特集

複数の規格が入り交じるUSB Type-C。その挙動を探る【スマホ編】

~Type-C搭載スマホの充電速度をチェック

今回はType-Cコネクタを搭載したスマートフォン(USB PDには非対応)について検証を行なう

 表裏がなくどちらでも挿せるコネクタの利便性の高さがさかんにアピールされるが、実際には給電や映像出力などさまざまな規格を内包することから、利用者から見ると目的に合致したケーブルが非常に選びにくいのが、USB Type-Cだ。実機による検証を通じてその挙動を探る企画、前回のPC給電編に引き続き、今回はスマートフォン編として、Type-Cコネクタを搭載したスマートフォンにまつわる検証をお届けする。

PC給電編はこちら

Type-Cポート搭載の電源アダプタからスマートフォンを充電

 スマートフォンやタブレットの充電コネクタは、これまでのMicroからじょじょにType-Cへの移行が進みつつあり、充電ケーブルをはじめとする市販のアクセサリも、それを反映したラインナップとなりつつある。今回はまず、前回も使用した両端Type-CコネクタのUSBケーブルを使ってスマートフォンへの給電を行ない、給電方法ごとの速度や特性の違いを探ってみよう。

 使用するスマートフォンは、いずれもType-Cコネクタを搭載したSIMフリーのAndroidスマートフォン、ファーウェイの「HUAWEI nova」およびトリニティの「NuAns NEO [Reloaded]」の2台。前者は急速充電対応を謳っているが、あくまで「5V/2A」であり、同社のP10 liteのような「9V/2A」や、Mate 9の「5V/4.5A」もしくは「4.5V/5A」のような特殊な仕様ではない。前回紹介したUSB PD(USB Power Delivery)にも非対応だ。

 後者はクアルコムの急速充電規格「Quick Charge 3.0」をサポートするが、Quick Chargeは電源アダプタ側と機器側がともに対応していて初めて急速充電が行なえる規格であり、今回使用する電源アダプタはいずれもQuick Chargeには非対応であるため、その恩恵は受けられない。USB PDにも対応していない。

 電源アダプタは、前回も使用したMacBook Pro 15インチ標準添付の「87W USB-C電源アダプタ」と、Ankerの「PowerPort+ 5 USB-C USB Power Delivery」(最大30W)を使用する。どちらもUSB PDに対応した製品だが、今回はスマートフォン側が対応しないため、USB PDならではの高速充電は行なえない。

「HUAWEI nova」。2017年2月発売。本稿執筆時点のAndroidのバージョンは7.0
Type-Cコネクタを搭載する。製品にはケーブルおよび専用のアダプタが付属する
トリニティ「NuAns NEO [Reloaded]」。2017年6月発売。本稿執筆時点のAndroidのバージョンは7.1.1
Type-Cコネクタを搭載する。製品にはケーブルのみが付属し、アダプタは同梱されない

 ケーブルについては以下の表のとおりで、こちらも前回と同じラインナップ。本文中では冒頭につけた【AB】、【AK】、【E1】などの略称で表記する。なお測定にあたっては、スマートフォンのバッテリ残容量を揃えるのは難しいため、充電速度が比較的安定していると考えられる、バッテリ残量20-80%の範囲でテストを行なっている。

略称メーカー(ブランド)品番(リンク先は製品情報)長さ規格最大電流USB PDUSB IF認証その他Amazonで購入
ABAmazonBasicsAKL6LUC017-CS-R0.9mUSB 3.1 Gen 1表示なし表示なし--リンク
AKAnkerPowerLine+(AK-A8187091)1.8mUSB 2.0表示なし-PowerIQ対応リンク
CCable Matters107002-BLK-0.5m0.5mUSB 3.1 Gen 2表示なし表示なしThunderbolt 3 (40 Gbps)リンク
E1エレコムUSB3-CC5P05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 25A-リンク
E2エレコムUSB3-CCP05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 23A-リンク
E3エレコムMPA-CC13A05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 13A--リンク
E4エレコムU2C-CC5P05NBK0.5mUSB 2.05A-リンク
E5エレコムU2C-CC05BK0.5mUSB 2.03A×--リンク
M丸七VM-070.5mUSB 2.03A×---

 ではまずはHUAWEI novaから見ていこう。電圧についてはどのケーブルの場合も4.7~5.0Vの間を行ったり来たりしているため、以下では各ケーブルごとの電流(A)の値のみ記載している。

