やじうまPC Watch

大腸菌で作られたディスプレイにDOOMを表示させることに成功

オリジナルのDOOMタイトル(左上)とグレースケール変換後(右上)、そして大腸菌発光ディスプレイに表示させた結果(下)

 マサチューセッツ工科大学(MIT)合成生物学研究者のRen Ramlan氏は、大腸菌細胞の緑色蛍光タンパク質(GFP)を制御することで、DOOMのタイトル画面やプレイ画面を表示させることに成功した。研究結果はYouTubeやGoogle Docsで公開されている。

 大腸菌細胞のプラスミドにはGFPが含まれているが、Ramlan氏はこれを1ドット(1ピクセル)として扱い、その発光を制御することでディスプレイとして使えるのではないかと考案したことから始まった。

 GFPの発光は、同じプラスミド上にあるLuxRによって抑制されている。そこでLuxRをアシルホモセリンラクトン(AHL)分子と結合させ、その作用を無効化することで、GFPの発光を活かすことができるようになる。

GFPの発光を止めるLuxRをAHLに結合させることでGFPの発光を取り出す

 そして、大腸菌を48×32個の穴に分けたプレートに養殖し、穴ごとにAHLの分子濃度などを計算し調整できるようにPythonでプログラミングすることで、各穴を1つのドットとして制御することに成功した。

 表示はまずグレースケールに圧縮した上で、オンとオフの2値(輝度70以上と未満)にされるので、この解像度において可読性は皆無に等しいが、ひとまず実験としては成功したことになる。

 課題としては、GFPが最大輝度に達するまで70分要し、さらに初期状態に戻るために合計8時間20分要してしまったこと。DOOMの最大フレームレートは35fps、クリアまでの平均プレイ時間は約5時間なので、仮に表示を全部待った場合ゲームを599年プレイする必要がある……とのことだ。

 もっとも、今回は実験の結果に過ぎないため、実験を重ねるごとにより正確なパラメータを実装できるようになる。また、メモリや予測システムを組み込めば、連続するフレームにおいて一部はピクセルをオンにしたままにできるため、描画にかかる時間を短縮できるほか、次のフレームを読み込む前に最大輝度を減少させるシミュレーションも重ねる必要があるとしている。