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人気のスティック型SSD、4種類を検証。高速なUSB 3.1タイプの実力は?

4種類のスティック型SSDの特徴をチェックしてみた

 近年、性能の高さと小型であるという使い勝手のよさから再び注目を集めているのが、USB接続のスティック型SSDだ。昨今のPCの内蔵ストレージでよく採用されている高速/大容量のSSDをコンパクトなスティック型に収めることで、データの交換や一時保存に限らずさまざまな用途に活用できるようになった。

 今回はそんなスティック型SSDのうち、最大10Gbpsのデータ転送速度を誇るUSB 3.1(現USB 3.2 Gen 2、USB規格の表記方法についてはこちらの記事を参照)に対応した4製品をピックアップし、それぞれどんな特徴を持っているのかチェックしてみた。どれも高速であることには変わりないが、使い勝手やプラスアルファの要素でそれぞれに個性があるようだ。

従来型USBストレージにないスティック型SSDの利点とは

 データの一時保管や交換に便利で、気軽に持ち運べる小さなサイズが利点のUSBメモリ。それに対し、大容量データのバックアップに都合のいいUSB接続の外付けHDD、という棲み分けが以前の常識だったかもしれない。

 ところが、大容量のメモリチップをコンパクトに集積したSSDを採用し、USBメモリとHDDのそれぞれの長所を兼ね備えたスティック型SSDが、そんな区別を過去のものにしようとしている。

従来型のUSBメモリと外付けHDD。HDDはケーブルがかさばり、場合によっては別途電源を確保しなければならないという問題もあった

 スティック型SSDは、小容量でも250GB、大容量モデルになると1TB、2TBなどTBクラスのものもある。インターフェイスとしても、最近多くのPCに搭載されているUSB 3.1に対応する製品がラインナップされるようになり、最大転送速度10Gbpsの性能を生かした高速なデータアクセスが可能だ。駆動部品を使わないため静音性に優れ、消費電力も少なくバスパワーで動作するといった点も特長と言えるだろう。

 身近な人とのデータ交換から、大容量データのバックアップ/持ち運びまでカバーするスティック型SSDだが、その特性を有効活用できる用途として、PC内蔵ストレージ残量が少ない環境における作業用領域や、ゲームデータの格納場所なども考えられる。また、TVの録画用ストレージとして利用することもでき、何より動作音がないことが従来の録画用HDDと比べたときの大きなメリットになる。

 機能面や性能面ではいいことずくめのスティック型SSD。しかしながら、価格面ではまだHDDほどの優位性がないのも実際のところだ。容量1TBのスティック型SSDは2022年6月現在、1万5,000円前後が相場。一方で外付けHDDであれば1万3,000円で6TB容量のものが買えてしまう。扱うデータがとにかく大きい場合においては、まだHDDのコストパフォーマンスの高さには勝てない。

 とは言え、1TBもあればほとんどのユースケースをまかなえることも確か。そんなわけで今回は、数あるスティック型SSDのうち、USB 3.1対応で容量1TB以上がラインナップにある4製品をピックアップした。それぞれの実性能と使い勝手を見てみよう。

左から、アイ・オー・データ機器、エレコム、サンワサプライ、バッファローの製品となる
今回紹介する4製品のサイズ感比較。小ささはアイ・オー・データ機器製とエレコム製が際立つ

 なお、各製品のベンチマークテストは、マウスコンピューターのゲーミングノートPC「G-Tune H5」を使用した。第11世代Core i7-11800Hを搭載し、メモリは16GB、ディスクリートGPUとしてGeForce RTX 3070を奢っている。外付けストレージのデータ転送においてボトルネックとなる隙がないハイスペックモデルだ。念のため、性能を最大限に引き出すため動作モードを「パフォーマンスモード」にしたうえで、「ターボモード」もオンにしている。

ベンチマークに使用したのはマウスコンピューターの
ゲーミングノートPC「G-Tune H5
左側面にあるポートがUSB 3.1に対応している
ゲーミングノートらしいキーボードバックライトのイルミネーション
GPUはNVIDIA RTX 3070で、本格3Dゲームも余裕でドライブする
スティック型SSDのベンチマークにあたっては「パフォーマンスモード」にしたうえで「ターボモード」をオンに

