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ずっと使ってるスマホの充電器、新しくしたら便利になるかも-充電見直しガイド-
2023年8月31日 10:45
最近のスマホは、パッケージに充電器が付属しないこともしばしばだ。そのため、機種変更を行なったあとも、どのような経緯で入手したのかも思い出せない素性不明の充電器を、そのまま使い続けている人も多いと思われる。しかし、充電まわりのスペックは、最近のスマホではモデルチェンジのたびに大きく進化するポイントの1つでもある。適切な充電器に交換すれば高速に充電できるにもかかわらず、そうでない充電器を使い続けているために恩恵を受けられないのは、ある意味もったいない話だ。
またミドルクラス以上のスマホは、ケーブルをつながなくとも上に乗せるだけで充電が可能な、ワイヤレス充電に対応することも多い。しかしこちらも対応する充電器が手元になければ、試したことすらない人も多いはず。興味はあるが何が適合するか分からず、今日に至っている人もいるかもしれない。
今回はそうした、充電回りの環境にどちらかというと無頓着なユーザーを対象に、いま充電器を買い替えるとすればどのような選択肢があり、どのような点に注意すべきか、基本的なポイントに絞って見ていく。
「USB PD」対応ならばスマホを急速充電できる
まずは有線での急速充電について見ていこう。いまスマホの急速充電といえば、一般的に「USB PD(USB Power Delivery)」という規格を指す。iPhoneにせよAndroidにせよ、多くのモデルがUSB PD規格に準拠した急速充電に対応しており、対応する充電器と組み合わせることで、従来よりも短時間で充電が行なえる。
スマホの充電は就寝中に行なうので特に高速でなくても構わない、という人もいるかもしれないが、うっかり充電を忘れたまま翌朝を迎えてしまった場合に、残量がほぼない状態から30分前後でバッテリ残量を50%近くまで回復させられる急速充電は、あって困るものではない。
また、1つの充電器を家族で共有している場合や、複数のデバイスを取っ替え引っ替え充電する場合も、1台あたりの充電時間が短くなれば、すぐに次のデバイスの充電に移ることができる。複数ポートを備えた製品であれば、2台以上の同時充電も可能なので、利便性はより高くなる。
さて、USB PDでの充電を行なう場合、スマホと充電器、それぞれがUSB PDに対応している必要がある。
手持ちのスマホがUSB PDに対応しているかどうかは、製品のパッケージや仕様欄で確認できる。「USB PD」ではなく「高速充電」などと書かれている場合があるのでややこしいが、うっかり間違えて充電できないという恐れはまずない。
ちなみにスマホがUSB PD対応か否かを、端子の形状から判別することはできない。一昔前のMicro USBの場合は100%非対応だが、USB Type-Cの場合、ほとんどが対応している一方で、エントリーモデルの一部は非対応の場合もある。iPhone(Lightning端子)も、iPhone 8以降のモデルはすべて対応しているが、それ以前のモデルは非対応だ。
USB PD対応の充電器の選び方は?
スマホがUSB PDに対応していることが分かれば、あとはUSB PD対応の充電器を用意すれば急速充電が行なえるわけだが、USB PD対応の充電器は「18W」、」20W」、」30W」、」45W」、」65W」といった具合に、製品によって最大出力(W)はバラバラだ。これはどのように選べばよいだろうか。
これがスマホではなくタブレットやノートPCの場合「製品ページの仕様欄を見て必要な出力を確認しましょう」ということになるのだが、スマホの場合はあまり神経質になる必要はない。というのもスマホは、ゲーミング用のハイエンド機など一部の例外を除き、20~30Wの出力に対応した製品がほとんどだからだ。
そのため「大は小を兼ねる」で、最大出力が「30W」以上ある充電器を選んでおけば、ほぼ確実にフルスピードでの充電が行なえる。「100W」や「140W」など、明らかに出力がオーバーな製品であっても、ケーブルで接続した時点でスマホと充電器とがやりとりし、出力を最適な値に調整をしてくれる。出力が大きすぎてスマホが壊れたり、いきなり充電器が火を噴くようなことはない。
また最大出力がそれ以下の製品、具体的には「18W」や「20W」のUSB PD充電器を買ってしまっても、フルスピードに満たない場合があるだけで、充電自体は行なわれる。そもそもUSB PDでない環境ならば10Wにも満たない場合があるので、それよりはずっと高速だ。
ただしスマホの急速充電は、新しいモデルが出るたびにより大きな出力に対応するようになりつつあり、1~2年前は20Wあれば十分だったのが、現在は30Wまで対応していたほうがよい、といった具合に進化している。それを考えると、将来を見越してワンランク出力が上の充電器を買っておくというのは1つの賢い考え方だ。
もっともその場合、充電器のボディサイズが大きくなり、また価格も高くなるデメリットがある。2~3年経てばより小さく、より安価な製品が出てくるはずで、あまり欲張りすぎるのも考えものだ。今の時点でタブレットやノートPCなど、スマホ以上の出力を必要とするデバイスが手元にないのなら、やはり30W前後にとどめたほうがよいだろう。
なおこれらUSB PD対応の充電器のUSBポートは、すべてUSB Type-Cとなる。まれにケーブル直結型の充電器もあるが、それはあくまでも例外だ。USB PD対応の充電器の中には、USB Type-Cポートに加えてUSB Type-Aを搭載した製品もあるが、Type-AポートではUSB PD準拠の急速充電は行なえない。必ずUSB Type-Cポートを経由しての充電となる。
