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「ビデオテープ2025年問題」って知ってる?イマドキのビデオテープのデジタル化手段を探ってみた
2025年2月27日 06:39
ビデオテープの「2025年問題」というのを耳にしたことはないだろうか。これは磁気テープの劣化にともなって、アナログ時代のビデオテープが2025年を目安に寿命を迎え、映像が観られなくなることを指す。国連教育科学文化機関(ユネスコ)も「マグネティック・テープ・アラート」として警告しており、世界的な問題となっている。
またビデオテープを再生するためのビデオデッキについても、数年前にメーカーが生産を終了しており、視聴環境そのものも維持すること自体が難しくなりつつある。早期にデジタル化しなければ、過去の資産であるそれらの映像に永遠にアクセスできなくなる可能性は濃厚というわけだ。
今回は、こうしたアナログのビデオテープをなるべく労力をかけずにデジタル化する方法について、具体的な手順を交えて考察する。
専用デバイスを使えばPCいらずでデジタル化
アナログビデオテープのデジタル化は、ダビングサービスを行なっている市井の業者に依頼する方法もあるが、本数が多いとかなりのコスト負担になるほか、プライベートな映像を第三者に手に委ねるのは抵抗がある人も多いだろう。またTV番組の録画については著作権の関係で業者がデジタル化を行なうことはできず、自らの手で行なわざるを得ない。
とはいえ、かつては当たり前のように行なわれていたビデオデッキ2台をつないでのアナログテープ間のダビングならまだしも、デジタル化となると、具体的な方法がピンと来ない人も多いのではないだろうか。
一般に多く用いられるのは、ビデオデッキを専用キャプチャケーブルでPCに接続し、PCにインストールしたソフトウェアで録画する方法だ。
ソフト込みで数千円もあれば入手できるなどコスト面では優秀だが、設定はやや面倒なことに加え、PCに一定の処理性能が求められ、かつ処理中はなるべくPCでほかの作業をしないほうが好ましかったりと、失敗につながる要因があちこちに潜んでいる。
そうした点から、初心者でも失敗しづらく、かつ手軽な方法として注目を集めているのが、単体で映像のデジタル化が行なえるツールを用いる方法だ。今回紹介するアイ・オー・データ機器の「GV-HDREC」もその1つで、デバイス自体が録画機能を備えていることから、ソフトウェアのインストールはおろか、PCすら必要とせず、手軽にデジタル化が行なえる。
データは本体につないだUSBメモリやメモリカードに保存されるので、そのまま保管してもよいし、PCやNASに移動させることもできる。録画中はそのほかの操作を控えざるを得なかったPCによるキャプチャと異なり、専用ツールであるが故に、気兼ねせずに作業が行なえる。手元に溜まったビデオテープを手軽に、かつ大量にデジタル化するにはぴったりだ。
難しい設定も不要、ワンタッチで録画が可能
ざっと手順を紹介しよう。用意するのはGV-HDREC(以下本製品)とビデオテープ、およびそれを再生するビデオデッキ、さらに必要に応じて、データ中の映像を確認したり、編集に使うモニターがあればよい。
読者の中にはすでにビデオデッキが手元にないという人も少なくないだろうが、最近はビデオデッキを手放す人が増えたためか、中古品リユース店に足を運ぶと、コンディションも良好なビデオデッキが1万円前後で販売されていることが多い。
これらを購入して作業を行ない、すべてのデジタル化が終了したらまたそれを手放せば、コストは最小限で済む。このほかに、オークションサイトやフリマサイト経由で入手する方法もあるだろう。
モニターはHDMIで接続さえできれば、市販のTVはもちろん、PC用のモニターでも構わない。今回は手元にあったジャパンネクストのモバイルモニターを使用している。
ちなみに本製品天板部は遠目に見ると小型モニターを搭載しているように見えるが、実際にはへこんでいるだけだ。本製品とOEM元が同一と見られる他社の競合製品には、ここに録画内容を確認するためのモニターを備えた製品があり、こちらを調達するという手もある。ただし価格的には本製品のほうが有利なので、どちらを選ぶのかはその人次第だろう。
作業はほぼ手放し。余分なパートをカットできる編集機能も搭載
