2022年8月22日 13:45
『人民日報海外版日本月刊』が記事「NEUSOFT Japan 株式会社:イノベーションで魅せるソフトウェアの力」を公開いたしました。
デジタルの時代、技術の革新はインターネットによって何倍にも加速したというが、企業の受ける試練とプレッシャーはかつてないほど大きいと言われる。新型コロナウイルス感染症は一向に収まらず、不穏な国際情勢や為替の激しい変動などにより、世界経済は深刻な危機に見舞われている。2021年、そんな時代にNeusoftは目を見張るような一つの解答を出した。
先日、本紙は、東京のランドマークであるTFTビルに足を運び、Neusoft上級副総裁兼最高財務責任者、NEUSOFT Japan 株式会社 代表取締役社長の張暁鴎氏に単独インタビューを行った。潮風の香るなか、張暁鴎氏の語る中国ソフトウェア企業の船出への物語に耳を傾けた。
Neusoft上級副総裁兼最高財務責任者、NEUSOFT Japan 株式会社 代表取締役社長 張暁鴎
■コスト重視からバリューイノベーションへ
1991年、中国の東北大学のキャンパスでNeusoftは産声を上げた。いまを遡ること31年、中国がインターネットを正式に導入した1994年より3年も前の話である。当時の中国市場には、まだほとんどソフトウェア産業という概念すらなかった。その当時にしてすでにNeusoftは、「ソフトウェアの研究と応用の橋渡し」という理念を打ち出していたのである。
ほどなくして、中国のIT企業はソフトウェアサービスをもって、相次いでグローバルマーケットに進出するようになった。ここ数年、インテリジェントビークルコネクティビティの分野は人々の関心を集めているが、30年前、Neusoftの立ち上げを後押しした最初のプロジェクトが日本のアルパインと提携したカーエレクトロニクス関連のプロジェクトであったことを知る人はほとんどいない。つまり、Neusoftは中国で最も早くカーエレクトロニクス分野に踏み込んだ企業の一つなのである。
今では中国本土はもとより、ドイツ、アメリカ、日本、マレーシアを中心に、グローバルな製品の研究開発基盤とサプライネットワークを築き上げ、6,000名ものカーソフトウェアのエンジニアを擁するほどになり、全世界で第30位までに入る自動車メーカーのうち、実に85%がNeusoftのソフトウェアとサービスを利用している。
「革新的な技術とサービスを通してお客さまと社会に価値を創造する」。これはNeusoftが顧客に対して一貫して守り続けている姿勢である。30年来、時代と市場の変遷にしたがって業界の趨勢は移ろってきたが、そのあいだもNeusoftは常に業界をリードしてきた。
起業したその当初から現在においても、Neusoftはトップから社員の一人ひとりに至るまでが豊かなチャレンジ精神を胸に抱いている。第一歩であったカーエレクトロニクス分野のソフトウェア業務だけでなく、その後も市場にあるチャンスをしっかりと観察して逃さずに、スマートシティ、医療健康分野、企業のデジタル化といった大きな可能性を秘めたカテゴリーにおいて早々に取り組んできた。常に顧客のほうを向き、市場の変化に敏感であるというその姿勢こそ、新たな挑戦へと立ち向かうNeusoftの枯渇することなき原動力なのである。
財務報告書によると、2021年、Neusoftの自主的ソフトウェアや製品、および関連するサービス業務は持続的に成長しており、企業利益の実に86%もの比重を占める。インテリジェントビークルコネクティビティサービスによる収入は34.08億元(約681億円)に上り、前年比32.5%の伸びを見せていることから、新型コロナウイルスの蔓延という逆風にも負けず、業績は着実に伸びていると言えるだろう。
また、Neusoftは発展の過程を通じて、倦まず弛まず戦略的に持てる力を国際化に注いできた。Neusoftの創業は国際的な業務から立上がり、そして2001年、NEUSOFT Japan 株式会社(以下、NEUSOFT Japan)が設立された。こちらも今日に至るまでの20年、衰えることのない着実な成長曲線を描き続けている。
国際的なソフトウェアサービスという分野において、Neusoftは卓越したソフトウェアエンジニアリングの能力、多業種にわたる洞察と30年という豊かな経験を活用し、顧客製品の加速度的なイノベーションやデジタルトランスフォメーションをサポートし続け、ビジネスの成長を実現してきた。デジタル技術の発展はIT産業のあり方そのものに変化をもたらし、デジタル経済は新型コロナウイルスという逆風を物ともせず、むしろ客観的に分散型デリバリーとオフショア開発を推し進めたと言える。
