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HDDとオンラインストレージ、勘定科目はどう違う?

税理士に聞く、PCまわりのマニアックすぎる確定申告ガイド(第2回)

若原税理士事務所 若原秀光税理士

 自力で記帳を始めた人が最初に行き当たる壁の1つが勘定科目の選び方だ。最近はクラウド系の会計ソフトで、勘定科目をまったく知らなくても適切な候補を提示してくれる場合もあり、勘定科目の種類や借方/貸方の違いで悩むことは減ったが、それでも判断に困るケースは少なからずある。

 とくにPC周りに関しては、新機軸の製品やサービスが日進月歩で登場することから、勘定科目で迷うケースは多い。例えばオンラインストレージのようにサービスとストレージの両方の性格を持っているものは、通信費なのか、はたまた消耗品費なのかと、判断がつきにくい。

 今回は、PCまわりを中心に、あまり既存の書籍やネットの情報では出ていないマニアックな勘定科目周りの考え方について、前回と同じく若原税理士事務所の若原秀光税理士に伺った。「この場合の勘定科目はこれ」という早引きとは異なり、グレーな結論となっている場合もあるが、なぜそうなるのかは読めば理解してもらえるはずだ。経理処理にまつわる考え方をより深く知って理解する一助となれば幸いだ。

勘定科目、じつはあまり気にしなくてない?

──今回は勘定科目について教えていただきたいんですが、記帳する際の勘定科目というのは、そもそもどのくらい気にする必要があるのでしょうか。金額が間違っていなければ、それほどこだわらなくとも構わないものなんでしょうか。

若原:そうですね、対税務署の決算書という話と、経営管理用とで違ってきますね。税務署は何年か分の決算書を分析して調査対象を選択しているので、勘定科目が毎年コロコロ変わってしまうと、今年は消耗品費とか交際費が増加したとか、原価率が変動しているとかいった具合に抽出されがちです。経営の管理上も、あまり勘定科目をいじらないほうがいいですね。

──一度コレと決めたら、あまり変えないほうがいいと。

若原:そうですね。例えば車のガソリン代1つをとっても、旅費交通費で処理する方もいれば、車両費にする方もいれば、また消耗品費で処理している方も見たことがありますね。ただそれはどれがいい、悪いではなくて、毎年変えてしまうと前年との比較ができなくなってしまうので、いったん決めたら毎年同じのほうがいいと思いますね。

 あとはバランスですよね。何でもかんでも消耗品費に計上するような極端な処理をしていると目立ちますので、一部を事務用品費に分けたり、あるいは雑費に振ったり、1つがあまり突出しすぎないよう調整した方がいいです。税理士さんであれば、税務署を意識して、何年分かの損益計算書を比較しながら、全体のバランスがよくなるように、決算で勘定科目を微調整していると思いますよ。

──帳簿をつける側からすると、間違った処理をしたくないという意識が強いですが、じつは勘定科目そのものにあまり細かくこだわる必要はないということですね。

若原:税務調査では勘定科目よりも、本当に必要経費なのか否かを調べるので、勘定科目はあまり気にしなくてよいと思います。どのみち税務署さんが目にするのは、一年分の勘定科目の合計額が記載された決算書なので、経費の中身までは決算書を眺めてもわかりません。

──では、あまり気にしなくてよいとわかった上で質問していきたいのですが(笑)、最近はPCの無料回収サービスというのがあって、送料だけ負担という場合があります。その場合、勘定科目は荷造運賃で処理して問題ないんでしょうか。実質的にはサービスそのもののコストのような気もするのですが。

若原:はい、正直どちらでもいいですね(笑)。送料でも、あと支払手数料でも構わないと思います。私もトナー漏れのプリンタの廃棄の際、利用した経験がありますが、その時は確か支払手数料で処理しましたね。

──なるほど。次ですが、HDDが破損し、そこからデータを救出するための復旧サービスを使用した場合は、勘定科目は修繕費になるんでしょうか。PCそのものは復旧できずに、データの救出にとどまるのであれば、修繕ではないような気もするのですが。

若原:いえ、どちらの場合も、修繕費でよい気がしますね。データを修繕したといえば、修繕したような気もしますし……。若干、違和感のある日本語ですが(笑)。

──HDDの廃棄にあたって行なわれる、データ完全抹消サービスの勘定科目はどうでしょう。

若原:これもまぁ、支払手数料なのか雑費なのか、お好きにどうぞという(笑)。

──あまり問題にならないということですね(笑)。

HDDとオンラインストレージ、勘定科目は同じ?

──最近はHDDを使わず、すべてのデータをクラウドに置いて作業している人もいます。役割としてはどちらも変わらないけれども、ツールそのものがローカルからクラウドに移行している場合、勘定科目はどうなるのか気になるのですが。

若原:イメージ的には支払手数料で行っちゃうような気がしますね。

──支払手数料ですか。HDDであれば、購入時に消耗品費で処理しますよね?

