブレターを作成」と指示してみた。
しかしCopilot+ PCでは「高品質のコンテンツを生成できません」というメッセージが出て作成できなかった。仕方がないので、「Copilot」アプリに同じ注文をしてみた。なおApple Intelligenceは「ChatGPT」が生成するので、問題なく作成できている。
両方を熟読してみたが、甲乙付けがたいというのが正直なところ。しいて言えば「Copilot」アプリで「いっぱいです」という言葉がかぶっているのが気になるぐらいだ。「僕の心はずっと君のことで満たされています」としたほうがよいと思う。とはいえそのぐらい些細な指摘しかできないので、これは引き分けとしたい。
得意分野やコンセプトの違いを踏まえて使い分けよう
本記事では、Copilot+ PCとApple IntelligenceのAI機能の結果を比較してみた。結論としては、それぞれの得意分野やコンセプトの違いが見えてきたと思う。
ただし、今回の結果はあくまでも記事執筆時に、数回試しただけのもの。数日、数週間後に試せば、また異なる結果となる可能性もある。AI機能は日進月歩で進化する。今後の動向については、PC Watchを始めとするインプレスの記事をぜひチェックしてほしい。