イベントレポート

【ZTE/HTC編】Qualcomm製最新SoC搭載フラグシップスマートフォンを展示

会場:スペイン バルセロナ Fira Gran Via

会期:2月25日~28日(現地時間)

ZTE

 ZTEは、MWC 2013開幕初日に発表会を開催し、5.7型液晶搭載スマートフォン「ZTE Grand Memo」と、Firefox OSを採用するスマートフォン「ZTE Open」を発表し、会場内のZTEブースで展示を行なった。

 ZTE Grand Memoは、5.7型とかなり大型の液晶を搭載するスマートフォンだ。このサイズでは、Samsungの「Galaxy Note」シリーズを意識した製品のように感じるかもしれないが、ペンは付属せず、どちらかというと単純に大型のスマートフォンという位置付けの製品と言えるだろう。

 プロセッサはQualcommの最新クアッドコアSnapdragon 800(1.5GHz)を搭載。発表会では、世界初のSnapdragon 800搭載端末と紹介された。メモリは2GB、ストレージは16GB。通信機能は、下り最大100Mbps、上り最大50MbpsのLTE通信に対応。対応周波数帯域は、LTEがBAND 3/7/8/20(1,800/2,600/900/800MHz)、UMTS 900/2,100MHz、GSM 850/900/1,800/1,900MHz。IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LANおよびBluetooth 4.0 LEにも対応。カメラ機能は、1,300万画素背面カメラと100万画素の前面カメラを搭載。また、3,200mAhと大容量のバッテリを搭載しつつ、8.5mmの薄型筐体を実現。ほかにも、スマートフォンとして初めてDolby Digital Plusに対応するなど、フラグシップに相応しい仕様となっている。

 ところで、上記は発表会での発表内容で、ZTEのホームページでも同様の表記となっている(2月27日現在)。しかし、実際にブースに展示されていた実機や、ブースに置かれていた仕様表では、上記とはやや異なっていた。

 まず、メモリ容量は発表会では2GBとされていたが、ブースの仕様表では1GBと表記され、展示機で確認しても1GBとなっていた。また、プロセッサも仕様表では“Qualcomm”としか表記されておらず、実際にSnapdragon 800が搭載されているかどうか確認できなかった。展示されていたのは、発売される最終版とは仕様が異なる、という可能性もあるが、発表会と展示ブースでのスペック表記が異なっている点はやや疑問だ。

 液晶は5.7型と大きいが、表示解像度は1,280×720ドットにとどまっている。実際に液晶を見ると、フルHD液晶搭載スマートフォンに比べると、文字や映像の鮮鋭さにやや欠けるが、まずまず満足できるレベルは確保されており、大きな問題はないだろう。ただ、やはり液晶の大きさや、ZTEのフラグシップモデルとして位置付けられていることを考えると、やや物足りなさが感じられる。

 発表会では、ZTE Grand Memoの発売時期は明言されなかったが、まずは中国で販売が開始され、その後グローバルに展開する予定とした。

5.7型液晶搭載の「ZTE Grand Memo」。Qualcomm製クアッドコアプロセッサを搭載するなど、ZTEのフラグシップモデルに位置付けられている。
下部側面。3,200mAhと大容量のバッテリを搭載しつつ、筐体は薄い
左側面
上部側面
右側面
裏面。1,300万画素のメインカメラが搭載されている
5型液晶搭載のHTC J Butterfly(左)との比較。ZTE Grand Memoは、フットプリントが82.6×159.9mm(幅×奥行き)と、HTC J Butterflyよりかなり大きい
ブースに置かれていたスペック表。プロセッサの名称が書かれておらず、メモリ容量など発表会で語られた仕様と異なる部分も見られる

 次に、ZTE Open。こちらは、Firefox OSを採用するスマートフォン。Firefox OSを採用する点が最大のトピックで、ブースでも常に人だかりができていた。Firefox OSについての詳細は、こちらの記事に詳しいので、ここではZTE Openのハード面の仕様を中心に紹介する。

