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USB Type-CドックとThunderbolt 4ドックの違いとは?購入前に知っておくべきことをまとめてみた
2023年8月15日 06:13
近年、注目されているPC向けの周辺機器の1つに、USB Type-C接続のドッキングステーション(ドック)がある。USBポートのほかHDMIなどの映像出力端子、カードリーダ、LANポートなどを搭載し、ノートPCとケーブル1本でのやり取りを可能にした、USBハブの高機能版とでも呼ぶべき製品だ。
この背景にはUSB Type-Cの普及がある。さまざまな周辺機器を接続したドッキングステーションを、1本のUSB Type-CケーブルでノートPCと接続しておき、外出する際にまとめて取り外すといった使い方ができるのは、データ転送や映像信号の伝送、さらには給電も対応するUSB Type-Cならではだ。
さて、そんなUSB Type-C接続のドッキングステーションの中で、ワンランク上の製品となるが、「Thunderbolt 4」に対応したドッキングステーションだ。
もっとも、 USBとThunderboltの関係性の分かりづらさとも相まって、ドッキングステーションがThunderbolt 4対応だとどんなメリットがあるのか、USB4と何が違うのかなど、ピンと来ない人も多いのではないだろうか。
本稿ではこれらの違いを紹介するとともに、現行のThunderbolt 4対応ドッキングステーションの中で、おすすめの製品を紹介していく。
なお本稿では細かい技術的な解説を避け、なるべく分かりやすい説明を心がけているため、USB PDの新規格「USB PD EPR」など、例外を省いている場合もあることを、あらかじめご了承いただきたい。
Thunderbolt 4は仕様が統一されている
まずは現行のUSB規格の中で最上位となる「USB4」と「Thunderbolt 4」の違いをざっと見ていこう。
USB4もThunderbolt 4も、用いられている端子の形状はUSB Type-Cで共通している。 しかし、USB4は転送速度が20Gbpsもしくは40Gbps、USB PDでの給電は60Wもしくは100Wと、同じUSB4の中でもスペックに開きがあり、ケーブルごとに仕様が異なる。またモニターの接続台数は4K×1台のみとなっている。
これに対して、Thunderbolt 4は転送速度は40Gbps、100Wの電力供給もサポートするほか、モニターは4K×2台(もしくは8K×1台)まで接続できるなど、仕様にブレがない。Thunderbolt 4準拠のケーブルは仕様がすべて共通なので、USB4ケーブルのように、40Gbpsに対応していると思っていたら実は20Gbps止まりの製品で、データ転送時にボトルネックになるといった問題は起こらない。
こうしたことから、USB Type-Cポートを使ってデータ転送や映像信号の伝送、さらには給電を行なうにあたり、 とりあえずThunderbolt 4対応ケーブルを使っておけば、ケーブルがボトルネックになる可能性はまずない。 Thunderbolt 4ケーブルで接続してうまく動作しなければ、それはケーブル側ではなく周辺機器側の問題であると考えられるからだ。
それならば、世の中のあらゆるUSB Type-CケーブルをThunderbolt 4対応にしてしまえば、このUSB Type-C周りの分かりにくい状況を一掃できるのでは……と思ってしまうが、いかんせんThunderbolt 4ケーブルは高品質なぶんコストが高い。
また品質が高いぶんケーブルの外皮が硬く、気軽な取り回しが難しいものがあったりするといった事情がある。トラブルシューティング用に持っておいて損はないが、USB Type-CケーブルすべてをThunderbolt 4対応に置き換えるのは現実的ではないというわけだ。
Thunderbolt 4搭載ドッキングステーションの利点とは?
