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ASUS TUFシリーズ初のmicroATXマザー「GRYPHON Z87」フォトレビュー
~初心者から上級者までカバーできる高耐久モデル
(2013/6/21 00:00)
ASUSから、TUFシリーズ初のmicroATXマザーボード「GRYPHON Z87」が発売となった。価格はオープンプライスだが、実売で2万円をちょっと切る手軽さから、Haswell発売日には結構好調に売れたモデルだ。今回写真を中心としたレビューをお届けする。
TUFシリーズ初のmicroATXモデル
ASUSのTUFシリーズは、高い耐久性を謳うモデルとして、2009年10月にIntel P55 Expressチップセットを搭載した「SABERTOOTH 55i」を投入。以降、X58を搭載する「SABERTOOTH X58」、P67を搭載する「SABERTOOTH P67」、990FXを搭載する「SABERTOOTH 990FX」、X79を搭載する「SABERTOOTH X79」そしてZ77を搭載する「SABERTOOTH Z77」に至るまで、6機種が投入された。
今回、チップセットがZ87、CPUソケットがLGA1150に刷新された「SABERTOOTH Z87」とともに登場したのが、GRYPHON Z87だ。歴代モデルはすべてATXフォームファクタであったのに対し、初のmicroATXモデルとなる。これまでのネーミングルールからすれば、次世代のmicroATX搭載モデルも“GRYPHON”を継続することになるだろう。
歴代から受け継がれる特徴としては、米軍規格に準拠するという高耐久部品の採用がウリ。動作環境温度-70℃~125℃で1万時間の長寿命を誇るコンデンサ「TUF Caps」を始め、電源部には効率を高めたという「TUF MOSFET」、「TUF Alloy Choke」を採用。過酷な環境における動作テストをクリアし、そのため製品保証もPCパーツとしては異例の5年間となっている。
ATXのSABERTOOTH Z87と大きく異るのは、表面を覆うパネル「Thermal Armor」、歪み防止バックパネル「TUF Fortifier」、コネクタ端子キャップ「Dust Defender」、そして温度センサーが、別売りの「ARMOR KIT」として提供されている点。これは“GRYPHONを2万円で切るお手頃価格でユーザーに提供するため”の施策である。欲しいユーザーは後から追加購入でき、自分で組み立てる作業自体も楽しめるわけだ。
ARMOR KITが別売りのため、GRYPHON Z87のパッケージの内容物は、本体のほか、バックパネル、SATAケーブルが4本、ピンの接続を容易にするQコネクタが2個、SLIケーブルが1本、そしてマニュアルとソフトウェアDVDのみと、非常にあっさりしている。
とは言え、Thermal ArmorとDust DefenderはP67のTUF世代から追加されたもので、TUF Fortifierも今世代でようやく装備されたもの。歴代TUFの軍用規格パーツの採用を踏襲しているため、ある意味“原点回帰”したと言えるだろう。
別売りのARMOR KITは、先述の通りThermal Armor、TUF Fortifier、Dust Defender、Thermal Armor用4cm角ファン、そしてケーブル式の温度センサーが3本付属。Thermal ArmorとTUF Fortifierは、付属のネジを使い、挟みこむようにセットで装着する。なお、ネジを回すためのドライバが付属しているも親切だ。TUF Fortifierが金属製のため、装着後は大きく重量感が増す。
Thermal ArmorとTUF Fortifierを取り付けたら、Dust Defenderをつけていく。対応スロットや端子は、メモリスロットが2本、PCI Exress x16スロットが3本、PCI Express x1スロットが2本、SATAが6基、USB 2.0ピンヘッダが2基、USB 3.0ピンヘッダが1基、USB 2.0/3.0が8基、HDMIが1基、DVIが1基、Gigabit Ethernetが1基、ステレオミニジャックが6基となっている。また、I/Oバックパネル吸気部につけるダストフィルタも付属する。
さすがに枠がないジャンパーピンやファンコネクタ、電源コネクタなどにはDust Defenderが付かないものの、後者はPCを動かす上で必ず付けなければいけないものなので必要はないだろう。バックパネルのホコリ対策は完璧だ。これだけ塞がっていれば、ホコリが多い環境下でも、確実に動作しそうだ。