略称メーカー(ブランド)品番長さ規格最大電流USB PDUSB IF認証MacBookアダプタ利用時Ankerアダプタ利用時
ABAmazonBasicsL6LUC017-CS-R0.9mUSB 3.1 Gen 1表示なし表示なし-1.9~2.0A1.7~1.9A
AKAnkerPowerLine+(AK-A8187091)1.8mUSB 2.0表示なし-1.6~1.8A1.4~1.6A
CCable Matters107002-BLK-0.5m0.5mUSB 3.1 Gen 2表示なし表示なし1.9~2.0A1.8~2.0A
E1エレコムUSB3-CC5P05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 25A1.9~2.0A1.7~1.9A
E2エレコムUSB3-CCP05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 23A1.9~2.0A1.7~1.8A
E3エレコムMPA-CC13A05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 13A-1.9~2.0A1.7~1.8A
E4エレコムU2C-CC5P05NBK0.5mUSB 2.05A1.9~2.0A1.7~1.9A
E5エレコムU2C-CC05BK0.5mUSB 2.03A×-1.8~1.9A1.6~1.7A
M丸七VM-070.5mUSB 2.03A×-1.7~1.8A1.4~1.6A

 HUAWEI novaは上の表からもわかるように、MacBookのアダプタ、およびAnkerのアダプタ、どちらと組み合わせた場合も、給電は問題なく行なえた。基本的には「5V×2A」を上限に給電が行なわれており、MacBookアダプタを使った場合のほうが若干多めの電力が供給される傾向にある。本来、USB PDに対応しない場合はUSB Type-C Currentという規格が定める「5V×3A」が上限だが、HUAWEI nova自体が5V×2Aまでしか対応しないため、そこで頭打ちになっているものと考えられる。

 ケーブル別に見ていくと、USB 2.0で3A対応の【AK】、【E5】、【M】の3製品が他に比べて0.1~0.2A低く、また電圧についてもほかが4.9~5.0Vなのに対して4.7~4.9Vとやや低めだ。USB 3.1対応の製品と比べて充電完了までの時間が大幅に変わるといったレベルではないが、傾向としては明らかに異なる。

ほとんどの組み合わせでは「5V×2A」に近い値で給電が行なわれる。これは【E1】の例
USB 2.0で3A対応のケーブルは他に比べて電圧、電流ともにわずかに値が低い。これは【AK】の例
ちなみにMacBook付属のUSB-Cケーブルを使った場合は、電圧電流が高い方のグループ、つまり【AB】、【C】、【E1】などとほぼ同じ値となる

 次いでNuAns NEO [Reloaded]を見ていこう。こちらもやはり「5V×2A」を上限に、いずれのケーブルでも問題なく充電が行なえている。HUAWEI novaに比べると、アダプタおよびケーブルによる違いはまったくといっていいほどなく、HUAWEI novaでは電流、電圧ともにやや低かった【AK】、【E5】、【M】も含めたすべてのケーブルが、1.7~1.9Aの範囲内に収まっている。

略称メーカー(ブランド)品番長さ規格最大電流USB PDUSB IF認証MacBookアダプタ利用時Ankerアダプタ利用時
ABAmazonBasicsL6LUC017-CS-R0.9mUSB 3.1 Gen 1表示なし表示なし-1.7~1.9A1.7~1.9A
AKAnkerPowerLine+(AK-A8187091)1.8mUSB 2.0表示なし-1.7~1.9A1.7~1.9A
CCable Matters107002-BLK-0.5m0.5mUSB 3.1 Gen 2表示なし表示なし1.7~1.9A1.7~1.9A
E1エレコムUSB3-CC5P05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 25A1.7~1.9A1.7~1.9A
E2エレコムUSB3-CCP05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 23A1.7~1.9A1.7~1.9A
E3エレコムMPA-CC13A05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 13A-1.7~1.9A1.7~1.9A
E4エレコムU2C-CC5P05NBK0.5mUSB 2.05A1.7~1.9A1.7~1.9A
E5エレコムU2C-CC05BK0.5mUSB 2.03A×-1.7~1.9A1.7~1.9A
M丸七VM-070.5mUSB 2.03A×-1.7~1.9A1.7~1.9A
HUAWEI novaの場合と同様、「5V×2A」に近い値で給電が行なわれる。これは【E1】の例
HUAWEI novaではやや低めの値を示したUSB 2.0で3A対応のケーブルも、こちらでは他とほぼかわらない値を示している。これは【AK】の例
MacBook付属のUSB-Cケーブルも同様だ

