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LINEやSuicaなど、スマホ機種変更時の注意点まとめ。データの移行だけではトラブル確実

機種変更時のスマホのデータ移行は、有線・無線でスマホを接続して直接移行できる機種が増えており、以前と比べればかなり楽にはなっている

 円安や政府による値引き規制によって買いづらくなったとはいえ、新しいスマホが発売されれば欲しいと思う人は多いことだろう。またそうでなくても、動作が重くなった、バッテリが持たなくなった……などの理由によって、やむなくスマホを買い替える人も少なからずいるのではないだろうか。

 だが新機種に機種変更する際、面倒に感じてしまうのがデータの移行である。最近ではクラウド経由である程度のデータを移すこともできるようになっているし、古い端末と新しい端末を有線、あるいは無線で接続して直接、簡単にデータを移すこともできるようになってきている。

 だがそれでも、個々の機能やアプリ、サービスによっては端末を変えると何らかの手続きが求められることは少なくない。その多くはIDとパスワードを入力するなどしてサービスにログインすれば済むのだが、中にはそうもいかないケースもある。

 とりわけAndroidスマホの場合、バックアップの復元だけによらない手続きが求められるケースが多く、移行を誤るとデータだけでなくお金も失ってしまうことになりかねない。そこでAndroidスマホ機種変更する際、注意が必要なポイントについて解説しておきたい。

FeliCaベースの電子マネーはデータ移行操作が必須

  Androidスマホの移行作業で最も注意が必要とされているのが、「Suica」「楽天Edy」といったFeliCaベースの電子マネーサービスの移行である。

 AppleのiPhoneの場合は、古いiPhoneから個々の電子マネーを削除した後、新しい端末で登録し直せば移行は済むのだが、Androidスマホの場合は古い端末側で、サービスごとにデータを一度サーバーに移した後、新しい端末でそれを取り込む必要がある。

 そのためには個々のサービスごとに作業しなければならず、利用しているサービスが多いほど手間がかかる。サーバーに預ける作業を忘れたまま機種変更をし、古い端末を初期化したり、処分してしまったりしたとなれば、再発行にかなり手間を要するだけでなく、最悪の場合アカウントを復活できず残高を失うこともあるようなので、 過去に電子マネーサービスを利用したことがある人は機種変更前に必ず、「おサイフケータイ」「Google Pay」アプリで確認をしておこう。

Suica

 データの移行方法はサービスによって異なるが、ここでは代表的なサービスとしてSuicaを例に挙げておこう。

 Suicaの場合「おサイフケータイ」アプリから移行ができるので、まずはおサイフケータイアプリを起動した後に「交通系ICカード」の「メインカードの確認・切替」を選ぶ。

Suicaを移行する場合、まずは「おサイフケータイ」アプリの「交通系ICカード」から、「メインカードの確認・切替」を選ぶ

 続いて移行対象のSuicaを選び、「カードを預ける(機種変更)」を選べばサーバーにデータを預けることができる。

対象のSuicaを選んだら「カードを預ける(機種変更)」をタップすればよい

 預け終わったら、新しい端末側でおサイフケータイアプリを立ち上げ、Googleのアカウントでログインする。すると「交通系ICカード」の項目に「交通系ICカードの受け取り」という項目が現われるのでこちらをタップし、「モバイルSuica」を選択する。

データを預けたら、新しい端末側でおサイフケータイアプリを立ち上げGoogleアカウントでログインした後、「交通系ICカードの受け取り」→「モバイルSuica」と選ぶ

 後は預けたSuicaが画面に現われたら、「受け取る」をボタンをタップすれば移行は完了だ。なお移行したSuicaへのチャージや細かな設定には「モバイルSuica」のアプリが必要なので、そちらの手続きも忘れないよう実施しておこう。

預けたSuicaが現われたら「受け取る」ボタンをタップすればサーバーからデータをダウンロードしてくれる

「スマホ用電子証明サービス」も移行手続きが必要

 もう1つ、移行に所定の手続きが必要なのが「スマホ用電子証明書サービス」だ。これはスマホのNFCを用いてマイナンバーカードの一部機能が利用できるもので、現時点(2024年6月)でiPhoneでは利用できず、Androidスマホのみの機能となっている。

 そしてスマホ用電子証明書は発行できるのは1人1台のみに限られることから、機種変更の際には「マイナポータル」のアプリを使って所定の手続きを踏んで移行する必要があるのだが、 移行や失効などの手続きができるのはマイナンバーカードを持つ本人に限られる。そのため仮にデータの入ったスマホを下取りに出した場合、下取りした業者がデータを完全に消すことはできない。

