特集
PC/スマホ/ゲーム機をまとめて同時充電したい!どんな充電器が最適か?大出力でおすすめなUSB PD充電器の選び方
2023年12月25日 06:27
さまざまなデバイスがUSB Type-C経由での電源供給に対応したことで、1つの充電器を複数のデバイスで使い回すことが可能になった。ノートPCとスマホを1つの充電器で共用するという、かつては考えられなかった使い方が可能になり、持ち歩きが楽になったと実感している人も多いはずだ。
一方で、充電器が共通化されたために、ノートPCを接続しようとしたらスマホの充電でポートが塞がっていたり、ゲーム機の充電待ちでスマホが充電できなかったりと、デバイス間で取り合いになるケースは、かつてより発生しやすくなっている。
こうしたことから注目を集めているのが、複数のポートを搭載したUSB PD対応の充電器だ。最大出力が100Wを超える製品ならば、ノートPCやスマホ、ゲーム機など複数台まとめてフルスピードでの充電も視野に入ってくる。最近では140Wや200Wというさらなる高出力の製品も登場し、選択肢は増加している。
今回は、これら製品の挙動を検証し、選ぶ上での注意点をおさらいしたのち、おすすめとなる10製品を、ポート数や容量の違いごとに紹介する。
複数ポート搭載のUSB PD充電器、利用にあたっての注意点は?
複数のUSB Type-Cポートを搭載するUSB PD充電器は、複数のデバイスを同時に充電できることが特徴だ。USB Type-Cだけではなく、USB Type-Aを備えた製品もあり、幅広いデバイスに充電を行なえる。100W以上の出力が可能な製品ならば、ノートPCを含む複数台への同時充電であっても、多くはフルスピードでの充電が行なえる。
ただし同時充電にあたっては注意点もある。ここでは例として、合計最大150Wの出力に対応した「Anker 747 Charger (GaNPrime 150W)」で実験してみよう。この製品は、3つのUSB Type-Cポートと1つのUSB Type-Aポートを備えており、USB Type-Cポートは1ポートあたり最大100W、3ポート合計で最大150Wの範囲で充電が行なえる。
今回は以下に掲げたノートPC/スマホ/ゲーム機をそれぞれ接続してみた。なお各デバイスとも、バッテリ残量はあらかじめ50%以下に減らした状態で充電の実験を行なっている。
- 最大65Wで充電可能なノートPC(ThinkPad X1 Carbon 2019)
- 最大27Wで充電可能なスマホ(iPhone 15 Pro Max)
- 最大15Wで充電可能なゲーム機(Nintendo Switch※)
※Nintendo Switch本体の充電まわりの仕様は諸説あるが(製造時期により異なる可能性もある)、筆者の所有する個体はおおむね15V/1Aで充電されるので、ここでは最大15Wとして話を進める@@
これらは1台ずつであれば、それぞれ65W/27W/15Wでの充電が行なえる。これらを3台同時に充電する場合、単純合計しても107Wで、充電器側の最大出力である150W以下に収まっているので、3台いずれもフルスピードでの充電が可能なように見える。
しかし実際には、3台を同時に接続すると、各ポートに「上限50W」という出力制限がかかるため、65WのノートPCはこれにひっかかり、実測50W(20V/2.5A前後)でしか充電できなくなる。ポートを入れ替えてもすべて同じ結果だ。
実際に各ポートで利用可能なPDO(Power Data Object)を調べてみると、1ポート利用時の最大出力は100W(20V/5A)となっている。つまり充電器側の出力は十分に足りており、ノートPCは65W、スマホは27W、ゲーム機は15Wに抑えられているのは、充電器ではなくデバイス側の制限であることが分かる。
これに対して3ポート同時利用時は、最大出力はどのポートも50W(20V/2.5A)に制限されており、ノートPCはそのせいでフルスピード(65W)での充電が行なえない。各ポートに接続するデバイスを入れ替えて試してみたが、50W/50W/50Wという配分は完全に固定で、各ポート間で融通することはできないようだ。
この例は、本来は65Wで充電可能なところ50Wに制限されるという、まだそれほど影響がないレベルだが、仮にノートPCが100Wでの充電に対応していた場合、速度が半減することになるので影響は大きい。いずれにしても、複数台の同時充電時には、個々のポートの出力制限に注意しなくてはいけないことが分かる。
接続するポートを間違えると充電に失敗する例も
上記の例では、フルスピードでの充電は行なえないにしても、デバイスを充電するというそもそもの目的自体は果たしているので大きな問題はないが、ポートごとの最大出力が異なっている場合などは、接続するポートを間違うと、充電自体に失敗する可能性もある。
たとえば最大出力67Wの「Anker Prime Wall Charger(67W, 3 ports, GaN)」は、2つのUSB Type-CポートにノートPC(最大65W)とスマホ(最大27W)を接続した場合、前者が45W(20V/2.25A前後)・後者が18W(9V/2A前後)での充電となる。両者ともに均等に出力が抑えられる格好だ。これはまだいい。
ただしこの製品は、2ポート同時利用時はC1ポートに優先的に電力が供給される仕様であるため、上記とは逆に、C1ポートにスマホ・C2ポートにノートPCを接続した場合、前者が18W(9V/2A前後)・後者が27W(9V/3A前後)が供給される。
ここで問題となるのはノートPCだ。ノートPCは供給電力が低いとノートPC側から充電器を接続していると見なされないケースがあるほか、接続していると見なされてもノートPCの平常時のバッテリ消費に電力供給が追いつかず、充電ケーブルをつないでいるのに逆にバッテリが減っていくという現象が起こる。