 全体として、従来のUSBケーブルを使った場合との極端な違いは見られない。USB PDに対応してくればまた話は変わってくるだろうが、そうでない場合は単にコネクタの形状が異なるというだけで、従来のUSBと同じ使い方をしていればよいだろう。

PCのType-Cポートからスマートフォンを充電

 ここまで見てきたのは電源アダプタからの給電だが、これとは別に、Type-Cポート搭載のPCから給電が行なえるかも気になるところだ。今回使用しているスマートフォンはUSB PDには非対応なので、PCがUSB PD対応であってもその恩恵は受けられないが、物理的に接続しての給電自体はもちろんできる。その場合、どの程度の速度が出るのか、また前述の電源アダプタを使った場合と比べてどちらが高速なのか、興味がある人は多いのではないだろうか。

 使用するPCは前回と同じAppleのMacBook Pro 15インチ(2017)(以下MacBook)と、レノボのThinkPad X1 Carbon(2017)(以下ThinkPad)の2台。いずれもUSB PDに対応しており、前者は4ポート、後者は2ポートのUSB Type-Cコネクタを備えている。ケーブルについては先程と同じラインナップだ。

AppleのMacBook Pro 15インチ(2017)
左右の側面に2基ずつ、計4基のUSB 3.1 Gen 2対応(Thunderbolt 3対応)のUSB-Cポートを搭載する
レノボのThinkPad X1 Carbon(2017)
左側面にUSB 3.1 Gen 2対応(Thunderbolt 3対応)のUSB Type-Cポートを2基搭載する

 まずはHUAWEI novaから見ていこう。MacBookとThinkPad、どちらに接続した場合も給電は問題なく行なえるが、電源アダプタから充電する場合に比べると電流値は2割ほど低い1.5A前後に抑えられており、充電時間はそのぶん余計にかかる。また先程と同じく、USB 2.0で3A対応の【AK】、【E5】、【M】の3製品は、電流値がさらに下がる傾向にある。電圧は4.7~5.0Vの範囲に収まっており、電源アダプタから充電する場合に比べ、やや性能は落ちるものの、全体としてはイレギュラーな挙動は見られない。

略称メーカー(ブランド)品番長さ規格最大電流USB PDUSB IF認証MacBookからの給電時ThinkPadからの給電時
ABAmazonBasicsL6LUC017-CS-R0.9mUSB 3.1 Gen 1表示なし表示なし-1.5~1.6A1.5~1.6A
AKAnkerPowerLine+(AK-A8187091)1.8mUSB 2.0表示なし-1.2~1.3A1.2~1.3A
CCable Matters107002-BLK-0.5m0.5mUSB 3.1 Gen 2表示なし表示なし1.4~1.6A1.5~1.6A
E1エレコムUSB3-CC5P05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 25A1.4~1.5A1.4~1.5A
E2エレコムUSB3-CCP05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 23A1.4~1.5A1.4~1.5A
E3エレコムMPA-CC13A05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 13A-1.4~1.6A1.4~1.5A
E4エレコムU2C-CC5P05NBK0.5mUSB 2.05A1.4~1.6A1.4~1.5A
E5エレコムU2C-CC05BK0.5mUSB 2.03A×-1.4~1.6A1.3~1.4A
M丸七VM-070.5mUSB 2.03A×-1.4~1.5A1.2~1.3A
電源アダプタ直結時よりはやや低い、「5V×1.5A」前後で給電が行なわれる。これは【E1】の例
USB 2.0で3A対応のケーブルはほかに比べて電圧、電流ともにわずかに値が低いのは、電源アダプタ直結時と同様だ。これは【AK】の例
MacBook付属のUSB-Cケーブルは、【AB】、【C】、【E1】など電圧電流が高いグループと同等の値となる

 一方、電源アダプタから充電した場合とまったく違う傾向を示したのがNuAns NEO [Reloaded]だ。こちらは【AK】、【E5】の2種類のケーブルについては、MacBookとThinkPad、どちらでも給電が一切行なえず、チェッカーが表示した電流値は「0.00A」のまま。またそれ以外の【AB】、【C】、【E1】、【E2】、【E3】、【E4】についても、2~3回の抜き差しにつき1回は「0.00A」と表示されて給電できないなど極めて不安定だ。何度か抜き差ししていると給電が始まるのだが、安心して使える状況には程遠い。

