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こいつ、動くぞ! 18mの“動く”「ガンダム」横浜に立つ
~10月1日から1年、チケットは2020年7月から販売予定
2020年1月20日 18:55
一般社団法人ガンダム GLOBAL CHALLENGE、株式会社 Evolving G は20日、『機動戦士ガンダム 40 周年プロジェクト』の一環として、2020 年夏から横浜市と連携して「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」を横浜・山下ふ頭で10月1日から約1年間オープンすると発表し、東京・田町にあるバンダイナムコ未来研究所で記者会見を行なった。チケットは2020年7月から販売される見込みで、価格は未定。
7月、8月の土日には、プレオープン限定プログラムとして特別観覧デッキから見学できるプログラムも実施される(ガンダムの動作は予定しない)。こちらのチケットは4月頃から販売開始予定。
「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」は、1分の1スケール、全長18mの「ガンダム」を動かすプロジェクトで、2014年から進められてきた。20日には「ガンダム」の開発状況、施設概要などが紹介され、建設中の「ガンダム」ならびにドック施設の模型も公開された。
施設は「動くガンダム」を格納してメンテナンスを行なうデッキ「GUNDAM-DOCK」と、来場者が間近でガンダムを見られる観覧デッキ「GUNDAM-DOCK TOWER」からなる。また、ガンダムの仕組みを学べる展示施設とショップ、カフェ、コミュニケーションスペースの排他複合施設「GUNDAM-LAB」も併設される。
会場限定のガンプラ販売のほか、トークショーや講演会、ワークショップなども行なわれる予定。また株式会社日本旅行からは、オリジナルツアーも企画される。具体的ツアー内容は今後発表される。
18mガンダムが技術と夢が語られる場に
一般社団法人ガンダム GLOBAL CHALLENGE 代表理事の宮河恭夫氏は、1979年に放送された「機動戦士ガンダム」を改めて紹介。
今回のプロジェクトは、「夢を持ち続けること」、「可能性に挑むこと」、「課題を発見し、それを克服して進化すること」をメッセージとして進めていると述べ、「18mガンダムの前で多くの人が技術や街づくりについて語る場になればと考えている」と語った。
24自由度、鋼鉄製フレームにカーボン樹脂外装を持つ実物大ガンダム
一般社団法人ガンダム GLOBAL CHALLENGE テクニカルディレクターの石井啓範氏は、現時点の開発状況を紹介した。
目的は18mの実物大ガンダムを動かすことと「ガンダムらしい動き」の再現である。技術チャレンジ、実現可能性、安全性、デザインと可動の両立をキーワードとして開発を進めてきた。
「ガンダム」の構造は、鋼鉄製の可動フレームにカーボン樹脂の外装をつけたもの。質量は25トン。関節の自由度は24(ハンドを除く)。
アクチュエータはすべて電動で、モーター+減速機のほか、電動シリンダーを併用している。腰部分を後ろから「GUNDAM-CARRIER」で支えることで安全性を確保した。後ろには多段式デッキを設けて、メンテナンスを行なう。ガンダムの前方には可動デッキがあり、前からもアプローチできる。
来場者は、ガンダムから一定の距離を設けた場所から見ることになる。また、特別観覧デッキでは真横から見ることができる。
協力企業は以下のとおり(50音順)。
- アスラテック株式会社(モーションプログラム、制御システム開発)
- 川田工業株式会社(GUNDAM-DOCK、GUNDAM-LAB建築施工工事)
- 株式会社ココロ(G本体ハンド設計・製作)
- 住友重機械搬送システム株式会社(Gキャリア(支持台車)製作)
- ナブテスコ株式会社(減速機製作)
- 株式会社乃村工藝社(G本体デザイン、フレーム・外装パーツ製作、演出)
- 前田建設工業株式会社(試験施設、試験技術協力)
- 株式会社三笠製作所(G本体内電気配線工事)
- 株式会社安川電機(G本体内モーター製作、制御装置製作)
ガンダム開発のためのシミュレータもGitHubで公開
並行して開発が進められている「ガンダム GLOBAL CHALLENGE リサーチ オープンシュミレータ(GGCリサーチオープンシミュレータ)」については、東京大学大学院情報理工学系研究科 教授の岡田慧氏が発表した。
岡田教授はロボットの汎用性を高めることを目標として、人型ロボットによる道具利用の研究などを行なっている。GGCリサーチオープンシミュレータでは、ガンダムのCGデータを用いてリアルなロボット開発を行なうことができる。
ロボット研究のなかで最近注目されているのが「オープンシミュレータ」の考え方だ。ロボットとロボットが動作する環境をシミュレーションで実行して、ロボットの実験を行なう。最近は、多くのシミュレータが誰もが無償で使えるかたちで公開されている。
今回のシミュレータも多くのロボット開発で用いられており、デファクトスタンダードになっている「ROS」と連携する3Dシミュレータ「GAZEBO」上で動作するもの。
シミュレータは20日からGGC GitHubで公開され、Ubuntuがインストールされた環境と技術スキルさえあれば誰でも使える。
たとえば、架空の出力を持ったエンジンを搭載したらどんな動きができるようになるか、どこにどんなスラスターをつけたほうが合理的かといったシミュレーションも行なえる。
岡田氏は、オープンシミュレータを使って「かっこいい動き」を作ってほしいと語った。
研究室でも、もともとは「かっこいい動き」ができるロボット、たとえば段差などもスッと登ったり飛び降りたりできるロボットの開発を目指してトライし始めるものの、実際のロボット開発では一段一段ゆっくりと登る動きのロボット開発となることが多い。
そして保守的な開発を進めているうちに、いつしか当初の気持ちは薄れてしまい、たとえば「パルクールができるロボットを作ろう!」といった気持ちは消えてしまう。それをガンダムのシミュレータを使うことで、もう一度思い出してもらいたいと考えているという。
岡田氏は、今回のシミュレータは汎用ロボット開発のためのチャレンジの1つであり、多くの人が思いを共有している「ガンダム」を素材として用いることで、より多くの人に興味を持ってもらうと同時に、研究者たちにも成果の発信を行なってほしいと呼びかけた。
そして「感情が伝わるようなロボットができればいいと思っているし、今後も『ガンダム』を動かすことには将来にわたって技術者がチャレンジし続けると思う。そのための共通プラットフォームになればと思っている」と述べた。
気になる実際の動きとチケット金額は……
事業運営を行なう株式会社Evolving G 代表取締役社長の佐々木 新氏は、株式会社Evolving Gの事業計画や今後のスケジュールについて紹介した。
前述のように施設は2つのブロックで構成され、公開は10月1日からの1年間。先行特別公開は東京オリンピックともスケジュールが被るため、多くの海外メディアから注目されると考えているという。
有料で販売されるチケット金額は明示されなかった。ただ、関係者たちに質問してみたところ、とても手が出せないような金額にはならないはずとのことだった。
また、実際にどんな動きをするかについては、今回公開された模型を見て推測してほしいとのことだった。
ガンダムは基本的に台車の上に乗っているが、模型を見ると、腰軸を支える「GUNDAM-CARRIER」は上下にも動けるように見える。また、Youtubeの「ガンダムチャンネル」で公開中の「ガンダム」のメイキング動画を見ると、ハンド部分なども動作するように作られていることがわかる。もちろん、関節自由度が24もあることも気になる点である。
これらの動作軸を使って、実際にどのくらいダイナミックかつ表情豊かな動きをしてくれるかについては、まだしばらく、想像のなかで楽しむことができそうだ。