レビュー
評判の最上級ドック「CalDigit TS4」を使ってみた。全18ポートで動作もド安定
2023年7月26日 06:15
CalDigitの「Thunderbolt Station 4(TS4)」は、Thunderbolt 4に対応した多機能ドッキングステーションだ。合計18ものポートを搭載するほか、有線LANポートは2.5GbEに対応するなど、現行のThunderbolt 4対応のドッキングステーションとしては最上位と言っていい製品だ。
国内外で中~上級者を中心に根強い人気を誇るこの製品、国内代理店から実機を借用したので、筆者の私物であるThinkPad Thunderbolt 3 ドックなどとも比較しつつ、試用レポートをお届けする。
全部で18ものポートを搭載。有線LANは2.5GbEに対応
本製品は、Thunderbolt 4に対応したドッキングステーションだ。2つのダウンストリームポートを搭載し、PCのThunderbolt 4ポートを2つに分配できる。速度はいずれもThunderbolt 4の最大転送速度である40Gbpsに対応している。
さらに最大出力20Wに対応したUSB Type-Cポートを1つ(前面)、7.5Wに対応したUSB Type-Cポートを2つ(前面/背面)、USB Aポートを5つ(前面1/背面4)を搭載している。
いずれも10Gbpsに対応しており、Thunderbolt 4対応ポートほどではないもののデータを高速に転送できる。また一部のポートはオフライン充電にも対応している。
このほかモニター接続用にDisplayPort 1.4ポートを備えるほか、有線LANは2.5GbEに対応。多くのドッキングステーションは1Gbps止まりなので、本製品の優位性の1つと言える。
さらにメモリカードスロットやオーディオジャックも搭載しており、ポート数の合計は18にもおよぶ。オーディオジャックは前面と背面の両方にあり選択できるのがおもしろい。
付属のACアダプタは230Wと大容量で、Thunderbolt 4ポートに接続したホストデバイスに最大98Wの電力供給が行なえるなどパワフルだ。現行のThunderbolt 4対応のドッキングステーションの中では、最上位にあたる製品の1つと言っていい。
ボディは紙の辞書に似た形状およびサイズで、筆者がふだん使用しているThinkPad Thunderbolt 3 ドックに比べると、横幅がコンパクトなのが目立つ。横幅を取りがちなHDMIポートがなく、DisplayPortも1基のみと最小限に絞ったことによるものだろう。
ちなみに本体の向きは縦置きが前提となっており、底面に当たる側には滑り止めのラバーも貼られている。もっとも安定性を重視するならば縦ではなく横向きに置くことがほとんどのはずで、パッケージには横置きで設置するための滑り止めの脚も付属している。
全ポート10Gbps対応。ホストデバイスは最大98Wで充電可能
さて実際に使ってみよう。今回は筆者が普段使用しているThinkPad Thunderbolt 3 ドックとの交換で、筆者の作業環境に本製品を導入してみた。
海外での本製品のレビューはそのほとんどがMacと組み合わせたものだが、今回はWindows環境での試用となる。組み合わせるノートPCは、Thunderbolt 4に対応したレノボのThinkPad X1 Carbon Gen 9だ。
まずはストレージ。USB 3.2 Gen 2x2に対応したキングストンのポータブルSSD「XS2000」を接続して転送速度を測定したところ、PC直結であればリード約1,060MB/s、ライト約990MB/sのところ、本製品経由ではリード約970MB/s、ライト約680MB/sという結果になった。PC直結で読み書きするのと比べて、ライトはともかく、リードは1割程度しか差がないのは優秀だ。
ちなみに競合となるドッキングステーションでは、10Gbps対応のポートを備える一方で、ほかのポートはUSB 2.0にしか対応しない場合もある。本製品はすべてのポートが10Gbps以上なので、うっかり低速なポートにつないでしまうというミスが起こり得ない。
