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定番トラックボールの新型はどこが変わった?ロジクール「ERGO M575SP」と「MX ERGO S」を試す
2024年9月24日 06:24
ロジクールからトラックボールの新モデル「ERGO M575SP」、「MX ERGO S」の2製品が登場した。ロングセラーモデルである「M575」、「MX ERGO」のリニューアルモデルということで注目度も高い。メーカーから機材を借用したので、従来モデルとの違いを中心に、ファーストインプレッションをお届けする。
スタンダードなトラックボール「M575SP」
まず製品の概要をざっと紹介しておこう。ERGO M575SP(以下M575SP)、MX ERGO Sのどちらも、親指でボールを操作するタイプのトラックボールで、前者のM575SPは拡張ボタンを2つ備えた、マウスで言うところの5ボタンマウスに相当するスタンダードな製品だ。
同製品は従来モデルの「M575」、さらにその前の「M570」と、型番を変えながら進化してきた経緯があり、固定ファンも多い。そのボディ形状は事実上トラックボールのデファクトスタンダードとなっており、他社製品の中には、本製品にそっくりなモデルをラインナップしている場合もあるほどだ。
解像度は最大2,000dpi。接続方法はBluetoothのほか、付属レシーバを用いたLogi Bolt(後述)での接続もサポートしている。水平スクロールには非対応なほか、DPI切替のボタンを本体に搭載しないのは、後述する「MX ERGO S」との相違点だ。電源は単3形乾電池で、最長18カ月の駆動が可能とされている。重量は公称145gだ。
カラーは今回紹介しているグラファイトのほかオフホワイト、ブラックの計3色がラインナップされており、実売価格は8,470円。なおブラックのみ、保証期間を2年から1年に短縮した特定販路向けのモデルも用意されている。
角度調整可能なハイエンド向けトラックボール「MX ERGO S」
もう一方のMX ERGO Sは、拡張ボタン2つに加えて、側面にDPI切替ボタン、さらに上面には接続先を切り替えるためのEasy-Switchボタンを搭載した、ハイエンドに相当する製品だ。
最大の特徴は、底面のマグネット吸着式プレートを倒すことで、ボディの傾斜を約20度切り替えられるギミックを有していることだ。持ちやすさに応じて片方に固定して使うのもあり、気分転換で切り替えるのもありと、柔軟な使い方が可能だ。また前述のM575SPにはない水平スクロールにも対応している。重量は公称259gとずっしり重い。
解像度は最大2,000dpi。接続方法はM575SPと同様、Bluetoothのほか、付属レシーバを用いたLogi Boltでの接続もサポート。こちらは電池駆動ではなく充電式となっており、ボディ先端にあるUSB Type-Cポートから充電することで、フル充電では最長120日間の駆動が行なえる。1分間の充電で24時間使用できる高速充電に対応しているのも心強い。
カラーは今回紹介しているグラファイトのみで、実売価格は1万9,580円。こちらもやはり、保証期間を2年から1年に短縮した特定販路向けのモデルも用意されている。
変更点その1:左右ボタンの静音化
さてこれらの製品は、従来モデルとどこが変わっているのだろうか。両製品とも外見に変化はないのだが、共通する変更点が2つある。まず1つは、左右ボタンの静音化がなされていることだ。
両製品とも従来モデルは、左右クリックのボタンが「カチカチ」と甲高い音がする仕様だったのが、今回の新モデルは「カコッカコッ」という低い音がする仕様に改められ、クリック音が周囲に響きにくくなっている。同社は「前モデルと比較し80%ノイズをカット」をアピールしている。
以下の動画はM575SPと、従来モデルにあたるM575で左右のクリック音を比較したものだが、違いは明らか。外見では区別がつきにくいこの新旧モデルだが、左右ボタンのクリック音を比べれば、どちらが新モデルなのか簡単に判別できる。
この仕様変更が、当初から静音化ありきで設計されたのかまでは定かではないが、高いクリック音が近隣の作業者の集中力を知らず知らず削いでいるというのはよくある話で、進化の方向は正しいだろう。クリック音をマイクに拾われたくない動画配信者などにもプラスのはずだ。
ただユーザーによっては、従来のマイクロスイッチならではの甲高いクリック音が好きな人もいるはずで、万人にウケる仕様かというとそうではないだろう。また「MX ERGO S」については、左右ボタンの静音化によって、逆にほかの拡張ボタンのクリック音が耳につくようになっており、このあたりも使っていてやや気になった。
試した限り、左右ボタンの「軽さ」は従来と変わらないように感じる。筆者はこの両製品(の従来モデル)を使っているときに手を乗せたままにしていると、薬指が無意識に右ボタンを押し込んでしまうことがそこそこの頻度で発生するのだが、これは今回の新製品でも変わらず起こる。これについては筆者が多数派ではなく少数派のはずだが、よくも悪くも変化はないということになる。
変更点その2:独自の無線規格Logi Boltに対応
もう1つの変更点は、2.4GHz帯のワイヤレス通信規格が、従来の「Unifying」から「Logi Bolt」へと改められたことだ。
ロジクールの独自規格Logi Boltは、多数のデバイスが存在する環境でも混線しにくいことを特徴としたBluetooth Low Energyベースの通信規格で、1つのレシーバでマウスやキーボードを複数接続できるといった強みもある。
Logi Boltが登場したのは2021年で、それ以前から販売されていたM575やMX ERGOは非対応だったが、今回のモデルチェンジで対応したことにより、無事Logi Boltファミリーの一員になったというわけだ。同社にとっては、両製品を長く売っていくために欠かせない要件だったのだろう。
ちなみに、USBレシーバのサイズは従来モデルで付属していたUnifyingレシーバと変わらないので、ノートPCに挿した時の突出サイズの違いを気にする必要はない。なお、M575SPが本体底面にレシーバを収納できるのに対して、MX ERGO Sに収納のギミックがないのは、従来のモデルと同様だ。
使い勝手は変わらず、乗り換えても違和感なく使える
両製品に共通する主な違いは以上2点だ。これに加えてMX ERGO Sでは、本体のUSBポートが従来のMicro USBからUSB Type-Cへと改められている。さらに従来は付属していた充電ケーブルが、今回のモデルでは省かれているといった違いがある。
いずれにしても使い勝手に大きな変化はなく、従来モデルのユーザーは違和感なく使えるであろうことから、乗り換えにあたっても不安はない。専用ユーティリティ「Logi Options+」には、2023年にマクロ登録機能「Smart Actions」も追加されており、製品の入れ替えを機に試してみるのも一興だろう。
一方、新規に買うユーザーにとってどちらがよいかは、価格差もあって一概には言えないのが難しいところ。5ボタンマウスの機能で十分ならばM575SP、それ以上を求めるならばMX ERGO Sというのが、1つの目安になるだろう。個人的には、腱鞘炎対策が主な購入の動機ならば、試した上で納得感を得られやすいMX ERGO Sをおすすめしておきたい。