 ハードウェアは、低価格なエントリークラスのスマートフォンで、プロセッサはQualcommのシングルコアMSM7225A(1GHz)、メモリは256MB、ストレージは512MB。液晶は、480×320ドット表示対応の3.5型液晶を搭載。無線機能は、IEEE 802.11b/g/n対応無線LANおよびBluetooth 2.1+EDR2に対応。また、320万画素カメラも搭載している。バッテリ容量は1,200mAhと少ないが、スペックを考えると妥当な容量と言えるだろう。本体サイズは、62×114×12.5mm(幅×奥行き×高さ)。

 実際に操作してみた感覚は、動作がやや重く、最新のAndroidスマートフォンに比べるとややつらいという印象だ。とはいえ、低価格で、OSを含めてまだ開発中の個体ということを考えると、実際に発売される時には、現時点で展示されていたものとは異なる性能になる可能性もある。

 ZTE Openは、スペインおよび南米で今年の夏頃の発売を予定している。

Firefox OS採用スマートフォン「ZTE Open」。3.5型液晶搭載で、筐体は非常にコンパクトだ
下部側面
左側面
上部側面
右側面
裏面。320万画素カメラを搭載している
ブースでは、オレンジとブルーの2色が展示されていた

HTC

 HTCブースでは、MWC 2013開幕直前に発表された、最新LTE対応のフラグシップスマートフォン「HTC One」が中心の展示となっていた。

 HTC Oneの特徴は、従来のHTCのフラグシップスマートフォンである「HTC Butterfly」(日本向けモデルは、auより「HTC J Butterfly」として発売中)と比べ、液晶、カメラ、サウンド再生といった部分が大きく変更されている点だ。

 まず、液晶はサイズが4.7型と、HTC J Butterflyの5型からやや小さくなっているが、表示解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)で同じ。表示密度が468dpiと高まっており、文字や映像を緻密に表示できる。また、液晶サイズが小さくなったことで、本体のフットプリントは68.2×137.4mm(幅×奥行き)と、HTC J Butterflyよりかなりコンパクトとなり、実際に手に持ってみてもかなり持ちやすくなったと感じる。厚さは9.3mmと、HTC J Butterflyより0.1mm厚くなっているが、その差はほとんど感じられない。それでいて、2,300mAhと内蔵バッテリ容量が増えている点は嬉しい。重量は143g。

 液晶面上下には、大きなスピーカーが用意されており、ステレオサウンドが再生可能。実際に音楽ファイルを再生してみたが、スマートフォンとは思えない高音質かつ大音量で音楽が再生されるのには驚いた。HTC J Butterflyにも搭載されている、Beats Audioにも対応しているので、サウンド再生能力はかなり高い。

 また、カメラの仕様も大きなトピックとなっている。スマートフォンに搭載されるカメラは、1,000万画素を超える高画素数のセンサーを搭載する例が増えている中、HTC Oneのメインカメラは、あえて約400万画素と画素数の少ないセンサーを採用。このカメラは、「Ultrapixel Camera」と呼ばれ、画素数を抑えることで画素サイズを大きくし、従来よりも感度を約3倍高めているという。また、レンズにはF値が2.0の明るいレンズを採用。これにより、低画素数ながら暗所でも鮮明かつノイズの少ない、高品質の写真や動画の撮影が可能としている。

 また、従来モデルのHTC Sence 4からHTC Sence 5.0へと進化。HTC Sence 5.0ではUIが大きく変更されるとともに、アプリ一覧などは縦スクロール操作になるなど、操作性にも手が加えられている。そして、最大の特徴となるのが、ホーム画面に音楽や動画、SNSのタイムライン、ニュースフィードなど、さまざまなコンテンツをホーム画面上にタイル状に並べて表示する「HTC BlinkFeed」という機能だ。正方形や長方形のタイルが並ぶとともに、スクロールも縦となっているため、まるでWindows PhoneのUIかのような印象を受ける。ただ、HTC BlinkFeedではコンテンツが表示されるだけで、アプリなどのショートカットは一切配置できない。つまり、音楽や動画、SNSなどを手軽に楽しむためのUIというわけだ。