NeusoftはABCD+IoT(AI、ブロックチェーン、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、IoT)を駆使して協業イノベーションを進め、的確に顧客のニーズとペインポイントを把握して、高度な技術力と付加価値のあるプロフェッショナルなサービスを提供しているのである。それと同時に、健全な育成システムを通じて人材をより付加価値を有する上流工程へと導き、フルスタックエンジニア、ビジネスエキスパート、ハイエンド技術者、エンジニアリングマネージャーを育成して、運用・保守・開発を一任したいというニーズにも応えている。
近年、新たな技術が次々と現れては旧来のものに取って代わっていくなかで、Neusoftはソフトウェアの定義もまた常に更新され続け、テクノロジーとアプリケーションの境界が今まさに消失しつつあるのだと考えている。新興の技術が浸透すると、ソフトウェアはいっそうテクノロジーを超越してビジネスと生活に入り込み、テクノロジーを活用するシーンも絶えず進化と衰退を繰り返す。またそうして進歩した技術こそ、ソフトウェアにより大きな価値を生み出す環境を提供し、さらなる時代の発展をエンパワーしている。
そして今日、ソフトウェアはすでにエンパワーメントツールとなっている。Neusoftはまさにそのソフトウェアの力を使って、多くの企業や産業と手を結び、ソフトウェアの新たな活用シーンやビジネスモデルを創出し、新たなプラットフォームとエコロジーを構築して、これまでにない価値を顧客のために創造しているのである。
■グローバルマーケットでのチャレンジとチャンス
中国のソフトウェア企業のなかで、Neusoftはグローバルマーケットに打って出たパイオニアとして指を屈することができる。過去30年を振り返ると中国市場の変化はきわめて早く、産業の協力関係における中国と世界の位置づけも不断に変化している。したがって、グローバルマーケットでの着実な成長を望むには、勇敢かつ戦略的に変化と試練に対応していくことが重要であろう。
中国と日本の技術面における消長は、両国の貿易に関わる人々にとって大きな関心ごとの一つである。日本のメーカーは中国の白物家電市場から徐々に撤退しており、「日本の技術力は落ちた」との見方が一般的には広まりつつある。しかし実際は、日本の老舗メーカーが産業チェーンを極度にしぼり、自主的に競争力を集中化させ、利益の最大化を図るために調整しているのである。
NEUSOFT Japanの張暁鴎社長は話す。「目下のところ、応用技術の面で中国の優勢は確固たるものがあります。しかし、基礎学問の分野における日本の研究開発技術は、なお鑑とするに足るものです」。インテリジェントビークルコネクティビティなどの応用分野において、NEUSOFT Japanは確かに長足の進歩を遂げてきた。しかし、長らく海外のマーケットの第一線で戦ってきた社長が、慎重かつ現実的なスタンスを崩すことはない。
「日本にはバブル経済の崩壊という経験があり、大きな学費を払うことになりましたが、治にいて乱を忘れずという企業文化を育てることにつながりました。これは大いに参考とすべきでしょう。Neusoftは一貫して経済社会の発展という普遍的なルールを重視し、慎重な態度で起こりうる危機を防ぐことに務めています。多角的なアプローチと、それぞれが連動した取り組み方を採用することで、どこかの分野が冷え込んでも別の事業によってそれをすぐに補うことができ、全体としてはいつでも健全な状態を保っているのです。これは一つの企業であっても社会全体であっても同じことでしょう」。知るほどに思い入れが強くなっていく。
これがソフトウェア分野で数十年の実績を持つスタートアップチームの勇気と智慧であり、また、Neusoftがグローバルマーケットにおいて力強く、より早く、より高いスタート地点から、市場の変化をキャッチして素早くアクションを起こせた原因でもある。
日本市場には、自動車、コンシューマエレクトロニクス、企業向けソリューションといった面で大きな需要がある。そのためNEUSOFT Japanは、Neusoft全体の国際化戦略に基づきつつ、そういった傾向に合わせて共通のテクノロジープラットフォームを構築した。その甲斐あって、業務は新型コロナウイルスの流行を物ともせず持続的に発展し、同時に組織としてもより体系的かつ堅牢に、目に見える形で改善されたのである。
とはいえ、日本円はわずか一年のあいだに26%もその価値が下がった。業界をリードするグローバル化した情報技術、製品とソリューションカンパニーとして、また日本におけるソフトウェアサービスのリーディングカンパニーとして、NEUSOFT Japanも当然ながら日本市場で巨大なプレッシャーの矢面に立たされることになった。