本体は2万円を切っているため、原点回帰した高耐久マザーボードとして使うのもよし、オプションのARMOR KITでガッチリガードし、TUFシリーズの世界観に浸るのもよし。個人的には、ARMOR KITは5,000円程度でそれほど高価でないため、同時購入することをおすすめしたい。
過剰な機能装備がないシンプルな作り
耐久性の面で大きくフィーチャーされている本製品だが、機能面は至ってシンプルで、メインストリームモデルらしい装備となっている。
電源回路は独自のデジタル回路「DIGI+」を採用。8フェーズとなっている。この電源を制御する独自の省電力チップ「EPU」とオーバークロック用チップ「TPU」も備えるなど、ASUSのメインストリームモデルではごく当たり前な装備となっている。
メモリスロットは4基、SATAポートは6基。いずれもmicroATXとしては標準的な装備となっており、追加チップの搭載などはない。6基あるUSB 3.0も、すべてZ87チップセット内蔵機能によって実現されている。
オーディオコーデックはRealtekの「ALC892」で、S/N比は95dBで、24bit/192kHzをサポート。S/N比などのスペックは最新の「ALC1150」などと比較すると劣る。余談だが、ALC1150はS/N比115dBを実現していることから付けられた型番と思われるが、最新CPUソケットの「LGA1150」と同じ数字のためか、Intel 8シリーズマザーボードでは載せるメーカーが多い。
Gigabit EthernetコントローラはIntelの「I217-V」。こちらは2012年第4四半期に投入された新チップで、40nmプロセスで製造される。SABERTOOTH Z77の「82579V」は90nm世代のチップなので、プロセスルールで言えば2.5世代分進んだことになる。とは言え、ユーザーから見た機能面はほぼ同じだ。
このほか、電源投入後直接UEFI BIOS設定画面に入る「DirectKey」は備えているが、電源ボタンやリセットボタン、オーバークロック専用のボタン、電圧計測ポイントなどは備えておらず、この辺りのコンセプトはR.O.G.とは一線を画している。本製品は高耐久パーツを使用しているからと言ってオーバークロック用ではなく、あくまでも一般用で、耐久性を高めたのがコンセプト、というわけだ。
ソフトウェア面では、温度監視ユーティリティ「Thermal Radar」が“2”に進化。オンボードのセンサーでCPUとGPUゾーンを個別に監視し、温度状況を4段階に評価。また、CPUクーラーの冷却性能を℃/Wで評価する機能を新たに搭載した。これは段階的にCPUに負荷をかけ、消費電力をWで算出し、それから温度の推移を割り出したものだ。ホコリの付着などによって性能が低下した場合、数字で評価できるようになったわけである。また、ファンの回転数や騒音などをワンクリックで設定するチューニング機能なども加わり、より利便性が向上している。
UEFI BIOSもブラッシュアップされ、「EZ Mode」で動作クロック、XMP、ファンの設定ができるようになった。また、お気に入りの機能を登録する機能、F3キーで自由に設定したページへのショートカット機能、ノートを取る機能、最終変更箇所を表示する機能などが加わっている。
ヘビーユーザーから“初心者に組んであげる”用途までカバーできるモデル
このようにTUFシリーズは、ASUSのメインストリームモデルをチューニングし、耐久性にフォーカスして開発されたモデルであることが分かる。-70℃~125℃に対応する固体コンデンサやほぼすべてのポートをカバーできるDust Defenderなど、一般ユーザーからしてみれば過剰とも思えるタフな装備が特徴だ。
もちろん、この記事を読んでいて“分かっていて自作する”ユーザーには、ARMOR KITを組み立てる楽しさやそのギミック、Thermal Rader 2によってもたらされる利便性は大きな魅力となるだろう。24時間常時使用するヘビーユーザーにとって、良い選択肢となる。
しかしその一方で、PCにあまり詳しくない、ホコリがPCに与える影響を知らない、PCケースを開けてメンテナンスを行なわないPC初心者にとっても、これらの装備はありがたい。Dust Defenderや高耐久パーツでホコリによる影響を最小限に抑えるだけでなく、Thermal Rader 2で容易に問題を診断できるからだ。2万円を切るお手軽価格も加わって、初心者の人にPCを組んであげる際に、本製品を検討してみてはいかがだろうか。