 その他のスペックは、プロセッサがQualcommのクアッドコアSnapdragon 600(1.7Ghz)、メモリ2GB、ストレージ32/64GB。筐体背面は、アルミ削り出しの一体型筐体となっており、質感も高い。発売時期はワールドワイドで3月を予定しているが、日本での発売は未定だ。

HTCの最新スマートフォン「HTC One」。4.7型フルHD液晶、Snapdragon 600(1.7GHz)などを搭載する、フラグシップモデルだ
下部側面。高さは9.3mm
左側面
上部側面
右側面
裏面。アルミ削り出し筐体を採用し、質感が高い。また側面付近はカーブで手に馴染み、持ちやすい
HTC J Butterfly(左)との比較。液晶サイズが小さいため、HTC Oneの方がやや小さい
液晶上下には、大型のスピーカを搭載し、高音質ステレオサウンドが再生可能
背面のメインカメラは、約400万画素の「Ultrapixel Camera」を採用。画素数を減らして画素サイズを大きくし、感度を高めている。またF2.0の明るいレンズを採用し、暗い場所でも高画質の撮影が可能
新UI「HTC Sence 5.0」に用意されている「HTC BlinkFeed」。音楽や映像、SNSタイムラインなどのコンテンツがタイル状に表示され、簡単にアクセスできる
HTC BlinkFeedやアプリ一覧画面は、縦スクロールとなり、やや操作に戸惑う場面があった
カラーはシルバーとブラックが用意される
HTCのChief Product Officer、小寺康司氏

 今回会場近くのホテルで、HTCのChief Product Officerである小寺康司氏に、HTC Oneや日本市場への取り組みについて話しを伺う機会を得た。

 HTC Oneでは、従来から大きくUIが変更され、一見Windows Phoneや、auのINFOBARに近い印象を受けるBlinkFeedという機能が新たに盛り込まれている。小寺氏によると、この新UIの採用は、社内でも議論があったそうだ。ただ、実際にはBlinkFeedでは、表示されるのはコンテンツのみ。見た目は近くても、機能は全く異なるものなので、十分に差別化できると判断し採用したそうだ。また、コンテンツをいかに効率良く消費できるか、という点にも重点を置いているそうで、その観点から見ると、このBlinkFeedはかなり便利なUIと感じる。

 このHTC BlinkFeedに加えて、削り出しのアルミ筐体と液晶ガラスのみのギャップレスのデザインや、HTC BlinkFeed採用の一環でのサウンド再生機能の強化、そして映像関係の機能の強化が、HTC Oneの大きなこだわりであるという。事実、筐体の仕上がりやデザイン性の高さや、Ultrapixel Cameraという、画素数よりも感度にこだわったカメラ機能など、随所にそのこだわりが見て取れる。金属製の筐体を前面に使いながら、十分なアンテナ性能を確保したり、小型かつ薄型の筐体に豊富な機能を詰め込むという点にはかなり苦労したそうだ。

 ところで、HTCの日本市場への取り組みについて小寺氏は、「日本市場へは、グローバルモデルをそのまま持ってくるのではなく、市場に合わせた仕様を実現したHTC Jシリーズを始めています。このような対応を取っているのは、日本とアメリカ、中国だけで、HTCにおける日本市場に対する優先度は非常に高いものになっています」と語っており、HTCにとって日本市場は中心的な存在になりつつあるようだ。また、以前に比べてFeliCaやワンセグといった日本独自機能へ対応させる場合でも、グローバルモデルとの差分が少なくなっていることも、その姿勢を後押ししているという。

 「日本市場でのベストセラーモデルをきちんと出して、日本市場での存在感をより高めていきたい。それが我々の目標です」と小寺氏。これからも、その言葉を裏付けるような、魅力的な機種の投入に期待したい。

(平澤 寿康)