さて冒頭でも述べたように、最近はこのThunderbolt 4を搭載したドッキングステーションが増えつつある。見た目はUSB Type-C搭載のドッキングステーションと変わらないが、一部のUSB Type-CポートがThunderbolt 4に対応していることが特徴だ。
単にUSB Type-Cでつなぐだけのドッキングステーションは、給電能力や転送速度は製品によってバラバラだが、Thunderbolt 4を搭載していれば、少なくともそれらのポートは給電は100W、データ通信速度は40Gbps、また映像出力は4Kモニター2台(もしくは8Kモニター1台)に対応可能だ。ハイエンドな環境が要求される場合に最適と言える。
ちなみにドッキングステーションには、Thunderbolt 4の1つ前のバージョンであるThunderbolt 3(コネクタは同じUSB Type-C形状)を搭載したモデルも存在しているが、Thunderbolt 4はポートの分岐に対応するのが大きな違いだ。PCに搭載されるThunderboltポートの数は限られているので、それらを増やせるハブ機能が使えるのは、分岐に対応しないThunderbolt 3と比べた場合の大きな強みだ。
ただしThunderbolt 4ポートは、映像出力は前述のように4Kモニター2台までの対応となるため、Thunderbolt 4ポートだけで3台以上のモニターを接続することはできない。
そのため市販のThunderbolt 4ドッキングステーションには、別途HDMIポートやDisplayPortを搭載することで、3台以上のモニターの接続をサポートする製品が多い。
以上をまとめると、Thunderbolt 4搭載のドッキングステーションは、USB Type-C接続のドッキングステーションの中でも最上位にあたる製品で、特にPC側がThunderbolt 4に対応していれば、積極的に選ぶべきと言える。
かつてのThunderbolt 3は仕様が曖昧で「Thunderbolt 3に対応していれば安心」とは言いづらかったが、Thunderbolt 4は仕様がはっきりしているぶん扱いやすさは格段に上だ。
ただし仕様としては最上位であり、かつさまざまなポートを搭載した製品はそれだけ高価なので、PCがThunderboltに対応しない場合などは、一般的なUSB Type-C接続のドッキングステーションを選ぶ手もある。
最大40GbpsのThunderbolt 4やUSB4に対して、USB Type-C接続のドッキングステーションに採用されることの多いUSB 3.x系(USB 3.0やUSB 3.1等)はもっとも遅い場合で5Gbps、もっとも高速でも20Gbpsにとどまるが、転送速度にあまりこだわりがなければ十分だろう。DisplayPort Alt ModeによるUSB Type-Cでのモニターの接続を行なわないならばなおさらだ。
なお、USB 3.x系の表記は「Gen 2」といった世代が使われたりと、メーカーによって表し方が異なる。これについては以下の関連記事で解説しているので、「USB 3.0」と「USB 3.2 Gen 1」の表記の違いがよく分からないなどという人は確認してほしい。
Thunderbolt 4対応ドッキングステーションおすすめ5製品を紹介
ここからは、現在販売されているThunderbolt 4対応の多機能ドッキングステーションのおすすめ製品を紹介していく。それぞれのポートの構成を見ると、ダウンストリーム側のThunderbolt 4ポートが複数ある=ハブ機能を有するモデルと、そうでないモデルとにはっきり分かれていることが見て取れる。製品選びのポイントの1つはここだろう。
もう1つ注意したいのは、現行のThunderbolt 4対応ドッキングステーションの中には、M1 ProやM1 MaxといったAppleシリコン搭載Macに非対応の製品があることだ。
現在非対応でもファームアップデートで新たに対応を果たす場合もあるので、このあとの各製品の紹介では対応可否は触れていないが、該当のMac環境で利用する場合は必ずメーカーサイトをチェックしてほしい。
また同様に、Thunderbolt 4対応でありながら、Thunderbolt 3環境での利用に対応していなかったり、非推奨とされている製品もある。かなりのレアケースだが、Thunderbolt 3対応のPCを買い替えることなくThunderbolt 4対応のドッキングステーションと組み合わせて使う場合は、こちらの対応可否も確認しておくことをおすすめする。
CalDigit TS4
合計18ものポートを搭載する、現行のThunderbolt 4ドッキングステーションの中でも最上位にあたるモデル。前面と背面に2系統のオーディオ入出力を搭載するほか、メモリカードスロットはSDとmicroSDで独立。さらに有線LANポートは2.5GbEに対応するなどハイエンドな仕様を採用する。縦置きに対応するのも他製品にない特徴だ。ただし実売価格は5万円台後半と高め。保証期間は2年。
Belkin CONNECT Pro 12-in-1 Thunderbolt 4 Dock(INC006qcSGY)
合計12ポートを搭載するモデル。Thunderbolt 4のダウンストリームポートは1基のみとハブ機能は搭載しないが、HDMIポートを2基搭載し、最大3台のモニターを接続できる。またUSB Type-Cポート(Thunderbolt非対応)が2基、USB Type-Aポートが5基と、USBポートの多さは今回紹介している製品の中でも多い部類に入る。知名度は高いモデルだが、Amazonのレビューでは表示回りの不安定さを指摘する声が複数見られるのがやや気がかり。
OWC Thunderbolt Dock
合計11ポートを搭載するモデル。Thunderbolt 4のダウンストリームポートを3基搭載するなど、ハブとしての性格が強い製品。一方でHDMIやDisplayPortなど映像出力系の専用ポートは搭載しないことから、モニターはThunderbolt 4で接続することになる。後述するRazer Thunderbolt 4 Chroma ドックとポート配置が酷似しているが、本製品のほうがUSB Type-Aポートが1つ多い。保証期間は2年。
Razer Thunderbolt 4 Chroma ドック
合計10ポートを搭載するモデル。Thunderbolt 4のダウンストリームポートを3基搭載した、ハブとしての性格が強い製品。一方でHDMIやDisplayPortは搭載しておらず、モニターはThunderbolt 4のダウンストリームポートに接続する必要がある。ブラックボディの「Chroma」のほか、ホワイトボディのMac用モデル「MERCURY」もラインナップする。保証期間は1年。