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スマートリングがあればスマートウォッチは要らない?Galaxy Ringで確かめたメリットとデメリット

スマートリングの先駆けとなった「Galaxy Ring」は、1年越しで2025年2月14日より国内でも購入できるようになった

 Samsungが昨年海外で発売した「Galaxy Ring」は、指に装着して利用できるウェアラブルデバイス、「スマートリング」の先駆けとして大きな注目を集めた。それからほぼ1年遅れる形とはなったが、Galaxy Ringが2025年2月14日に日本でも発売されている。

 とはいえ、Galaxy Ringなどのスマートリングは新しいデバイスでもあるだけに、実際に指に装着して何ができるのか?ということはあまり知らない人も多いと思う。そこでここでは、スマートリングとは一体どのようなもので、従来のスマートウォッチやスマートバンドなどとどのような点に違いがあるのかを、Galaxy Ringを実際に使用しながら解説したい。

スマートリングの主な用途は「決済」と「健康管理」

 スマートリングとは、指輪のように指に装着して利用するウェアラブルデバイス全般のことを指し、指に装着できるだけあって非常に小さいのが大きなポイントとなる。ただそれだけに機能は制限されていることが多く、2025年時点ではある特定の用途に限定したデバイスが大半のようだ。

  スマートリングの具体的な用途の1つがキャッシュレス決済であり、スマホやカードを取り出すことなく、装着した指をかざすだけでFeliCaやNFCによるタッチ決済が利用できるというものだ。 そして実は決済用のスマートリングは、国内でもGalaxy Ring以前よりいくつかのデバイスが販売されている。

 その代表例となるのが、EVERING社が2021年より提供している「EVERING」だ。これはVisaのタッチ決済が利用できるスマートリングの一種で、料金のチャージや残高の管理などは連携するスマホアプリでする形となるが、EVERING自体はバッテリなどを搭載しておらず、NFCのリーダからの電波に反応して決済できる仕組みとなっている。

決済特化のEVERING
決済タイプのスマートリングの1つ「EVERING」。スマホと連携し、指でタッチするだけでVisaのタッチ決済が利用可能だ(出所:EVERING)

  そしてもう1つの用途が健康管理である。スマートリングに搭載された各種センサーを用いて脈拍や動きなどを測定し、睡眠や健康状態などのトラッキングをするというのが主な使われ方で、Galaxy Ringはこちらに分類されるデバイスとなる。

 ただ決済用のスマートリングとは違い、常時センサーによる計測が必要なことからこちらのデバイスは必ずバッテリを搭載している。そのぶんサイズも大きくなりがちで、技術的ハードルも高いことから提供するメーカーはまだ多くないようだ。

Galaxy Ringはヘルスケア特化
Galaxy Ringの内側には脈拍などを計測するセンサーが備わっている

スマートウォッチと比べたメリットとデメリット

 これら内容を見ると、スマートリングはスマートウォッチの機能限定版という印象も受ける人も多いことだろう。確かにスマートリングを一般的なウェアラブルデバイスと比べた場合、単機能に特化しているだけあって機能が少なく、ディスプレイの搭載も難しいことから情報を確認することもできないなど、機能面でのデメリットは多い。

 ただ小さいだけにメリットも少なからずあり、最も大きなメリットは体にかかる負担が小さいことだ。筆者の経験上、スマートウォッチなどを24時間常に装着していると、重さやバンドの締め付けなどで腕が疲れたり、ストレスに感じたりすることが多い。さらに締め具合や素材と皮膚との相性などによっては、腕がすれて傷が付いたり、水ぶくれができたりすることもある。

 だが、 スマートリングは非常に小さく、装着するのも指1本なので体に接する面積は非常に小さく、かかる負担も少ない。特に健康管理を目的としてウェアラブルデバイスを長時間装着している人にとって、この点は非常に大きなメリットとなるだろう。

指輪サイズなのでほぼ邪魔にならない
「Galaxy Ring」を装着したところ。肌に接するのは指だけと非常に狭いので、スマートウォッチなどと比べ体にかかる負担は小さくて済む

