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折りたためるパソコンやゲームもできるモバイルノートなど期待大の製品が目白押しなこの年末

 コロナ禍でさまざまな事業が影響をうけるなか、パソコンについては比較的順調に新製品が続々と発表・投入されている。例年、年末に発売される製品は、各社のフラグシップであることが多いが、2020年末はいつにも増して、期待がかかる製品が多く投入される見込みだ。

ThinkPad X1 Nano、XPS 13、Swift 5など特色豊かなノートが登場

Lenovo「ThinkPad X1 Nano」

 Lenovoが9月29日に発表したのが「ThinkPad X1 Nano」だ。ThinkPad X1 Nanoは、ThinkPadのフラグシップモデルであるX1シリーズのクラムシェル型ノートとして、最軽量となる907gを実現している。これまで他社製品と比べると、やや重かったThinkPadのモバイル製品として、注目が集まっている。この他にも、Lenovoからは2in1型となる「Yoga 9i」も発表されている。

Dell「XPS 13」
Dell「XPS 13 2-in-1」

 Dellの「XPS 13(モデル 9310)/XPS 13 2-in-1(モデル9310 2n1)」は、最近ではめずらしい16:10のアスペクト比のディスプレイ(3,840×2,400ドットないしは1,920×1,200ドット)を採用し、画面占有率が91.5%(XPS 13)に達するという4面狭額縁が印象的な製品。また、最大32GBのメモリ、最大2TBのPCIe SSD(2-in-1は1TB)という点も特徴だ。

 Acerの「Swift 5」は、外付GPUを搭載しながら1kgを切った高性能モバイルノート。14型のフルHD(1,920×1,080ドット)のディスプレイを採用して、メモリ最大16GB、ストレージは最大1TB(PCIe SSD)というスペック。

Acer「Swift 5」

 これらの新製品は、性能や機能性が拡張されたのに加え、バッテリ駆動時間が延びているのも大きな特徴と言える。ThinkPad X1 Nanoでは48Whというバッテリで17.3時間のバッテリ駆動が可能になっている。LenovoではMobileMark 2014という、日本のJEITA 2.0よりも負荷が重いテストで駆動時間を計測しており、実利用でもこれに近い時間を、充電なしで使えるものと思われる。

 このほか、新規格となるThunderbolt 4/USB4に対応したUSB Type-Cポートも搭載。現行のThunderbolt 3でも、外部GPUボックスを使ってノートパソコンのグラフィックス性能を向上できるが、今後Thunderbolt 4対応のものが登場すれば、GPUの潜在能力をさらに引き出し、モバイルノートで高性能デスクトップと遜色ない性能も実現できる。

全方向で強化された第11世代Coreを搭載

 ここで紹介した製品には共通する特徴がある。それは、第11世代Coreプロセッサ(コードネーム:Tigerlake)を採用している点だ。

TigerlakeことIntel第11世代Coreプロセッサ
Tigerlakeの概要

 Tigerlakeでは、Willow Coveと呼ばれる新規開発されたCPUコアを採用。キャッシュ階層が大きく変更され、L2キャッシュがCPUあたり512KBから1.25MBに、L3キャッシュがCPU全体で8MBから12MBへと増やされており、CPUの性能向上に大きく貢献している。

新設計のCPUコアを採用

 GPUやNPUも強化されている。

 GPUは、Intelが新しく開発したXe(エックスイー)と呼ばれる、スーパーコンピュータやゲーミングパソコン向けにも応用可能なものへと進化。第11世代Coreに内蔵されているのはその低消費電力版(Xe-LP)で、第10世代Coreの内蔵GPUだった「Gen 11 GPU」と比較して、実行ユニットの数が1.5倍になっており、アーキテクチャの観点からも実行ユニットの増加という観点からも、性能の向上が期待できる。

GPUも新開発のXeへ刷新

 NPUについては、第10世代でも搭載されていたGaussian & Neural Accelerator(以下、GNA)が強化されている。GNAは低消費電力でAIの処理を行なうアクセラレータで、おもに音声認識のような、長くCPUに負荷をかけるような処理を代替する。第11世代CoreではGNAが第2世代になり、処理能力がさらに向上している。

AIアクセラレータとなるGNAも2.0へ進化

 加えて、I/O周りも強化されている。PCI Express Gen 4への対応が加わり、より高速なSSDを利用できる。現行のPCI Express Gen 3のSSDも高速だが、じつは動画のエンコードなどの処理ではSSDがボトルネックとなることもある。より高速なSSDにより、ボトルネックが解消されることで、クリエイティブ系アプリケーションや、ゲーム、そしてOS自体のレスポンスも増す。

I/O周りも強化

 前述のとおり、Thunderbolt 4にも対応。Thunderbolt 4は、USB4の上位互換となるI/O技術で、第11世代CoreはUSB4にも標準で対応している。

 こうした第11世代Coreの新しい技術を支えているのが製造技術で、第11世代Coreは、Intel 10nmとして第2世代の製造技術となる10nm SuperFinで製造される。10nm SuperFinでは、同じ10nmでも前世代から18%程度性能が向上。同じ動作周波数であれば第10世代Coreよりも消費電力を低くすることが可能だ。

AAAタイトルが内蔵GPUだけの薄型ノートパソコンでプレイできるようになる

 このように全面的に強化された第11世代Coreだが、ユーザーはどのような恩恵を受けられるのだろうか?

