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顔パスで飛行機に乗れる空港、「北京大興国際机場」が開業

 中国・北京において、最先端技術を投入したという国際空港「北京大興国際机場」が9月25日より開業した。国際航空運送協会での空港コードはPKX。

 同空港は市の中心にある天安門から、真南に直線で46km離れた北京市大興区、および河北省廊坊市広陽区の境界に位置する。2014年より施工が開始していたが、5年を経て完成した。

 中国中央電視台は開業式に合わせて特設番組をYouTubeで配信したが、番組のなかでわかった同空港の特徴は以下のとおり。

1年あたり7,200万人の乗降客数を見込む

 設計はイラク出身のザハ・ハディッド氏が担当。ターミナルは中央に位置し、搭乗口はスター型に広がる。上空から俯瞰すると「翼を広げたフェニックス」に見えるという。この構造を採用しているため、中心部からもっとも遠いゲートまでの距離でも600m程度に抑えており、最長でも8分でアクセスできるようになっている。

 空港内はターミナル区、飛行区、(鉄道などそのほかの)交通機関区の3つのメインエリアから構成されている。ターミナル区の天井はスチールグリッド構造を採用し、64,350本のフレームで12,300個の面から構成されている。このため空から見ると不規則な曲面に見える。

 建物は地上5階、地下2階建ての構造。地上階のうち2フロアが出発、2フロアが到着となっている。地下は鉄道などの公共交通機関用となっている(地下1階は入り口、地下2階はプラットフォーム)。

 飛行区は長期的に7本の滑走路の建設を予定しているが、前期はまず4本の滑走路で運用開始。滑走路4本のうち1本は縦、3本は横向きに配置されている。直接飛行機に乗れる搭乗ゲートは83個で、さらにリモートでアクセスできる67個の搭乗ゲート(バックアップ含む)を備える。

 運用当初は最大で年間7,200万人の乗降客(2025年時)、200万tの物流量、航空機の離着陸62万回を見込むが、将来的に滑走路が増設されたさいには1億人の乗降客数にも対応できるとしている。空港へは4本の高速道路および2本以上の鉄道を介してアクセスできる。周辺の天津市や河北省の既存の経済基盤を活かし、北京のさらなる経済発展を推し進めるとしている。

顔パスで搭乗可能

 空港内は高度にスマート化されており、顔認識技術と5Gを活用することで、入場から搭乗まですべて「顔パス」できるという。

 通関のさいも身分証明書や搭乗券などを提示する必要はなく、搭乗ゲートにおいても顔認証の端末を一目見るだけで搭乗できる。このため空港到着から搭乗までの待ち時間を大幅に短縮できるとしている。

 航空券の購入、チェックイン、日程変更、座席のアップグレード、遅延証明書発行を行なうキオスク端末も運用を開始しており、こちらも顔認証により、一切の資料を提示することなく行なえる。搭乗券は電子式で発行もでき、自身の携帯の電話番号を入力すれば即時届くようになっている。

 荷物の検査システムもスマート化されており、手荷物と乗客の紐づけも自動的に行なわれるため、チェックが必要な荷物が発見された場合、どの乗客のものかすぐに検査官がわかるようになっている。

 また、将来的には預かり荷物にスマートタグが取り付けられるようになり、リアルタイムに追跡可能になる。アプリ内でコードをスキャンすれば、自分の預かり荷物がいま空港のどこにあるのか把握できるようになるとしている。

 海外の旅行者が入国するさいも、スマート化された長さ70mの通路を通るだけで、赤外線カメラによる体温検出による健康チェック、放射性物質の検出、および顔認証システムによる生体認証情報の取得が可能で、「アラームが鳴らなければ、3~5秒でゲートを通過できる」という。

 なお、一般的な空港は入国の最後の段階で税関が入るが、大興国際机場は乗客が荷物を手にする前にすでに税関のチェックが終わっているため、税の申告の必要がなければそのまま出られる仕組みとなっている。