イベントレポート
Firefox OSが正式発表。2013年の半ばにはエンドユーザー向け製品を出荷
~会場に展示されたFirefox OS対応スマートフォンを紹介
(2013/2/28 00:00)
Mobile World Congress開幕前日の24日(現地時間)に、Mozilla Foundationはプレスカンファレンスを行なってFirefox OSを正式に発表。商用ビルドが動作するFirefox OS対応端末を紹介するとともに、端末を製造するメーカー、パートナーシップを結ぶ通信事業者などの紹介を行なった。2013年の中頃には新興国市場を中心にして流通を開始する。
Firefoxは、Mozillaが開発を続けているPC用のWebブラウザとして知られている。Firefox OSも、このブラウザ技術をベースとしたモバイル向けのOSとして開発が進められてきた。オープンソースOSとして開発されていて、事業者によるカスタマイズの自由度も高い。
Mozillaの発表によれば、「Firefox OSを搭載するスマートフォンは、全てがオープンなWeb標準技術に基づいて開発された初めての製品であり、全ての機能をHTML5アプリケーションとして開発できる。Webアプリはデバイスのあらゆる基本機能にアクセスし、モバイルデバイスで一般的に見られるHTML5の障害を回避して、優れたパフォーマンスを提供できる」としている。併せて「プラットフォームの柔軟性により、通信事業者は各社の顧客固有のニーズに合わせてインターフェイスを簡単にカスタマイズし、ニーズに応じたサービスを提供できる」と、導入のメリットを説明している。
HTML5で記述されているアプリケーションは、オンラインでの利用だけでなくFirefox OS搭載のスマートフォンにも保存され、一般的なスマートフォンのアプリケーションと同様に非接続状態でも利用可能なほか、HTML5で記述されたWebページと同様にネットワーク接続時には最新の状態に更新し表示されることで、アプリケーションを常に最新の状態で利用することができる。この仕組みをプレスカンファレンスでデモを行なった、Mozillaの製品担当上級副社長であるJay Sullivan氏は「アプリケーションとWebの間の壁を壊す」と紹介した。
アプリケーション配信のプラットフォームとしてはMozilla自身が「Firefox Marketplace」を提供するものの、通信事業者が独自の配信プラットフォームを運営したり、開発者が直接アプリを配信することも可能になっていて、こちらにもオープンな姿勢が貫かれている。
ホールにはFirefox OS対応のスマートフォンが展示される
発表があったFirefox OS対応のスマートフォンを製造するのは、Alcatel(TCL)、LGおよびZTE。やや遅れてHuaweiも対応スマートフォンの製造を開始する。このうち、ZTEとAlcatel One Touchは、それぞれのブースで稼働するデモ機の展示を行なっていた。
Alcatel One Touchによる製品は「One Touch Fire」。Snapdragon S1 1GHzを搭載する。スクリーンサイズは3.5型で、解像度はHVGAの320×480ドット。背面カメラは320万画素。前面側にカメラはない。最大32GB利用可能なmicroSDカードスロットを搭載する。メモリは256MB。Firefoxのイメージカラーであるオレンジと、Alcatel One Touchのイメージカラーであるスカイブルーの2色の端末が展示された。
ZTEは「ZTE Open」をプレスカンファレンスで正式に発表。搭載するプロセッサはSnapdragon S1 7225A 1GHzで、前述のOne Touch Fireと同様。背面カメラは320万画素。無線LAN機能はIEEE 802.11b/g/nに対応。Bluetooth 2.1+EDRやmicroSDカードスロットも搭載する。本体サイズは62×114×12.5mm(幅×奥行き×高さ)で、バッテリ容量は1,200mAh。こちらもオレンジとブルーの2色が展示されていた。
また、アプリケーション開発者向けにはスペインのベンチャー企業であるGeeksphoneから、Developer Preview版となる「keon」「peak」の2製品が発表済みで、これから数週間以内に提供される見込み。このDeveloper Preview版の端末はオンライン販売される。
「keon」は前述した年内出荷の商用端末に近いローエンドな仕様で、プロセッサはQualcommのSnapdragon S1 7225AB 1GHzを搭載する。スクリーンサイズは3.5型。解像度は320×480ドット。カメラは300万画素。RAMは512MB。microSDカードスロットを搭載する。無線LAN機能はIEEE 802.11b/g/nで、Bluetooth 2.1+EDRも搭載。バッテリ容量は1,580mAh。通信方式はUMTS 900/1,900/2,100(3G/HSPA)とGSM 850/900/1,800/1,900(2G/EDGE)。
一方m「peak」はハイエンドに近い仕様で、プロセッサはQualcommのSnapdragon S4 8225 1.2GHzを搭載する。スクリーンサイズは4.3型となりIPS液晶で540×960ドットの解像度を備える。背面カメラは800万画素、keonにはない200万画素の前面カメラも搭載する。メモリは512MB。microSDカードスロットを搭載する。無線LAN、Bluetooth、通信方式などはKeonと同様。バッテリ容量は1,800mAhと大容量化されている。
またXDA DevelopersではNexus SやGalaxy Nexusなどをはじめとする、既存のAndroid端末に対してインストールが可能なFirefox OSのα版が提供されている。筆者もバルセロナ到着直前に、ドイツのプリペイドSIMでローミングさせている手持ちのNexus Sへインストールを行なってみた。
端末自体が2年以上の前の製品であり、OSもα版ということもあって、やや動作のサクサク感には欠けるものの、OSの目指すところや操作イメージはおおまかに知ることができた。個人レベルでこうしたトライアルができることもオープンなOSならではということだろう。
Firefox OS搭載端末の導入を検討しているのは、日本のKDDIを含む以下の17通信事業社。
・America Movil
・China Unicom
・Deutsche Telekom
・Etisalat
・Hutchison Three Group
・KDDI
・KT
・MegaFon
・Qtel
・SingTel
・Smart
・Sprint
・Telecom Italia Group
・Telefonica
・Telenor
・TMN
・VimpelCom
さらにTelstraも歓迎の意向を示している。
このうち2013年の中頃といわれる最初の導入国は、ブラジル、コロンビア、ハンガリー、メキシコ、モンテネグロ、ポーランド、セルビア、スペイン、ベネズエラの各国。Telefonica系列のキャリアが大半を占める。KDDIは今後1~2年内を目途としている。
また、スペイン通信事業者大手のTelefonicaは25日にニュースリリースを出し、ソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia Z」、「Xperia Tablet Z」をTelefonicaで扱うことに加えて、Firefox OSを使った端末の開発を、Telefonicaとソニーモバイルコミュニケーションズの両社で検討することを明らかにした。前述した端末製造メーカーに、ソニーモバイルコミュニケーションズが今後加わる可能性がある。