略称メーカー(ブランド)品番長さ規格最大電流USB PDUSB IF認証MacBookからの給電時ThinkPadからの給電時
ABAmazonBasicsL6LUC017-CS-R0.9mUSB 3.1 Gen 1表示なし表示なし-1.4~1.6A1.9~2.0A
AKAnkerPowerLine+(AK-A8187091)1.8mUSB 2.0表示なし-0A0A
CCable Matters107002-BLK-0.5m0.5mUSB 3.1 Gen 2表示なし表示なし1.4~1.6A1.9~2.1A
E1エレコムUSB3-CC5P05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 25A1.4~1.6A1.8~2.0A
E2エレコムUSB3-CCP05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 23A1.4~1.6A1.8~1.9A
E3エレコムMPA-CC13A05NBK0.5mUSB 3.1 Gen 13A-1.4~1.6A1.7~1.9A
E4エレコムU2C-CC5P05NBK0.5mUSB 2.05A1.4~1.6A1.7~1.8A
E5エレコムU2C-CC05BK0.5mUSB 2.03A×-0A0A
M丸七VM-070.5mUSB 2.03A×-1.9~2.0A1.6~1.7A
電源アダプタ接続時と同様、問題なく給電できる場合もあるのだが……
この【AK】のようにまったく給電できない(電流値がゼロのまま)の場合もある
また何種類かのケーブルでは、何度か抜き差しすると「5.00V×0.00A」で表示が固まってしまう場合があった。この症状はMacBookとThinkPad、どちらでもともに発生した

 また、不思議なのは、MacBookを【M】のケーブルと組み合わせた場合のみ、ほかに比べて高い電力が供給できることだ。具体的には、ほかでは電流が1.4~1.6Aのところ、【M】のケーブルだけは1.9~2.0Aが供給される。またこの【M】のケーブルはMacBookとThinkPad、どちらと組み合わせた場合でも表示が「0.00A」となることがなく、10回程度試した限りではいずれも一発で充電が開始された。

 これで【M】がハイエンドな万能ケーブルであれば納得も行くのだが、よりによって百均で入手可能なもっともローエンドなType-Cケーブルであり、先程のHUAWEI novaではむしろ遅い部類だったので不可解だ。ここまでの検証で【M】とほぼ同じ挙動を示していた【AK】、【E5】と挙動が異なるのも首をひねってしまう。

MacBookと【M】を組み合わせた場合のみ、突出して高い電力を供給できるのも不可解だ

 ただ、抜き差しのたびにケーブルを認識したりしなかったりする点については、MacBookとThinkPadでともに発生していることから、NuAns NEO [Reloaded]側の仕様の問題である可能性が高い。詳細は不明なままだが、今回の結果を見る限りでは、NuAns NEO [Reloaded]でうまく充電が行なえない場合、PCやアダプタなど、給電元を変更すれば安定して充電できるようになる可能性はある、ということだけは言えそうだ。

速度や特性にかなりの差がある「A-Cケーブル」を用いた給電

 さて、上記では両端がType-Cのケーブルを使って充電を行なったが、むしろニーズとして多いのは、既存のUSB Standard-AポートとType-Cポートをつなぐケーブル(以下A-Cケーブル)を使った充電だろう。そこで次は、A-Cケーブルを用いて、既存のAポートからの充電を試してみよう。使用するのはAnkerの「PowerPort+ 5 USB-C USB Power Delivery」に搭載されているAポート、さらにThinkPad本体のUSB Aポートの2つで、これらとスマートフォンの間をA-Cケーブルで接続する。

 A-Cケーブルは最近では百均でも容易に入手が可能になっており、その品質は気になるところ。今回は現在百均で入手が可能な5種類のA-Cケーブルを用意し、スマートフォンに付属する純正のケーブルとともに、充電の可否およびスピードをチェックする。具体的なラインナップは以下の表の通りで、本文中では冒頭につけた【A】、【D】、【Y】などの略称で表記する。

メーカー(ブランド)品番長さ規格仕様USB PD
AアットキューAT-CASTUSC010.5mUSB 2.0最大5V3.0A非対応
D大創産業携帯電話No.690.5mUSB 2.0最大出力5V-2A不明
EE CoreK-210.5mUSB 2.0最大出力5V/2A非対応
M丸七VM-010.5mUSB 2.0不明非対応
Y山田化学No.9700.5mUSB 2.0最大5V/3A非対応
今回使用した5種類のA-Cケーブル。いずれも百均で入手可能。すべて標準的な0.5mのケーブルだ
一方がAコネクタ、もう一方がType-Cコネクタ(写真)となる。よく見るとコネクタカバーの形状がそっくりのものもあり、共通のOEM元から供給を受けている可能性が高そうだ
検証に先立ち、上記5種類のケーブルの仕様について、前回も紹介したUSBケーブルチェッカーで確認した。いずれもA-Cケーブルには必須の56KΩ抵抗を内蔵している。なお本稿では「HUAWEI nova」および「NuAns NEO [Reloaded]」添付のA-Cケーブルも使用しているが、いずれも56KΩ抵抗を内蔵していることを確認した(後者は22kΩ仕様のものが存在するとの報告がネットで見られるが、筆者手元の個体は56kΩだ)

