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【懐パーツ】またの名を“石油コンビナート”。Envy24HT搭載サウンドカード「SE-150PCI」

SE-150PCI

 オンキヨーの「SE-150PCI」は、2004年11月19日に発売された高級なサウンドカードだ。当時の実売価格は1万5,000円前後だった。

 当時、PC用のサウンドカードの新製品といえば、ほとんどはスペックや機能--つまり同時発音数や、高い演算能力によって実現した3Dサラウンドなど--を重視したものが多かった中、オンキヨーのオーディオメーカーとしてのノウハウをふんだんに投入して開発された“SE(Sound Engine)”シリーズだ。

 SEシリーズは1998年のISAバスに対応した「SE-50」と「SE-70」からスタート。2000年には「SE-120PCI」、2002年には「SE-80PCI」を相次いで投入。SE-150PCIはこのSE-80PCIの後継モデルで、2004年11月に発売された

 ちなみに1999年にはPhilipsのサウンドチップを搭載した変わり種の「SE-100PCI」もあったが開発の遅れにより発売が中止となった

 さて本題のSE-150PCIだが、それまでのオンキヨーサウンドカードとは一線を画す外観が話題となった。確かにそれまでのモデルでも、数千円レベルのサウンドカードとは明らかに異なる回路設計であることは一目瞭然なのだが、SE-150PCIは大型のコンデンサがカードを覆うように密集して実装されており、“石油コンビナート”と言われるほどインパクトがある見た目をしているからだ。約20年経った今でも「高音質サウンドカードは何?」と問われたら筆者の脳内でSE-150PCIが自然と浮かび上がるほどだ。

 これらの大容量コンデンサはノイズ低減が目的。青色のコンデンサはニチコンの「VX(M)」シリーズ、黒く太いのが「RU」シリーズ、茶色のがELNA製の音響用「SILMIC」シリーズだ。また、カード上には銅製のバスプレートも実装しており、グラウンドを強化している。これにより、S/N比110dBという当時主流のサウンドカードを凌駕するスペックを達成した。

圧倒的な数のコンデンサを搭載。まさに石油コンビナートというあだ名がふさわしい

 さらに、一般的なフィルタではD/A変換で発生するパルスノイズを取り除けないが、独自のVLSC(Vector Linear Shaping Circuitry)フィルタではD/A変換後に信号を再構築することでパルスノイズを除去できるという。なお、VLSC自体はSE-150PCIが初実装ではなく、SE-80PCIからとなっている。

 多数のコンデンサやVLSC回路以外のところでは、VIA Technologies(実際は買収したICEnsemble製)のサウンドチップEnvy24HT、Wolfson Microelectronics(現Cirrus Logic)のマルチチャネル・オーディオD/Aコンバータ(DAC)「WM8766G」およびステレオ対応DAC「WM8716」、24bit/192kHz対応ステレオコーデック「WM8776S」の実装が目立つ。入出力端子は、光デジタルのほかにRCAによるライン出力、そして独自のD-Subコネクタ→ブレイクアウトケーブルを介した7.1ch出力に対応となっている。

 ちなみに発売から18年経過し、SE-150PCIを初めて自分の手元に置くことができたのだが、部屋に飾っておくだけで笑顔になれる、そんな愛おしいパーツだと思った。なんとなくデジタルの中にアナログの温もりが感じられるからだろうか。

背面インターフェイス
カード正面
カード背面
心臓部、Envy24HT。なお写真右に写っている「CS8415A-CZZ」はEIAJ CP1201、IEC-60958、AES3、S/PDIFに対応した7chのレシーバ/デコーダである
VLSC回路付近
VLSC回路にはPhilips製のオペアンプ「NE5532AN」が3個使われている。対称のパーツ配置も印象的だ
コンデンサに囲まれた「WM8766G」
ステレオコーデック「WM8776S」