 また「Apple Watch」「Galaxy Watch」などの 高性能スマートウォッチと比べた場合、サイズは小さいが機能が少ない分、バッテリの持続時間はかなり長い。実際、Galaxy Ringも1回の充電で最長7日間動作するとされている。 仮に睡眠中にスマートウォッチのバッテリが切れてしまったとしても、スマートリングを装着していれば健康情報を継続して記録し続けられる。

 それゆえ起きている時のエクササイズを測定する際には高性能なスマートウォッチを使い、寝ている時は負担の少ないスマートリングで計測するといった使い方もできるだろう。 スマートリングはスマートウォッチと排他的関係ではなく、補完関係となり得るデバイスとも言えるわけだ。

「Galaxy Ring」の使い勝手は?実際に試してみた

 では実際のところ、スマートリング使い勝手はどのようなものなのだろうか。発売前にGalaxy Ringをお借りできたので、その使用感を確認してみたい。なお、Galaxy Ringは他社のAndroidスマホでも利用できるが、条件等については製品ページを確認されたい。

【お詫びと訂正】初出時に、Galaxy RingがGalaxyのスマホでのみ利用可能としていましたが、他社のAndroidスマホでも利用可能です。お詫びして訂正させていただきます。

Galaxy Ringは他社のスマホでも使える
Galaxy RingはAndroid11.0以降、1.5GB以上のメモリを搭載したスマホで利用可能となっている

 そしてもう1つ、Galaxy Ringひいてはスマートリングの使い勝手は、購入前のサイズ選びが非常に重要だということも覚えておくべきだ。というのも多くのスマートリングはスマートウォッチなどと違ってバンドで留めるわけではないので、きつくもなく指から抜けることもない、快適な装着感を得るには中で自分の指に適したサイズのものを選ぶ必要があるからだ。

 ちなみにGalaxy Ringの場合、サイズは5号から13号まで(チタニウムブラックは15号まで)と選択肢は豊富だが、米国の指輪サイズに合わせて作られているため日本の指輪サイズとは違う点に注意が必要だ。それゆえGalaxy Ringでは、事前に専用の「サイジングキット」を用い、推奨されている人差し指または中指に適したサイズのものを装着して24時間過ごし、フィットするかどうかを確認した上で初めて製品を購入する形が取られている。

合う指を調べるキット
Galaxy Ringのサイズは米国基準なので、購入時は事前に「サイジングキット」を用いてサイズを確認することが必須となっている

 ではフィットするものを選んだとして、実際の装着感はどうなのだろうか。Galaxy Ringの厚さは2.6mm、幅は7.0mmとなっており、センサーやバッテリを搭載しているだけあって一般的な指輪と比べるとどうしてもサイズは大きく違和感がないわけではない。ファッション用の指輪とは違って常に装着する必要があり、食事や道具を持って作業する際には干渉してしまうこともあるので、快適に利用するにはどの指に装着するかも重要になってくるだろう。

付ける指も案外重要
装着する指によっては、作業時に道具と当たってしまうことなどもある

 ただ一方で、チタニウム素材を使用しているだけあって頑丈ながら軽量であり、筆者が今回お借りした12号のモデルでも重量は約3.0gに抑えられている。それゆえ装着時の負担感は思いのほか小さく、睡眠中も違和感や負担感を抱くことはなかった。また10ATMの防水性能を備えているので、装着したまま手洗いなどをする分には問題ないようだ。

 Galaxy Ringで取得した健康情報の確認や管理は「Samsung Health」から操作可能。ディスプレイがないことから心拍数の確認などもスマホ上でする必要があるが、小型ながらもセンサーはしっかり機能しており、データ自体は問題なく取得できているようだ。

Samsung Healthの画面
Galaxy Ringで取得した健康情報はGalaxy Watchなどと同様、「Samsung Health」アプリから確認できる

 実際、Galaxy Ringとほかのデバイス(Fitbit Charge 6)を装着して睡眠状況を取得してみたのだが、そのグラフを比較してみると細かな違いはあるものの、大まかな傾向は変わらないことが分かる。

Fitbit(右)と睡眠機能を比較
ある日の睡眠状況をGalaxy Ringで取得したデータ
同じ日の睡眠状況を、同じ腕に装着した「Fitbit Charge 6」で取得したデータ。細かな違いはあるがおおむね傾向が変わらないことが分かる