 電子証明書のデータはセキュアエレメントに保存されていることからデータが残ったとしても不正利用される可能性は限りなく低く、後から電話で失効手続きをすることも可能ではある。ただ不要なトラブルを避けるためにも、自ら手続きをしたほうがよいだろう。

 スマホ用電子証明書サービスの機種変更手続きは、基本的に新しい端末とマイナンバーカードを用いて実施する形となる。大まかな流れを説明すると、まずはマイナポータルアプリのメニューから「機種変更」を選び、機種変更後に利用する電子証明書を選ぶ。

「スマホ用電子証明サービス」を新しい端末に移すには、新しい端末で「マイナポータル」アプリを起動し、メニューから「機種変更」を選ぶ

 後は通常のスマホ用電子証明書サービスの登録手続きとほぼ同じで、マイナンバーカードの署名用電子証明書のパスワード(マイナンバーカード申請時に登録した6~16文字のパスワード)を入力し、マイナンバーカードを読み取る。

必要な電子証明書を選んだ後にマイナンバーカードの署名用電子証明書のパスワードを入力、その後スマホでマイナンバーカードを読み取る

 その後、スマホ用電子証明書、スマホ用利用者証明用電子証明書のパスワードを改めて設定し、利用申請を実施する。申請が通過すれば通知が届くので、後は必要に応じて生体認証の利用登録などをすればよい。

 なお、古い端末の電子証明はインターネットに接続していれば、移行後48時間以内に削除される仕組みなので、削除が完了するまで古い端末は初期化しないようにしておきたい。

読み取りに成功したらスマホ用の署名用電子証明書のパスワード(赤枠)、利用者証明用電子証明書のパスワードを改めて設定し、利用申請をすればよい

移行時の注意点が多い「LINE」や2段階認証アプリ

 Android独自の手続きが必要なものに限らず、スマホの機種変更時に手続きを忘れてトラブルとなりやすいものも少なからずある。とりわけ注意が必要なのが認証系アプリだろう。

 最近ではパスワードレスの認証、あるいは2要素認証の手段の1つとして、独自のスマホアプリを使用するケースがいくつか見られる。PC Watch読者にとってなじみ深そうな「Microsoft Authenticator」も、その1つに挙げられるだろう。

  こうした認証系アプリも単にデータを移しただけでは機能せず、所定の手続きに従って新しい端末での登録が必要になってくる。それを忘れたまま古い端末を初期化したり、処分したりしてしまうと従来通りの認証ができなくなり、復旧にも手間がかかることから必ず移行手続きをしておきたい。

Microsoft Authenticator

 先に挙げたMicrosoft Authenticatorの移行方法を挙げると、まずは古い端末のMicrosoft Authenticatorの登録を削除する必要がある。そのためにはパソコンなどでMicrosoftアカウントの管理画面を呼び出し、「セキュリティ」→「高度なセキュリティ オプション」と選択する。

古い端末のMicrosoft Authenticatorを削除するには、Microsoftアカウントの管理画面のメニューから「セキュリティ」を選んだ後、さらに「高度なセキュリティ オプション」を選ぶ

 続いて「サインイン通知の送信」を選択し、さらに「削除」ボタンを押せば削除ができる。

「サインイン通知の送信」を選択した後に「削除」ボタンを押せば、古い端末の登録は削除できる

 その上で新しい端末でMicrosoft Authenticatorを登録するには、同じ画面から「サインインまたは確認の新しい方法を追加」→「アプリを使う」と選択。その後新しい端末側でMicrosoft Authenticatorのアプリをインストールし、登録をし直せばよい。

新しい端末に登録するには、削除した後の画面で「サインインまたは確認の新しい方法を追加」を選んだ後に「アプリを使う」(赤枠)を選択し、新しい端末でMicrosoft Authenticatorをインストールして登録作業を進めればよい

LINE

 もう1つ、需要が多い故に移行時のトラブルも多いのが、メッセンジャーアプリの「LINE」である。LINEは電話番号で認証する仕組みなので、同じ電話番号で登録し直せばアカウント自体の引継ぎはできるのだが、古い端末があればQRコードを使ってもっと簡単に移行できることは覚えておきたい。

「LINE」は電話番号でアカウントの移行は可能だが、古い端末が残っていれば「かんたん引継ぎQRコード」を使ってより簡単に移行ができる

  そしてLINEの移行時に最も問題となるのが過去のトーク履歴であろう。LINEのトーク履歴のバックアップはクラウド、Androidの場合は「Googleドライブ」にバックアップする仕組みで、事前に設定しておかないとバックアップはできない。 LINEのホーム画面から「設定」→「トークのバックアップ」と選択し、事前にトークをバックアップするよう設定しておこう。