若原:そうですね。モノを購入していれば、消耗品費の方がしっくりきますね。

──オンラインストレージの場合、年契約または月額契約して何百円ずつ払う形になりますが、それも支払手数料なんでしょうか。私は通信費で処理していて、それはそれで違和感を感じることもあるのですが。

若原:通信費で処理する方も確かにいますね。HDDであれば少額ですし、どのみち必要経費なので、消耗品費で処理して終わりですね。オンラインストレージであれば、通信費か支払手数料じゃないでしょうか。グループウェアなども同様ですね。

──勘定科目的にはそのどちらかということでしょうか。

若原:それ以外だと保守費とか、いろいろ作ろうと思えば作れますね。金額的に重要性が高ければ、内部で管理しやすいように、わかりやすい勘定科目を作ってしまってよいと思います。

 もともと勘定科目というのは、実際に儲かっているのかどうか、経営者等に判断しやすいようにわかりやすくするためのものであって、税務署さんへの申告は副次的な話なんですよ。なので、自分たちが管理しやすいように記帳するのが第一ですね。税務署さんはどちらかというと、そもそもその出費が必要経費か否かという、そちらの話が中心ですので。

──税務署に突っ込まれないためというよりも、中での管理の問題が大きいということですね。一度決めたら毎年コロコロ変えないことのほうが重要だと。

若原:はい、わかりやすいようにつければOKです。HDDも、前年に保守費で計上しているのであれば、オンラインストレージに移行してからも保守費で計上するとか、管理目的であればそうした考え方もありだと思います。

──それなら何年か単位で見ても大丈夫と。

若原:ええ、そうすれば去年はいくらだったのが、今年は経費節減の効果があったなどとひと目で分かりますからね。まあ、そうはいっても、税理士だと、最後に全体を見ながら、いろいろ考えますけど(笑)。

延長保証を製品の購入費に含めるのはNG?

──次も勘定科目にまつわる質問ですが、PCやタブレット、デジカメなどに対してかける損害賠償保険の勘定科目は何になるんでしょう。

若原:税務署さんの青色決算書には、勘定科目として、損害保険料というのがありますね。

──買った時についてくる保証は、製品代金の一部になっているケースも多いですが、あれは本来は損害保険料として分けて計上しておく必要があるでしょうか。例えばApple製品などは、購入の時にAppleCareの金額も全て込みになっていますよね。

若原:別料金になった延長保証などは、分けて処理したほうがいいですね。例えば車だと、保証料も結構高額で、メンテナンスパック代のような延長保証料も購入時に支払っておくことがありますが、あれも車両の取得価額には入れないですね。

──なるほど。PCの場合だと、メーカーが行なっている保証のほかに量販店が独自の保証をつけていたり、あと旅行にあたって短期的にネットから契約できるオンデマンド保険もありますが、それらで処理の違いはあるんでしょうか。

若原:万一の際の保険料か、それとも修繕費の前払いと考えるべきかですね。厳密に言い出すと、保証期間に応じて費用計上しろ、というところまで行ってしまいそうですが、PC関連は金額が少ないので、あまり気にしていないというのが実際のところですね。

──であれば、一般的には保険料で計上する、また本来であればAppleCareのような保証も本当は保険料なんだよというそういう認識でいいんでしょうか。

若原:ええ、取得価額の一部として計上するのは無理がある気がしますね。ただ金額が少ないので、実際は雑費とかで処理してしまっている気がしますね。車とかだと結構金額が高く、さすがに一括経費計上は微妙ですね。

コワーキングスペースの勘定科目は?

──最後に、フリーランスにありがちな、コワーキングスペースに出向いて仕事を行なった時の処理なんですが、勘定科目は基本的には会議費扱いでいいんでしょうか。飲食店の場合もあれば、いわゆるコワーキングスペースと呼ばれる作業のためだけに用意された施設を使う場合もありますが。

若原:前者の場合は会議費でしょうね。1人で会議をしているのか、と言われるとおかしいですが、喫茶店でやっているのに地代家賃というのも変ですし。

──地代家賃に含まれるのはどんなケースなんでしょうか。

若原:一般的な事務所の家賃とか駐車場とかですね。ただ、地代家賃だと、青色申告決算書とか収支内訳書に「地代家賃の内訳」を記入する欄があるんですよ。そこに大家の名前や住所を記入する必要が出てきます。

──喫茶店の場合、支払う代金はイコールお店で飲食した代金になるわけですが、これは構わないんでしょうか。

若原:場所を借りることが目的で、お金を払わないと貸してくれないわけですから、そういうことになりますね。まあ、事務所を借りていたり、あるいは自宅の地代家賃の一部を経費計上している場合とかだと、多少難がありそうですが……。まあ、実際に喫茶店でPCで仕事をしている方、よく見ますよね……。

──そこで調子に乗って飲み食いをするとダメということですよね(笑)。

若原:そうですね(笑)。1人だと珈琲代ぐらいにしておいた方が無難ですね。税務調査だと、領収書の確認をされる場合もありますからね……。取引先とかと打ち合わせとか、接待とかしていれば大丈夫ですが、最近のレシートは人数とか注文内容とか書いてありますからね……。かといって、領収書だらけで内容がわからないというのも、正直、胡散臭いですしね……。

──(笑)。例えば、喫茶店が発行しているコーヒーチケットを買っておいて1枚ずつ使う場合、どのように計上すべきでしょうか。切手などと同様、いったん全額を経費として処理し、期末に未使用分を貯蔵品に振り替える処理でよいのでしょうか。

若原:厳密に考えるとそうなるかと思います。ただ現実問題としては、金額も少なく、重要性はないでしょうから、支払い時に経費処理でも、あまり問題にはならないかと思います。ただ、期末近くに大量購入して経費処理していると、多少問題ですが(笑)。

(次回に続く)