 一方で歩数のカウントに関しては、日によってかなりの違いが生じるケースがあった。具体的に言えば、外で歩く際の歩行のカウントはあまり変わらないが、自宅内で歩いて移動する際はあまりカウントできていない印象だ。

Fitbit(右)と歩数機能を比較
自宅内で過ごしたある日の歩行状況をGalaxy Ringで取得したデータ
同じ日の歩行状況を、やはり同じ腕に装着したFitbit Charge 6で取得したデータ。カウント数に大きな開きがあることが分かる

 ほかにも機能がいくつかあり、Galaxy Ringを装着した手の人差し指と親指を2度すばやくタップする「ダブルピンチ」で、連携するスマホのカメラのシャッターを切ったり、時計のアラームを止めたりすることもできる。同種の操作ができるApple Watchと比べると利用シーンは限られるのだが、カメラのシャッターはシーンによって便利に活用できそうだ。

ジェスチャー機能が使える
利用できる機能は少ないが、「ダブルピンチ」ジェスチャーでスマホの操作ができる。ちなみに人差し指に装着していなくてもダブルピンチの反応はする

 またGalaxyシリーズ標準の「Find」を使うことで、Galaxy Ringの場所を探すことも可能なほか、内側のセンサーを光らせて見つけやすくする機能も用意されている。ただセンサーは小さく光もそこまで強いわけではないので、光だけを元に見つけるのはなかなか難しい。やはりスマートタグのようにブザーくらいは欲しかった。

紛失防止は光で知らせるのみ
「Find」アプリを使ってGalaxy Ringの位置を確認できるほか、内側のセンサーを光らせて探しやすくすることも可能。ただし音は鳴らないので効果は限定的だ

 そしてGalaxy Ringのバッテリ持続時間に関してだが、こちらは先に触れた通り公称値で最大7日とされているが、実際に筆者が使ってみた限りでは、1回の充電でおよそ5日間の使用が可能だった。スマートバンドと同じ感覚で使用できるといえ、充電も付属のケースに入れるだけでよく、ケースにもバッテリが備わっていることから場所を選ばず充電できるのはメリットだ。

満充電から5日間は動作
バッテリ残量など、Galaxy Ringの状態はスマホ側から「Wearable」アプリで確認できる
充電ケース
Galaxy Ringの充電は専用ケースに入れるだけでよい。ケースには蓋が付いているので、充電中に紛失するリスクも抑えられている

 最後に価格についても触れておきたいが、Galaxy RingはSamsungオンラインショップでの販売価格が6万3,690円となっており、同社のスマートウォッチ「Galaxy Watch 7」(Bluetooth・44mmモデルで6万2,700円から)と大きく変わらない価格だ。機能面を考慮すると、コストパフォーマンスの面ではやはり厳しい部分があるというのも正直なところだ。

今後の低価格化と選択肢の増加に期待

 これら一連の内容を考慮するに、Galaxy Ringは小型ながら精度も高く、常時装着して健康管理をするデバイスとしては非常に優秀だと感じる。ただ一方で、新しいデバイスということもあって価格と機能面とのバランスが悪く、より普及させていく上ではさらなる低価格化、あるいは高機能化が求められるところだろう。

 ただ健康管理型のスマートリングはSamsung以外にもいくつかの企業が手掛けており、「Amazfit」ブランドでスマートウォッチを提供している中国のZepp Lifeも独自のスマートリング「Amazfit Helio Ring」を2024年10月から国内販売している。こちらは公式サイトで3万5,800円で購入可能であり、なおかつiPhone・Androidに料対応しプラットフォームを選ばない点がメリットと言える。

Zepp Lifeも2024年より、健康管理タイプのスマートリング「Amazfit Helio Ring」を国内販売している

 すでにGalaxy Ringのフォロワーがいくつか出てきているだけに、今後よりスマートリングに注力する企業が増え選択肢が広がる可能性は十分考えられるだろう。まだ出始めたばかりのデバイスだけに、今後の広がりに大いに期待したい。