 まずはHUAWEI novaだが、Ankerアダプタでは電圧は4.94~4.98Vの間、電流は1.48~1.51Aに収まっている。製品添付のケーブルを使った場合も同様で、ケーブルによる違いはまったくといっていいほど見られない。製品添付のケーブルのほか、念のためUSB-IF認証品のA-Cケーブル(エレコムMPA-AC10NBK、実売1,001円)でも同様のチェックを行なったが、こちらも同じ結果だった。

 一方、ThinkPadのUSB Aポートに接続した場合は、製品添付のケーブルを使った場合も含めて、電流値は0.48Aと大幅に低下した。HUAWEI novaの「端末情報」→「端末の状態」で電池の状態を確認したところ、ACからの充電ではなくUSBからの充電として認識されており、ここで上限0.5Aに制限されているものとみられる。

メーカー(ブランド)品番長さ規格仕様USB PDHUAWEI nova×AnkerアダプタHUAWEI nova×ThinkPad
AアットキューAT-CASTUSC010.5mUSB 2.0最大5V3.0A非対応1.48~1.51A0.48A
D大創産業携帯電話No.690.5mUSB 2.0最大出力5V-2A不明1.48~1.51A0.48A
EE CoreK-210.5mUSB 2.0最大出力5V/2A非対応1.48~1.51A0.48A
M丸七VM-010.5mUSB 2.0不明非対応1.48~1.51A0.48A
Y山田化学No.9700.5mUSB 2.0最大5V/3A非対応1.48~1.51A0.48A
Ankerアダプタに接続した場合、電流は1.48~1.51A、電圧は4.94~4.98Vの間に収まり、ケーブルによる際はまったくない。これは【A】の例
同じ【A】をThinkPadのUSB Aポートに接続した場合、電流は0.48Aと大幅に低下した。これはスマートフォンがACではなくUSB給電と判断したためとみられる

 NuAns NEO [Reloaded]はどうだろうか。まずAnkerアダプタを使った場合は、電圧は4.85~4.96Vなのでほぼ同等だが、電流は1.70~1.80AとHUAWEI novaに比べてかなり大きくなる。一方ThinkPadのUSB Aポートに接続した場合は電圧が4.66~4.69V、電流が1.32~1.38Aと、Ankerアダプタに比べると明らかに低下する。製品添付の純正ケーブル、エレコムのUSB-IF認証ケーブルを使った場合も同様だ。

メーカー(ブランド)品番長さ規格仕様USB PDNuAns NEO×AnkerアダプタNuAns NEO×ThinkPad
AアットキューAT-CASTUSC010.5mUSB 2.0最大5V3.0A非対応1.77~1.80A1.32~1.38A
D大創産業携帯電話No.690.5mUSB 2.0最大出力5V-2A不明1.77~1.80A1.35~1.38A
EE CoreK-210.5mUSB 2.0最大出力5V/2A非対応1.77~1.80A1.35~1.38A
M丸七VM-010.5mUSB 2.0不明非対応1.70~1.80A1.32~1.38A
Y山田化学No.9700.5mUSB 2.0最大5V/3A非対応1.77~1.80A1.35~1.38A
Ankerアダプタに接続した場合、電流は1.70~1.80Aと、HUAWEI novaよりも大きい。これは【A】の例
ThinkPadのUSB Aポートに接続した場合は、電流は1.32~1.38Aの範囲で推移した。Ankerアダプタに接続した場合に比べると低いが、それでも0.48Aで頭打ちになっているHUAWEI novaに比べるとかなり高い値だ

 測定結果は以上の通りなのだが、面白いのは、NuAns NEOとAnkerのアダプタを組み合わせた場合のみ、1.5Aを超える1.70~1.80Aの電流が流れていることだ。そもそもA-Cケーブルは、56kΩ抵抗を実装することにより、5V×1.5Aを超える電力をスマートフォン側から要求しない設計になっている。規格が古いAポート側の機器に供給能力以上の電源を要求すると壊れかねないためで、今回チェッカーで調べた限りでは5本のケーブルすべてが56kΩ抵抗を実装していたが、にもかかわらず上記の組み合わせのみ1.5Aを(わずかではあるが)超える電流が流れている。一方でThinkPadのUSBポートから給電した場合は、HUAWEI novaの場合とNuAns NEOの場合、どちらも1.5A以下に抑えられている。