この例がまさにそれで、27WではノートPCのバッテリが回復せず、充電しているつもりがまったくできていなかったという事態に陥る。こうした点からも、少なくともどちらのポートの出力が大きいかは、きちんと把握しておく必要がある。本製品のようにポートにアイコンが表示してあれば、それを参考にするとよいだろう。
複数ポート搭載充電器につきものの「抜き差しでリセット」問題
複数ポートを搭載するUSB PD充電器を使う上でもう1つ気をつけなくてはいけないのは、デバイスがつながったケーブルを抜き差しするたびに、ほかのポートへの電源供給がいったんリセットされることだ。
これは、新しいデバイスが接続されるたびに、各ポートに対する電力の配分をやり直さないと、あとから差したポートに電力が供給されないままになりかねないからだ。つまり挙動としては何ら間違っていないのだが、一時的に電力が遮断されることで、問題が発生する場合がある。それはこれらポートに接続した機器が充電ではなく、直接的な駆動に使われている場合だ。
たとえばこれらの充電器をビジネスホテルに持ち込んで使っていて、そのうち1つのポートをモバイルルーターへの給電に使っていたとする。この場合に、新しいデバイスを接続したことで給電が一時的に停止すると、そのたびに回線が切断され、Wi-Fiが停止することになる。作業中はおちおちスマホから充電ケーブルを外すことすらできなくなる。
ちなみに抜き差しのたびに給電がリセットされる仕様は、Appleの35W充電器のような例外も一部にあるが、複数のポートを備えるUSB PD充電器のすべてに共通すると考えてよい。もしこうした挙動は困るという場合は、単ポートの充電器を複数購入し、それらを電源タップに挿して使ったほうが、ニーズに合致するだろう。
複数ポート搭載のUSB PD充電器のおすすめ10製品を紹介
ここからは、複数ポート搭載のUSB PD充電器のおすすめ製品を、搭載するポート数ごとに紹介していく。実売価格はいずれも12月16日現在のAmazonの価格で、タイムセール価格は除外している。
3ポート(USB Type-C×2、USB Type-A×1)を搭載、最大140Wに対応
VOLTME「Revo 140 PD」
搭載ポート数は3ポートと少ないが、USB PD 3.1対応で単ポート140Wの充電に対応する。USB Type-Cポートは上1つのみ140Wの出力に対応する。ブラックのほかホワイトもラインナップ。保証期間は18カ月。
3ポート(USB Type-C×2、USB Type-A×1)を搭載、最大140Wに対応
アドテック「APD-V140AC2-BK」
搭載ポート数は3ポートと少ないが、USB PD 3.1対応で単ポート140Wの充電に対応する。USB Type-Cポートは上1つのみ140Wの出力に対応する。ブラックのほかホワイトもラインナップ。保証期間は1年。240W対応ケーブルが付属したモデルもある。
3ポート(USB Type-C×3)を搭載、最大140Wに対応
CIO「NovaPort TRIO 140W3C」
3ポートすべてがUSB Type-Cのモデル。USB PD 3.1対応で単ポート140Wの充電に対応する。140Wの出力は3ポートいずれも可能。ブラックのほかホワイトもラインナップ。保証期間は不明。
4ポート(USB Type-C×2、USB Type-A×2)を搭載、最大100Wに対応
Baseus「CCGAN100」
USB Type-Aを2ポート備えた珍しいモデル。USB Type-Cポートはいずれも100Wの出力に対応する。ブラックのほかホワイトもラインナップ。保証期間は不明。100WのUSB Type-Cケーブル×1本が付属する。
4ポート(USB Type-C×3、USB Type-A×1)を搭載、最大100Wに対応
UGREEN「Nexode 100W GaN Fast Black 40737」
同じポート構成(USB Type-C×3、USB Type-A×1)の中ではコスパに優れたモデルで、軽量なボディも特徴。3つあるUSB Type-Cポートは上2つが100Wの出力に対応する。本体色はシルバーのみ。保証期間は24カ月。
4ポート(USB Type-C×3、USB Type-A×1)を搭載、最大100Wに対応
MATECH「Sonicharge 100W Pro X」
こちらもコスパに優れたモデル。3つあるUSB Type-Cポートは上2つが100Wの出力に対応する。本体色はメタリックブラックのみ。保証期間は2年で、登録を行なうとさらに1年の延長保証が追加される。
4ポート(USB Type-C×3、USB Type-A×1)を搭載、最大100Wに対応
Anker「Anker 747 Charger (GaNPrime 150W)」
本稿で例として紹介しているモデル。USB Type-Cポートは3つとも100Wの出力に対応する。本体色はブラックのみ。保証期間は24カ月で、会員登録を行なうとさらに6カ月の延長保証が追加される。
4ポート(USB Type-C×3、USB Type-A×1)を搭載、最大140Wに対応
Belkin「WCH014dqWH」
同じポート構成(USB Type-C×3、USB Type-A×1)のモデルの中で唯一、USB PD 3.1対応で140Wの充電に対応。140Wの出力に対応するのは3ポートのうち最上部の1ポートのみ。本体色はホワイトのみ。保証期間は2年。
4ポート(USB Type-C×4)を搭載、最大100Wに対応
Anker「Anker 547 Charger (120W)」
4ポートすべてがUSB Type-Cのモデル。100W出力に対応するのは上1つのポートのみ。本体色はホワイトのみ。保証期間は24カ月で、会員登録を行なうとさらに6カ月の延長保証が追加される。
6ポート(USB Type-C×4、USB Type-A×2)を搭載、最大100Wに対応
UGREEN「90551」
6つものポートを搭載し、合計200Wの充電に対応したモデル。重量も1kgを超えるなどかなりのヘビー級。USB Type-Cポートは上2つが100Wの出力に対応する。本体色はブラックのみ。保証期間は24カ月。