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8年間四肢麻痺の男性、「考えを読み取る」脳電極と電気刺激システムで腕の動きを取り戻す
2017年3月30日 18:02
米ケース・ウエスタン・リザーブ大学は28日(現地時間)、8年間四肢麻痺状態だった男性に対して大脳皮質に取り付けた電極から脳の活動を読み取る「脳-コンピュータインターフェイス」と、腕の筋肉に適切な電気信号を送る装置の適用に成功し、腕の運動機能を一部取り戻したとを発表した。
通常、ヒトが「コップを持ち上げて、飲み物を飲む」という単純な動作1つをとっても、さまざまな運動が無意識下で行われている。脊髄損傷やALSといった疾患によって運動機能が損なわれた患者に対し、筋肉に電気刺激を加え、そういった動作を可能とする試みが機能的電気刺激(FES)と呼ばれる先端医療技術だ。
今回、脳-コンピュータインターフェイスとFESを組み合わせ、大脳皮質の活動を記録し、筋肉に電気信号を送ることで運動機能を取り戻す「BrainGate2」という医療機器の治験で、8年間四肢麻痺状態だった男性が被験者となった。同氏は自転車で交通事故にあって以来、四肢が動かない状態が続いていた。
脳には96のチャンネルを持った小型の錠剤程度の大きさの電極が2つ、運動皮質に接続された。接続された電極は運動皮質の活動を読み取るもので、被験者が腕や手を動かそうと考えた際、どのような動きを意図しているのかという情報を抽出してFESの装置へ送信する。
また、腕には上腕と前腕の筋肉を含めて36の電極が取り付けられるが、実際にEFSと接続する前にはVRを用いて仮想空間内に表示された腕を動かすことで習熟が図られ、男性は数分で仮想空間内の腕を思い通りに動かすことができるようになった。
この装置により、男性は自分の手で掴んだ物を食べたり、コップを持ち上げてストローから飲み物を飲むことができるようになった。動きそのものは緩慢でたどたどしく、介助者は依然として必要なままだが、男性は自らの手でできることが増えたことを喜び、将来的に多くの人にこうした技術が適用されることを期待している。
研究は、さらに新たな可能性を提示する。男性は8年間四肢を動かしておらず、筋萎縮がみられたため、周期的に電気刺激刺激を与えることでリハビリを行なった。その結果、45週間以降には、運動可能な範囲や強度、持久力の向上が見られたため、研究者らは男性の習熟に応じ、電気刺激のパターンを調整することでさらなる能力の向上が確認された。
また、研究者らは、埋め込まれた電極をワイヤレス化することや、脳活動のデコード精度や刺激パターンの向上によるより正確な動作のためにさらなる研究を行なっており、完全に体内に埋め込むことができるタイプのFES機材も開発され、それについても治験が行なわれているという。