トーク履歴のバックアップをするには、設定から「トークのバックアップ・復元」を選び、バックアップに用いる「Googleドライブ」のGoogleアカウントと、復元用のPINコードを設定しておく必要がある

 あらかじめバックアップを設定しておくと、移行時にGoogleアカウントを選択してトーク履歴を復元できる。現在ではさまざまなコミュニケーションをLINEでこなしている人も多いだけに、機種変更したらトークが全部消えてしまった……という事態に陥らないよう、LINEのバックアップ設定はぜひしておきたいところだ。

トーク履歴の復元は新しい端末での移行時にする形となり、バックアップ先のGoogleドライブのGoogleアカウントを選んでPINコードを入力すればよい

物理SIMより移行時の注意点が多いeSIM

 機種変更時に手続きが必要なのはスマホ上のアプリやサービスだけではない。最近特に注意が必要になってきているのが「eSIM」だ。

 現在ではiPhoneだけでなく、Androidスマホでも新機種の多くがeSIMに対応するようになったのに加え、オンラインで契約してすぐ使える手軽さもあって、従来の物理SIMではなくeSIMを使って回線契約している人も増えている。

  だがeSIMは物理SIMとは違って、機種変更の際に差し替えて移行することはできないことから、所定の手続きを踏む必要があり、そのぶんやや手間がかかる。

 またeSIMの手続きに慣れていないと移行に失敗し、ショップで設定してもらったり、手数料を払って再発行してもらう必要が出てきたりすることもある。機種変更時には特にトラブルが生じやすいので注意が必要だ。

 eSIMによる機種変更の手続きは基本的に、携帯各社が提供している各種手続きが可能なアプリやWebサイト(「My docomo」「My au」「My Softbank」「my 楽天モバイル」など)から、新しい端末にeSIMを再発行する形となる。

 具体的な手続きはサービスによって異なるので手順は省略するが、eSIMのプロファイルをダウンロードするのにQRコードの読み取りが必要なサービスもあることから、手続き時はインターネットに接続できる端末をもう1つ用意しておくといいだろう。

eSIMによる機種変更時の手続きは、携帯各社のユーザー向けアプリやWebサイトから可能。楽天モバイルの場合は「my 楽天モバイル」からeSIMを再発行する形となる

 なお、eSIMの機種変更時にかかる手数料だが、携帯4社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル)の場合、オンラインで手続きする分には基本的に無料だ。

 ただしKDDIの場合、「au」ブランドでは4Gから5Gに契約を変更するなど、回線種別を変更する際に3,850円の手数料がかかるほか、「povo 2.0」はeSIM再発行のため4,40円の手数料がかかる。加えて各社ともに、ショップ店頭で手続きをする際には3,850円の手数料がかかる点に注意が必要だ。

 一方でMVNOの場合、機種変更時のeSIM再発行には手数料がかかることがほとんどだ。手数料はサービスによって異なり、おおむね数百円程度なのだが、日本通信のように1回当たり1,100円の手数料がかかるケースもあるので要注意だ。

MVNOは機種変更時のeSIM再発行に手数料がかかることが多く、日本通信の場合1,100円かかってしまう

 ちなみにiPhoneには、eSIMを旧機種から新機種に転送できる「クイック転送」という機能が用意されており、携帯4社のサービスであればこれを用いてすばやくeSIMの移行が可能となっている。

 実はAndroidスマホに向けても同種の機能は提供されている。実際NTTドコモは、同社が販売するeSIM搭載の「Pixel」「Galaxy」シリーズに向けて、機種変更時などにeSIMを転送できる「Android eSIM転送機能」を提供している。

 GoogleもAndroidスマホのeSIM転送機能の展開には力を入れていることから、今後はほかの携帯電話会社やスマホにも広がることが予想される。現時点ではまだ不便なeSIMによる機種変更だが、今後大きく改善されることに期待したい。

古い端末はしばらく初期化せず、手元に置いておくべき

 ここまで説明してきたように、Androidスマホの機種変更時は、新しい端末にデータを移行する以外にもさまざまな手続きが必要で、トラブルなく移行するためには可能な限り古い端末をそのままの状態で残しておく必要がある。新しい端末に買い替えたからと言って古い端末をすぐ初期化したり、手放したりしないほうがいいだろう。

 最近ではスマホが高騰しているだけに、新機種購入時に下取りに出すため古い端末をすぐ手放さなくてはいけないというケースも多いかと思う。

 移行し忘れによるトラブルを防ぐためにも、数日から1週間程度はそのままの状態で維持し、その間に新しい端末に移行していない機能やアプリはないか、総点検しておくことをおすすめしたい。