 この原因として考えられるのは、Ankerのアダプタに搭載されている「PowerIQ」だ。PowerIQは、5Vという電圧の上限は守りつつ、接続したデバイスに合わせて最適な電流を流すAnker独自の仕組みだ。高速充電規格として有名なQuick Chargeと異なり、電源アダプタ側とデバイス側がともに対応している必要はなく、接続したデバイスに合わせて電流値を最適化するのがPowerIQの特徴だ。

 試しに接続先をPowerIQ非搭載のモバイルバッテリに取り替えたところ、電流は1.2A前後にまで低下したので、今回1.5Aを超える電流が流れているのは、このPowerIQが関係しているのではないかと考えられる。

56kΩ抵抗ではなく10kΩ抵抗を内蔵した“粗悪な”ケーブルは、かなり多く流通している。これは今回のテストの過程で、規格外である10kΩ抵抗を内蔵することが判明した筆者手持ちのA-Cケーブル。Aポート側の機器に3Aの出力を要求するため危険とされており、実際にモバイルバッテリの一部で応答がなくなるなどのおかしな動きが以前からある
前回紹介したLimePulseのUSBケーブルチェッカーで測定した結果。「Plug Internal Resistor」の「3A/10k」が点灯していることから、10kΩ抵抗を内蔵した「粗悪品」であることが分かる。ケーブルの外見からは見分けはつかず、問題が起こるのはあくまでも組み合わせ次第なので厄介だ。最近はメーカー自ら安全な品であることをアピールするために56kΩ搭載をパッケージに表記する例も出てきている

スマートフォンのUSB PD対応が進んでからが本番?

 「USB Type-C」は高速な給電に対応することから、スマートフォンをはじめとするモバイル対応機器では、充電に要する時間が短縮できることが期待される。もっともUSB PDなどの給電規格をサポートしていなければ、物理的にType-Cコネクタを搭載しているだけで高速な給電が行なえるわけではないのは、今回見てきたとおりだ。現在のType-Cコネクタを搭載したスマートフォンの中には、USB PDをサポートするSoCを搭載しながら、USB PDが無効になっているケースすらあるほどだ。

 むしろ、まだUSB PDまわりの環境が整っていない現時点では、従来までの高速充電規格を使ってAポートから充電を行なったほうが、高速に充電できる可能性がある。たとえば今回テストした「NuAns NEO [Reloaded]」はクアルコムの急速充電規格「Quick Charge 3.0」をサポートしているが、これを同じくQuick Charge 3.0をサポートする電源アダプタと組み合わせた際の充電速度は、両端がType-Cのケーブルを使用してType-C搭載アダプタから充電するよりも高速だ。

Quick Charge 3.0対応のStandard-Aポートを搭載したAnkerの電源アダプタ「PowerPort Speed 4」
同じくQuick Charge 3.0に対応したNuAns NEO [Reloaded]とA-Cケーブルで接続すると、先程の実験よりもはるかに高い電圧および電流で充電が行なえる。ただしType-C搭載機器でUSB PD以外の高速充電規格を採用することは本来規格外であるため、あまり望ましい方法ではない

 もっとも、スマートフォンへのUSB PD対応の波は徐々に迫りつつあり、スマートフォンにおける高速充電規格もいずれはUSB PDに一本化されていく可能性が高い。たとえばクアルコムのモバイルSoC「Snapdragon 835」は、同社独自の充電高速化規格である「Quick Charge 4.0」に対応しているが、こちらはUSB PDをも内包した規格であるため、このチップセットを使ったスマートフォンはUSB PDでの充電が行なえる可能性が高い。

 また、同じくクアルコムのSoCではミドルレンジ向けの「Snapdragon 660」「Snapdragon 630」もQuick Charge 4.0対応であることから、USB PDが利用できるとみられる。今回はまだ数も少ないため検証の対象からは除外したが、いずれ製品が出揃い、比較可能な環境が整えば、またあらためて検証を行ないたいと思う。

 次回は、ここまで紹介できなかったUSB Type-C対応ディスプレイからの給電など、USB Type-Cにまつわるいくつかの検証結果をまとめてお届けする。