今や円安は世界の関心を集めている。誰もが関心を持つ為替問題に直面しても、張暁鴎社長の言葉はやはり実直であった。「為替の大きな変動は、中日両国の経済貿易に従事する企業あるいは個人としても、決して楽観視できるものではありません。しかし、最も厳しい時期はすでに過去のものとなりました」。国際的なソフトウェアサービス事業に対して、張暁鴎社長の自信が揺らぐことはない。
新型コロナウイルスの蔓延と為替の変動は人流と物流の両面において国際的に大きな影を落とし、世界的な半導体不足によってインテリジェントビークルコネクティビティ事業は制約を受けているが、NEUSOFT Japanはそうしたさまざまな外的要因がもたらす試練を乗り越え、この分野におけるシェアを大幅に増加させた。それは、Neusoft全体の戦略と業務の調整に則って、NEUSOFT Japanも業務、財務、管理の三部門で調整を行い、会社自体の効率の最適化を図りつつ、顧客のためにさらなる価値の創造を進めたからである。つまり、種々の課題を克服した結果が業績の向上につながったと言える。
「日本の市場に存在する人材不足という問題について、中日両国は大いに互いを補い合えます。そして人材不足というのは単に人手が足りないというだけでなく、高度な技術を持った人材が足りていないのです。日本の人材不足に対応できるのは人材が豊富で教育水準の高い中国だけであり、こればかりはほかのどの国にも真似できません。NEUSOFT Japanは東京、大阪、名古屋などに500名以上、Neusoftグループ全体では二万人近い従業員を擁しています。そしてその一人ひとりが、ソフトウェアサービスをグローバルに提供する弊社を成長させる力なのです」。
「Neusoftの豊かな人材と経験、中国市場における強大なリソースとネットワークは、グローバルなソフトウェアサービスの協力と発展を絶え間なく推し進めておりますし、ソフトウェア・エンパワーメントの時代にあって、Neusoftは顧客の皆さまに新たな原動力を提供するとともに、永続的な価値をもたらすことができると考えています」。中国の企業にとって不確定な要素が多い市場であっても、デジタル経済時代における中日両国の経済産業面での協力は将来的に成長していくのであろう。張暁鴎社長の言葉には、その可能性に対する自信が詰まっているように感じられた。
■The Magic of Software
ソフトウェアはNeusoftの成長を支える根幹である。起業したその日から現在に至るまで、その初心は失われていない。一方で、Neusoftからは謙虚さや好奇心、情熱に満ち溢れた探究心とイノベーションという活力を感じることもできた。
「The Magic of Software」、これはNeusoftが2019年に使用したスローガンである。ソフトウェアの不思議なところはテクノロジーを超える。その当時、Neusoftはまさに個人と企業とを問わず、さまざまな業界がIoE(Internet of Everything)という時代に合わせてアップグレードするのをサポートしていた。それと同時に、ソフトウェア技術をコアコンピタンスとして、未来的なスマートシティ構想や、ヘルスケア、モビリティカーにおける産業エコロジーの構築などの面で革新的な企業を創設し、新たな分野を開拓することで成長の原動力を今も途切れることなく注いでいる。
多年にわたり、Neusoftはグローバルマーケットから数多くの高い評価を得てきた。プライスウォーターハウスクーパースの「世界のソフトウェア企業トップ100」に何度も選ばれているだけでなく、ローランド・ベルガー社の「世界で最も競争力のある中国企業トップ20」にランクイン、ボストンコンサルティンググループの「中国グローバルチャレンジャー50社」にもノミネートされ、さらにはエーオンヒューイット社の「2011年度中国最優秀雇用主」賞、および「2011年度アジア・太平洋地区最優秀雇用主」賞をダブル受賞している。
「The Magic of Software」、それは張暁鴎社長がNeusoftの未来に思いを馳せた時に口をついて出た言葉である。これまでNeusoftは、「ソフトウェア技術によって顧客に価値を創造」してきた。ならば今は、そして未来は、「ソフトウェアの創造性によって人々のライフスタイルを変え、世界を変える」のであろう。
■取材後記
「加速する人生」、かつて張暁鴎社長のことをそう形容した人がいた。しかし、インタビュー中は終始もの静かで実直な態度を崩すことはなかった。「加速」とは内より発する力であって、外からの働きかけによるのではない。張社長の姿の向こうに、現実を見据えて確かな足取りで進むNeusoftの輪郭がはっきりと見えた。
記者が辞去するにあたり、張暁鴎社長は最後にこう述べた。「Neusoftはまだ31歳を迎えたばかりの働き盛りです。これからもさらなるイノベーションと価値のあるIT技術を駆使して、よりスマートに、より優れた製品とソリューションを提案し、お客さまと社会の発展に貢献できるよう尽力していきます」。