イベントレポート

VESA、USB Type-Cコネクタ経由でのDisplayPort出力デモ

~DP 1.2→HDMI 2.0変換ドングルも公開

TIのコントローラを利用したUSB Type-Cを利用したDisplayPort出力の例

 ディスプレイ関連の標準化を行なうVESAはInternational CESに出展し、VESAとUSB Implementers Forum(USBの規格策定を行なう標準化団体)が共同で開発したUSB Type-Cコネクタ経由でDisplayPortのディスプレイ出力を行なうデモを披露した。

 Alternate Mode(Alt Mode)と呼ばれるこの拡張仕様は、USB 3.0/3.1の持つ4レーンのうち2レーンまたは4レーン全てをDisplayPortに利用することで、USB Type-Cコネクタ経由でDisplayPortの出力が行なえるようになる技術だ。USB Power Delivery(USB PD)と呼ばれる最大100Wの電力を供給できるUSBの拡張仕様にも対応できる。

 現在のノートPCなどでは、ディスプレイの出力にHDMI端子、DisplayPort端子などが用意されている。しかし、将来的にAlt Modeに対応したUSB Type-C端子が備えられるようになれば、それらの出力端子がなくても4Kなどの高解像度に対応した出力を周辺機器の接続を1種類のケーブルでできるようになる。

 このほか、BizLinkが試作したDP 1.2からHDMI 2.0へと変換するドングルが展示された。

DP出力がなくてもUSB Type-Cコネクタ経由でGPUのビデオ出力が可能に

 今回VESAがデモしたのは、昨年(2014年)の9月にVESAが発表(別記事参照)したDisplayPort Alternate Mode(以下Alt Mode)と呼ばれる拡張仕様だ。簡単に言ってしまえば、USB Type-Cという既に規格策定が終わっているUSBのリバーシブル(表裏どちらでもさせる)な新型コネクタに、DisplayPortの信号を流せるように仕様のこと。例えばPCとドッキングステーションをUSB Type-Cケーブルで接続すると、DisplayPortの信号をPCからドッキングステーションに送ることができるので、ドッキングステーションからDisplayPort出力できるようになる。

 こうしたUSBドックは、現状でもDisplayLinkのUSBビデオコントローラを利用すれば実現可能だが、そうした製品の場合はPC側のCPUで一度データを圧縮して、USB経由でドック側に入っているUSBビデオコントローラにデータを転送し、USBビデオコントローラ側でレンダリングするという仕組みになっている。描画性能はPCに内蔵されているGPUを利用する場合に遠く及ばないし、現状ではUSBビデオコントローラで4K出力する場合は、30Hzでしかできない。

 しかし、このDisplayPort Alt Modeを利用すると、PC側のGPUを利用してレンダリングし、その結果をUSB Type-Cケーブルを経由して、USBドック側のDisplayPortにスルーして出力するので、描画性能はPCのDisplayPortに繋いでいる場合と変わらないことになる。このため、PC側のGPUが4K/60Hzに対応していれば、4K/60Hz出力ももちろん可能になるし、3DゲームなどGPU側の性能に依存するアプリケーションもGPU本来の性能で利用できる。

 なお、このDisplayPort Alt Modeでは、上り下りそれぞれ2チャネルあるUSB Type-Cのデータパスを、DP Alt Mode×1+USB 3.1×1、DP Alt Mode×2のどちらでも利用できる。さらにそれ以外にも、USB Power Delivery(USB PD)による最大100Wの電力供給、USB 2.0が1チャネルの信号線が利用できるので、例えばDisplayPortのディスプレイに電力をPC側から供給しながら、2チャネル全てをDP Alt Modeで利用し、USB 2.0でマウスやキーボードなどを接続しながら使うこともできる。

 ただし、今後登場するUSB Type-Cを搭載する全てのノートPCやタブレット、スマートフォンなどで利用できるということではない。PC側やドック側などにUSBとDisplayPortの信号線を切り替えるスイッチを物理的に搭載する必要があるからだ。この部分は当然コストアップになるので、全ての製品で採用されるというのはちょっと考えにくい。製品によって使える・使えないが発生するだろう。サポートする製品を早期に増やしていくことが課題になりそうだ。

 ただ、PCメーカーにとっては、この仕組みを利用すると、DPの出力を用意しなくて良いことになるので、PCから余分なコネクタを1つ削減できるメリットがある。このため、ハイエンド向けモバイルPCやタブレットなどでより小型、薄型化を実現したい場合には有力な選択肢の1つになるだろう。

USB Type-Cコネクタ。リバーシブル(上下どちらの方向でも挿すことができる)なのが最大の特徴
USB Type-Cケーブルを利用しているデモの概要
こちらはUSB Type-CコネクタをDisplayPortに変換するケーブル。DisplayPort Alt Modeを使うとこうしたケーブルも実現可能

BizLinkがDisplayPort 1.2からHDMI 2.0に変換するドングルをデモ

 このほか、VESAのブースでは「DisplayPort Adaptive Sync」の名前で規格されたAMDのFreeSyncのデモ、5Kディスプレイのデモ、DisplayPortのストリームを圧縮して送る技術、DisplayPortからHDMI 2.0に変換するドングルなどが展示されていた。

 DisplayPortからHDMI 2.0に変換するドングルは、米国のBizLinkが作成した製品で、Mac ProのDisplayPort 1.2の出力を、HDMI 2.0の信号に変換し、4K/60Hzで出力が可能になっていた。現在のPC用GPUで、HDMI 2.0をネイティブでサポートしているのは、NVIDIAのGeForce GTX 980/970のみで、Intel、AMDのGPUに関してはHDMI 1.4aのサポートに留まっている。このため、HDMI入力しかない4Kディスプレイ(例えば民生用のTVなど)に接続した場合には、HDMI 1.4aの4K/30Hzでしか出力することができない。しかし、DisplayPort 1.2では4K/60Hzを出力することが可能になっており、それをHDMI 2.0に変換することができれば、DisplayPort 1.2に対応したビデオカードやPCからHDMI 2.0入力だけを持つ4Kディスプレイで60Hzが可能になるのだ。

 ただ、筆者が取材したときにはBizLinkの関係者がおらず、実際に製品化されるかされるかどうも不明確だが、HDMI 2.0入力のみのディスプレイを持っていてPCを繋げないというニーズは多いと思うので、ぜひとも製品化して欲しいものだ。

DisplayPortを利用した5Kのデモ。現状では5Kの出力には2本のDisplayPort 1.2ケーブルが必要になるが、将来的にDisplayPort 1.3に対応すればケーブルは1本で済むようになる
DisplayPort Adaptive Sync/FreeSyncのデモ。今回のCESではあちこちのブースでDisplayPort Adaptive Sync/FreeSyncのデモを見ることができた
DisplayPort上を流れるストリームを圧縮して送り、ディスプレイ側で解凍する表示するデモ。将来の仕様で採用されれば、より高い解像度(例えば8K)とかをDisplayPortケーブル1本で転送するなどが可能になる可能性がある
BizLinkが試作したDisplayPort 1.2をHDMI 2.0に変換するデモ。HDMI 2.0入力しかない民生用の4K TVなどで4K/60Hzなどが可能になる可能性がある

(笠原 一輝)