 まず、GPUの性能向上により、「AAAタイトル」と呼ばれる最新技術が採用された3Dゲームが、先に紹介したモバイル製品でもプレイできるようになる。第11世代Coreに内蔵されている「Iris Xe Graphics」は、従来の外付GPUのローエンド版に匹敵する性能を備えている。Intelが公開したベンチマークの結果によると、AAAタイトルで30fpsのフレームレートを実現し、タイトルによっては60fpsでプレイできる。

従来のGPUとIris Xe Graphicsのゲーム性能比較
Iris Xe Graphicsのゲーム性能

 プロゲーマーなどがプレイするにはやや力不足だが、従来の薄型ノートではAAAタイトルはほぼプレイ不可能だったことを考えれば、カジュアルにゲームしたいユーザーには大歓迎だろう。

 ゲームだけではない。このコロナ禍において多くのビジネスユーザーに利用されているZoomやTeamsなどのビデオ会議ソフトは、CPUに大きな負荷をかける。ビデオ会議ではそれらのソフトに加え、プレゼンテーションソフトや、ブラウザなども同時に使うため、CPUの負荷はさらに高まる。CPUの性能が足りないと、ビデオの品質やフレームレートが低下し、コミュニケーションに影響が出てしまう。

 また、ビデオ会議ソフトでは、GPUやNPUを活用し、背景を消したり、音声のノイズ除去を行なったりする機能が追加されつつある。ここでも、高性能なGPUや、NPUの搭載がCPUの負荷低減に役立つ。

 ビデオ会議ソフト以外でも、Adobe Photoshop CCなどもGPU/NPUへの対応/最適化を進めており、さまざまな分野で第11世代Coreプロセッサの恩恵が受けられるようになる。

AdobeのPhotoshopや各種配信系アプリなども第11世代Coreの恩恵を受けられる

ThinkPad X1 FoldなどLakefieldを採用した革新的製品も

 6月にIntelが発表した「インテルハイブリッドテクノロジー搭載インテルCoreプロセッサー」(コードネーム:Lakefield)は、Coreという名前はついているが、通常のノート向けCoreとは大きく異なる特徴を備えている。

赤丸で囲んだ部分がLakefieldことインテルハイブリッドテクノロジー搭載インテルCoreプロセッサー

 Intel CPUは大きく言って、性能と消費電力のバランスに配慮したCoreと、低消費電力に注力したAtomの2種類が用意されていた。これに対し、Lakefieldは、その両方のCPUが内蔵され、状況に応じて切り替えられる。

 アプリケーションの起動のような、瞬間的に高い処理能力が必要な場合にはCoreベースのCPU(1コア)が有効になり、アイドル時などはAtomベースのCPU(4コア)に切り替わって動作する。また、Lakefieldは、IntelがFoveros(フォベロス)と呼んでいる3D実装技術が採用され、基板に必要なスペースを大きく削減できる。

 これによりLakefield搭載機では、一定の性能、超低消費電力、そして超小型基板を同時に実現しており、従来のCPUではカバーできなかった新しい使い方が可能になっている。

 その代表例が、Lenovoが発表した「ThinkPad X1 Fold」だ。日本でも10月から販売が開始されるThinkPad X1 Foldは折り曲げ可能な13.3型のOLEDパネルを採用しており、折りたたんで鞄に入れて持ち運べるようになっている。付属するキーボードを利用することで、クラムシェルノートのように使うことも可能で、これまでにない新しいパソコンの使い方が生まれる。

Lenovo「ThinkPad X1 Fold」

 また、発売は2021年に延期されてしまったが、Microsoftの2画面端末「Surface Neo」もこのLakefieldを搭載している。MicrosoftはWindows 10Xという2画面に特化した新しいOSも来年に予定しており、今後同様の製品は増えることになるだろう。

Microsoft「Surface Neo」

さらに幅が広がるこれからのパソコン

 このように、Intelの新プラットフォームを採用した製品は、これまでのように、単純に性能を伸ばしたりするだけではなく、パソコンの新しい使い方をもたらすものだ。モバイルノートは、営業マンが持ち歩いてオフィスアプリを使うだけといった時代は終わり、それ1台でビジネスからゲーム、クリエイティブにまで活用の幅が広がる。メーカーが想定しないような使い方をするユーザーも現われることだろう。

 こういった製品が登場する年末から年明けにかけて、パソコン新製品から目が離せない状況が続きそうだ。

[制作協力:インテル]