具体的な手順は、まず本製品をビデオデッキにつなぎ、録画ボタンを押したのち、ビデオデッキで再生を実行する。これだけで、ビデオテープの映像がデジタルデータへと変換され、USBメモリやメモリカードなどに保存される。PCを用いる手順と異なり、ソフトウェアの面倒な設定も一切不要だ。
後はビデオテープの再生が終わるのを待って、録画を停止すれば完了だ。フォーマットは汎用的なMP4なので、保存先であるUSBメモリやメモリカードを経由してPCに移動させれば、そちらで視聴できるし、さらにDVDやBD(Blu-ray Disc)に焼いて保存してもよい。
これらの方法が優秀なのは、作業がほぼ手放しで済むことだ。ビデオテープのデジタル化にあたって最大のネックとなるのはなんと言っても時間がかかることで、120分テープであれば完了までに2時間、3倍モードで録画していればその3倍の6時間もの時間が必要になる。これだけの時間に渡ってPCと人が拘束されるのは、かなりつらいものがある。
しかし今回のツールはPCを必要としないため、ビデオデッキとつないで録画を開始すれば、後は終わるまで放置しておけばよい。本製品は録画時間を指定できる機能もあるので、延々と録画しっぱなしになることなく、ビデオテープの長さに合わせて録画を終了させることも可能だ。後は放っておけば、ビデオテープの再生が終わって巻き戻すところまで、自動的に行なってくれる。
これらの方法だと、録画データの先頭と末尾に多少なりとも不要なパートができてしまうが、本製品にはデータの先頭と末尾だけを削除できる編集機能が用意されているので、録画が終わってPCなどにデータを移す前にこれらをカットできる。フレーム単位の正確な編集は望めないが、大雑把な編集であればこれで十分だ。
なお、いったんPCに移してファイル名を変更してしまうと、編集を受け付けなくなってしまうので要注意。また上書き保存ではなく新規保存を行なう場合、保存先であるUSBメモリやメモリカードがいっぱいだと詰んでしまうので、容量にはなるべく余裕を持った状態で作業を行なうようにしたい。
6時間テープの1日2本のデジタル化も無理じゃない!?
ちなみに本製品の販売元であるアイ・オー・データ機器の広報担当者によると、ビデオテープを始めとしたアナログメディアをデジタル化するツールは、2005年の出荷台数が約4千台だったのに対して、2009年には4万台を超え、さらにVHSビデオデッキの製造終了が相次いだ2011年にはピークとなる7万台を記録したという。
2010年前後にこれだけの伸びを記録した背景には、磁気テープの販売数量がピークを迎えたのが80年後半~90年のため、耐用年数である20年を超えた2010年前後に、デジタル化のニーズが増したという事情があるようだ。近年は販売台数は落ち着いているとのことだが、今回のビデオテープの2025年問題で、第二のピークを迎えることは十分に考えられる。
こうした過去のアナログ資産のデータ化は、ある程度の手間と時間がかかるため億劫に感じがちで、今もなお手元に大量のビデオテープが残っている人は、そうした理由でこれまで放置したまま現在にいたったケースが多いはずだ。
しかし今回紹介した方法であれば、本体側で録画/ビデオデッキ側で再生を開始しさえすれば後は放置しておけるので、休みの日にまとまった作業時間を取らなくても、出勤前に録画をセットしてまず1本、就寝前にセットしてさらに1本と、たとえ6時間のテープであっても、1日2本程度のペースでデジタル化を進めることも十分に可能だ。先頭と末尾のカットを毎回行なっても、追加でかかる時間はせいぜい十数分程度である。
なお、一点だけ注意事項として、本製品は動画のアスペクト比が16:9で固定されており、本来は4:3であるビデオテープの映像が、若干横に広がった状態でデジタル化されることが挙げられる。
これらは再生時にアスペクト比を手動変更すれば、元の4:3のアスペクト比で鑑賞できるが、あらゆる再生環境がこうしたアスペクト比の変更機能を備えているとは限らず、また変更できたとしても毎回の設定変更は面倒という人もいるだろう。
どうしてもという場合は本製品ではなく、冒頭でも紹介した「GV-USB2/HQ」などのPCに取り込むタイプのツールを使うか、あるいは(今回は未検証だが)アスペクト比4:3にあたる640×480サイズで録画可能なことをアピールする他社製品を試してみてもよいかもしれない。