最小・最軽量なのに高耐久
アイ・オー・データ機器「SSPC-USシリーズ」

アイ・オー・データ機器「SSPC-US1K
実売価格:1万5,480円前後(1TBモデル)

 アイ・オー・データ機器の「SSPC-USシリーズ」は、ツヤのあるブラックボディの極軽量なスティック型SSDだ。重さは約10g(実測9.5g)で、コネクタ収納時のサイズも約24×59×8mm(幅×奥行き×高さ)と今回紹介する中では最軽量、最小クラス。サイドにあるツマミを操作して端子部を出し入れするスライド式の構造となっている。

重さ、大きさは最軽量、最小クラスだが、MILスペックに準拠した耐衝撃性能を持つ
端子部を収納した状態
スライド操作で端子部を出した状態

 細く、薄く、軽いながらも、米国防総省の物資調達基準となる、いわゆるMILスペック(MIL-STD-810H 516.8 Procedure IV)に準拠した耐衝撃性能も兼ね備える。もともとSSDは構造上衝撃に強いとされるが、そのうえで信頼性の高い規格にも準拠していることで、持ち運び時の安心感はより高まるだろう。ベンチマークテストでは、シーケンシャルアクセスが600MB/s超、ランダムアクセスも200MB/s前後と上々だった。

ノートPCに接続したときの様子
TVの録画用USBポートに接続したときの様子
CrystalDiskMarkの結果

 本製品向けには、Windows専用のバックアップツール「Sync Connect+」と、安全にデータを消去して復元困難にする「DiskRefresher4 SE」というソフトがダウンロード提供されている。有償のデータ復旧サービスも利用できるなど、万一のトラブル時に心強いサポートがあるのもうれしいところだ。

 容量は250GB/500GB/1TBの3種。1TBモデルの実売価格は1万5,480円前後。

より簡単に扱えるノック式
エレコム「ESD-EPKシリーズ」

エレコム「ESD-EPK1000GWH
実売価格:1万5,000円前後(1TBモデル)

 エレコムの「ESD-EPKシリーズ」は、ホワイト、ブラック、レッドの3つのカラーバリエーションから選べるスティック型SSD。今回の4種類の中では唯一、ノック式の操作方法を採用している。後端側を押し込むことで端子部を出し入れする仕組みで、わずかな指先の力で簡単に扱えるのはスライド式にはない特徴だ。力加減を誤りにくいという意味では、破損のしにくさにつながる可能性もある。

ノック式のため、端子部を出したとき、その分後端も本体内に入り込むため、さらに小さく感じられる
端子部を収納した状態
ノック操作で端子部を出した状態

 重さは約11g(実測9.8g)、コネクタ収納時のサイズは約20×57.7×10.5mm(同)で、アイ・オー・データ機器の製品と同等に最軽量、最小クラス。ベンチマークテストは、こちらもシーケンシャルアクセス600MB/s超、ランダムアクセス200MB/s前後で、申し分のない性能となっている。

ノートPCに接続したときの様子
TVの録画用USBポートに接続したときの様子
CrystalDiskMarkの結果

 本製品向けにはWindows/macOS用のセキュリティソフト「PASS」が提供されている。あらかじめ登録したPCで使う場合はパスワードなしで利用でき、それ以外の環境ではパスワード入力が求められるという、セキュリティと日常の使い勝手を両立させるツールだ。

 容量は250GB/500GB/1TBの3種、カラー3パターンの計9バリエーション。1TBモデルの実売価格は1万5,000円前後。

金属筐体で使い心地良好
サンワサプライ「600-USSDシリーズ」

サンワサプライ「600-USSD1TBS
実売価格:1万7,800円前後(1TBモデル)