こうしたことから、USB PDで急速充電を行なう場合にスマホと充電器をつなぐケーブルは、「USB Type-C - USB Type-C」もしくは「Lightning - USB Type-C」のどちらかということになる。
ワイヤレス充電ならばケーブルの抜き差しも不要
スマホの充電については、有線ケーブルで接続するのではなく、ワイヤレス充電を使う選択肢もある。スマホを乗せるだけで充電が行なえるので、使いながらこまめに充電したい場合などには便利だ。
中でもiPhoneに搭載されているMagSafeは、磁力で吸着させるので、位置合わせを行なう必要がないのが利点だ。照明を落とした暗い部屋で、充電器からiPhoneを外してしばらく使ったあとも、わざわざ照明をつけてケーブルを挿し直さなくとも、手探りで元に戻して充電を再開できる。これは大きな強みだ。
一方のAndroidの場合は、磁力で吸着させるのではなく、位置合わせは手動で行なう必要がある。そのため乗せた時にうっかり位置がズレたままになってしまい、翌朝になって充電できていないことに気づくというミスが起こりうる。これを防ぐにはスタンド型のワイヤレス充電器など、置き場所がズレにくい製品を用いるのがよい。
ちなみにこの両者はどちらも「Qi(チー)」と呼ばれるワイヤレス充電規格を採用しているため、互換性もある。そのためワイヤレス充電対応のAndroidスマホをMagSafe充電器で充電したり(ただし磁力での吸着はしない)、一般的なQi対応のワイヤレス充電器でiPhoneを充電することもできる(こちらもやはり磁力での吸着はしない)。
また2023年後半にも対応製品が投入されると言われている後継規格「Qi2(チーツー)」は、AppleのMagSafeをベースとしており、Androidでもマグネットによる吸着をサポートするとのことなので、将来的には互換性の向上により対応製品も増えてくるはずだ。
なおワイヤレス充電は、前述の有線ケーブルによる急速充電に比べると、速度面はどうしても不利だ。これまで急速充電を使っていなければ、速くなったと感じる場合もあるかもしれないが、そうでなければ遅くなったと感じるはずだ。少しでも速くバッテリを回復させたい場合には、USB PDによる有線での急速充電のほうが適している。
またMagSafeについては、Apple純正の充電器は最大15Wであるのに対して、サードパーティ製の充電器では7.5Wまでしか対応しない。今秋発売のiPhone 15シリーズでは改善されるとの噂もあるが、現時点でははっきりしないので、詳細が分かるまでは様子見するという手もあるだろう。2023年末頃までには、このあたりは明らかになるはずだ。
おすすめの急速充電器×5とワイヤレス充電器を紹介
最後に本稿の締めとして、USB PD対応の急速充電器、およびワイヤレス充電器のおすすめを、独断と偏見で紹介する。実売価格は2023年8月30日現在のAmazonでの価格を表示している。
Ultra Mini 30W
最大30Wの出力に対応した1ポートのUSB PD対応充電器。知名度は高くないが国内メーカーの製品で、⼀辺約3cm(30×30.5×30.5mm)という業界最小クラスのコンパクト設計と、2千円を切るリーズナブルな価格が特徴。プラグは折り畳めないため、持ち歩きよりも宅内での利用に向く。
◯Anker 511 Charger (Nano 3, 30W)
最大30Wの出力に対応した1ポートのUSB PD対応充電器。3.5cm四方より小さい超コンパクト設計で、プラグが折り畳めるため持ち歩きにも適する。この手の充電器としては珍しく、ホワイトやブラック以外のカラーバリエーションを複数ラインナップしている。
◯BoostCharge Pro PPS 45WデュアルUSB-C GaNウォールチャージャー(WCH011dqWH)
2ポートのUSB PD対応充電器。2ポート同時利用時は25W+20Wの出力が行なえるほか、1ポートのみ利用時は最大45Wの出力に対応するため、ノートPCの充電にも利用できる。このほか2ポート同時利用時は45W+20W、1ポートのみ利用時は最大65Wの出力に対応した上位モデル「WCH013dqWH」もラインナップする。
◯MPA-ACCP4032WH
最大30Wの出力が可能なUSB PD対応のUSB Type-Cポートのほか、合計12Wの出力が可能なUSB Type-A×2を搭載する3ポートのUSB充電器。合計3ポートを搭載しながら手のひらサイズのコンパクトなボディで、プラグが折り畳めるため持ち歩きにも適する。同時利用時はUSB Type-Cポートの最大出力が20Wに制限されるので注意。
◯35W デュアル USB-C ポート搭載電源アダプタ
Apple純正のUSB PD対応2ポート充電器。1ポートでは最大35W、2ポート同時使用ではそれぞれ最大17.5Wの充電が行なえる。実売価格は7,800円と割高だが、複数ポートを搭載したほかのUSB充電器と異なり、ケーブルの抜き差し時にもう一方のポートの充電がリセットされる現象が発生せず、充電を継続できるのが大きな利点だ。
◯MagSafe充電器
Qiとの互換性を備えた、Apple純正のMagSafe充電器。サードパーティ製の互換充電器が3千円台から手に入るのと比べると割高だが、最大出力15Wという速度面の優位性は見逃せない。また本製品との組み合わせを前提に設計されたサードパーティ製のスタンドやカーアクセサリも多く、汎用性という意味でも有利だ。