やじうまPC Watch

【懐パーツ】低価格でDVD再生支援付きのSiS6326を搭載した「Palit Daytona 64S DVD」

Palit Daytona 64S DVD

 Palitの「Daytona 64S DVD」は、ビデオチップに「SiS6326」を搭載したAGP接続のビデオカードだ。日本での発売は1998年1月で、秋葉原に登場したSiS6326搭載ビデオカードとしては2番手だった模様だ。

 かつてx86 CPU対応の互換チップセットを多数リリースして名を馳せていたSiSも、今や口にする人や知っている人は少ないだろう。その中のSiS6326ともなると、あまりにも平凡なスペックゆえ印象に残っているユーザーもかなり少ないと思われる。当時と言えばRIVA 128やRIVA TNT、Voodooといった3D性能重視のビデオカードの方が圧倒的に話題に挙がっていたから、1万円前後のローエンドビデオカードが入る余地がないのも致し方ない。

 しかし筆者は1998年~2000年の高校時代、中国の農村部で暮らしていたため、リーズナブルに手に入るこのSiS6326は馴染み深いビデオチップだった。Celeron 300AとRIVA TNTを使っていたのは筆者ぐらいで、既にPCを所持している知人や友人(と言っても普及率が低いため数台程度)の100%がK6-2とSiS6326の組み合わせだったのだ。筆者以降にPCを買った友人がかろうじてIntel 810内蔵グラフィックス、RIVA TNT2を所持していた程度である。

 「SiS6326が筆者にとって馴染み深い」と言っても、3DゲームをこのSiS6326上で同じ性能で走らせることは当然無理だったし、3Dベンチマークを走らせるようなこともしなかった。SiS6326のウリはそもそも安価でありながらDVD再生支援を備えている点で、PCで手軽にDVDを再生することに適したものだからだ。

SiS6326

 ところが、その肝心なDVDは中国ではまったく流行らなかった。DVDが商品化され高画質云々以前に、MPEG-1でより手軽に動画コンテンツが楽しめるビデオCD(VCD)が大流行したからだ。加えて、リージョンコードやコピープロテクトなどの概念も受け入れられなかった。そのため、筆者の周りで圧倒的なシェアを誇っていたSiS6326もDVD再生支援のポテンシャルを活かせないまま、その生涯を閉じることになったと思う。

 さて、PalitのDaytona 64S DVDだが、ローエンドビデオカードらしい質素な作りとなっている。SiS6326以外に目立つチップは、ビデオメモリとして使われるMosel-VitelicのEDO DRAM「V53C832HQ35」と、BIOSを格納するAtmel(現Microchip Technology)の「AT27C512R」程度だ。

 ディスプレイ出力はミニD-Sub15ピンに加え、Sビデオ出力とコンポジット出力がある。TV出力はDVD再生機能を活かすものだろう。映像出力部にはフィルタ用と思われるコンデンサやインダクタなどが用意されており、一定の画質への配慮も見られるが、いかんせん低価格ビデオカードゆえ、ハイエンドビデオカードの比ではないと思われる。

Daytona 64S DVDカード。SiS6326の上に載せられた、SiS製品に多数採用されていてお馴染みの緑色のヒートシンクが印象的。最近Raspberry PiのCPU用ヒートシンクを買おうとしたところ同じ色のものがあったので、つい買ってしまったほど
ヒートシンクを取り払ったところ
カード背面は実装部品はない
Mosel-VitelicのEDO DRAM「V53C832HQ35」
映像出力部は高周波回路用のフィルタと思われるコンデンサやインダクタが実装されている
ミニD-Sub15ピンのほかにTV出力も。大画面でDVDを楽しみたいユーザー向けだった