 サンワサプライの「600-USSDシリーズ」は、シルバーボディが高級感を醸し出すスティック型SSD。外観の大部分は頑丈そうなマット感のある金属に覆われ、天面にある端子部出し入れ用のスライドツマミの操作感もしっとりしたもの。コネクタ収納時で約22.1×67.5×8.7mm(同)という細長いシルエットと、ひんやりとした触感もあいまって、プラスチック筐体にはない使い心地のよさを感じられる。

ひんやりとした肌触りがいい金属ボディ
端子部を収納した状態
スライド操作で端子部を出した状態

 しかし、それが重量に影響しているのか、約15g(実測15.4g)とやや重め。といっても、もともとが軽量なスティック型SSDなので、使い勝手に影響するほどのものではないだろう。ベンチマークテストでは、ほかと比べるとやや振るわず、シーケンシャルアクセスは450~550MB/s、ランダムアクセスは100MB/s前後となった。

 容量は256GB/512GB/1TBの3種。1TBモデルの実売価格は1万7,800円前後。

ノートPCに接続したときの様子
TVの録画用USBポートに接続したときの様子
CrystalDiskMarkの結果

Macユーザーも使いやすく、サポート充実
バッファロー「SSD-SCTU3Aシリーズ」

バッファロー「SSD-SCT2.0U3-BA
実売価格:1万4,750円前後(1TBモデル)。なお、この製品のみ2TBモデルでテストした

 バッファローの「SSD-SCTU3Aシリーズ」は、最大2TB容量のモデルをラインナップするスティック型SSD。ほかよりやや大きめの筐体となっており、重さは約17g(実測13.9g)、コネクタ収納時のサイズは約23×68.2×11mm(同)。サイドの赤いツマミで端子部を出し入れするスライド式で、「MIL-STD-810G 516.6 procedure IV」に準拠する高い耐衝撃性能も備える。

ほかよりは少し大きめに感じるボディ
端子部を収納した状態
スライド操作で端子部を出した状態

 今回紹介する4種類すべてがUSB Type-A端子となっているが、本製品はUSB Type-Cポートでも使えるように変換アダプタが付属している。USB Type-Cポートしか持たないMacBookなどでも利用しやすい親切設計だ。ベンチマークテストでは、シーケンシャルアクセス600MB/s超、ランダムアクセス200MB/s前後と、高いスコアを記録した。

USB Type-A to Type-Cアダプタが付属するのは親切
ノートPCに接続したときの様子
TVの録画用USBポートに接続したときの様子
CrystalDiskMarkの結果

 周辺ツール、サポート面の充実度も本製品の特徴と言える。Windows向けにファイルを暗号化して保管し、パスワードロックをかけられる「SecureLock Mobile2」というソフトや、フォーマットツールの「DiskFormatter2」、データ消去して復元を困難にする「データ消去ユーティリティー」がダウンロード提供されている。

 さらには保証期間内における軽度の論理障害であれば無償でデータ復旧してくれる「バッファロー正規データ復旧サービス」も用意。ビジネスシーンでも安心して使えるに違いない。

 容量は500GB/1TB/2TBの3種。1TBモデルの実売価格は1万4,750円前後。

性能は大差なし、自分好みの見た目と使い勝手で選ぼう

 どの製品も実用上は十分な性能を持ち、幅広い用途で活用できることに変わりはないが、デザインやわずかなサイズの違い、操作/構造の差などから、使い勝手としては異なるところがある。このあたりは見た目の好みとあわせて、人によって感じ方は変わってくるところだろう。

 そのため、スティック型SSDとしてどれが一番優れているかは決めがたい。しかしそれぞれの特徴から、可能な限りの小ささ/軽さを重視するか、デザイン性を取るか、耐衝撃性能の高さにメリットを見い出すか、といったような注目ポイントはあり、それらと自分の想定利用シーンを考えあわせて選択することはできそうだ。

 なお、いずれの製品についてもベンチマークテスト中に本体温度が極端に上昇するようなことはなかった。せいぜい指で触れたときにほんのり温かく感じることがあった、という程度で、高温による性能低下や故障は気にすることなく安心して使い続けられるはず。データ交換に、バックアップに、あるいはTV録画に、大いに活用していきたい。