また本製品はノートPCをUSB PDで最大98W(20V/4.9A)で充電できる。実際に試したところ、ノートPC側から98WのUSB Type-C電源として認識されていることが確認できた。また前面のUSB Type-Cポートのうち1基は20Wの出力に対応しており、スマホなどの充電に活用できる。
ちなみにネットの口コミを見る限り、発熱量はそこそこあるようなことが書かれているが、サーモカメラで測定した限りは、通常利用時は40℃を超えることはないようだ。
USB PD充電器だと、急速充電時は60℃を超えるほど温度が上がったりもするが、それらとは次元が違う。放熱を重視したデザインおよびアルミ素材のボディが功を奏しているのだと考えられる。
なお本製品は横向きに利用することもできるが、もし熱暴走が原因と考えられる不具合が発生したら、放熱の面積を確保できるよう、縦置きにして様子を見るというのは1つの手だろう。
また横置きで使用する場合でも、上に物を置くなどして放熱を妨げることがないよう注意したい。
最大2台のモニターを接続可能。安定性は高い
さて、こうしたドッキングステーションを利用する動機の1つに、複数の外付けモニターを接続できることが挙げられる。本製品とPCの間はケーブル1本で接続できるので、抜き差しも容易で、ノートPCを頻繁に取り外して外に持ち出すような用途には最適だろう。
接続可能な台数は、4K×2台もしくは8K×1台。M1 ProおよびM1 Maxの場合は6K×2台にも対応する。これらは背面にあるDisplayPort×1、およびThunderbolt 4対応のUSB Type-Cポート×2の合計3ポートのいずれかに接続する形になる。
ポートが3つあるのならばモニターを3台接続できるのでは? と思うかもしれないが、3ポートすべてにモニターを接続しても、実際に出力されるのは2台のみ。2台のどちらかを外すと残る1台が認識されるといった具合に、常時2台までに限定される。
最近のドッキングステーションの中には、HDMI×2とThunderbolt 4ないしはDisplayPortの併用で計3台のモニターへの同時出力に対応する製品もあるが(筆者が普段使っているThinkPad Thunderbolt 3 ドックもそうだ)、本製品はそれにはおよばないことになる。デバイスによる対応の可否は細かすぎて本稿では紹介しきれないので、同社サイトなどを参照してほしい。
その一方で、本製品はこれら表示まわりの安定性が大きな強みだ。こうしたドッキングステーションでは、複数のモニターをつなぐことで、モニターが不規則に明滅を繰り返したり、スリープから復帰した際に認識されないといった不具合が起こりやすい。
仮にそうした不具合が起こった場合、さしあたって本体を再起動するのが王道だが、ポート数がこれだけ多いと、ほかのデバイスにも影響がおよびがちで、特にストレージを接続している場合は慎重に行なう必要がある。
しかし本製品は、今回の試用期間中はそうした症状は一切発生せず、結果的に再起動も必要なかった。信頼性はかなり高いと見てよさそうだ。
その背景には、電源が230W対応と余裕があること、またモニター専用ポートがDisplayPortのみで、不安定さの原因になりがちなHDMIを排除していることが影響していると考えられる。
所有しているドッキングステーションが不安定で困っている人にとっては、買い替えにあたっての有力な候補となるだろう。
高価ながら長く使える製品。保証期間が2年と長め
以上のように、ほかに一切のハブや充電器がいらないほどの多数のポートを搭載していながら、高い安定性を誇るのが本製品の大きなメリットだ。
このあたりはほぼ同じ筐体デザインのままモデルチェンジを繰り返してきているだけのことはある。保証期間が2年と長めなのもよい。
実売価格は5万8,300円と、ちょっとしたPC並だが、2.5GbE LANに対応するなど、「どうせ今買うのならば」というポイントをしっかり押さえており、長く使えることは間違いない。
どうしても3台の外部モニターにつなげたい場合や、HDMI接続が必須といった特殊なケース、また携帯性を重視するケースを除けば、投資するだけの価値は十分にある一品だ。